[2024年の動向]

ふたたびオランダがインドネシアに文化財を返還
-植民地主義を直視する国立の博物館・美術館-

森本和男


はじめに
旧宗主国
 オランダドイツベルギーフランスイギリススペインイタリア
ヨーロッパの他の国々
 スイスノルウェースウェーデン
アメリカ
おわりに


はじめに

 ドイツとオランダからアフリカ・アジアへ多数の文化財が返還されて、文化財返還は、もはやトップ・ニュースになるほどの珍しい出来事だといえなくなっただろう。そして文化財返還について分析し、将来的展望をふまえて考察をかさねる動きが見られるようになった。芸術専門紙『ARTnews』は2月に「返還と回復の新時代(The New Era of Restitution and Repatriation)」という特集を組んで、9本の記事を載せた1)。帝国主義時代に旧植民地から奪われた文化財にかぎらず、近年にアメリカからカンボジアやネパールに返還された文化財、メキシコの遺産返還キャンペーンなどもふくめて総合的に返還の問題が論じられた。

 植民地文化財に関する記事をいくつか見てみよう。数年前から欧米の博物館や大学からナイジェリアにベニン青銅器の返還が続き、ナイジェリアではかつてのベニン王国の首都だったベニン・シティで新しい博物館が建設されて、返還されたベニン青銅器の受け入れを準備している。2024年の秋に開館予定(2025年11月11日に延期)の西アフリカ美術館(Museum of West African Art、MOWAA)の現代的特徴が論じられ、欧米を中心に従来主張されてきた普遍博物館(universal museum)の概念が時代遅れになったと批判された。

 西アフリカ美術館の美術史と現代芸術の学芸員アインドレア・エメリフ(Aindrea Emelife)は、生きた文化である職人や地元の地域博物館と協力して、西欧および世界中の博物館と有意義な関係とパートナーシップを築き、西アフリカ全体で博物館のインフラを成長させ持続に役立つ活動の中心を目指すと述べた。美術館の上級顧問でプリンストン大学の芸術考古学教授チカ・オケケ=アグル(Chika Okeke-Agulu)は、植民地政府をモデルにした博物館と、人々を疎外させた西アフリカの既存の博物館とは著しく異なるビジョンで、一般の人たちが大切にするアイデンティティのある施設をのぞむと語った。

 地元の人たちの文化やアイデンティティを重視する文化施設に対して、メトロポリタン美術館や大英博物館などの普遍博物館は、一国の市民だけでなくすべての国の人たちに奉仕すると宣言して世界の歴史を提示しているのだが、この主張は文化財の返還要求に対抗するためだった。普遍博物館は世界、そしてひいては私たち自身について学ぶ機会を提供するという考えだったが、この機会は決して民主的ではなかった、博物館モデル自体を脱構築し、西アフリカの要望に正面から取り組む広大な創造的地区を創設するのだとエメリフは語った2)。返還された文化財を所蔵・保管する新しい博物館の建設について、単に収納して展示するという従来の博物館とはまったく異なる概念・機能がもとめられているといえるだろう。

 違法に盗まれた物件を所持しているとして、近年アメリカ・ニューヨークのマンハッタン地区検事事務所が博物館・美術館から多数の文化財を押収し、次々に原産国へ返還している。違法文化財の返還が続いたのは、取得に際して文化財の出所来歴を十分に調査せずに、あるいは偽造された出所証明書を十分に検証せずに購入したのが原因と考えられた。そこでメトロポリタン美術館、シカゴ美術館、ゲッティ美術館などの著名な美術館では出所調査が強化された。

 出所調査の対象はナチス略奪美術品や古美術品だけでなく、植民地から持ち出された文化財にもおよんでいる。さらに合法だったのかという厳密な法的解釈から、誠実に透明性にそった倫理的視点へと移行していることが強調された3)

 『ARTnews』の特集は、近年欧米で盛んとなっているさまざまな返還について多角的に論評した報道であり、植民地文化財の問題が単なる歴史的課題にかぎらず、現代の文化財返還にも関連していることをしめしていた。

 植民地文化財の返還に関する学術書が2冊刊行された。国際法学者が植民地文化財の問題を法律的、歴史的に論述したもので、両著はともに2023年10月に出版された。1冊目はアメリカ・シカゴのデポール大学教授パティ・ゲレステンブリスの『文化財と賠償的正義:法的歴史的分析』(Patty Gerstenblith, Cultural Objects and Reparative Justice: A Legal and Historical Analysis, Oxford University Press, 2023)である。パルテノン大理石、円明園、ベニン青銅器が具体的事例として分析され、19世紀の植民地化経済の保護、帝国列強の拡大にともなう国際法の発展が論じられた。

 2冊目は、ライデン大学とクイーンズ大学ベルファストの国際法教授カーステン・スターンの『植民地文化財に向き合う:歴史、合法性、文化的アクセス』(Carsten Stahn, Confronting Colonial Objects: Histories, Legalities, and Access to Culture, Oxford University Press, 2023)である。植民地文化財の返還を法的問題だけでなく、植民地主義や脱植民地化などの歴史的課題にもふれつつ、正義、倫理、人権の3つの異なる視点の交接点として返還をとらえることを、著者は提唱している。

 カーステン・スターンの著書をめぐって、2024年4月に国際法の学術専門ブログ『Opinio Juris』でシンポジウムが企画され、著者のカーステン・スターンをはじめ世界中から14人の法学者や文化財専門家の論文が寄稿された4)。ここでいくつかの論考を紹介しておこう。

 ライプチヒのユダヤ歴史文化研究所の研究者で、『文化財:ドイツ・オスマン帝国間政治における考古学資料をめぐる紛争 1898-1918年』(Kulturbesitz: Konflikte um archäologische Objekte in der deutsch-osmanischen Politik 1898-1918, Wallstein Verlag GmbH, 2024)の著者セバスチャン・ウィレルト(Sebastian Willert)は、帝国主義時代にドイツがトルコから発掘資料を持ち出すことを可能にした文化財保護法の二面性を論じた5)

 西洋の文化帝国主義に対抗して、オスマン帝国では文化財流出を阻止する文化財保護法が制定されたのだが、分与制度(partage regime)によって出土品が巧妙に流出してしまった。現在ベルリンの博物館で展示されている有名なネフェルティティの胸像は、この分与制度を利用してエジプトからドイツへと持ち出されたのである6)

 文化財の国外流出を制止しようとオスマン帝国では1869年に輸出禁止が法制化され、また同年イスタンブールに帝国博物館(Müze-i Hümayun、Imperial Museum)が設立された。1874年に帝国博物館のドイツ人館長の支援のもとで古物法が弱体化され、考古学資料を外国人調査者にも分配する分与制度が導入された。10年後に最初のオスマン人館長が法整備を通じて文化財流出を阻止しようと試みたが、外国の考古学調査隊は分与制度と外交干渉を駆使して古代遺跡を搾取し続けた。こうしてドイツ考古学はオスマン帝国領域内で発展し、ベルリンの博物館は収奪したコレクションで世界的地位を築いたのである。

 欧米の博物館は「保護する」と称して文化財を持ち出した。ヨルダン・アンマンにあるのムシャッタ宮殿(the desert castle of Mshatta)はウマイヤ朝時代の未完成の宮殿で、壮大で豪華な装飾の施された正面入口部分が現在ベルリンの博物館で展示されている。建造物はオスマン帝国皇帝アブデュルハミト2世(Sultan Abdülhamid II)からドイツ皇帝ヴィルヘルム2世への個人的贈品として博物館が取得した。1903年12月に422箱に詰められた459個の石塊がベルリンに到着し、カイザー=フリードリヒ博物館に組み入れられた7)。博物館の代理人は調査・輸出の申請手続きで建造物のイスラム起源を隠すことに成功し、そして考古学者たちは、シリアとサウジアラビアをむすぶヒジャーズ鉄道の建設作業による破壊から救ったのだという物語を作り上げた。ムシャッタ宮殿の移転はオスマン帝国領域から古代建築を持ち出した重要な事例である。

 ムシャッタ宮殿の移転は古物法が無力であることを露呈させた。そこで1906年に古物法が改正され、外国の考古学調査隊は許可を教育省に申請しなければならない、またオスマン帝国政府の許可のない文化財の輸出、販売、取引の禁止が規定された。分与制度は廃止されたが、ドイツ考古学の代表者たちは制度の継続を試みようとした。

 1906年以後ドイツの発掘隊は文化財を合法的に持ち出すことができなくなった。ただし許可をえた発掘は可能だった。ドイツ人考古学者・外交官マックス・フォン・オッペンハイム(Max von Oppenheim)はテル・ハラフの発掘許可を1909年に受け取り、発掘をはじめて、当初は当局の指示にしたがって出土遺物を持ち出さなかった。

 しかし調査がすすんで重要な遺物が見つかると、地元民によって貴重な文化財が破壊される、当局によって無視されるから出土品をそのまま遺跡に残すべきでないと彼は主張し、出土品を「安全保護する」言説を作り出した。調査隊が帰国する際に、彼は考古学的遺物を旅行カバンに忍ばせつつ家具や衣服だと称して箱をベルリンに送った。ドイツ外交官の助けをかりて輸送は税関を通過してベルリンへと向かった。そして1914年7月までに276箱がベルリンに届いたのである。

 オスマン帝国の古物法は文化財流出を阻止しようとして制定されたのだが、結局は法的効力が十分に発揮されず、植民地文化財が帝国主義国へと流れた。

 ブリュッセルのサイント=ルイース大学法学助教授マリエ=ソフィー・ドクリッペ(Marie-Sophie de Clippele)は、博物館にある人間の遺骸返還に関して新しい時代を迎えつつあると論じた8)

 博物館にある人間の遺骸は、軍事的に奪取された戦利品、人種理論にもとづく学術調査や医学的研究手術によって、ほとんどが植民地時代に取得された。戦場に残された遺骸や国内の刑事犯罪による遺骸の返還はしばしば規則化されているが、他国のコレクションに所蔵されている遺骸返還について国際的権利はまったく存在していない。国際法は満足な解決策を提供していないが、現在国および準国のレベルでより厳格な法的枠組みのなかで返還の取り組みが行われている。

 国レベルではアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどの国々で、先住民族の遺骸の国内返還に特化した立法が制定されている。フランスでは公共コレクションにある遺骸返還に関する包括的な法律が最近制定された。ベルギーでは連邦博物館の植民地コレクション返還のための一般的法律が採択されたが、遺骸は除外され、現在遺骸に関する法案が議論されている。一方ドイツ、オランダ、スイスなどの国々では、議会で採択された法律ではなく、博物館界や学術機関からの勧告をふくむ博物館関連の施策が国あるいは地方レベルで採用され、返還努力を効果的に導いている。

 ・国際的国内的な法的基準、・文化遺産に関する集団的個人的権利、文化権、先住民族の自己決定権などにふくまれる人権、・尊厳の原則や遺骸の神聖を尊重する倫理的規則、・博物館の事例や学術的勧告にしめされる遺骸返還を促進させる制度的慣行、・返還のプロセスを支援する正義のメカニズムが相互に作用して返還の新しい時代を迎えている。そして移行期正義(transitional justice)の次元で展開するだろう。移行期正義の4つの要点(真実の探求、正義への権利、賠償、再発防止と和解)は遺骸返還にも適用されると、ドクリッペは展望をしめした。

 移行期正義とは、組織的暴力や人権侵害といった過去に社会が向き合い、トラウマを克服して正義の確立、和解の達成を目的として、20世紀末にアメリカで発展した概念である。移行期正義は、ラテンアメリカ独裁政権、ソ連東欧の旧共産主義体制、南アフリカのアパルトヘイト体制などの強権主義政治に適用され、さらに歴史をさかのぼって、先住民族や奴隷などに対する数百年来の歴史的不正義を是正するポストコロニアルの課題にも、応用されるようになった。遺骸返還が欧米で継続的に進められ、法的・制度的基礎として移行期正義の概念が法学者によって提案されたのである。

 欧米では文化財と遺骸の返還が進展し、並行して大規模な出所調査も進められている。返還の流れを理論的に分析し、あるいは知られていなかった歴史的事実を調査によって明らかにする論考が、今後も増えると思われる。


旧宗主国

 オランダ

 オランダ政府は前年2023年に500点近い文化財を返還し、続いて2024年も大量の植民地文化財を返還した9)。武器、コイン、宝飾品、織物、石造彫刻など288点が、9月20日にアムステルダムの世界博物館(Wereldmuseum)でインドネシアへ手渡された。大半をしめる280点以上のものは、1906年のバリ島南部へオランダの進攻でバドゥン王国とタバナン王国が攻略された時に略奪された戦利品である。

 バドゥン王国では敗北によって「ププタン(Puputan)」という集団自決が起き、そして武器、短剣(kriss)、槍を手にした女性や子供たちもオランダ軍に立ち向かい死んでいった。武器を捨てて投降するように何度も呼びかけられたが、まったく効き目はなかったという。タバナン王国では約1,000人のバリ人が殺害されたのに対してオランダ人は4人を失っただけだった。オランダ軍は皇太子とともに王を拘束し、王はその夜に自死した。手つかずに残された財宝、戦場に残された武器やさまざまな物品を、オランダ兵が戦利品として持ち去ったのである。

 4点の石造彫刻が返還された。うち1点はゾウの頭部と4本の腕をしたヒンズー教のガネーシャ神像で、植民地行政官が東ジャワで見つけ1843年にオランダへ輸送した。残り3点は、ヒンズー教と仏教の重複したシンガサリ寺院から持ち出された神像である。

返還されたガネーシャ神像
Nationaal Museum van Wereldculturen


 オランダの返還は、政府への勧告にしたがって国立博物館で所蔵する国のコレクションから旧植民地国へと返しているのだが、2024年には政府だけでなく、地方自治体も返還に着手した。ロッテルダム市が11月に地方レベルで最初に文化財をインドネシアに返した。返還されたのは68点、19世紀後半から20世紀にかけてオランダ軍侵攻によって奪取されたロンボク財宝やバドゥンのププタン・コレクションで、ロッテルダム民族博物館(Wereldmuseum Rotterdam)の所蔵だった。「ロッテルダム市議会はすでに植民地過去を謝罪していて、今やそれらの言葉を実行に移す時だ」と文化担当の副市長が述べた10)

 植民地時代の文化財ではない特殊な文化財も返還された。12月にライデンの民族博物館(Wereldmuseum Leiden)からメキシコのオアハカ地方のミシュテカ文化の頭骨が返還された。メキシコが返還を要求していた。頭骨は1960年代に購入されたもので、道徳的規範による植民地文化財返還の対象に入らないのだが、遺骸は特例としてメキシコにもどされた。頭骨と石材の時期は古いが、調査により接着剤が20世紀のものと判明し、接合は比較的最近だと考えられている11)

返還されたミシュテカ文化の頭骨
Wereldmuseum


 メキシコの頭骨以外にも遺骸が返還された。11月にアムステルダム大学医学センター(Amsterdam University Medical Center)のブロリック解剖学博物館(the Vrolik museum)が、インドネシアのモルッカ諸島南部タニンバル諸島から持ち出された15体の頭骨を返還した。形質人類学者ヨハネス・クレィウェグ・ズウェン(Johannes Kleiweg de Zwaan)が1912年に取得した。地元では盗まれた頭骨の話しが世代をこえて伝えられていた。死亡すると屍骸は岩場におかれた後に、頭骨が集団家屋の地面で保存される民族習慣だという12)

 博物館から頭骨が返還される一方で、オランダではいまだに頭骨が公然と売買されている。11月に植民地時代と思われる西アフリカ・ベナンのフォン人の頭骨がオークションで販売され、専門家たちの間で国際的批判が巻き起こった。先祖の祠堂から盗まれたと推定される頭骨が、アムステルダムのズウェン(De Zwaan)で800ユーロ(約130,000円)で売られた。オランダの文化財返還の専門家ヨス・ファンビュールデン(Jos van Beurden)は、オークション会社に法的責任を問えないが、しかし植民地時代に略奪されたと思われる人間の遺骸を売買するのは「道義的に考えて」決して受け入れられないと述べた13)

 ところでオランダの文化財返還は、植民地コレクション・コンソーシアム(Colonial Collections Consortium)という団体を中心とする出所調査にもとづいて実行されている。4月にコンソーシアムからスリナム由来の文化財目録がはじめて公刊され、原産国にも届けられた。国立の28施設に所蔵されている国のコレクション、およびスリナムと関連する可能性のある20ヶ所の地方博物館の所蔵品からスリナムの文化財がリストアップされた。詳細なリストではないが、オランダのどこの施設に文化財があるのか、どのようにして情報をえたらよいのか、どんな特徴なのかを伝え、返還に向けた初動段階のテキストとなっている14)。今後スリナムへの返還もはじまる可能性が考えられる。

 オランダの返還は、長年議論となってきたインドネシアとスリランカへの返還からはじまり、さらに対象地域が拡大されている。


 ドイツ

 大量のベニン青銅器を返還したドイツでは2024年も返還が続いた。

 まず1月にシュトゥットガルトのリンデン博物館(Linden-Museum)で、カメルーンへの返還を討議するドイツ博物館とカメルーン代表たちとの対話会議が開催された。2023年に公表された出所調査の報告書によると15)、ドイツの博物館にカメルーン由来の文化財が40,000点あり、そのうち最も多く所蔵しているのがリンデン博物館で8,000点以上、次に多いのはベルリンの民族博物館とライプツィヒのグラッシィ博物館でそれぞれ5,000点以上あるとされている。シュトゥットガルトの対話会議には、500点以上を収蔵するドイツの博物館11館の関係者、カメルーンからは違法輸出文化財返還省庁間委員会、カメルーン王室、そしてドイツ連邦および州政府関係者が参加した。返還の具体的手順や持続的協力について討議され、ドイツ側はリンデン博物館が主体となって対応することになった16)

 3月に8点の文化財がカメルーンのレバング・コミュニティ(the Lebang community)に戻された。ベルリンの民族博物館に展示されていた女神像ンゴンソ(Ngonnso')の返還に奮闘したシルヴィー・ンジョバティ(Sylvie Njobati)の設立したREGARTLESSというNGOが、オランダとドイツでオークションやネット市場で見つけ取り戻したのである。返還されたのは伝統的なバングワ(Bangwa)王国に関する王たちのトーテムや神聖な仮面で、文化的・精神的に重要な遺産とされている17)

 バングワの文化財として世界的に有名なのは、現在パリのダッパー財団に所蔵されている「バングワの女王」像である。この像はンジュインデム(Njuindem)あるいはレフェム(LEFEM)とも呼ばれる精神的像で、19世紀末にバングワ王フォンテム・アスンガンイ(Fontem Asunganyi)と親密になったドイツ人植民地代理人グスタフ・コンラウ(Gustav Conrau)が入手したとされている。当時カメルーン西部のグラスフィールズ地方においてドイツ拡大に対してバングワ人の首長たちが抵抗していて、コンラウはドイツ国旗を宮殿に掲揚するようにアスンガンイに要求していた。

