●三角乗り 昭和三十年代は、まだ子供用の自転車というのは見たことがありませんでした。都会の一部にはあったのかも知れませんが、主流の自転車は黒くてでっかい無骨なもので大きな荷台も付いていました。
子供達が小学校にあがって自転車をはじめて練習するときに目の前にするのがこのタイプの自転車でした。子供のことなど全く考えられていないこの自転車に乗るのは大変です。もちろん補助輪もありませんし、最も基本である乗るためのサドルの高さが子供の身長にはあまりに高すぎました。「乗れるもんなら乗ってみろ・・・」と喧嘩を吹っかけているようなものです。
しかし、道具の進化に期待できない時は人間の側で工夫するものです。
小さな子供のたちは、大きな自転車の三角フレームの間から片足を突っ込んでペダルを漕ぐ操縦方法を習得してしまいました。この乗り方は自転車と自分とがちょうどV字になるようにしてバランスをとることになります。ハンドルを目一杯自分とは逆の側に倒すことになりますから、はじめは恐くて乗れません。ちょっとした曲乗りです。
そして、何度もコケながら(倒れながら)自転車を征服していきます。
今の子供のための道具は安全でよいのですが、子供達に魅力的なのは大人の道具かも知れません。
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