足立 紳
(あだち・しん)作品のページ


1972年鳥取県生、日本映画学校卒。相米慎二監督に師事。助監督・演劇活動を経てシナリオを書き始め、第1回松田優作賞を受賞した「百円の恋」が2014年映画化される。同作にて第17回シナリオ作家協会「菊島隆三賞」ならびに第39回日本アカデミー賞優秀脚本賞、また「百円の恋」と「お盆の弟」にて第37回ヨコハマ映画祭脚本賞を受賞。


1.乳房に蚊

2.それでも俺は、妻としたい

  


     

1.
「乳房に蚊 ★★☆


乳房に蚊

2016年02月
幻冬舎刊

(1300円+税)



2016/04/30



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兎にも角にも本書の主人公、絵に描いたようなダメ男ぶりなのです。
主人公の
柳田豪太はシナリオライター、と言うものの昨年の仕事収入は僅かに35万円。
コールセンターの契約社員として働く妻チカの稼ぎに頼る、主夫とはいえ実際はヒモ状態なのです。
 
よくまぁ妻のチカが我慢しているなぁと思ったら、一度別れを切り出された危機を豪太が子作りで乗り切ったというのが真相。その時の子である
アキももう5歳ですが、豪太の状況は何も改善していない。
一方、手酷い言葉を散々に投げつけられているというのに何故豪太が妻にしがみ付いているかと言えば、捨てられたらホームレス間違いなし、性欲の捌け口も妻に求めるしかないというのがその本音。でも毎度手を伸ばす度拒絶されており、ほぼセックスレスというのが現在の実情。
そんな侘しい一家3人が、珍しく豪太の元に舞いこんできた仕事の取材で四国へ旅立つのですが、その顛末は如何に・・・。

ここまで正直にダメ男ぶりを発揮されると、もう哀れというか、処置なしと言うべきか。
こんな男に一時心を寄せた妻の側に立ってみれば、道を見誤ったというか、魔に魅入られたと言うべきなのか。
印象に残るのは、主人公の滑稽なアホさぶりと、その妻の健気な哀れさ。
ここまで行くと何が家族にとって良いのか第三者が口をはさむ言葉などとてもなくて、少しでも状況が改善するようにと、ただ祈るような気持ちです。

※題名は尾崎放哉の俳句「すばらしい乳房だが蚊が居る」から。表紙絵と合わせ、本書の夫婦関係を直截的に表しているようで、何とも言い難い味を感じます。

       

2.

「それでも俺は、妻としたい ★★


それでも俺は、妻としたい

2019年10月
新潮社

(1500円+税)

2022年10月
新潮文庫



2019/12/15



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抱腹絶倒の夫婦、日常ドラマ。もう信じられないくらい、爆笑。
一応
乳房に蚊の続編のようです。

主人公は
柳田豪太。40歳を迎え未だ年収50万円。自称シナリオライターだが、全く仕事なし、実質は主夫、というよりヒモ。
一方、妻の
チカは 身長170cm、Hカップという具合。
5歳の息子、保育園児の太郎と3人暮らし。
ろくに働かずやらせてばかりの豪太に、妻のチカからもいい加減見放されたのか、「セックスさせてください。お願いします」と頼んでも、「ヤダ」の一言。
何とか応諾してもらっても「5秒で終わらせてよ」と。

まぁ題名からして直截的なのですが、もう呆れるくらいに、あけすけ、スケベ心丸出し。
とにかく夫婦2人のやりとりがことごとく噴飯もので、滑稽、痛快、呆れ果てること途切れなく、夫婦コメディここに極まれり、という印象。

幼稚園のミナちゃんママとの??な付き合いもあれば、嫁姑の猛烈極まりないバトルもあり。でも何時そんなことがあっても不思議ない、非現実的とは言えない日常ドラマです。

最初こそ、いくら何でもそこまでと呆れかえったのですが、それも毎度毎度続くと、妻のチカにもどこか愛すべきアホさがあるように感じられ、この夫婦のことが愛おしくなってきます。

※さすがに通勤電車の車中で読むのはどうかと思い、土日にあてて読了した次第です。


妻としたい/妻としちゃった/妻と働く/妻と帰る/妻と笑う/エピローグ

     


  

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