 ンジュインデムはレフェムに属していた。レフェムとは、バングワ人にとって最も神聖で崇敬される精神的聖域であり、バングワ人の精神性と文化的アイデンティティの心臓部だった。限られた者しかアクセスできず、コンラウのような人物は接近できなかったはずだ。バングワ人が自発的にバングワの女王像や他のレフェムの精神的像を、コンラウやいかなる人物にも売ったり引き渡したりすることは決してなかっただろうとされている。

 アスンガンイは、レフェムから王としての精神的および現世的権力をえていたのであり、レフェムへの冒涜に加担したり、自身の権力や権威の源を手放すようなことはありえなかった。ドイツ遠征軍の指揮官たちはこの状況を認識したうえで、ドイツ侵略軍に対して反抗するアスガンイやバングワ人の戦意を高めるレフェムのすべての像を、略奪の標的にした理由だったと考えられている。コレクションの歴史から、個人の収集、博物館ネットワーク、そして植民地暴力、特にドイツの支配拡大と密接な関連性がしめされているのである18)

 コンラウの収集したバングワの文化財はベルリンに送られ、1899年に正式に国立民族学博物館に登録された。その後バングワの女王像は博物館から古美術市場に流出し、1966年にアメリカ人コレクターが購入、1990年にコレクターの娘がオークションで売却してダッパー財団が入手した。しかし資金難と観客数減少を理由に2017年にダッパー財団は閉館されてしまった19)。現在欧米の博物館に散り散りになってしまったバングワの文化財の返還を、アスンガンイのひ孫で、国際刑事裁判所弁護士を務めてルワンダ国際戦犯法廷などでも有名な国際法学者チーフ・チャールズ・タク(Chief Charles Taku)をはじめ、バングワの人たちが要求している20)

バングワの女王像
the Art Newspaper 2024/01/12)


 バングワの文化財は、ニーダーザクセン州のブラウンシュヴァイク市博物館にも所蔵されている。ブラウンシュヴァイク出身でカメルーンの植民地官だったクルト・シュトリュンペル(Kurt Strümpell)が、1901~08年に約700点の民族コレクションを博物館に寄贈した。そのなかに、植民地軍中尉として1900年に懲罰遠征を指揮してバングワ宮殿から入手した文化財がふくまれていた。彩色ガラス玉で装飾された儀式用こん棒2点があるのだが、こん棒は押収されたのではなく、フォンテム・アスンガンイ自身から贈られたのだと、シュトリュンペルは記述していた。

 出所調査でチーフ・チャールズ・タクともう一人のアスンガンイの子孫で王位継承権者にこん棒を見せると、2人は、アスンガンイが儀式用こん棒を贈ったことに疑問をしめし、王権や権威の象徴を王が自らわたすはずがない、バングワの女王像のようなとくに王権と精神的に重要なものは贈られるはずがないと指摘した。むしろドイツ植民地軍による宮殿攻略の際に持ち出された戦利品と推定した。博物館の学芸員は、原産コミュニティのメンバーを出所調査にふくめることは植民地史に新しい視点をえるために必須だと述べている。

ブラウンシュヴァイク市博物館の収蔵庫で儀式用こん棒を調べる
チーフ・チャールズ・タクと学芸員
RETOUR 2021/08/09)


 出所調査の学芸員は、アフリカの民族資料が単なる視覚的美術品でなく、原産コミュニティのさまざまな精神的価値を帯びていることを感じ取った。ドイツ植民地軍が過去に犯した罪と、影響をあたえたコミュニティの今日の文化的窮状を認識しなければならないし、和解へと結びつけられるだろう、植民地化された人たちと植民者の子孫が、もつれた歴史や植民地遺産に共通する問題に一体となって生産的に取り組むことができるだろうと、返還とその後の展開に期待をよせた21)

 5月にライプチヒのグラッシィ博物館(the Grassi Museum)からオーストラリア南部の先住民族ガーナ人(the Kaurna people)に4点の文化財が返還された。返還されたのは剣、こん棒、槍、網で、ガーナ人にとって重要なものと考えられている。ルーテル宣教協会(the Lutheran Mission Society)によって収集され1840年にドレスデンに送られた後、グラッシィ博物館で展示された。ドイツに送った手紙がドレスデンの宣教協会で発見されてから、返還へと進められた。もともとドイツ人宣教師に贈られたものとされる22)

 7月にブレーメン市の海外博物館(Übersee Museum)からサモア国立大学に戦闘カヌーの舳先(へさき)が返還された。1888年にサモア内戦で戦闘カヌーがドイツ軍によって破壊されて燃料となり、舳先をドイツ人海軍将校が戦利品として持ち帰った。その後1932年に海外博物館に寄贈された。海外博物館とサモア国立大学は4年間にわたる共同調査で民族資料の重要性を調べた23)

 前年2023年にベルリンの民族博物館からコロンビアの先住民族コギ人へ木製仮面が返還されたのに続いて、2024年10月にも仮面に関連する儀式用の聖なる文化財3点、つえ、頭飾り、かごが返還された。ドイツ人民族学者コンラッド・テオドル・プロイス(Konrad Theodor Preuss)が1915年に取得したもので、彼は1913~19年にコロンビアを調査旅行して700点以上の民族資料を収集した。とりあえず3点は貸与品としてコロンビアに送られ、コギ人とコロンビア人類学歴史研究所(ICANH、Instituto Colombiano de Antropología e Historia)でさらに詳しい調査が行なわれる24)

 11月にミュンスター大学考古学博物館が大理石製頭部像をギリシャに返還した。1989年にエッセンの個人コレクターが大学博物館に寄贈したもので、過去の所有者や出土地、持ち出した人物などは不明だった。学術調査の結果、頭部像の年代はAD150年以前のもので、セサロニキの墓像から削り取られたと推定された。確たる出所や履歴がまったく判明してないが、大学博物館は倫理的義務として返還することにした。頭部像はセサロニキの考古学博物館で公開される予定である。博物館館長アチム・リヒテンベルゲル(Achim Lichtenberger)教授は、「過去に文化財を略奪され返還を求めているギリシャのような国々を道義的支援したい」と述べた。

倫理的義務として自主的にギリシャへ
返還された大理石製頭部像と関係者たち
University of Münster 2024/11/23)


 1998年以来ナチス時代に略奪された美術品に焦点があてられているが、今や植民地状況の文化財の出所調査が進んでいる。19世紀の考古学の発達初期の時代に文化財売買を禁止する法律が原産国ですでに存在していたが、頻繁に無視された。高価なものをもとめて違法発掘によって文化財が破壊され、たびたび古代の文化財が美術市場へと流れた。ミュンスター大学考古学博物館はコレクションの出所調査を積極的に取り組み、疑わしい物件を返還すると表明している25)

 ドイツでも人間の遺骸返還に年々関心が高まっている。ドイツが植民地を統治したのは1884年から第1世界大戦終結までで、イギリスやフランス、オランダとくらべて時期的に短く、また地理的範囲も小規模だった。しかし残虐な統治は他の帝国主義にけっして引けを取らなかった。その1つの現象がドイツに集積された人間の遺骸である。大部分は処刑された人たちの屍体から取り出された頭骨や遺骨で、解体されて洗浄され、戦利品としてドイツに送られたのである26)

 前年に続いて遺骸も返還された。8月にドイツ北部シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州のリューベック博物館にある世界文化遺産コレクション世界文化(Kulturen der Welt)から、ペルーの先住民族に幼児の遺骸が返還された。年初にリューベック市議会で遺骸返還が多数決によって決議されてから、最初の返還となった。遺骸はペルーのリマ北部アンコンの考古学遺跡の墓地から持ち出されたもので、遺跡では19世紀末の鉄道建設中に多数の墓地が略奪された。1899年にベルリンの美術市場で博物館が遺骸を取得した。

 2022~24年の調査プロジェクトで植民地主義時代にリューベックにもたらされた遺骸が26体あることが判明し、概して不確かな由来だった。プロジェクトの目的には子孫の追跡、そして遺骸の返還をのぞむかどうか意思の確認もふくまれていた27)

 同じくリューベック博物館から、10月にチリの先住民族セルクナム(Selk'nam)へ男性の遺骸が返還された。1914年にプンタ・アレーナスにいたドイツ人移住者がリューベック民族博物館に男性頭骨を寄贈したのである。20世紀初頭パタゴニア地方でヨーロッパ植民者たちが牧草化を推し進め、南米大陸南端ティエラ・デル・フエゴに住むセルクナムは大規模に放逐、殺害された。プロの殺し屋による虐殺にくわえて、伝教所に強制移住させられた多数のセルクナムが、ヨーロッパからもちこまれた疫病で死亡した。また同時期に先住民族に対する学術的関心が高まり、形質人類学の分野で彼らの骨は引っ張りだこの資料となった。生き残った人たちの広範な抗議にもかかわらず、墓地があばかれ頭骨や遺骨が世界中の博物館に送られたのである。セルクナムは絶滅したとされたが、2023年にチリ政府は再確認した。

 リューベック博物館はセルクナムを代表する団体と返還について話し合い、先住民族側はチリ政府の仲介を避けて直接博物館から受け取ることを希望した。結局歩み寄ってリューベックで埋葬することになった。市役所での返還式典直後に、遺骨は現地の共同墓地に埋葬された28)

 12月にベルリンの民族学博物館と、ニーダーザクセン州オルデンブルクの自然と人間州立博物館(Landesmuseum Natur und Mensch)から、5体の遺骸がオーストラリアの先住民族に返還された。3体は1880年からベルリンにあった遺体で、他の2体はオルデンブルクで所蔵されていた。オーストラリア北東部トレス海峡諸島のウガー島コミュニティの人たちが遺骨を受け取った。オーストラリアはドイツから162体の遺骸を取り戻した29)

 ドイツでは2019年に、文化財返還を管掌する政府系組織のドイツ損失美術品財団(German Lost Art Foundation)のなかに、植民地文化財に関する部門が設置されてから多数の調査プロジェクトが進められている。2024年1月にはフランスとドイツが合同してアフリカ由来の出所調査もはじまった。両国の国立博物館に所蔵されているコレクションのうちアフリカ遺産を対象に、3年間で予算216万ユーロ(約3億4,100万円)を支出する計画である。サハラ以南のアフリカ、とくにフランスとドイツが植民地化したトーゴやカメルーンなどが考えられている30)

 ドイツ損失美術品財団の助成金で、1900年の義和団事件で中国から略奪されて現在ドイツの博物館にある文化財調査が2021年11月からはじまり、2025年9月まで続く予定である。調査に関連して2023年3月2日と3日にフンボルト・フォーラムでワークショップが開催された。また翌年の2024年2月22日と23日には、「義和団事件戦利品!博物館コレクション、義和団事件、略奪の実行(Boxerloot! Museum collections, the "boxer war", and practices of plunder)」と題する国際会議が、ミュンヘンの五大陸博物館(Museum Fünf Kontinente)で開催された31)

義和団事件戦利品 国際会議 2024年2月22日
Museum Fünf Kontinente 2024/02/22)


 ドイツ損失美術品財団の助成金による研究成果として、調査報告書(Working Paper Deutsches Zentrum Kulturgutverluste)が刊行されている32)。そのうち植民地文化財に関する英文で書かれた報告書をいくつか紹介しよう。

 ラルス・ミューラー『(ポスト)コロニアル的状況における文化財と人間の遺骸の返還:19世紀中葉から1970年代までの世界的な返還要求(Lars Müller, Returns of Cultural Artefacts and Human Remains in a (Post)colonial Context: Mapping Claims between the Mid-19th Century and the 1970s, 2021)』。近年旧植民地諸国から帝国主義旧宗主国に対して文化財返還の声が高まっているが、実は返還の要求は19世紀からあり、いくつかは実際に返還されて成功した例もあった。アフリカ、アジア、カリブ海をふくむアメリカ大陸、オーストラリアとニュージーランドを含むオセアニアの、各地域ごとに1970年代までの先行する返還事例をまとめた報告書である33)

 リッケ・グラム、ゾエ・ショーフ『植民地的状況から持ち出された人間の遺骸と文化財の返還に関するドイツ史:1970年から2021年までの成功例と未解決の要求(Rikke Gramand and Zoe Schoofs, Germany’s history of returning human remains and objects from colonial contexts: An overview of successful cases and unsettled claims between 1970 and 2021, 2022)』。対象の物件を人間の遺骸、人類化石、動物化石、文化財に分けて、1970年から最近までの間にドイツに提出された返還要求を各国別に歴史的に概述した報告書である。前記したミューラーの報告書の続編に相当する34)

 ゲサ・グリム、ラリッサ・フェルスター、クリストフ・リップ『ナミビア文化遺産を所蔵するドイツ語圏の博物館と大学:出所調査のための資料目録(Gesa Grimme and Larissa Förster, assisted by Christoph Rippe, Locating Namibian Cultural Heritage in Museums and Universities in German-Speaking Countries: A Finding Aid for Provenance Research, 2024)』。ドイツ語圏の39機関にナミビアの文化財約18,700点が所蔵されている。各国所蔵機関の歴史、コレクションの概略と特徴が記され、帝国主義国における植民地文化財コレクションの形成史が理解できる35)

 ヤン・ヒュースゲン『ドイツ植民地で宣教団体と修道会が収集した民族資料コレクション(Jan Hüsgen, Missionary Societies and Religious Orders in German Colonies and Their Contribution to Ethnographic Collections, 2025)』。ドイツ植民地だったトーゴ、カメルーン、ドイツ領南西アフリカ(ナミビア)、ドイツ領東アフリカ(タンザニア、ルワンダ、ブルンジ、モザンビーク)、オセアニア、山東省膠州湾租借地の地域ごとに、キリスト教団体の伝教活動と民族資料の収集を概述している。ドイツの博物館は、拡大する植民地で民族資料収集をキリスト教宣教師たちに依頼した。宣教師たちは宗主国における植民地文化財の蓄積に重要な役割をはたしたのであり、帝国主義と布教活動の関連性が強く認識されている36)

 2017年にフランスのマクロン大統領がアフリカ文化遺産の返還を公言してから、文化財返還に積極的に取り組んだのはフランスではなく、オランダとドイツだった。植民地文化財の出所調査および歴史的背景の研究も、オランダとドイツで最も先進的に展開している。

 さてエジプトの著名な考古学者ザヒ・ハワス(Zahi Hawass)が、9月にネフェルティティ胸像の返還をもとめる署名運動をはじめた37)。ネフェルティティ胸像は1912年にナイル川流域のアマルナ遺跡から出土し、現在ベルリンの博物館で展示されて、多くの観光客を魅了している。胸像を発掘したのは考古学者ルートヴィヒ・ボルヒャルト(Ludwig Borchardt)の率いるドイツ人調査隊で、調査後にエジプト政府当局との交渉により合法的にドイツへ持ち出されたのだと、ドイツ側は強く主張している38)

 当時エジプトを統治していたのはムハンマド・アリー朝だったが、名目上オスマン帝国の主権の元で実質的にはイギリスの植民地化が進んでいた。発掘調査の制度もオスマン帝国の制度が適用され、発掘者とエジプト当局との間で出土品を分けあう分与制度(Procés-Verbal du partage、verbal proceedings of the division)があった。アマルナ遺跡の出土品についても、発掘終了後にフランス人エジプト学者グスタフ・ルフェーヴル(Gustave Lefebvre)がカイロからやって来て、検分してドイツ側に分与されたという1913年1月20日付文書の記録がある。

 分与制度によると例外的に重要な出土品はエジプト国外に持ち出せない規則となっていたのだが、検分の際にルフェーヴルはネフェルティティ胸像の重要性を見落としたのだ。ボルヒャルトが巧妙に木箱にしまったまま、白黒写真を見せただけだったともいわれている。いずれにせよ、当時地元エジプト人が発掘調査や遺跡保存にほとんど関与できず、またエジプト人自身が自国の歴史文化、エジプト学を学び研究することすらできなかった。エジプト文化財の調査研究や保護管理はもっぱらフランス人が独占していた。地元の人たちが排除された植民地的状況でネフェルティティ胸像がドイツへ持ち出されたのである。

 ネフェルティティ胸像が1923年にドイツで一般公開されてから、はじめてその存在を知ったエジプト当局は、1925年から何度も返還要求を出している39)

 植民地文化財に関してドイツは積極的に対応し、他国に先駆けて文化財返還や調査研究を進めている。とはいえネフェルティティ胸像など、長年未解決となっている取り組むべき課題がまだまだ残されているといえるだろう。


 ベルギー

 ベルギーも、ドイツやオランダとほぼ同時に文化財返還に着手した。2022年に、おもに旧植民地コンゴの文化財を所蔵するアフリカ博物館で、約84,000点の目録が作成されてコンゴに手渡された。同年6月にコンゴを初訪問したフィリップ国王が、南西部のスク人(the Suku people)が儀式で使用するカクング仮面(the Kakungu)を、国立博物館でコンゴ大統領に返した。しかし所有権移転をともなう完全な返還ではなく、無期限貸与だった。議会では植民地由来の文化財返還の法律も可決され、制定された。

 2024年4月に人間の遺骸返還に関する法案がベルギー議会に提出されたのだが、議決までにはいたらなかった40)。その他2024年に文化財返還の具体的な動きはなかった。

 アフリカ博物館の出所調査にもとづき、植民地コレクション形成史に関する本、サラ・ヴァン・ブールデン、ディディエル・ゴンドラ、アニエス・ラカイユ編『コレクションをリメイクする:起源、軌跡、再接続』(Sarah Van Beurden, Didier Gondola and Agnès Lacaille (eds.), (Re)Making Collections - La Fabrique des collections: Origins, Trajectories & Reconnections/ Origines, trajectoires et reconnexions, Royal Museum for Central Africa, 2023)が出版され、関連する展覧会も開催された41)

 たとえばコンゴ中央南部カビンダのソンイェ人(the Songye people)の首長ヤカウンブ・カマンダ・ルンプング(Yakaumbu Kamanda Lumpungu)が所有していたネックレスの詳細な由来調査などが紹介された。ルンプングはコンゴ独立の主唱者であり、1936年に植民官によって絞首刑にされた。


 フランス

 マクロン大統領が2017年にアフリカ遺産の返還を宣言し、4年後の2021年にベナンへ26点の文化財返還が実現した。しかしその後フランスからアフリカへ文化財返還に大きな進展は見られない。2023年に返還に関する3本の法案が文化省から提案された。すなわちナチス占領時代にユダヤ人から奪った美術品の返還、博物館に収蔵されている人間の遺骸の返還、そして植民地文化財の返還に関する法案である。そのうちナチス略奪美術品に関しては2023年7月に、そして人間の遺骸に関しては同年12月に法律が成立した。植民地文化財返還の法案は2025年8月に文化省で作成されて、ようやく議会に上程される準備が整った。

