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「不発弾 Unexploded Bomb」 ★★ |
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2018年06月
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冒頭、7年間に亘る1500億円もの不適切会計が明らかになった日本を代表するメーカー・三田電機産業(株)の謝罪会見からストーリィは蓋を開けます。会見に向かう中谷社長に直前まで助言を与えていたのは自称金融コンサルタントの古賀遼、55歳。 2015年、三田電機の粉飾決算ニュースを目にした警視庁捜査二課第三知能犯捜査係の管理官である小堀秀明警視は、事件の背後を探る内、古賀遼という人物の存在を知ります。 財テク失敗、巨額損失隠し、それが明るみに出て自殺に追い込まれた責任者たち。彼らをそんな状況に追い込んだ悪人として、小堀は古賀遼を追い詰めるべく捜査を開始します。 一方、その「古賀遼」こと古賀良樹が福岡県の大牟田で高3だった1977年に遡り、そこから彼を主人公にして<金融バブル〜財テク〜その崩壊・破綻>という時代がリアルに描かれていきます。 小堀を主人公とする現在ストーリィと、古賀良樹を主人公とする過去ストーリィを交互に描いていくという構成。 それにより、批判的に冷めた目で見る現在の視点と、財テクに浮かれていた時代の異常さが、浮き彫りにされているように感じます。 上記過去の時代は、私のサラリーマン時代とそのまま合致していますから、一度は忘れ去られていたあの時代を、もう一度体験しているような気分にさせられます。 一般的な型に当てはめるなら、小堀は<正義>で古賀は<悪>ということになるのでしょうけれど、私にはどうも古賀を責める気持ちにはなれません。 財テクに失敗したのはもう仕方ないことで、それならそれで公にし責任を取るべきであったこと。自分が責任を取りたくないばかりに損失を隠し、あるいはもっと損失を拡大させてしまった、担当者の方がむしろ責任は重いと考えます。 三田電機がこのところ揺れに揺れている東芝がモデルであることは一目瞭然。それ以外でも、この会社は〇〇〇〇、この政治家は〇〇〇〇と簡単に分かるところが刺激的。 一般の目に触れない裏側にはこうしたストーリィがあったのかと思うだけでも、読み甲斐のある経済サスペンスです。お薦め。 プロローグ/1.萌芽/2.過熱/3.破裂/4.潜行/5.泥濘/最終章.光明/エピローグ |