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1979年茨城県生、筑波大学日本語・日本文化学類卒。2020年「震雷の人」にて第27回松本清張賞を受賞し作家デビュー。

 


                   

「震雷の人 ★☆         松本清張賞


震雷の人

2020年09月
文芸春秋

(1400円+税)

2022年06月
文春文庫



2020/10/17



amazon.co.jp

中国は唐朝、玄宗帝時代に起きた安禄山の乱(755〜763年)に材をとった中国歴史ストーリィ。

<常山郡>太守の息子である
顔季明(がんきめい)、その親友で<平原郡>第一大隊の隊長である張永(ちょうえい)、張永の妹であり顔季明の3歳年上の許婚である采春(さいしゅん)の3人が、主要登場人物。
季明と采春の婚儀を前に起きた、安禄山の息子=安慶緒による平原郡第一大隊への攻撃、さらに安禄山の乱から、3人の運命が大きく変動します。
「書の力で世を動かしたい」と願った顔季明は反乱軍の犠牲となり、采春は季明の仇を討つために出奔しますがその途中で世の犠牲になる女たちの哀しい運命を知ります。
そして長永は、唐帝国に従うのが正しいことなのかどうかと迷うことになります。

動乱の時代、それによって生きるべき道を翻弄された兄妹の対照的な道のりが描かれますが、何と戦場で兄と妹が一騎打ちをすることになるなんて一体・・・・・。

松本清張賞を受賞した本作ですが、宮城谷昌光さんの中国古代ストーリィを長く読んできた所為か、つい比較して物足りなさを感じざるを得ません。
どういう処かというと、ストーリィに大きな変動はあっても、実感としてそれが余り感じられないこと。そして、主要人物3人の輪郭が(采春はまだしも)明確に感じられない、という処。
そして、一番惜しまれるところは、顔季明がいつの間にか退場してしまった、というところでしょうか。

一方、民にとってはどちらが支配者になろうと、さほど重要事ではない、自分たちの平穏な暮らしこそもっとも大事なこと、という訴えは胸を打ちます。


1.烽火(とぶひ)立つ/2.永字八法/3.辟召の契り/4.雲霄の奥/5.僧侠、現る/6.密約、成る/7.魏郡、攻略/8.胞衣壺眠りて/9.不幸に非ず/10.大儀、親を滅す/11.希望の風/12.震雷の人

        


   

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