 すでにドイツやオランダから大量の植民地文化財の返還が実行されているのと比べると、フランスの動きは遅いといわざるをえない42)。フランスでも極右政党が勢力を伸ばし、少数与党による不安定な政権運営を強いられるという政情混乱が、文化財返還の施策を遅らせている原因の1つであろう。

 フランスの内政事情がどうあれ、旧植民地側からの文化財返還の要求は途絶えることなく続いている。

 1月にカンボジアのフン・マネット首相がフランスを訪問した際に、マクロン大統領はクメール文化財の返還と国立博物館への技術支援を約束した43)。フランスは2016年にギメ東洋美術館にあった7世紀のヒンズー教神像の頭部をカンボジアに返還した。神像頭部は、フランス人植民官で考古学者エティエンヌ・エーモニエ(Étienne Aymonier)が19世紀後半に切断してフランスに送り、エミール・ギメが1889年パリ万国博覧会のために購入した。カンボジアにもどされた頭部は国立博物館所蔵の胴部と約130年ぶりにふたたび接合された。所有権移転はともなわず、5年間の貸与だった44)

2016年にギメ東洋美術館からカンボジアへ頭部が返還されて
接合されたヒンズー教神像
BBC 2016/01/21)


 マクロン大統領とアルジェリアのアブデルマジド・テブン大統領によって設置された植民地的苦難を和解する歴史家委員会(the Algeria-France Joint Commission on History and Memory)が、2月に文書・遺骸・文化財交換の提案に同意した45)。さらに5月に開催された委員会で、アルジェリア側は返還をもとめて、現在フランスのさまざまな機関で所蔵している19世紀以来の歴史的文化財やシンボルのリストを公式に提出した。速やかに原産国に文化財がもどるようにと、リストをマクロン大統領へ届けることにフランス側は同意した46)

 3月にマダガスカルのサカラヴァ(Sakalava)王の2人の曾孫娘が、19世紀末に植民地軍によって斬首された頭骨の返還を急ぐようにフランス大使に公式に申し入れた。サカラヴァ人は島の西部および北西部に暮らす民族集団で、フランスの征服によって遺骸が略奪された。パリの人類学博物館にマダガスカルから持ち出された数百体の人間の遺骸があり、王の子孫は3体の頭骨を要求した。3体のうちの1体は、反乱鎮圧のため前王都のアンビキーで1897年に斬首されたトエラ王(King Toera)の頭骨である。DNA鑑定ではトエラ王の頭骨だと十分な検証は不可能だった47)

 フランスでは人間の遺骸返還に関する法律が2023年12月に制定された。マダガスカルの要求に対して、翌年2025年4月に学術委員会が1年以内に頭骨を返還するように博物館に命じ、8月に受領式典が予定された。マダガスカルの事例は新しい法律の下で最初の遺骸返還となる。マダガスカルは2022年から返還を要求していた48)

 11月にフランスとコートジボワールは、喋る太鼓(Djidji Ayôkwé、talking drum)とよばれる聖なる文化財の返還に同意した。喋る太鼓とは、エブリエ人(the Ebrié people)が使用した長さ3mを超える長大な木製太鼓で、集会の招集、植民地軍による強制労働徴集への警戒などのメッセージを伝えた。地元民にとって抵抗のシンボルだったので、1916年に植民地軍が奪い、植民地当局によって長年風雨にさらされ続けて劣化した。

 数年前から両国の専門家たちによる調査・修復が進められていた。同時に両国間の文化協力も強化されることになり、対話と協調を促すユネスコは歓迎の意を表した49)。太鼓はケ・ブランリ美術館の所蔵なのだが、しかしまだ国のコレクションから植民地文化財返還に関する法律が成立していないので、個別にコートジボワールへ返還する法律が2025年7月7日に国民議会で満場一致で採決された。1年以内にコートジボワールへもどす予定である50)

返還に先立ち2022年にケ・ブランリ美術館で催行された喋る太鼓の脱聖別化式
専門家による修復作業を行うための宗教的・文化的手続き
TV5MONDE Info 2022/11/08)


 11月にフランス外相がエチオピアを訪問した際に、アジスアベバの国立博物館で2点の石器をエチオピアの観光相に返した。石器は100~200万年前のもので、アジスアベバ南側のメルカ・クントゥレ(Melka Kunture)遺跡から出土した約3,500点の一部である。フランス人研究者の指導の下で遺跡が発掘され、フランス大使館からエチオピアの遺産当局に石器が届けられるという。メルカ・クントゥレ遺跡は、人類進化を理解するのに重要な遺跡として2024年7月に世界遺産に登録された。

 石器は「手渡すのであって、返還ではない。というのはこれらの物件は一度たりともフランスの公共コレクションでなかったからだ」と、フランス外相は説明した。加えて外相はエチオピア遺産に関する700万ユーロの新しいプロジェクトを公表し、両国間の文化協力を強調した51)

 まだフランスでは、植民地文化財返還に関する法律や制度が整備されていないので、オランダやドイツにくらべて、文化財返還は遅々たる歩みと感じざるをえない。2025年8月に植民地文化財に関する法案が完成して、議会に上程されることになった。返還の法律が成立すると、次に出所調査の膨大な作業が続くと予測されている52)。法律にもとづいて実際に返還が実現するのは、まだまだ先になりそうだ。

 文化財返還に関する話題の1つとして、2021年のフランスからベナンへの文化財返還をテーマにしたドキュメンタリー映画『ダホメ』が、2月にベルリン映画祭で最優秀の金熊賞を受賞したことがあげられる。監督は41歳のセネガル系フランス人マティ・ディオップ(Mati Diop)である53)。当然のことながら彼女は、フランスはもっと略奪したアフリカの美術品を返すべきだと主張している54)。残念ながら日本では『ダホメ』は劇場で一般公開されず、東京国際映画祭で短期間上映されてエシカル・フィルム賞を受賞した55)


 イギリス

 イギリスはかつて世界中で広大な面積にわたる植民地を経営し、それゆえ植民地文化財についても他のどこの国よりも大量に所蔵していると見られている。しかし植民地時代の文化財の返還に関しては、政府および大英博物館はつねに消極的な姿勢である。フランスと同様に、国の所有するコレクションを処分することが法律で禁じられている。とはいえ旧植民地から高まる返還要求を少しでもかわそうとして、返還にみせかけた貸与という苦肉の策で、国立の博物館から少量の文化財がアフリカへ移されている。

 一方、国のコレクションに関係しない地方や大学の博物館などからは、絶えることなく植民地文化財の返還が続いた。

 さて毎年恒例となっているパルテノン大理石をめぐるギリシャとの返還交渉は、2024年も目立った進展はなかった。交渉に進展はなかったものの、話題に事欠かなかった。

 2月にパルテノン大理石の前でイギリスのファッション・ブランド、アーデム(ERDEM)のファッションショーが開催されたのだが、ギリシャ文化相リナ・メンドニ(Lina Mendoni)が「ペイディアスの最高傑作を微塵も尊重してない」と怒りを露わにして批判した。実は、ギリシャは2021年にアクロポリスでのファッションショーをディオールに許可し、ディオールは約70万ユーロと遺跡閉鎖による損失20万ユーロを支払っていた。メンドニは、ディオールのファッションは少なくとも古代ギリシャを連想させるが、アーデムのファッションショーはギリシャの文化財に一切関連せず、パルテノン彫刻は単なる飾りだったと語った56)

 6月にパリで開かれたユネスコの会議で、トルコの報道官が、大理石を持ち出したスコットランドの外交官エルギン卿にオスマン帝国が許可をあたえたことを否定した。つまり正当化する文書が存在しないと述べたのである。エルギンは持ち出し許可のフィルマーン(firman、勅状)を得たと主張し、当時コンスタンチノープルのイギリス大使館が文書をイタリア語に訳した。現在許可の文書は大英博物館が所持し、エルギンから購入した大理石の所有権を表明するのに利用している。しかしながらトルコ政府のオスマン帝国文書にフィルマーンの公式副本がまったくなく、今でも文書の法的位置をめぐって論争となっている。ギリシャは、大理石は盗まれたのであり、トルコ(オスマン帝国)に手放す権利はまったくないと主張している57)

 12月のギリシャ首相の訪英にあわせて、パルテノン大理石の返還交渉が決着に近いと報道されたが58)、結局その後何のニュースもなかった。大英博物館では、パルテノン大理石を展示するデュヴィーン・ギャラリーをふくむ大改修がひかえている。改修中に大理石をどこに移動させるのか?

 パルテノン大理石とはべつに、2024年にイギリスから返還された個々の事例を見てみよう。

 1月にヴィクトリア・アンド・アルバート博物館と大英博物館が、19世紀にガーナのアシャンティ王国から奪った財宝を返すと表明した。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館から金製煙管、金製鳥形装飾品、金製円形首飾など17点、大英博物館から儀式用帽子、金製円形首飾、金製石突装飾品、儀式用剣など15点が返され、多くは王位の象徴(regalia)とされるもので、イギリスとアシャンティ王国との征服戦争で戦利品としてイギリスにもたらされた。

 大英博物館および国立の博物館のコレクションを処分したり、売却したりする(deaccession)のは法律で禁じられているため、所有権移転をともなう返還ではない。3年間の長期貸与で、さらに3年間の延長も可能という取り決めが、ガーナ政府とではなく、現在のアシャンティ王であるオトゥムフォ・オセイ・トゥトゥ2世(Otumfo Osei Tutu II)と交わされた。財宝はアシャンティ地方の首都クマシのマンハイア宮殿博物館で、在位25周年を祝福して展示された。財宝は単なるモノではなく、かつての王たちの精霊と信じられている59)

大英博物館からアシャンティ王国に返還された儀式用装飾帽子
the Art Newspaper 2024/01/25)


 イギリスの博物館に同調するかのように、2月にアメリカのカルフォルニア大学ファウラー美術館がアシャンティ王国の文化財7点を返還した。1963年に設立された博物館は、1965年にアメリカ出身の製薬実業家でコレクターだったヘンリー・ウェルカム(Sir Henry Wellcome)の財団から30,000点のコレクション寄贈を受けいれ、博物館の中核コレクションの一部となった。そのコレクションに、19世紀の戦争によってアシャンティ王国から持ち出された財宝がふくまれていたのである。返還されたのは象の尻尾でできた「はたき」、装飾された椅子、金製腕飾などで、博物館は返還を要求されたわけではなく、自主的に返還した。ただしアシャンティ王室から3Dスキャンの許可をうけ、ガーナ人工芸家に複製を委託して展示は続けるとしている60)

 アシャンティ現国王は2月にファウラー美術館から、4月にイギリスの博物館から財宝を受け取り、在位25周年の記念とともに5月に宮殿博物館で公開した61)。ファウラー美術館からの物件は所有権が移転され、一方イギリスの博物館の物件は長期貸与という、同一の場所にならんで展示されていながら、ちぐはぐな状況となっている。

 2023年9月にエチオピア正教会に聖なる板タボツ(tabot)が返還された。タボツは契約の箱(十戒の刻まれた石板を収めた箱)を意味し、聖職者以外見ることができない。1868年にエチオピアのマグダラの戦いでイギリス軍が戦利品として持ち去った。大英博物館にもタボツが11点ある。返還されたのは個人的に所有されネットで販売されたのを、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの講師が発見し、自分で購入して教会に返した。同年9月24日にロンドンの聖マリア・エチオピア正教会(the Ethiopian Orthodox Church of St Mary of Debre Tsion)で再聖別式が行なわれた62)

エチオピア正教会で催行されたタボツの再聖別式
Ethiopian Digest 2023/10/20)


 2024年2月にウェストミンスター寺院が祭壇に封印されたタボツの返還を決めた。1868年のマグダラの戦いで陸軍砲兵隊の大尉が取得し、帰国後に寺院に寄贈した。ウェストミンスター寺院は王室の私有財産で国王の管轄下にある。首席司祭と司教座聖堂参事会が原則として返還が適切と決め、最良の方法を思案中だと広報担当者が述べた。ウェストミンスター寺院のタボツの返還は、大英博物館にとって返還に向けた圧力となるだろうと報じられた63)

 3月にエディンバラのスコットランド国立博物館でタボツの存在が確認された。エチオピア正教会の関係者が鑑定し、そして聖物の保管方法や人目にふれさせない方法を助言した。タボツは、正教会の司祭以外近づくのが制限された特別な施錠付戸棚に移され、博物館の記録から写真も外された。このタボツは1936年に王立博物館に寄贈され、公開展示されたことがなかった。今のところエチオピア政府あるいはエチオピア正教会からまだ返還要求がまったくないが、そのような要求があれば、2021年に導入された手順にしたがうと国立博物館は認めた64)

 なお2001年にエディンバラのスコットランド聖公会で別なタボツが見つかり、数ヶ月後にエチオピアに返還された。このタボツは、1867~68年のイギリスのアビシニア遠征に参加したウィリアム・アーバスノット少将(Major-General William Arbuthnot)が教会に寄贈したものである。その後もアーバスノットがマグダラの戦いで入手した遺品が、2021年にオークションで販売されそうになったが、エチオピア大使館の抗議でオークションは中止となり、個人が買い取って大使館に返還された65)

 2024年2月にも、マグダラの戦いで持ち去られたエチオピアの盾がオークションに出品されそうになったが、エチオピア政府が販売の中止と戦利品の返還を公式に要求して、オークションは中止となった。アンダーソン・アンド・ガーランド(Anderson & Garland)というオークション会社が企画し、盾中央の金属製円形装飾に「Magdala 13th April 1868」と刻まれている以外に、出所由来に関する説明はほとんどなく、出品者の名前も公表されなかった。盾は、アメリカ・オハイオ州のトレド美術館で開催された展覧会で展示された後、11月にエチオピアへ返還され国立博物館で展示された66)

 4月にグラスゴー大学ハンタリアン博物館(the Hunterian Museum)がジャマイカのウェスト・インディーズ大学へ、絶滅したとされる爬虫類ジャマイカ・ジャイアント・ギャリウォスプ(Jamaican Giant Galliwasp)の標本を返還した。この動物はジャマイカだけに生存していた固有種で、サトウキビ・プランテーションの導入で生息環境が奪われ、またネズミなどの捕食動物の侵入により姿を消したと考えられている。標本は1850年代に採取され、1888年にグラスゴー大学のコレクションにふくまれた。標本の返還は、カリブ海の自然史標本としては最初の返還事例となり、奴隷制度や植民地支配などの不正行為によって受けた甚大な被害に対する修復を目的とする回復正義(reparatory justice)の一部だとしている67)

返還された爬虫類の標本を手にするグラスゴー大学の関係者
University of Glasgow 2024/04/23)


 4月にケンブリッジ大学トリニティ・カレッジが、ジェームス・クックとジョゼフ・バンクスが1770年にオーストラリアの先住民族から奪った槍4本を、アボリジニのコミュニティに返還した。オーストラリア大陸にはじめて足を踏み入れたクック船長は、カメィ(Kamay、ボタニー・ベイ)で、先住民族グウェーガル人(the Gweagal people)のキャンプから槍を40本持ち出したと記録している。クックの航海を支援したジョン・モンタギュー(Lord Sandwich of the British Admiralty、第4代サンドウィッチ伯爵)が、そのうちの4本をトリニティに寄贈し、展示のため1914年からケンブリッジ大学考古学人類学博物館に貸与された。槍は、地元で新しいビジター・センターが建てられて展示されるという68)

 イギリスとアイルランドの博物館にあるオーストラリア先住民族の文化財と遺骸の調査を、大英博物館が2011年から2023年にかけて行なった。調査の結果、70以上の博物館に39,000点近くあることが判明し、調査成果は学術論文や書籍、展覧会で公表された69)

 2021年から、ケンブリッジ大学考古学人類学博物館からウガンダ博物館に文化財をもどす「ウガンダ博物館の再配置(Repositioning the Uganda Museum)」というプロジェクトが開始された。ミシガン大学教授デレク・ピーターソン(Derek Peterson)が主宰し、アメリカのアンドリュー・W・メロン財団が10万ドルを助成した。2022年11月にウガンダ博物館関係者がケンブリッジ大学博物館を訪問し、1890年代および1900年代初頭に持ち出されたものから返還を希望する物件を選んで相談した。そして2024年6月に、土器、石器、頭飾り、太鼓、槍、盾、楽器など39点の文化財がウガンダに移送された。2026年に展覧会が開かれる予定だ70)

 返還はウガンダ博物館へ3年間の長期貸与である。貸与の更新は可能でいずれ所有権の移転にもつながるだろうと大学博物館は述べていた。ピーターソン教授は「博物館の物件の売却(deaccessioning)に関するイギリスの法律を通過するのはとても困難で、最も早くかつストレートにウガンダにわたせるのが長期貸与だ」と発言した71)。当然のことながら、所有権移転をともなわない貸与という返還にアフリカ側から疑問の声があがった72)

ケンブリッジ大学考古学人類学博物館からウガンダにもどされた文化財
AP 2024/06/18)


 ケンブリッジ大学では、15ヶ月をついやして大学博物館などで所蔵するアフリカ由来の文化財調査が行なわれ、12月に調査成果が公刊された73)。帝国主義および奴隷制と、博物館との問題に取り組む一連の事業(Exploring the legacies of empire and enslavement)の一つとして調査された。調査対象となったのはケンブリッジ大学の8館の博物館と植物園、大学図書館、その他の学部・機関である。

 コレクションはA~Dの4つのカテゴリーに分類された。カテゴリーAはアフリカの人たちが制作したもの、すなわちアフリカの文化財である。大学図書館にあるエジプト出土の写本193,000点、考古学人類学博物館にある110,000点の考古学資料と27,300点の人類学資料、フィッツウィリアム博物館にあるエジプトとスーダンの17,400点の古代文化財をふくめ、大学全体で約350,000点と見積もられた。大部分はイギリスの植民地化によってえられたもので、ほとんど展示されていない。

 カテゴリーBは自然世界の標本で、動物学博物館に100,000点の標本、セジウィック地球科学博物館に41,500点の岩石・鉱物・化石標本、植物園に約1,095種類の特産植物がある。カテゴリーCはアフリカやアフリカの人たちを描いた物質資料、アーカイブである。大学図書館にコモンウェルス王立学会(RCS、Royal Commonwealth Society)の資料があり、300,000点の印刷物や125,000点以上の写真、24本の映像資料などがある。カテゴリーDはアフリカの材質で作られた金や象牙製の工芸品、美術品などである。

 A~Dのカテゴリー以外に、人間の遺骸についても報告された。1945年に設立されたダックワース形質人類学研究所(the Duckworth Laboratory of Physical Anthropology)に、大学で所蔵されていた人間の遺骸標本が集約された。現在研究所には約18,000体の遺骸がある。元々考古学人類学博物館にあった考古学コレクションだったもので、おもにイギリスの遺跡から出土した。そのうちエジプト出土の遺骸は4,800体、スーダン出土は1,200体と見積もられ、さらにアフリカの他の場所から由来した遺骸が約750体ある。

 コレクションの概要報告後に、ケンブリッジ大学による文化財返還の取り組みが記述された。1962年に考古学人類学博物館からウガンダにブガンダ王国の神像や聖なる文化財を移送した。2021年にジーザス・カレッジがベニン青銅器をナイジェリアに返還した。そして現在進行中の返還として、考古学人類学博物館からナイジェリアにベニン青銅器の返還、考古学人類学博物館とウガンダ博物館によって進められている「ウガンダ博物館の再配置」プロジェクトがある。

 報告書の最終章で将来に向けて、さまざまな観点から数多くの勧告が列挙された。多くのアフリカの資料が歴史的に利用不可能となっているので、可能な限り大学はアフリカの研究者や原産コミュニティと共同作業を推し進め、アフリカの人たちが直接コレクションに関与できる機会にすべきだと助言している。

 6月にエクスター市の王立アルバート記念博物館(the Royal Albert Memorial Museum)が、カナダの先住民族シクシカ・ネイション(Siksika Nation)に儀式用の頭飾りを返還した。頭飾りはブラックフット族の聖なる女性が伝統的に着用するもので、1920年にノースウェスト準州副総督が博物館に引き渡した。正確な取得手段は記録されていないが、植民地同化政策によって獲得したのだろうと博物館は考えている。王立アルバート記念博物館は2022年5月にも、ブラックフット族のクロウフット(Crowfoot)族首長の正装その他をシクシカ・ネイションに返還している74)

 9月にホーニマン博物館庭園(Horniman Museum and Gardens)がオーストラリア北部の先住民族ワルムング(the Warumungu Community)に、精神的に重要とされる石斧、ブーメラン、ナイフ、鞘など10点を返還した。先住民族のために2023年にアボリジニ・トレス海峡諸島民オーストラリア研究所(AIATSIS、The Australian Institute of Aboriginal and Torres Strait Islander Studies)が公式に返還を要求していた。なお7月に、アメリカのカルフォルニア大学ファウラー美術館がワルムングに20点を返還している75)

 11月にオックスフォード大学ピット・リバー博物館がボルネオ島サラワクのケニャー・バデング人(the Kenyah Badeng people)に、竹製日笠を返還した。日笠は人型のデザインが施され、母親と子供たちに物理的、精神的保護をもたらすとされ、先住民族にとって重要なものである。現在マレーシアに属するサラワクは、1841年から1946年までイギリス人家族のブルック家によって統治された。抵抗する先住民族に対する遠征戦争が常態化し、女性や子供たちの虐殺、ロングハウス(共同住宅)の焼き討ち、略奪も頻繫におきた。日笠は1895~96年の遠征で略奪されたもので、ピット・リバー博物館は1923年に取得したのだが、一度も展示しなかった。遺骸の返還を別にして、ピット・リバー博物館にとって今回の返還は記念すべき最初の文化財の返還となった。日笠はボルネオ文化博物館で展示される予定である76)

サラワクの先住民族に返還された日笠
BBC 2024/11/04)


 ところでピット・リバー博物館はケニアとタンザニアのマサイ人たちと、「マサイの生きてる文化プロジェクト(the Maasai Living Cultures Project)」という事業を2017年から開始した。このプロジェクトは、父から息子に代々伝わるネックレスやブレスレットなど世襲の大切な文化財5点がピット・リバー博物館で見つかり、文化財への対応を思案するなかから企画された。2023年には館長らが現地を訪問して教育プログラムや伝統儀式に参加し、そして伝統的、宗教的指導者の助言をうけて聖なる文化財を失ったマサイの家族に98頭の畜牛を寄贈した77)

 その後聖なる文化財を失った5家族の代表が2024年9月にピット・リバー博物館を訪問し、癒しの儀式を行なってから、代表たちは、文化財の返還をもとめるのではなく、そのまま博物館が所蔵し続けることに決めた。世襲の物件は決して譲ったり売却されない。持ち主が殺害されたり、あるいは戦場で身体から持ち去られたものに違いない。聖なるものは戦士と考えられ、マサイの伝統によると戦士が死亡すると聖なるものは家にもどされず、戦場で埋められる。したがって代表たちは、文化財は博物館で保存されるのが最良と判断したのである78)

マサイの聖なる文化財の持ち主の家族を訪ね、
持ち主の死亡と
遺品がイギリスの博物館にあることを伝えるドキュメンタリー
InsightShare 2023/11/21)


 2024年にイギリスから返還された文化財は、おもにアフリカ原産のものだった。一方文化財の返還要求は、2024年も世界中からイギリスへと発せられた。

 1月に、19世紀にイギリスに占領され植民地となった地中海に位置するマルタから、イギリス統治時代に持ち出された財宝の返還が要求された79)。おなじく1月に南アフリカのコサ人(the Xhosa nation)の王女がダブリンを訪れ、アイルランド国立装飾芸術・歴史博物館(the National Museum of Ireland at Collins Barracks)に収蔵されている先祖のチーフ・マコマ(Chief Maqoma)の戦士の杖の返還を要求した。マコマは19世紀にイギリス統治に対抗して戦ったコサ人指導者で、捕らえられて1873年にロベン島で死亡した80)

 2月にイースター島モアイ像の返還を要求するコメントが、大英博物館の利用するSNS(Instagram、YouTube、Facebook)のコメント欄に満ちあふれ、博物館は一時コメント欄を閉鎖せざるをえなくなった。チリのインフルエンサーが返還をもとめる投降を呼びかけ、大英博物館のページが炎上したのである81)

 2023年にオランダからスリランカへ6点の文化財が返還された。スリランカはイギリス政府にも同様な返還要求を行なったのだが、多数の文化財は国の所有ではなく個人所有となっているので、返還を不可能にする法的障壁となっている。スリランカは1505年から1948年まで、ポルトガル、オランダ、イギリスの植民地だった。イギリス植民地時代に、王冠や王座など王室の文化財、儀式用品、仏像、経典、寺院装飾など最も広範囲に文化財が持ち出された。工芸品や美術作品も、多くは個人コレクションや私設博物館に収蔵されている82)

 インドネシアの文化相が国会審議で、19世紀に持ち出された文化財の返還をイギリスにもとめているが、最も大量にコレクションを保持しているのにイギリスは返す意向をまったくしめさないと非難した。1812年にトーマス・スタンフォード・ラッフルズ(Thomas Stamford Raffles)の率いるイギリス軍がジョグジャカルタ王宮を襲撃し、歴史的写本をふくむ貴重な文化財を押収した。彼らは財宝を運ぶために4隻の船を用意したが、2隻が沈んでしまった。残った物件は今大英博物館と大英図書館にある。数百点もの歴史的写本がいまだに返還されていない。オランダとイギリスだけでなく、インドネシアに影響をあたえたフランスと日本にも返還をもとめていると文化相は付け加えた83)

 人間の遺骸返還は、つねに文化財返還と並列して論じられる。1890年代にケニヤとウガンダをむすぶウガンダ鉄道建設に抵抗して殺害されたケニヤの先住民族指導者の遺骸を、子孫たちが探している。ケニヤのカレンジン民族集団(the Kalenjin tribes)のサブグループであるナンダイ(the Nandi)の最高指導者コイタレル・アラプ・サモエイ(Koitalel Arap Samoei)は鉄道建設に激しく抵抗し、鉄道ラインにそった植民部隊に奇襲攻撃をはじめた。イギリス軍情報将校が1905年10月にコイタレルを停戦会談に招いた後、彼を殺害した。ナンダイたちのオーラル・ヒストリーによるとコイタレルは斬首され、いくつかの所持品とともに切断された頭部はイギリスへ運ばれたと長老たちは考えている。コイタレル殺害後に虐殺がおき、ナンダイ人は居留地へと追いやられた。コイタレルの一族も悲惨な境遇におかれた。

 殺害から1世紀後の2005年に、イギリス軍将校の奪ったコイタレルの木製の杖3本がイギリスの将校の家で見つかり、寛大にも将校の息子で引退した銀行家が返したのである。木製の杖は単なる物体ではなく、権力や威信の象徴(レガリア)であり、代々世襲されていた。2006年に返還された木製の杖は現地の博物館に収蔵・展示され、地元の人たちにとって将来への希望となっている。そして奪われた頭骨や盾、儀式用正装、伝統的かぶり物などもイギリスで見つかるかもしれないと、ほのかな期待もうまれた。

コイタレルの聖なる杖をしめすナンダイ人歴史家
Al Jazeera 2024/06/23)


 残念ながらピット・リバー博物館、大英博物館、自然史博物館、王立戦争博物館は頭骨の所蔵を否定した。あるいは個人コレクションにふくまれているのかもしれない。コイタレルの頭骨がもどれば、失われたかつての栄光や権威をふたたびとりもどせると、原産地では夢をいだいている84)

 2024年にイギリスではオークションで頭骨売買が頻発し、問題となった。4月にドーセットのオークション会社がエジプトの頭骨18体を販売しようとしたが、オークション前に出品を取り下げた。頭骨はピット・リバー2次コレクションに由来し、1体は古代エジプトの第18王朝の女性頭骨、別の1体は第18王朝の男性頭骨と説明された85)

 10月にはオックスフォードシャーのオークション会社が頭骨、縮んだ頭部、水牛の角のある頭骨を販売しようとした。頭骨は西アフリカ、ボルネオ、オセアニアの先住民族のもので、縮んだ頭部は南米エクアドルとペルーのシュワール人(the Shuar people)のツァンツァ(tsantsa)、水牛の角のある頭骨はインドとミャンマーのナガ人(the Naga people)の遺骸だった。

 世界中の先住民族たちと交流のあるオックスフォード大学ピット・リバー博物館館長が驚いて各地に連絡し、ナガ人やシュワール人がオークション会社に抗議して、オークション会社は出品を取り下げた86)。おりしもピット・リバー博物館では、遺骸や文化財の返還をめぐってナガ人と話し合いが進行中で、2025年6月にナガ人の代表が博物館を訪れ、返還が開始されることになった87)

 イギリスでは人間の遺骸売買は違法ではない。しかし遺骸の売買、交換、展示は、現在の倫理的観点からすると許されない行為である。11月にイギリス下院議会で労働党のベル・リベイロ=アッディ(Bell Ribeiro-Addy)が、人間の遺骸問題を取り上げた。彼女は、アフリカへ文化財返還を主張するアフリカ賠償超党派グループ(APPG Afrikan Reparations、the all-party parliamentary group on Afrikan reparations)の議長である。医学研究・教育のために人骨が売買される一方で、墓泥棒によって掘り出された遺骸がネットの闇市場で多数流通しているのが現状なので、一律的な法律による売買禁止は困難なようである88)。いずれにせよ人間の遺骸売買に対して、何らかの対策がイギリスで協議されるだろう。

 イギリス政府および大英博物館は文化財返還に慎重な姿勢をくずさないが、博物館の脱植民地化の流れは停滞することなく進化している。ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(the Royal Academy of Arts)で「もつれた過去、1768-今:芸術、植民地主義、変化(Entangled Pasts, 1768-Now: Art, Colonialism and Change)」という展覧会が開催され、イギリス芸術と奴隷制との関係が、歴史的叙述および過去と現在の美術作品によって表現された。256年の歴史をほこるロイヤル・アカデミーが大英帝国ではたした責任を直視し、アカデミーはじまって以来のラディカルな展覧会と批評された89)

「もつれた過去、1768-今:芸術、植民地主義、変化」
Royal Academy of Arts 2024/02/28)


 大英博物館では、ガイアナ系イギリス人ヒュー・ロック(Hew Locke)とともに、植民地から持ち出されたさまざまな財宝・文化財から過去の帝国主義を見つめ、そして博物館の脱植民地化をしめす展覧会「ヒュー・ロック:ここに何がある?(Hew Locke: what have we here?)」が企画された。ロックはエディンバラで生まれてガイアナの首都ジョージタウンで育ち、イギリスで学んで世界的に活躍する彫刻家・芸術家で、鋭い感性で植民地の歴史を解釈し、芸術的に表現している90)

「ヒュー・ロック:ここに何がある?」
the British Museum 2025/01/03)


 大英博物館など国立の博物館から植民地文化財の返還はさほど実現していないが、博物館自身は収蔵品から帝国主義を読み取り、過去への理解を深めているといえるだろう。


 スペイン

 かつてヨーロッパ大帝国の一角だったスペインでも、脱植民地化の動きがうかがえる。1月に中道左派政権の文化相エルネスト・ウルタスン(Ernest Urtasun)が、「我々が遺産、歴史、芸術遺産を見る際にしばしば障害となっている植民地的構造やジェンダーの偏り、民族中心的習慣を克服するため」、国立の博物館17館を再検討すると表明した。アメリカのメトロポリタン美術館、オランダの世界文化博物館、イギリスのナショナルトラストの管理する多数のカントリー・ハウスでも同様の議論が進んでいる。しかしイギリスで右派保守党が反発したように、スペイン政府の歴史を直視する博物館の新たな政策に対し、右翼から批判が起きた91)

 サラマンカ大学の歴史学教授イザスクン・アルバレス・クアルテロ(Izaskun Álvarez Cuartero)は脱植民地化について、博物館の脱植民地化とは、誰が善良で誰が悪者だったのかというストーリー(narratives)を長く記憶するのではない。そのような質問は間違っている。博物館の脱植民地化とは過去を書き直すのではなく、より豊富にそしてより良好に過去を解釈するのである。所蔵するコレクションの展示にパラダイムの転換をもたらす行為を意味している。新しい意味を見出し、他のものにも価値をさずける。被抑圧的な従属グループに声をあたえ、植民地主義の単線的見解にチャレンジするのである。たとえばプラド美術館では女性の作品をより多く展示するようになったが、数年前には考えられないことだ。展示ラベルやウェブサイトの書き換えにも努力している。博物館は人種主義的記憶の場所にすることはできないし、良し悪しを判断しない無批判なストーリーを避けなければならない。現代化によるこれらの課題にスペインの館長たちが最善を尽くして取り組むと信じていると述べた92)

 アンダルシア州都のセビリアとアメリカ・ニューヨークで育ち、大英博物館やロンドンの自然史博物館で研究をした考古学者ジーネット・プラマー・シレス(Jeannette Plummer Sires)は、植民地的構造を解体するということは歴史的不正義を是正するのではない。コミュニティ同士で新しい和解の時代を育むことだ。展示室や公開イベントで過去について包み隠さず語ることにより、博物館は癒しの中心的空間となれる。旧植民地や他の地域から移民たちの目的地となっているスペインのような国で、この作業は、とくにヨーロッパ中で極右、排外主義、反移民感情が高まっている時に、ニューカマーと地元の人たちとの間に強い関係を築けるだろう。スペインの博物館の脱植民地化は、我々の歴史理解を向上させるめったとない貴重な機会だと述べた93)

 ところで南米コロンビアは、スペインとの間でキンバヤ財宝(Quimbaya Treasure)の返還をめぐって長年争っている。キンバヤ財宝とは、プレ・コロンビア時代の墓から出土した金製の人物像、動物像、ペンダント、装飾品、ヘルメットなどをふくむ122点の考古学資料である。非常に精巧に作られていて、当時の高度な金細工技術をしめしている。現在マドリードのアメリカ博物館に所蔵・展示されている94)

 コロンビア西部フィランディアから1891年に出土した盗掘品で、同年政府が取得した。コロンビアとベネズエラの国境紛争に関する仲裁でスペインの果たした役割に感謝の意をこめて、1893年にコロンビア大統領主導でスペイン女王マリア・クリスティーナに贈られた。スペイン側は合法的に取得したとして所有権を明言し、対するコロンビア側は大統領による不適切な譲渡だったと主張している。2017年にはコロンビアの憲法裁判所が、あらゆる必要な手段を講じてスペインから返還を勝ち取るべきだという判決を下した。そして2024年5月にコロンビア政府は公式に財宝返還をスペインに要求したのである。返還の根拠としてコロンビア政府は、当時文化的価値が認識されずに国外へ譲渡された、スペイン政府は博物館の脱植民地化を重視している、文化的主権の回復などと説明した。

キンバヤ財宝
Global Digital Heritage 2024/11/15)


 この案件は、近年の欧米各国による文化財返還とも関連し、歴史的、政治的な複雑な関係を際立たせ、将来の脱植民地化にも影響をあたえるだろうと考えられている。コロンビアは1810年にスペインから独立した。旧宗主国から独立した後の19世紀末にスペイン女王に贈与された財宝であっても、それでも返還は脱植民地化として捉えられている。なおキンバヤ財宝は、2024年にデジタル撮影され3D画像がネットで公開された95)


 イタリア

 イタリアの旧植民地は、アフリカ北東部のエリトリア、ソマリア、エチオピア、そして北アフリカのリビアである。2024年にイタリアで話題となった文化財返還は、エチオピアからの物件だった。イタリアは、ファシスト政権時代に1936年から5年間エチオピアを植民地支配した。

 1月にイタリア政府は、エチオピアで最初の飛行機を公式に返還した。飛行機は1935年にドイツ人パイロットとエチオピア人技術者の共同作業で製作され、1935年12月にアディスアベバから飛んで約50km、約7分の初飛行をした。エチオピア皇帝ハイレ・セラシエ1世の娘にちなんでツェハイ(Tsehay)と名付けられた。ムッソリーニがエチオピアを占領した後にイタリアへ持ち去られ、1941年からイタリア空軍博物館に収納された。

イタリアからエチオピアに返還された飛行機
the Guardian 2024/01/31)


 イタリア国防相グイード・クロセット(Guido Crosetto)は、「イタリア・アフリカ首脳会議の後に行なわれたこの引き渡しは、我々2国間の強い結束を強調し、対話を尊重して国際協力の重要性をしめす強いメッセージである」と語った96)。1月29日に初のイタリア・アフリカ首脳会議がローマで開催され、外交的副産物として飛行機が返還されたのである。

 12月にイタリアのエチオピア侵略戦争を戦ったエチオピア人英雄の勲章がオークションに出品された。エチオピア人英雄とは、ラス・デスタ・ダムテュー(Ras Desta Damtew)という皇帝の義理の息子で貴族、エチオピア軍の指揮官だった。エチオピア敗戦後もゲリラ戦を続けたが、1937年に捕らえられ処刑された。勲章は星型のエチオピア帝国勲章(Imperial Order of the Star of Ethiopia)で、11月にオンラインのオークション・リストに登場するまで所在が不明だった。「王子(デスタ・ダムテュー)の捕獲に居合わせたイタリア兵士の遺産から」と出所が明記され、イタリア兵士の奪った戦利品と想定された。

 デスタ・ダムテューの子孫たちは、とんでもない話しと驚き、オークションの中止と返還をもとめたが、オークション会社は12月1日にオークションを強行した。ところが買い手が現れず、販売は失敗に終わった。デスタ・ダムテューはヨーロッパ帝国主義列強に抵抗したシンボルとして、エチオピアだけでなくアフリカ中で崇敬されているため、勲章返還の声は国際的に広がった。同時に、第2次大戦後、エチオピアから持ち去ったすべての文化財、宗教具、文書を元に戻すように規定した1947年のパリ和平条約(1947 Paris Peace Treaty)を、イタリアが十分遵守していない点も特記された97)


ヨーロッパの他の国々

 スイス

 スイスには植民地がなかったが、ヨーロッパ植民地主義と深く関与していた。スイスとアフリカ・アジアの植民地との関係を直視する展覧会が、2024年にいくつかの博物館で開催された。まずジュネーブの民族学博物館(Musée d'ethnographie de Genève)で「記憶する:植民地世界におけるジュネーブ(Remembering: Geneva in the Colonial World)」という展覧会が催された。

 ジュネーブは、戦争犠牲者を保護する1949年のジュネーブ条約をはじめ、いくつもの国際条約が締結され、また国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)、赤十字国際委員会(ICRC)などの本部もあるので、平和や人権、人道主義のイメージが強い。その一方でジュネーブの歴史には不平等と人種差別の暗い側面もあったことを、展覧会が光をあてた。赤十字国際委員会の創設者の1人だった著名な国際法学者ギュスターブ・モアニエ(Gustave Moynier)は、ベルギー国王レオポルド2世のコンゴ自由国の在スイス総領事を長年務めた。彼自身はアフリカに足を踏み入れた形跡がないにもかかわらず、レオポルド2世の人道主義的文明化を信じ、実際には暴虐だった国王の植民地統治を称賛したのである。

 1897年のブリュッセル万国博覧会でレオポルド2世は植民地統治を文明化だと正当化するため、コンゴから住民たちを強制的に連れてきてアフリカの村落を再現させた。この処置は非人道的な人間動物園として現在でも悪評が高い。ところが前年1896年のジュネーブで開催されたスイス・ナショナル博覧会(the Swiss National Exhibition)で、すでに人種差別的なアフリカの「黒人村」が設置されていたのである。ジュネーブの民族学博物館は「黒人村」で売られた民族資料85点を収蔵している。

1896年スイス・ナショナル博覧会の黒人村ポスター
黒人村のモスク
Musée d'ethnographie de Genève


 日本でもスイスのチョコレートは人気が高い。ネスレ(Nestlé)やリンツ(Lindt)をふくむチョコレート産業団体は、生産や販売促進のため数十年にわたってスイスの政治家たちにロビー活動を続けている。チョコレートの歴史は古く、奴隷制から現在の児童労働にいたるまでカカオ生産は世界的規模で、経済や社会的・環境的搾取の力学が作用して、北と南を軸とする支配関係が続いている。過去の植民地の今日的意味を、たとえばチョコレート生産をテーマに探求している。この展覧会でも、現代アーチストたちと協力して、収蔵する文化財とアート作品から過去の歴史が描写された98)

 チューリッヒのスイス国立博物館は「コロニアル:スイスのグローバルな関連性(colonial:Switzerland’s Global Entanglements)」という展覧会で、スイス植民地主義に光をあてた。16世紀から19世紀にかけてアフリカの奴隷交易にスイスの企業250社以上が関係し、およそ172,000人が送還された。奴隷交易の実態、植民地軍に参加したスイス傭兵、セトラー・コロニアリズム、植民地におけるキリスト教宣教師たち、コンゴ自由国の暴政に従事した技術者・行政官、植民地でスイス人学者たちによって採集・研究された資料、博物館の脱植民地化と文化財返還問題、植民地化プランテーションによる自然破壊、現代にも続く植民地化による環境破壊、人種主義の似非学術研究、今日の構造的人種差別、人種差別に対する抵抗とエンパワーメントなど、多岐にわたる視点から植民地主義が取り上げられた。個別具体的なテーマをあつかった研究者たちの論文も、博物館のブログで多数公開された99)

カカオの乾燥、ガーナ・アクラ、バーゼルのミッション商事会社
(Missions-Handlungs-Gesellschaft)
地元の労働者と「白人入植者」衣装の黒人監督者
Schweizerisches Nationalmuseum


 今までさほど知られていなかった過去の植民地主義を直視する展覧会が、イギリスと同様にスイスでも、国立の博物館で開催されたのである。脱植民地化の展覧会開催と並行して、文化財返還も進められた。

 6月にバーゼルの文化博物館と自然史博物館が、人間の遺骸をふくむ90点近い文化財をスリランカの先住民族ヴェッダ人(Veddas)に返還した。19世紀末に42体の遺骸と弓矢、バッグなどの日用品が持ち出された100)

 10月に匿名の個人コレクターから、60点以上のプレ・コロンビア時代の文化財が中央と南アメリカに返還された。数世代にわたって所有された文化財だったが、最後の所有者が正当な故国にもどしたいと希望し、返還された101)

 11月にバーゼル文化博物館が、デゥル(dhulu)という彫刻された木をオーストラリア南東部の先住民族ガミラロイ(Gamilaraay)に返還した。デゥルはアボリジニたちにとって先祖と家族たちを意味し、知恵と力の化身とされる。20世紀初頭に倒されてシドニーに運ばれ、個人が購入した後に博物館へ寄贈された。ガミラロイの代表たちは特別に彫られた新しいデゥルをバーゼルの博物館に贈り、博物館と先住民族との和解、協力が強調された102)

古いデゥル(右)と新しいデゥル
SWI swissinfo.ch 2024/11/29)



 ノルウェー

 11月に、オスロのコンティキ号博物館がチリのイースター島に人間の遺骸と文化財を返還した。1947年にノルウェーの探検家・人類学者トール・ヘイエルダール(Thor Heyerdahl)が、インカ時代の大型筏を模したコンティキ号でペルーからポリネシアへ101日間の航海をして、ポリネシア人の祖先が南米から渡来したことを実証した。コンティキ号博物館にはイースター島からヘイエルダールの持ち出した物件が5,600点あり、今までにも数回返還した103)

コンティキ号博物館が人間の遺骸、文化財をイースター島に返還
the Kon-Tiki Museum 2025/03/17)



 スウェーデン

 5月に在ナイジェリア・スウェーデン大使がベニンシティにある宮殿を訪問し、スウェーデンの博物館にあるベニンの文化財39点を返還するとベニン王に伝えた104)


アメリカ

 アメリカでは先住民族の遺骸と副葬品を迅速に返還するため、アメリカ先住民族墓地保護返還法(NAGPRA、the Native American Graves Protection and Repatriation Act)が改正され、2024年1月12日から施行された。1990年に制定されたNAGPRAは、連邦資金を受領している大学や博物館などの施設が遺骸や副葬品の目録を作成して、先住民族に返還することを規定していた。しかし30年経っても約半数の遺骸や3割の副葬品がもどされていない状態だった。バイデン政権の下で、はじめて先住民族出身の内務長官が誕生し、停滞する返還問題の解決が進められたと考えられる。

 改正された論点は広範囲にわたるが、いくつかの要点として、遺骸や副葬品を展示・利用・研究するにあたり先住民族から同意をえる義務を所蔵する博物館や大学などの施設に課すこと、遺骸や物件との関連性を文化的ではなく地理的に特定できること、副葬品、聖なる文化財、文化遺産を学術的あるいは歴史的証拠によって定義するのではなく直系の子孫、インディアン部族、アメリカ先住民族の伝統的知識にもとづくことなどの点があげられるだろう。

 NAGPRAの改正で、すぐさま直接的影響を受けたのは博物館の展示だった。遺骸や副葬品の展示・利用・研究に先住民族からの同意が必要になったからである。シカゴのフィールド自然史博物館、ニューヨークのアメリカ自然史博物館、ハーバード大学ピーボディ考古学民族学博物館、クリーブランド美術館、メトロポリタン美術館などの著名な施設で展示ケースを覆ったり、展示品を取り外したりして、観覧不能な状態にした105)

 その後アメリカ自然史博物館は古い展示室の改装を計画し、またフィールド自然史博物館は返還センターを設置して返還を促進させた。クリーブランド美術館では一部展示を再開、ピーボディ博物館は部分的に展示物を外して展示を再開した。チェロキー・ネイションの首長は、先住民族の物品を「もはや存在しない人たち」の「珍奇な見世物(museum curiosities)」として取り扱うことが不可能なことを、博物館が認識するだろうと語った106)。現代美術作品に模様替えして展示を再開した美術館もあった107)

 著名な博物館をはじめさまざまな施設で先住民族に関する展示方法が根本的に変化したことにより、一般社会でも尊厳をもって先住民族の文化財や遺骸に接するようになると考えられる。

 1月から3月にかけてニューヨークの個人ギャラリー展覧会で展示された先住民族の描いたレジャー・アート(ledger art)という絵画をめぐって、論争が起きた。レジャー・アートとは平原インディアンが部族の歴史や個人の経験を描写した視覚的歴史記録で、1860年代から1920年代にかけて広まった。元来バッファローの皮などに戦功や歴史が記録されていたのだが、アメリカ政府による組織的なバッファロー大虐殺によって皮の入手が困難となり、そこで入植者や軍関係者の廃棄した会計用台帳(ledger)などの紙に鉛筆、ペン、クレヨン、水彩で描く手法に取って代わった。とくに1875~78年にフロリダのマリオン要塞で、裁判もなく収監された先住民族たちの描いた絵画が、迫害に直面しても文化的アイデンティティを失うことなく、適応と抵抗の行為だったと評価されている。

 展覧会ではマリオン要塞に拘置された先住民族たちの描いた絵画が展示された。いくつかの描画は2022年にオークションで販売され、カイオワ、シャイアン、アラパホー部族の代表たちが重要な文化遺産だとしてオークション中止を試みたが、成功しなかった。絵画の作成を、囚人たちを監視したマリオン要塞の陸軍将校リチャード・ヘンリー・プラット(Richard Henry Pratt)が依頼して買い取っていた。プラットは先住民族の文明化、白人への同化政策を強制的に進め、悪評高い寄宿学校制度を築いた人物である。

 レジャー・アートの専門家であるカリフォルニア大学サンディエゴ校教授ロス・フランク(Ross Frank)は、「法律的に言えば、すべての台帳作品を部族にもどすのは困難だ。確かに文化遺産だが、時には合法的に売られていた」。しかし作家たちが拘置された状態だったので、作品の法的位置とは別に「強制されたのであり倫理的問題がある」と言及した。アメリカの文化施設は展示や管理に関して先住民族と相談しなければならないが、個人コレクターについてはまったく別だと解説した108)。NAGPRAが改正されても、法律の対象となるのは連邦予算を受領する文化施設だけで、連邦に関係しない個人コレクションは基本的に無関係なのだ。

 2024年も先住民族へ文化財返還が続いた。約150年前にラコタ族(Lakota people)の首長が連邦政府職員に寄贈した正装が、博物館で展示されることになった。1870年代にサウスダコタの連邦政府インディアン事務局に勤務し、後に先住民族に関する本も著した陸軍少佐シセロ・ニューウェル(Maj. Cicero Newell)は、ラコタの有名な首長スポッテッド・テイル(Spotted Tail、Sinte Gleska)と親密になり、首長から頭飾り、服、鹿皮製靴、アクセサリーなどの正装を贈られた。正装は家宝としてニューウェルの子孫に5代にわたって受け継がれた。2022年にニューウェルの子孫から首長の子孫にもどされ、さらに2024年にサウスダコタ州歴史学会に寄贈され博物館で公開されることになった。NAGPRAは博物館や文化施設による返還を規定し、個人は考慮されていない。しかし若い世代の間では元にもどそうという気運が強まっていると、返還の専門家が述べている109)

返還された頭飾り
the New York Times 2024/11/28)


 ミズーリ州セントルイスにシュガーローフ・マウンド(Sugarloaf Mound)という1000年前の古墳があり、オセージ・ネーション(the Osage Nation)が返還運動を行なっている。かつてセントルイス周辺には儀式と埋葬のための古墳が多数分布していたが、入植者たちによって取り崩され、唯一シュガーローフ・マウンドだけが残った。一方オセージたちは西へ現在のオクラホマ州に強制的に移住させられた。彼らは15年以上前から古墳の保存と返還を要求していた。古墳の土地所有者は3人いて、2009年に最北部をオセージ・ネーションが購入。2024年11月に古墳上部の家の所有者が土地をオセージ・ネーションへ売却することに決めた。残る古墳下部を薬科専門同窓会(Kappa Psi)セントルイス支部が所有しているのだが、土地の返還に反対している。オセージ・ネーションでは解説センターなどの建設を計画している110)

 アメリカ国外への返還も続いた。2月にカルフォルニア大学ファウラー美術館がガーナへアシャンティ王国の文化財7点を返還した。アメリカ出身の製薬実業家でコレクターだったヘンリー・ウェルカム(Sir Henry Wellcome)の遺産を管理する財団が、1965年に30,000点のコレクションをファウラー美術館に寄贈した。コレクションのなかから象の尻尾でできた「はたき」、装飾された椅子、金製腕飾など7点を自主的に返還した111)

アシャンティ王国に返還された腕輪
象の尻尾製の「はたき」
UCLA Newsroom 2024/02/05)


 2024年にファウラー美術館と、イギリスの大英博物館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館がアシャンティ国王に文化財を返還したのだが、ファウラー美術館の返還には所有権移転がともない、一方イギリスの博物館からの返還は長期貸与だった。

 おなじくファウラー美術館は、7月にもオーストラリアの先住民族ワルムングに文化財20点を自主的に返還した。返還されたのは、かぎ状のブーメラン、短いナイフと鞘、木製こん棒などで、半分はウェルカム財団から寄贈されたものだった。美術館は2019年にアンドリュー・W・メロン財団(Andrew W. Mellon Foundation)から60万ドル(約6,500万円)の助成金を受けて、約7,000点のアフリカ・コレクションを調査し、コレクションの内容が判明した成果だった。またオーストラリア政府が、梱包や輸送、代表の旅費など返還に必要な経費を支払ったので、返還がスムーズに進んだ112)

返還されたナイフ、ブーメランなど
UCLA Newsroom 2024/07/24)


 3月にバージニア美術館に所蔵されている木製彫像が、原産地であるコンゴのリュザンガ(Lusanga)に一時的に返還された。木製彫像はベルギーの植民官マキシミリアン・バロット(Maximilien Balot)を形作ったもので、彼は1931年の地元民ペンド人(the Pende people)による反乱で殺害された。殺害後に斬首され、遺体は分割されてペンド人の首長たちの間で配られた。遺体が分配されたのはバロットの影響を払いのけるためで、彫像も同じ信条で制作された。殺害の報復としてアフリカ人1,300人以上が虐殺され4ヶ月後に反乱が鎮圧された。

 1972年にベルギーで彫像を、ニューヨークから来たコレクターで政治学教授ハーバート・F・ウェイス(Herbert F. Weiss)が700ドルで購入し、2015年に24,000ドルでバージニア美術館へ売却した。リュザンガではパーム油採取のプランテーションが主産業で、コンゴ・プランテーション労働者芸術連盟(CATPC、the Congolese Plantation Workers Art League)という地元の芸術家集団が2022年に彫像の一時貸与を美術館に申し入れた。また芸術家たちは彫像の画像を美術館からダウンロードしてNFT(non-fungible token、非代替性トークン)を作成して販売した。収益金で土地を買い取ってプランテーションから解放し、森の再生を目標にしているのである。しかしNFTの販売に美術館は不信感をいだき、一時貸与を拒否してしまった。

 2024年に美術館は態度を軟化させ木製彫像を貸し出すことにした。彫像は地元リュザンガの美術館に4月20日から11月24日まで展示され、同時にイタリアのヴェネチア・ビエンナーレのオランダ館でもライブ配信された。CATPCはすでに230ヘクタールの森林を再生させ、さらに2,500ヘクタールまで広げて炭素吸収源を目指している。芸術家の一人は、「バロットの返還は我々のエネルギーを集中させ、信念を強化させる。最終的に過去の不正義を正し平静を回復することで、バロットの返還で植民地暴力で奪われた土地の買戻しができ、強制労働と破壊的な単一作物栽培の廃止を可能にする、聖なる森の再生、豊かな滋養を取りもどすのだ」と述べている113)。たとえ一時的な返還であっても、地元の人たちにとってはきわめて有意義だったといえるだろう。

木像彫像の一時返還と森林再生
VOA Africa 2024/04/24)


 7月にアイオワ大学スタンレー美術館が、ベニンの文化財である真鍮製板と木製祭壇画の2点をナイジェリアのベニン王に返還した。1897年のイギリス軍による懲罰遠征で世界中に分散したベニン青銅器について、前年2023年にナイジェリア政府は、ベニン王オバ・エーアル2世(Oba Ewuare II)に所有権があることを承認した。スタンレー美術館はナイジェリアの決定にそって、ナイジェリア政府ではなくベニン王に返還したのである。スタンレー美術館のアフリカ・コレクションは、マックスとベティ・スタンレー夫妻(Max and Betty Stanley)の遺贈からなり、おもに20世紀に収集された114)

 なお、2022年にスミソニアン博物館がベニン青銅器29点をナイジェリアに返還したのだが、返還研究グループ(Restitution Study Group)という非営利団体が、返還に異議をとなえて返還停止の仮処分を裁判所に申請した。青銅器はアメリカにいる奴隷だった人たちの子孫に関連しているのに、返還によって文化を体験する機会が奪われてしまう、ベニン青銅器は奴隷の代金だった金属製腕輪のマニラ通貨(manilla currency)を溶かして造られた、青銅器は奴隷にされた人々の後継者と共有すべきだと主張していた。この訴訟に対して地裁がスミソニアン博物館有利の判決を下し、さらに2024年10月にアメリカ最高裁が訴えを却下して、確定判決となった115)

 人間の遺骸返還について、アメリカで遺骸を一番多く収蔵している施設はスミソニアン博物館だといわれている。前年2023年にワシントン・ポスト紙が、255個の脳をふくむ30,700点の人体部位をスミソニアン自然史博物館が所蔵し、人種差別的優生学の観点から、多くが非倫理的手法で集められたと報じた。スミソニアンでは同年前半に遺骸問題に取り組む「人間の遺骸作業部会(Human Remains Task Force)」が設置され、作業部会から2024年1月にレポートが公表された。倫理原則にもとづいて、遺骸の返還をはじめる、同意のない遺骸を展示しない、研究は明確な同意のある遺骸にかぎる、子孫同定のため遺骸の破壊分析をすべきでない、子孫が見つからなければ適切な出身コミュニティにゆだねる、ハイレベルな委員会による監督と報告等々、多数の勧告が提示された116)

 「インフォームドコンセント」を基本とする人間の遺骸に関する勧告は、スミソニアンの公式施策へと発展し、アメリカ国内の他の博物館だけでなく世界中に影響をあたえるだろうと予測されている117)

 具体的な遺骨の返還を見てみると、5月にハーバード大学ピーボディ考古学民族学博物館がグリーンランドのイヌイットのミイラ5体をデンマークへ返還した。ミイラには500年前の若年成人と子供のものもふくまれていた。1929年にグリーンランドのウゥナトーク島(Uunartoq)から人類学者マーティン・ルター(Martin Luther)がハーバードに運んだ。2019年前半にハーバードの研究者が古いミイラのCTスキャン検査を行なって心臓血管の病気を発見して世間から注目をあび、同年後半よりグリーンランドの国立博物館が返還の議論を開始した。グリーンランドにはミイラを収納する施設がないので、とりあえずコペンハーゲン大学地球研究所(Globe Institute)で保管され、適切な施設の建てられた後に移動することになっている118)

 7月にニューヨークのアメリカ自然史博物館が、すでに8回の返還でアメリカ先住民族の遺骸124体と文化財90点を返し、2,200体近い遺骸と数千点の副葬品の返還に取り組んでいると述べた。世界中から集められた約12,000体のうち、医学コレクションと呼ばれる約400体は、おもに1940年代の死亡後に引き取り手のなかった貧しいニューヨーカーたちの遺体で、当初医科大学にわたされた。返還は進んでいない119)

 11月にカルフォルニアの博物館から先住民族の遺骸14体がオーストラリアへ返還された。カルフォルニア大学ファウラー美術館から3体、ロサンゼルス郡立自然史博物館から2体、フィービー・A・ハースト人類学博物館から5体、オークランド博物館から4体であった。1体はオーストラリア南部のンガリンジェリ(Ngarrindjeri)、もう1体も同じく南部のウェンバ=ウェンバ(Wemba-Wemba)の遺骸だった。ンガリンジェリの遺骸は1950年代に先史時代のサーベルタイガーの頭骨と交換されたもので、受け取りに行った地元の長老は、動物と同じ扱われ方に驚きショックを受けていた。他の12体は身元不明で、オーストラリアからとしか判明していない120)

 12月にハーバード大学ピーボディ考古学民族学博物館が遺骸7体をオネイダ・ネイションに返還した。返還された遺骸と副葬品は、1878年に当時ハーバードの比較動物学博物館副館長がオネイダの埋葬地から持ち出し、後にピーボディのコレクションに加えられたものである。2021年からオネイダと大学との間で話し合いがはじまり、返還が実現した121)

 なお遺骸の返還ではないが、人種差別の観点から収集された大量の頭骨コレクションを所蔵して問題視されているペンシルバニア大学考古学人類学博物館(ペン博物館)が、2月に黒人の頭骨19体を共同墓地に埋葬した。埋葬されたのは名前の不明な、生前の記録もないような奴隷や貧しい人たちだったと考えれている。かつて文化的研究機関は、人々やコミュニティの意思に反し、時には彼らの知らないうちに遺骸や副葬品を奪って集めたのだが、ペン博物館のサムエル・モートン(Samuel G. Morton)頭骨コレクションは悪しき典型例として知られている122)

 2025年1月から第2次トランプ政権がはじまった。トランプ大統領は就任早々、2021年の合州国議会議事堂襲撃事件受刑者の恩赦、移民阻止のため国境へ軍隊派遣、DEI(多様性・公平性・包括性)の中止、世界保健機関(WHO)やパリ協定から脱退・離脱、諸外国へ関税賦課など、矢継ぎばやに過激な政策を急展開させて世界中を驚かせている。

 文化政策に関しては、アメリカン・ヒーロー国立公園の建設、連邦の公共建物をクラッシック様式の建築スタイルに限定させるなど、第1次トランプ政権で頓挫した施策を復活させた。そして大学への弾圧に並行して、スミソニアン博物館の展示内容にも政治介入しはじめた。第2次トランプ政権下で先住民族政策が後退し、文化財や遺骸の返還に影響がおよぶかもしれない。


おわりに

 2017年にフランスのマクロン大統領がアフリカ遺産の返還を声明し、翌年ベネディクト・サヴォワ(Bénédicte Savoy)とフェルウィン・サル(Felwine Sarr)による歴史的な文化財返還レポートが公刊された。そしてドイツ、オランダ、ベルギーなどで多額の予算を費やして植民地文化財の調査が実施された。出所調査の成果が続々と公表されるとともに、近年では冒頭で紹介したように文化財返還をテーマにした学術書も数多く刊行されている。

 出所調査の進展および文化財返還の学術的動向を反映して、国立の博物館で植民地文化財の問題点を追及する展覧会もたびたび開催されるようになった。2021年にオランダのアムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)で開催された「奴隷制(Slavery)」展は好評で、2023年にニューヨークの国連本部でも巡回展示された123)。2024年にはベルギーのアフリカ博物館で「収蔵品を見直す(ReThinking Collections)」、チューリッヒのスイス国立博物館では「コロニアル:スイスのグローバルな関連性(colonial:Switzerland’s Global Entanglements)」という展覧会が開催された。

ニューヨーク国連本部で開催された「奴隷制」展覧会
UN Story 2023/03/03)


 政府も国立の博物館も文化財返還に消極的なイギリスでも、同様な展覧会が開催された。2024年にロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの「もつれた過去、1768-今:芸術、植民地主義、変化(Entangled Pasts, 1768-Now: Art, Colonialism and Change)」、大英博物館の「ヒュー・ロック:ここに何がある?(Hew Locke: what have we here?)」という展覧会である。

 いずれの展覧会も収蔵する文化財から具体的に奴隷制や植民地主義の不正義、暴政を告発し、残虐な過去の歴史を直視する内容だった。出所調査によって蓄積された文化財の歴史的背景や脱植民地化の知識が、専門家や学芸員たちから一般社会へと、着実に理解が広がっている兆候といえるだろう。

 オランダがインドネシアとスリランカに戦利品を返したように、文化財返還の対象はアフリカからアジアへと拡張している。帝国主義時代にアジアからも大量の文化財が世界へと流出した。とくに中国から流出した文物は欧米や日本の博物館、個人コレクションに多数収蔵されていて、近年中国政府は文物返還に関心を高めている。

 上海大学とICOM(国際博物館会議)が協力して、ICOM国際博物館研究交流センター(ICOM-IMREC、The ICOM International Museum Research and Exchange Centre、国际博物馆协会研究与交流中心)が設立され、2023年3月に「博物館、脱植民地化、文物返還:世界大会(Museums, decolonisation and restitution: A global conversation、博物馆、去殖民化、文物返还 :全球对话)」という国際会議が上海で開催された。大会会議録が2025年6月に刊行された124)

「博物館、脱植民地化、文物返還、世界大会」
オープニング・セッション:上海大学2023年3月20日
ICOM IMREC 2023/06/28)


 ICOM国際博物館研究交流センターは、2019年のICOM第25回京都大会でICOM日本委員会が提案し採択された大会決議2「アジア地域のICOMコミュニティへの融合」の趣旨にもとづいて設立された。ICOM日本委員会は提案の動機を、欧米主体からアジアの視点に立ったテーマを誘導したかったと述べていた125)

 その後2023年4月に中国で、文化遺産保護を目的にアジア21ヶ国が参加してアジア文化遺産保護連盟(ACHA、the Alliance for Cultural Heritage in Asia、亚洲文化遗产保护联盟)が結成され、西安宣言が発せられた。2024年6月にはアジア文化遺産保護連盟理事会第2回会議が青島で開催され、植民地時代に奪われた文化財の返還をもとめる青島建議書が採択された126)。植民地時代に持ち出された文化財問題をめぐり、現在収蔵されている欧米を舞台にして議論が進んでいるが、今後は持ち去られた旧植民地側のアジア諸国からの発言もふえるにちがいない。

 最後に日本の動きについてふれておこう。日本は文化財返還の世界の流れから取り残され、まるで孤立したかのように見える。植民地時代の文化財返還に関する事例は近年まだない。しかしながら朝鮮半島由来の植民地文化財に関する好著、外村大・長澤裕子『〈負の遺産〉を懸け橋に-文化財から問う日本社会と韓国・朝鮮』が2024年7月に刊行された。専門書の出現によって日本でも文化財返還の議論が深まることを期待したい。



参考
2023年の動向
森本和男「オランダがインドネシアとスリランカに文化財を返還 -アジアにも広がる返還の波-」(2024年9月)
2022年の動向
森本和男「ドイツがベニン青銅器を返還 -「パンドラの箱が開いた」-」(2023年7月)
2021年の動向
森本和男「フランスがアフリカに文化財を返還 -各国で確実に進む返還の準備-」(2022年6月)
2020年の動向
森本和男「ブラック・ライヴズ・マターとモニュメント・文化財 -加速する脱植民地化の動き-」(2021年11月)
2019年の動向
森本和男「フランスの文化財返還レポートから1年 -欧米の脱植民地化の流れと文化財- 」(2020年4月27日)
2018年の動向
森本和男「フランスのアフリカ文化財返還政策とその波紋」『韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議年報2019』No. 8(2019年5月1日)




1) Welcome to the New Era of Restitution and Repatriation(ARTnews 2024/02/19)
 https://www.artnews.com/art-news/news/new-era-of-restitution-repatriation-toc-1234696445/
2) Nigeria’s New Museum of West African Art Calls Into Question the Future of Encyclopedic Museums(ARTnews 2024/02/22)
 https://www.artnews.com/art-news/news/nigerias-museum-of-west-african-art-encyclopedic-museums-preview-1234696892/
3) How the Met and Other Major US Museums Are Approaching Provenance Research(ARTnews 2024/02/28)
 https://www.artnews.com/art-news/news/how-metropolitan-museum-of-art-us-museums-provenance-research-1234697945/
4) Symposium on Confronting Colonial Objects: Introduction(Opinio Juris 2024/04/16)
 https://opiniojuris.org/2024/04/16/symposium-on-confronting-colonial-objects-introduction/
5) Symposium on Confronting Colonial Objects: On the Duality of the Ottoman Antiquity Law: Enabling and Constraining Extractive Practices(Opinio Juris 2024/04/17)
 https://opiniojuris.org/2024/04/17/symposium-on-confronting-colonial-objects-on-the-duality-of-the-ottoman-antiquity-law-enabling-and-constraining-extractive-practices/
6) The Find: Where was the bust of Nefertiti found? | Ägyptisches Museum und Papyrussamm(Staatliche Museen zu Berlin
 https://www.smb.museum/en/museums-institutions/aegyptisches-museum-und-papyrussammlung/collection-research/bust-of-nefertiti/discovery-and-partage/
7) Mshatta Façade(Museum of Islamic Art, Universes in Universe
 https://universes.art/en/art-destinations/berlin/museum-of-islamic-art/mshatta-facade
8) Symposium on Confronting Colonial Objects: Are Museums Entering a New Era of Repatriation of Human Remains?(Opinio Juris 2024/04/17)
 https://opiniojuris.org/2024/04/17/symposium-on-confronting-colonial-objects-are-museums-entering-a-new-era-of-repatriation-of-human-remains/
9) Indonesia (2024), Advisory reports(the Colonial Collections Committee
 https://committee.kolonialecollecties.nl/documents/2024/08/28/indonesia
  The Netherlands Returns Hundreds of Cultural Artifacts to Indonesia(the New York Times 2024/09/20)
 https://www.nytimes.com/2024/09/20/world/europe/netherlands-indonesia-artifacts.html
  Netherlands to return 288 items looted in colonial era to Indonesia(the Art Newspaper 2024/09/20)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/09/20/netherlands-to-return-288-items-looted-in-colonial-era-to-indonesia
10) Rotterdam becomes first Dutch city to restitute colonial objects(the Art Newspaper 2024/11/28)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/11/28/rotterdam-becomes-first-dutch-city-to-restitute-colonial-objects
11) Mixteekse Schedel uit collectie Wereldmuseum terug naar Mexico(Government of the Netherlands 2024/12/12)
 https://www.rijksoverheid.nl/actueel/nieuws/2024/12/12/mixteekse-schedel-uit-collectie-wereldmuseum-terug-naar-mexico
  Mixtec skull from Wereldmuseum Leiden collection returned to Mexico(Government of the Netherlands 2024/12/12)
 https://www.government.nl/latest/news/2024/12/12/mixtec-skull-from-wereldmuseum-leiden-collection-returned-to-mexico
12) Vrolik museum set to return 15 skulls to Moluccan village(DutchNews 2024/11/01)
 https://www.dutchnews.nl/2024/11/vrolik-museum-set-to-return-15-skulls-to-moluccan-village/
13) Scientists call out auction house for selling skull from Benin(DutchNews 2024/12/18)
 https://www.dutchnews.nl/2024/12/scientists-call-out-auction-house-for-selling-skull-from-benin/
14) First inventory of objects from Suriname in the Netherlands(Colonial Collections Consortium 2024/04/15)
 https://www.colonialcollections.nl/en/2024/04/15/first-inventory-of-objects-from-suriname-in-the-netherlands/
15) Publication: Atlas of Absence. Cameroon's Cultural Heritage in Germany(Technische Universität Berlin
 https://www.tu.berlin/en/kuk/research/projects/current-research-projects/reversed-history-of-collections-cameroons-cultural-heritage-in-german-museums/atlas-der-abwesenheit
16) Dialogue meeting: Cameroon and Germany(Linden-Museum Stuttgart
 https://lindenmuseum.de/dialogue-with-cameroon/?lang=en
  Dialogue meeting: Cameroon and Germany meet to discuss ways to return cultural property and build sustainable cooperation(Linden-Museum Stuttgart 2024/01/15)
 https://lindenmuseum.de/wp-content/uploads/Press-release-Dialogue-Meeting-Cameroon-and-Germany.pdf
  Restitutions and Sustainable Collaboration: Cameroon and Germany in Dialogue(Staatliche Museen zu Berlin 2024/01/19)
 https://www.smb.museum/en/whats-new/detail/restitutions-and-sustainable-collaboration-cameroon-and-germany-in-dialogue/
17) Cameroon: REGARTLESS Returns Looted Artefacts to Lebang Community.(Pan African Visions 2024/03/31)
 https://panafricanvisions.com/2024/03/cameroon-regartless-returns-looted-artefacts-to-lebang-community/
18) Symposium on Confronting Colonial Objects: Stolen African Cultural Heritage – Call for the Return of Ancestral Bangwa Artefacts(Opinio Juris 2024/04/19)
 http://opiniojuris.org/2024/04/19/symposium-on-confronting-colonial-objects-stolen-african-cultural-heritage-call-for-the-return-of-ancestral-bangwa-artefacts/
19) Paris's Dapper Foundation stalls talks over Cameroonian sculpture(the Art Newspaper 2024/01/12)
 https://www.theartnewspaper.com/2018/01/12/pariss-dapper-foundation-stalls-talks-over-cameroonian-sculpture
20) Chief Taku Makes Impassioned Call for Return of Bangwa Queen, King and Other Artefacts(Pan African Visions 2024/04/08)
 https://panafricanvisions.com/2024/04/chief-taku-makes-impassioned-call-for-return-of-bangwa-queen-king-and-other-artefacts/
21) Bangwa collection from colonial context revisited. Museum objects as “the conscience of black civilization”(RETOUR 2021/08/09)
 https://retour.hypotheses.org/1641
  Provenance Research and Claims to Bangwa Collections(Verfassungsblog 2022/12/05)
 https://verfassungsblog.de/provenance-research-and-claims-to-bangwa-collections/
22) Return of Cultural Heritage Items From Germany to the Kaurna People(AIATSIS 2024/05/03)
 https://aiatsis.gov.au/whats-new/news/return-cultural-heritage-items-germany-kaurna-people
  Indigenous artefacts returned home to Kaurna land from German museum after 180 years(ABC 2024/05/03)
 https://www.abc.net.au/news/2024-05-03/indigenous-artefacts-returned-to-kaurna-land-from-germany/103800170
23) Ancient Prow Returns to Samoa After 134 Years(NUS 2024/07/11)
 https://nus.edu.ws/nus-press-release-11-07-2024/
  Stolen artifact returned from Germany(Samoa Observer 2024/07/11)
 https://www.samoaobserver.ws/category/samoa/110060
24) Rituelle Gegenstände der Kogi werden in Kolumbien vereint(Stiftung Preußischer Kulturbesitz 2024/10/30)
 https://www.preussischer-kulturbesitz.de/en/news-detail-page/article/2024/10/30/rituelle-gegenstaende-der-kogi-werden-in-kolumbien-vereint.html
25) German Museum Repatriates Ancient Marble Head to Greece(artnet news 2024/11/23)
 https://news.artnet.com/art-world/german-museum-repatriates-ancient-marble-head-to-greece-2574128
  University of Münster returns marble head of dubious provenance(University of Münster 2024/11/23)
 https://www.uni-muenster.de/news/view.php?cmdid=14414&lang=en
26) How Germany is handling human remains in museum collections(DW 2024/03/12)
 https://www.dw.com/en/legacy-of-colonialism-how-germany-is-handling-human-remains-in-museum-collections/a-68493538
  Bones of Contention: Why are so many human remains locked up in Berlin museums?(The Berliner 2024/05/22)
 https://www.the-berliner.com/politics/bones-of-contention-dig-where-you-stand-podcast-ancestral-human-remains-berlin-museums/
27) First return of mortal remains from Lübeck’s Kulturen der Welt collection(German Lost Art Foundation 2024/08/30)
 https://kulturgutverluste.de/en/news/first-return-mortal-remains-lubecks-kulturen-der-welt-collection
28) Lübeck museums hand over mortal remains of a man from the indigenous Selk’nam community(German Lost Art Foundation 2024/10/15)
 https://kulturgutverluste.de/en/news/lubeck-museums-hand-over-mortal-remains-man-indigenous-selknam-community
29) Indigenous Australians recover human remains taken by Germany 120 years ago(the Guardian 2024/12/05)
 https://www.theguardian.com/australia-news/2024/dec/05/indigenous-australians-recover-human-remains-taken-by-germany-120-years-ago
30) France and Germany to research provenance of African objects in national museums(the Guardian 2024/01/19)
 https://www.theguardian.com/world/2024/jan/19/france-germany-research-provenance-african-objects-national-museums
31) Traces of the ‘Boxer War’ in German Museum Collections – A Joint Approach(Staatliche Museen zu Berlin
 https://www.smb.museum/en/museums-institutions/museum-fuer-asiatische-kunst/collection-research/research/traces-of-the-boxer-war/
  Boxerloot Conference on 22 and 23 February 2024 in Munich (Staatliche Museen zu Berlin
 https://www.smb.museum/en/museums-institutions/museum-fuer-asiatische-kunst/about-us/whats-new/detail/boxerloot-conference-on-22-and-23-february-2024-in-munich/
 https://www.youtube.com/watch?v=GqhJCS29yGM
 https://www.youtube.com/watch?v=XTWNyQTnAuA
32) The series "Working Paper Deutsches Zentrum Kulturgutverluste“(German Lost Art Foundation
 https://kulturgutverluste.de/en/medialib/publications/series-working-paper-deutsches-zentrum-kulturgutverluste
33) Lars Müller, Returns of Cultural Artefacts and Human Remains in a (Post)colonial Context: Mapping Claims between the mid-19th Century and the 1970s, 2021.
 https://perspectivia.net/receive/pnet_mods_00004508
34) Rikke Gram and Zoe Schoofs, Germany’s history of returning human remains and objects from colonial contexts: An overview of successful cases and unsettled claims between 1970 and 2021, 2022.
 https://perspectivia.net/receive/pnet_mods_00005364
35) Gesa Grimme and Larissa Förster, Locating Namibian Cultural Heritage in Museums and Universities in German-Speaking Countries: A Finding Aid for Provenance Research, 2024.
 https://perspectivia.net/receive/pnet_mods_00006320
36) Jan Hüsgen, Missionary Societies and Religious Orders in German Colonies and Their Contribution to Ethnographic Collections, 2025.
 https://perspectivia.net/receive/pnet_mods_00007082
37) Petition for the Repatriation of the Bust of Nefertiti(Change.org
 https://www.change.org/p/petition-for-the-repatriation-of-the-bust-of-nefertiti
  Should Germany return Nefertiti bust to Egypt?(DW 2024/10/25)
 https://www.dw.com/en/should-germany-return-nefertiti-bust-to-egypt/a-70601354
38) 注6)
39) Sharon Waxman, Loot: The Battle Over the Stolen Treasures of the Ancient World, 2008、(櫻井絵理子訳)『奪われた古代の宝をめぐる争い』PHP研究所、2011年。80~91頁。
40) His Skull Was Taken From Congo as a War Trophy. Will Belgium Finally Return It?(the New York Times 2024/05/05)
 https://www.nytimes.com/2024/05/05/world/europe/human-skull-africa-belgium.html
41) Sarah Van Beurden, Didier Gondola and Agnès Lacaille (eds.), (Re)Making Collections - La Fabrique des collections: Origins, Trajectories & Reconnections/ Origines, trajectoires et reconnexions, Royal Museum for Central Africa, 2023.
 https://www.africamuseum.be/sites/default/files/media/docs/publications/ENG_Remaking_collections_avec%20cover%20online%20def.pdf
 “This is not the Tippu Tip necklace”(AfricaMuseum 2022/04/29)
 https://www.africamuseum.be/en/learn/provenance/this_is_not_the_Tippu_Tip_necklace
  Why Belgian museums need to confront their looted African trophies(the Brussels Times 2024/04/22)
 https://www.brusselstimes.com/art-culture/1010219/why-belgian-museums-need-to-confront-their-looted-african-trophies
  Belgium museum wrestles with colonial past, with 40,000 objects tainted with violence(the Guardian 2024/07/13)
 https://www.theguardian.com/world/article/2024/jul/13/belgium-museum-wrestles-with-colonial-past-with-40000-objects-tainted-with-violence
42) Seven years on from Emmanuel Macron’s pledge to return Africa’s heritage, frustration grows about the lack of progress(the Art Newspaper 2024/11/27)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/11/27/seven-years-on-from-emmanuel-macron-pledge-to-return-africas-heritage-frustration-is-growing-about-the-lack-of-progress
43) Will Europe ever return 'looted' Asian artifacts?(DW 2024/02/01)
 https://www.dw.com/en/will-european-museums-return-southeast-asias-stolen-artifacts/a-68144451
44) French museum reunites head with decapitated Khmer statue(the Art Newspaper 2016/01/20)
 https://www.theartnewspaper.com/2016/01/20/french-museum-reunites-head-with-decapitated-khmer-statue
  Hindu god statue's head returns to Cambodia(BBC 2016/01/21)
 https://www.bbc.com/news/world-asia-35378747
  It’s Time for French Museums to Return Cambodian Artifacts(the Diplomat 2018/12/13)
 https://thediplomat.com/2018/12/its-time-for-french-museums-to-return-cambodian-artifacts/
45) France and Algeria revisit painful past in battle to mend colonial wounds(RFI 2024/02/18)
 https://www.rfi.fr/en/africa/20240218-french-algerian-commission-of-historians-works-to-mend-colonial-wounds
46) Algeria, France sign agreement on memory, retrieval of colonial archives(Anadolu Ajansı 2024/05/25)
 https://www.aa.com.tr/en/europe/algeria-france-sign-agreement-on-memory-retrieval-of-colonial-archives/3229987
  Algeria Submits List of Historical Artifacts for Restitution to France(Dzair Tube 2024/05/28)
 https://www.dzair-tube.dz/en/algeria-submits-list-of-historical-artifacts-for-restitution-to-france/
47) Madagascar asks for restitution of Sakalava king’s skull from France(RFI 2024/03/17)
 https://www.rfi.fr/en/africa/20240317-madagascar-asks-for-restitution-of-sakalava-king-s-skull-from-france
48) France to return human remains to Madagascar in first action under new law(the Art Newspaper 2025/04/08)
 https://www.theartnewspaper.com/2025/04/08/france-to-return-human-remains-to-madagascar-in-first-action-under-new-law
49) UNESCO welcomes the launch of the restitution process of the “Djidji Ayokwê” drum(UNESCO 2024/11/22)
 https://www.unesco.org/en/articles/unesco-welcomes-launch-restitution-process-djidji-ayokwe-drum
50) France moves to return colonial-era 'talking drum' to Ivory Coast(FRANCE 24 2025/07/07)
 https://www.france24.com/en/france/20250707-france-moves-to-return-colonial-era-talking-drum-to-ivory-coast
  France passes law to allow return of Ivorian drum stolen by colonial troops(RFI 2025/07/13)
 https://www.rfi.fr/en/africa/20250713-france-passes-law-to-allow-return-of-talking-drum-djidji-ayokwe-cote-d-ivoire-colonial-troops
  Côte d'Ivoire’s sacred talking drum is coming home: lessons from Kenya on how it could transform lives(The Conversation 2025/08/07)
 https://theconversation.com/cote-divoires-sacred-talking-drum-is-coming-home-lessons-from-kenya-on-how-it-could-transform-lives-262707
51) France returns ancient artefacts to Ethiopia(RFI 2024/11/30)
 https://www.rfi.fr/en/africa/20241130-france-returns-ancient-artefacts-to-ethiopia
 France returns ancient artefacts to Ethiopia in diplomatic ‘handover’(the Art Newspaper 2025/12/02)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/12/02/france-returns-ancient-artefacts-ethiopia
52) 'Titanic' task of finding plundered African art in French museums(FRANCE 24 2024/04/16)
 https://www.france24.com/en/live-news/20240416-titanic-task-of-finding-plundered-african-art-in-french-museums
53) ‘Dahomey’ Review: Mati Diop Tracks the Return of African Treasures Plundered by the French in Powerful Consideration of Reparations(the Hollywood Reporter 2024/02/18)
 https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-reviews/dahomey-review-mati-diop-1235829050/
  Mati Diop’s documentary Dahomey wins top prize at Berlin film festival(the Guardian 2024/02/24)
 https://www.theguardian.com/film/2024/feb/24/mati-diops-documentary-dahomey-wins-top-prize-at-berlin-film-festival
54) France should return much more looted African art, film-maker says(the Guardian 2024/02/18)
 https://www.theguardian.com/world/2024/feb/18/dahomey-france-should-return-much-more-looted-african-art-film-maker-mati-diop-says
55) エシカル・フィルム賞は『ダホメ』に決定 審査委員長の齊藤工「新鮮な映画文法」と絶賛(東京国際映画祭 2024/11/05)
 https://2024.tiff-jp.net/news/ja/?p=65725
56) A Fashion Show in Front of the Parthenon Marbles Stirs Controversy(artnet news 2024/02/19)
 https://news.artnet.com/art-world/fashion-show-parthenon-2436861
  At the Acropolis with Dior: the Historic Photo Shoot Revival(GREECE IS 2021/07/07)
 https://www.greece-is.com/acropolis-dior-historic-photo-shoot-revival/
57) Turkey Challenges Legitimacy of Lord Elgin’s Permission to Take Parthenon Marbles at UNESCO Meeting(Greek City Times 2024/06/04)
 https://greekcitytimes.com/2024/06/04/turkey-challenges-legitimacy-of-lord-elgins-permission-to-take-parthenon-marbles-at-unesco-meeting/
  Turkey rejects claim Lord Elgin had permission to take Parthenon marbles(the Guardian 2024/06/07)
 https://www.theguardian.com/artanddesign/article/2024/jun/07/turkey-rejects-claim-lord-elgin-had-permission-to-take-parthenon-marbles
58) Could Britain and Greece be edging closer towards a Parthenon loan agreement?(Returning Heritage 2024/12/01)
 https://www.returningheritage.com/could-britain-and-greece-be-edging-towards-a-parthenon-loan-agreement
  Talks over return of Parthenon marbles to Athens are ‘well advanced’(the Guardian 2024/12/02)
 https://www.theguardian.com/artanddesign/2024/dec/02/talks-over-return-of-parthenon-marbles-to-athens-are-well-advanced
59) "Anglo-Asante War 1874: Asante Gold and Silver Court Regalia"(Victoria and Albert Museum
 https://collections.vam.ac.uk/search/?page=1&page_size=50&q=%22Anglo-Asante+War+1874%3A+Asante+Gold+and+Silver+Court+Regalia%22
  Asante Gold Regalia(the British Museum
 https://www.britishmuseum.org/about-us/british-museum-story/contested-objects-collection/asante-gold-regalia
  Asante Gold: UK to loan back Ghana's looted 'crown jewels'(BBC 2024/01/25)
 https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-68066877
  British Museum and V&A to lend looted gold objects to Ghana(the Art Newspaper 2024/01/25)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/01/25/british-museum-and-va-set-important-precedent-with-loans-to-ghana
  Ghana’s looted Asante gold comes home (for now) – Asante ruler’s advisor tells us about the deal(The Conversation 2024/01/30)
 https://theconversation.com/ghanas-looted-asante-gold-comes-home-for-now-asante-rulers-advisor-tells-us-about-the-deal-222025
60) At Ghana Event, Fowler Museum Returns Items Taken From Asante Kingdom(the New York Times 2024/02/05)
 https://www.nytimes.com/2024/02/05/arts/design/fowler-museum-asante-kingdom-ghana.html
  Los Angeles museum repatriates Asante artefacts to Ghana(the Art Newspaper 2024/02/05)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/02/05/fowler-museum-los-angeles-asante-repatriation-ghana
  Fowler Museum at UCLA permanently returns objects to Asante kingdom in Ghana(UCLA Newsroom 2024/02/05)
 https://newsroom.ucla.edu/releases/ucla-fowler-museum-returns-objects-to-ghana
  UCLA’s Fowler Museum Returns Gold Objects to Asante King in Ghana(ARTnews 2024/02/06)
 https://www.artnews.com/gallery/art-news/news/uclas-fowler-museum-returns-gold-objects-asante-king-ghana-1234695329/x65-8524/
61) Otumfuo Osei Tutu II receives looted royal artefacts from US museums(Pulse 2024/02/10)
 https://www.pulse.com.gh/articles/news/filla/otumfuo-osei-tutu-ii-receives-looted-royal-artefacts-from-us-museums-2024072415425805351
  Asante Gold: UK returns looted Ghana artefacts after 150 years(BBC 2024/04/11)
 https://www.bbc.com/news/uk-68789512
  Asante gold artefacts: Ghana rejoices as 'crown jewels' looted by British put on display(BBC 2024/05/02)
 https://www.bbc.com/news/world-africa-68925059
  Looted Asante treasures find a new palace home in Ghana(the Art Newspaper 2024/07/10)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/07/10/looted-asante-treasures-find-a-new-palace-home-in-ghana
62) Sacred Ethiopian tablet looted by the British at the battle of Maqdala 155 years ago is returned in London church service(the Art Newspaper 2023/09/25)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/09/25/sacred-ethopian-tablet-looted-by-the-british-at-siege-of-maqdala-155-years-ago-is-returned-in-london-service
63) Westminster Abbey in discussions to return sacred Ethiopian treasure(the Standard 2024/02/09)
 https://www.standard.co.uk/news/uk/westminster-abbey-ethiopian-tablet-benin-bronzes-elgin-marbles-british-museum-b1138152.html
  Westminster Abbey decides ‘in principle’ to return Ethiopian tabot(the Art Newspaper 2024/02/13)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/02/13/westminster-abbey-decides-in-principle-to-return-ethiopian-tabot
64) National Museums Scotland identifies an Ethiopian Tabot(Returning Heritage 2024/04/10)
 https://www.returningheritage.com/national-museums-scotland-identifies-an-ethiopian-tabot
65) Looted Maqdala objects—pulled from rural English auction at the last minute—will be returned to Ethiopia(the Art Newspaper 2021/06/16)
 https://www.theartnewspaper.com/2021/06/16/looted-maqdala-objectspulled-from-rural-english-auction-at-the-last-minutewill-be-returned-to-ethiopia
  Maqdala treasures looted by British troops returned to Ethiopia in 'largest single restitution'(the Art Newspaper 2021/09/10)
 https://www.theartnewspaper.com/2021/09/10/maqdala-treasures-looted-by-british-troops-returned-to-ethiopia-in-largest-single-restitution
66) Auctioneer withdraws looted shield from sale after restitution request from Ethiopian government(the Art Newspaper 2024/02/26)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/02/26/ethiopia-requests-restitution-of-shield-looted-from-maqdala-in-1868
  Ethiopia Calls for British Auction House to Cancel the Sale of a Looted Shield(artnet news 2024/02/27)
 https://news.artnet.com/art-world/ethiopia-calls-for-british-auction-house-to-cancel-the-sale-of-a-looted-shield-2441609
  The Royal Ethiopian Trust Negotiates the Return of Historic Shield from the Battle of Magdala(Royal Ethiopian Trust 2024/10/03)
 https://royalethiopiantrust.org/the-return-of-historic-shield-from-the-battle-of-magdala/
  Maqdala shield to be repatriated to Ethiopia(the Art Newspaper 2024/10/07)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/10/07/maqbala-shield-repatriation-ethiopia-exhibition-toledo-museum
  Ethiopian shield looted by British troops finally returns home after more than 150 years(THE VOICE 2024/11/07)
 https://www.voice-online.co.uk/news/world-news/2024/11/07/ethiopian-shield-looted-by-british-troops-finally-returns-home-after-more-than-150-years/
67) Historic reparation by the University of Glasgow and The University of the West Indies(University of Glasgow 2024/04/23)
 https://www.gla.ac.uk/news/archiveofnews/2024/april/headline_1065608_en.html
  Returning a 170-year-old preserved lizard to Jamaica is a step toward redressing colonial harms(The Conversation 2024/06/03)
 https://theconversation.com/returning-a-170-year-old-preserved-lizard-to-jamaica-is-a-step-toward-redressing-colonial-harms-229339
68) Return of the Gweagal Spears to the La Perouse Aboriginal Community(Trinity College Cambridge 2024/04/23)
 https://www.trin.cam.ac.uk/news/return-of-the-gweagal-spears-to-the-la-perouse-aboriginal-community/
  Cambridge college returns 18th Century Aboriginal spears(BBC 2024/04/23)
 https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-cambridgeshire-68875158
69) Ancestors, artefacts, empire – mobilising Aboriginal objects(the British Museum
 https://www.britishmuseum.org/research/projects/ancestors-artefacts-empire-mobilising-aboriginal-objects
  The British Museum holds thousands of items from Indigenous Australia. Why can't they return them?(SBS 2024/05/21)
 https://www.sbs.com.au/nitv/article/british-museum-act/rc0dxu5gh
70) “Repositioning the Uganda Museum” Project to Repatriate Objects from Cambridge to Kampala(LSA, the University of Michigan 2021/09/14)
 https://lsa.umich.edu/history/news-events/all-news/facultynews/-repositioning-the-uganda-museum--project-to-repatriate-objects-.html
  MAA Cambridge repositions its relationship with Ugandan artefacts(Returning Heritage 2022/12/20)
 https://www.returningheritage.com/maa-cambridge-repositions-its-relationship-with-ugandan-artefacts
  Uganda Reclaims 39 Artefacts from Cambridge University Museum(SoftPower News 2024/06/08)
 https://softpower.ug/uganda-reclaims-39-artefacts-from-cambridge-university-museum/
  Repositioning the Uganda Museum(Museum of Archaeology and Anthropology, University of Cambridge
 https://maa.cam.ac.uk/repositioning-uganda-museum
71) Artefacts loaned to Uganda from ​​University of Cambridge museum ‘not going back’(Museum + Heritage Advisor 2024/06/27)
 https://museumsandheritage.com/advisor/posts/artefacts-from-university-of-cambridge-return-to-uganda/
72) Cambridge Museum Loans Ugandan Artefacts To Uganda. Will Loans Be The Future Status Of African Artefacts In Western Museums?(Modern Ghana 2024/07/07)
 https://www.modernghana.com/news/1325310/cambridge-museum-loans-ugandan-artefacts-to-uganda.html
73) African Collections Futures(Collections Connections Communities, University of Cambridge
 https://www.ccc.cam.ac.uk/initiatives/african-futures/
  Uni finds 350,000 African artefacts in storage(BBC 2024/12/03)
 https://www.bbc.com/news/articles/ckgzk6q715lo
74) RAMM repatriates ceremonial headdress to Siksika Nation at handover ceremony(Museum + Heritage Advisor 2024/06/05)
 https://museumsandheritage.com/advisor/posts/ramm-to-repatriate-ceremonial-headdress-to-siksika-nation-delegation/
75) AIATSIS helps Warumungu Community recover 10 cultural objects from Horniman Museum(Returning Heritage 2024/08/09)
 https://www.returningheritage.com/aiatsis-helps-warumungu-community-recover-10-cultural-objects-from-horniman-museum
  Horniman returns Warumungu artefacts(Museum + Heritage Advisor 2024/09/11)
 https://museumsandheritage.com/advisor/posts/horniman-returns-warumungu-artefacts/
76) Sunhat 'violently taken' by colonisers returned(BBC 2024/11/04)
 https://www.bbc.com/news/articles/cqxw0q9nrpqo
  PR Museum Returns Badeng Sunhat to the Kenyah Badeng Community(Gardens, Libraries and Museums, University of Oxford 2024/11/07)
 https://www.glam.ox.ac.uk/article/pr-museum-returns-badeng-sunhat-to-the-kenyah-badeng-community
  Sunhat looted by British ‘White Rajahs’ returned to Kenyah Badeng community in Sarawak(Returning Heritage 2024/11/08)
 https://www.returningheritage.com/sunhat-looted-by-british-white-rajahs-returned-to-kenyah-badeng-community-in-sarawak
  Almost 130-Year-Old Sunhat Looted By The British Has Been Returned To Sarawak(SAYS 2024/11/12)
 https://says.com/my/news/sunhat-looted-by-british-returned-to-sarawak
77) Maasai families receive cows in recognition of 'culturally sensitive heirlooms' in Pitt Rivers Museum(the Art Newspaper 2023/07/06)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/07/06/maasai-families-receive-cows-in-recognition-for-culturally-sensitive-heirlooms-in-pitt-rivers-museum
78) Maasai group decides objects can remain at Pitt Rivers Museum(Museums Journal 2024/10/03)
 https://www.museumsassociation.org/museums-journal/news/2024/10/maasai-group-decides-objects-can-remain-at-pitt-rivers-museum/
  Maasai delegation decide ancestral objects can remain at Pitt Rivers Museum(Returning Heritage 2024/10/07)
https://www.returningheritage.com/maasai-delegation-decide-ancestral-objects-can-remain-at-pitt-rivers-museum
  How Maasai people were reunited with precious heirlooms(BBC 2024/11/01)
 https://www.bbc.com/future/article/20241031-how-maasai-people-were-reunited-with-precious-maasai-heirlooms
  Living Cultures 2024: Reconnecting With The Objects(the Pitt Rivers Museum
 https://www.prm.ox.ac.uk/living-cultures-2024-the-next-steps
79) Malta wants to bring back treasures taken away during British rule(Times of Malta 2024/01/26)
 https://timesofmalta.com/article/malta-push-return-treasures-taken-country-british-rule.1079859
80) 'It's a violation': African princesses want return of ancestor's stick from Irish museum(Irish Examiner 2024/01/09)
 https://www.irishexaminer.com/news/arid-41304301.html
  African princesses appeal for help from President Higgins to return heirloom(Irish Examiner 2024/01/10)
 https://www.irishexaminer.com/news/arid-41305912.html
81) British Museum’s Instagram flooded with calls to return Easter Island statue(the Guardian 2024/02/18)
 https://www.theguardian.com/culture/2024/feb/18/british-museum-instagram-flooded-calls-return-easter-island-statue
  British Museum accused of silencing critics after being targeted on social media to return Easter Island statues(the Art Newspaper 2024/02/20)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/02/20/british-museum-accused-of-silencing-critics-after-being-targeted-on-social-media-to-return-easter-island-statues
82) Sri Lanka faces barriers in reclaiming priceless artifacts from Britain(EconomyNext 2024/06/04)
 https://economynext.com/sri-lanka-faces-barriers-in-reclaiming-priceless-artifacts-from-britain-166040/
83) Fadli Zon Accuses UK of Holding Indonesian Antiquities(the Jakarta Globe 2024/11/07)
 https://jakartaglobe.id/lifestyle/fadli-zon-accuses-uk-of-holding-indonesian-antiquities
84) A Kenyan tribe’s search for its leader’s stolen skull(Al Jazeera 2024/06/23)
 https://www.aljazeera.com/features/longform/2024/6/23/a-kenyan-tribes-search-for-its-leaders-stolen-skull
85) Anger over decision to auction ancient Egyptian skulls(THE VOICE 2024/04/30)
 https://www.voice-online.co.uk/news/uk-news/2024/04/30/anger-over-decision-to-auction-ancient-egyptian-skulls/
  Dorset auction house withdraws Egyptian human skulls from sale(the Guardian 2024/05/01)
 https://www.theguardian.com/world/2024/may/01/egyptian-human-skulls-pitt-rivers-dorset-auction-house
86) Shrunken heads withdrawn from auction after backlash(BBC 2024/10/09)
 https://www.bbc.com/news/articles/cy4dwg0e0m2o
  UK auction house pulls human remains and signed Jimmy Savile photo: Everything I know(Patrick Pester 2024/10/12)
 https://www.patrickpester.com/post/uk-auction-house-pulls-human-remains-and-signed-jimmy-savile-photo-everything-i-know
87) Pitt Rivers begins process to repatriate human remains(Museums Journal 2025/06/17)
 https://www.museumsassociation.org/museums-journal/news/2025/06/pitt-rivers-begins-process-to-repatriate-human-remains/
  A Bid to Undo a Colonial-Era Wrong Touches a People’s Old Wounds(the New York Times 2025/08/02)
 https://www.nytimes.com/2025/08/02/world/asia/india-naga-repatriation-remains-museum.html
88) Modern day grave robbers are using emojis and codewords to secretly trade real human bones(the Guardian 2024/10/19)
 https://www.theguardian.com/australia-news/2024/oct/20/human-bone-trading-australia-grave-robberies-ntwnfb
  MP calls for government to ban human remains sales: A deep dive(Patrick Pester 2024/11/25)
 https://www.patrickpester.com/post/mp-calls-for-government-to-ban-human-remains-sales-a-deep-dive
89) Untangling the Pasts of Slavery, Colonialism and Art(the New York Times 2024/02/07)
 https://www.nytimes.com/2024/02/07/arts/uk-royal-academy-slavery-entangled-pasts.html
  Is the Royal Academy's 'Entangled Pasts' exhibition radical? Yes—for the Royal Academy(the Art Newspaper 2024/02/27)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/02/27/is-the-royal-academy-entangled-pasts-exhibition-radical
  Catalogue for Royal Academy’s ‘Entangled Pasts’ show unpacks the institution’s problematic past(the Art Newspaper 2024/03/12)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/03/12/catalogue-for-royal-academys-entangled-pasts-show-unpacks-the-institutions-problematic-past
90) Hew Locke: what have we here?(the British Museum
 https://www.britishmuseum.org/exhibitions/hew-locke-what-have-we-here
  ‘It’s quite a thing to do a show here and openly use the word looting’: artist Hew Locke on decolonising the British Museum(the Guardian 2024/10/13)
 https://www.theguardian.com/culture/2024/oct/13/hew-locke-what-have-we-here-british-museum-procession-tate
91) Decolonial introspection or wokery? Spain's plan to review museum criticised by the right(euronews 2024/01/25)
 https://www.euronews.com/culture/2024/01/25/decolonial-introspection-or-wokery-spains-plan-to-review-museum-criticised-by-the-right
92) Decolonizing the museum: beyond victims and villains(EL PAÍS 2024/01/27)
 https://english.elpais.com/culture/2024-01-27/decolonizing-the-museum-beyond-victims-and-villains.html
93) Spain’s Move to Decolonize Its Museums Must Continue(SAPIENS 2024/12/04)
 https://www.sapiens.org/archaeology/spain-state-museums-decolonization/
94) Spain Asserts Ownership of Quimbaya Treasure Amid Colombia’s Legal Recovery Efforts(the Latin American Post 2024/02/02)
 https://latinamericanpost.com/americas/heritage-en/spain-asserts-ownership-of-quimbaya-treasure-amid-colombias-legal-recovery-efforts/
  Colombia Sent a Formal Request to Spain to Return Gold from Their Quimbaya Treasure Joining the Move to Decolonize International Museums(BELatina 2024/05/17)
 https://belatina.com/colombia-sent-a-formal-request-to-spain-to-return-gold-from-their-quimbaya-treasure-joining-the-move-to-decolonize-international-museums/
95) The Claim For the Filandia Collection or Quimbaya Treasure of Colombia Against Spain(the Harvard International Law Journal 2025/03/12)
 https://journals.law.harvard.edu/ilj/2025/03/the-claim-for-the-filandia-collection-or-quimbaya-treasure-of-colombia-against-spain/
  Quimbaya gold treasure now in 3D(Global Digital Heritage 2024/11/15)
 https://globaldigitalheritage.org/quimbaya-gold-treasure-now-in-3d/
  Quimbaya Treasure - Museum of America 3D Models(Sketchfab
 https://sketchfab.com/GlobalDigitalHeritage/collections/quimbaya-treasure-museum-of-america-ac6bf71aa0654f3b87d03376a2484ebe
96) Ethiopia hails return of its first plane, stolen by Mussolini in 1930s(the Guardian 2024/01/31)
 https://www.theguardian.com/world/2024/jan/31/ethiopia-hails-return-of-its-first-plane-stolen-by-mussolini-in-1930s
97) Gold star medal taken from an Ethiopian war hero surfaces at auction(the Art Newspaper 2024/12/02)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/12/02/gold-star-medal-taken-from-an-ethiopian-war-hero-surfaces-at-auction
  Ethiopian resistance hero’s family tries to reclaim medal taken by Italian troops(the Guardian 2024/12/23)
 https://www.theguardian.com/world/2024/dec/23/ethopian-resistance-hero-gold-medal-ras-desta-damtew-auction-italy
  ‘For Ethiopia’s heritage’: War hero’s family fights to reclaim stolen medal(Al Jazeera 2025/01/09)
 https://www.aljazeera.com/features/2025/1/9/for-ethiopias-heritage-family-fights-to-reclaim-a-heros-stolen-medal
98) Remembering: Geneva in the Colonial World(Musée d'ethnographie de Genève
 https://colonialgeneva.ch/accueil-en
  Geneva’s early double standards on colonialism(SWI swissinfo.ch 2024/05/23)
 https://www.swissinfo.ch/eng/international-geneva/genevas-early-double-standards-on-colonialism/77693221
99) colonial – Switzerland’s Global Entanglements(Schweizerisches Nationalmuseum
 https://www.landesmuseum.ch/en/exhibitions/temporary/2024/colonial/colonial-content
  Switzerland's little known colonial past revealed in Zurich exhibition(the Local 2024/10/16)
 https://www.thelocal.ch/20240916/switzerlands-little-known-colonial-past-revealed-in-zurich-exhibition
  Interview: Swiss Colonialism Exhibition(World History Encyclopedia 2024/12/10)
 https://www.worldhistory.org/article/2577/interview-swiss-colonialism-exhibition/
100) Switzerland returns bones, tools of Adivasi to Sri Lanka(EconomyNext 2024/06/13)
 https://economynext.com/switzerland-returns-bones-tools-of-adivasi-to-sri-lanka-167830/
101) Artefacts held in Swiss private collection return to Latin America(SWI swissinfo.ch 2024/10/01)
 https://www.swissinfo.ch/eng/culture/artefacts-held-in-swiss-private-collection-return-to-latin-america/87644401
102) Ancient tree stolen 100 years ago flying home to Australia(yahoo! news 2024/11/29)
 https://au.news.yahoo.com/ancient-tree-stolen-100-years-ago-flying-home-to-australia-024457346.html
  Swiss museum returns dhulu to Australian aboriginal community(SWI swissinfo.ch 2024/11/29)
 https://www.swissinfo.ch/eng/culture/basel-returns-a-dhulu-to-an-australian-aboriginal-community/88379786
103) Norway's Kon-Tiki museum to return Easter Island artefacts(BBC 2019/03/30)
 https://www.bbc.com/news/world-europe-47745112
  Norway’s Kon-Tiki Museum returns artifacts to Chile’s remote Easter Island(AP 2024/11/13)
 https://apnews.com/article/norway-easter-island-artefacts-rapa-nui-bcae9e26ac9c664a427ce118f31e3ebc
104) Swedish Ambassador visits Oba of Benin, announces return of Benin artefacts(the Sun 2024/05/15)
 https://thesun.ng/swedish-ambassador-visits-oba-of-benin-announces-return-of-benin-artefacts/
105) The American Museum of Natural History to Close Exhibits Displaying Native American Belongings(ProPublica 2024/01/26)
 https://www.propublica.org/article/american-museum-natural-history-to-close-native-american-exhibits
  Leading Museums Remove Native Displays Amid New Federal Rules(the New York Times 2024/01/26)
 https://www.nytimes.com/2024/01/26/arts/design/american-museum-of-natural-history-nagpra.html
  US museums cover Native American displays as revised federal regulations take effect(the Art Newspaper 2024/01/29)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/01/29/us-museums-nagpra-native-american-displays-new-regulations
  Indigenous Groups Respond After U.S. Museums Cover Native Displays(artnet news 2024/02/02)
 https://news.artnet.com/art-world/indigenous-groups-respond-display-native-artifacts-museums-2426071
  6 Objects That Explain New Rules on Native Displays in Museums(the New York Times 2024/02/21)
 https://www.nytimes.com/2024/02/21/arts/design/native-displays-museums-law.html
  What the New Federal Regulations for Native American Ancestors and Sacred Objects Mean for Museums(ARTnews 2024/02/21)
 https://www.artnews.com/art-news/news/new-federal-regulations-native-american-ancestors-and-sacred-objects-natural-history-museum-1234696299/
106) Museums closed Native American exhibits 6 months ago. Tribes are still waiting to get items back(AP 2024/08/01)
 https://apnews.com/article/museums-not-returning-native-american-artifacts-0b7428c77341a9a80f022e0167ad4c8b
107) Speed Museum reopens Native American galleries amid new federal guidelines(Louisville Public Media 2024/04/06)
  https://www.lpm.org/news/2024-04-06/speed-museum-reopens-native-american-galleries-amid-new-federal-guidelines
108) Contested Native Artworks Resurface at Art Fair, Drawing Scrutiny(Hyperallergic 2024/04/15)
 https://hyperallergic.com/901598/contested-native-artworks-resurface-at-art-fair-drawing-scrutiny/
109) State Historical Society to receive Chief Spotted Tail donation(South Dakota State News 2024/05/08)
 https://news.sd.gov/news?id=news_kb_article_view&sys_id=bd0a5ee1470e4290854b61d2e16d4303
  After Five Generations, a Family Gave Back the Treasures in Its Closet(the New York Times 2024/11/28)
 https://www.nytimes.com/2024/11/28/arts/design/spotted-tail-repatriation.html
110) Indigenous mound in St Louis is transferred to the Osage Nation(the Art Newspaper 2024/11/21)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/11/21/sugarloaf-mound-st-louis-osage-nation-counterpublic-triennial
111) 注60)61)
112) Fowler Museum at UCLA permanently returns cultural objects to Australia’s Warumungu community(UCLA Newsroom 2024/07/24)
 https://newsroom.ucla.edu/releases/fowler-museum-at-ucla-returns-objects-to-warumungu-australia
  Los Angeles museum repatriates 20 objects to the Warumungu people of Australia(the Art Newspaper 2024/07/29)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/07/29/fowler-museum-returns-objects-warumungu-people-australia
  LAの美術館が略奪文化財20点を「自発的かつ倫理的」にオーストラリアの先住民族に返還(ARTnews JAPAN 2024/02/21)
 https://artnewsjapan.com/article/2541
113) Congolese artists mint NFTs to challenge US museum's ownership of indigenous sculpture(the Art Newspaper 2022/06/15)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/06/15/congolese-artists-mint-nfts-to-challenge-us-museums-ownership-of-indigenous-sculpture
  Ancestral sculpture Balot back in Congo(Mondriaan Fund 2024/03/27)
 https://www.mondriaanfonds.nl/en/current/news/45038/
  Ancestral Sculpture Balot Temporarily returned to Country of Origin(ArtDependence 2024/04/05)
 https://artdependence.com/articles/ancestral-sculpture-balot-temporarily-returned-to-country-of-origin/
  Contested Congolese sculpture returns home, temporarily(the Art Newspaper 2024/04/16)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/04/16/contested-congolese-sculpture-returns-home-temporarily
  Return of colonial-era statue to Congo fuels environmental revival(Reuters 2024/04/23)
 https://www.reuters.com/world/africa/return-colonial-era-statue-congo-fuels-environmental-revival-2024-04-22/
114) University of Iowa Stanley Museum of Art Makes Groundbreaking Restitution of Benin Bronzes to His Majesty, the Oba of Benin(University of Iowa Stanley Museum of Art 2024/07/15)
 https://stanleymuseum.uiowa.edu/sites/stanleymuseum.uiowa.edu/files/2024-07/Stanley%20Museum%20of%20Art_Press%20Release_Benin%20Restitution.pdf
  Iowa museum becomes first in US to return looted Benin bronzes to royal ruler(the Art Newspaper 2024/07/18)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/07/18/iowa-museum-becomes-first-in-us-to-return-looted-benin-bronzes
115) US Supreme Court declines to hear case challenging Smithsonian's restitution of Benin Bronzes(the Art Newspaper 2024/10/11)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/10/11/supreme-court-benin-bronzes-smithsonian-restitution-lawsuit
116) Reckoning with Human Remains in the Smithsonian Collection(Smithsonian
 https://www.si.edu/collections/human-remains
  Human Remains Task Force Report to the Secretary(Smithsonian Institution 2024/01/10)
 https://www.si.edu/sites/default/files/about/human-remains-task-force-report.pdf
  The Smithsonian’s Human Remains Task Force Calls for New Repatriation Policies(Smithsonian Magazine 2024/02/22)
 https://www.smithsonianmag.com/smart-news/smithsonian-human-remains-task-force-calls-for-new-repatriation-policies-180983829/
117) Smithsonian moves towards ‘informed consent’ principle for human remains(Museums Journal 2024/03/12)
 https://www.museumsassociation.org/museums-journal/news/2024/03/smithsonian-moves-towards-informed-consent-principle-for-human-remains/
  Perspectives on human remains(Museums Journal 2024/06/07)
 https://www.museumsassociation.org/museums-journal/features/2024/06/perspectives-on-human-remains/
118) Harvard Peabody Museum Returns Five Ancient Mummies to Denmark(the Harvard Crimson 2024/06/07)
 https://www.thecrimson.com/article/2024/6/7/peabody-museum-mummies-greenland/
119) Museum of Natural History Says It Is Repatriating 124 Human Remains(the New York Times 2024/07/26)
 https://www.nytimes.com/2024/07/26/arts/design/american-museum-natural-history-native-american.html
120) FOURTEEN FIRST NATIONS ANCESTORS RETURN TO COUNTRY FROM CALIFORNIAN INSTITUTIONS(Ngaarda Media 2024/11/08)
 https://www.ngaardamedia.com.au/news/fourteen-first-nations-ancestors-return-to-australian-soil-from-californian-institutions
  Australia traded human remains for a prehistoric tiger skull. Decades later, they're coming home(ABC NEWS 2024/11/09)
 https://www.abc.net.au/news/2024-11-09/human-remains-traded-for-animal-parts-returned-to-australia/104579934
121) Remains of 7 Oneida Indian Nation Ancestors Repatriated from Harvard University(Oneida Indian Nation 2024/12/04)
 https://www.oneidaindiannation.com/remains-of-7-oneida-indian-nation-ancestors-repatriated-from-harvard-university/
  Harvard Returns the Remains of 7 Ancestors to the Oneida Indian Nation(the Harvard Crimson 2024/12/05)
 https://www.thecrimson.com/article/2024/12/5/peabody-repatriates-ancestors-oneida-nation/
122) Penn Museum has laid to rest 19 skulls from its Morton Cranial Collection(WHYY 2024/02/01)
 https://whyy.org/articles/penn-museum-burial-remains-morton-collection/
  Amid a Fraught Process, a Philadelphia Museum Entombs Remains of 19 Black People(the New York Times 2024/02/03)
 https://www.nytimes.com/2024/02/03/us/upenn-burial-science.html
123) Slavery exhibition opens today at UN(Rijksmuseum 2023/02/27)
 https://www.rijksmuseum.nl/en/press/slavery-exhibition-un
  Ground-breaking exhibit on slavery gives new generation ‘hope for humanity’(UN News 2023/03/05)
 https://news.un.org/en/story/2023/03/1134127
124) The ICOM International Museum Research and Exchange Centre (ICOM-IMREC) is an international research and exchange platform concerning the museum field and its related areas.(ICOM
 https://icom.museum/en/research/icom-imrec/
 https://www.youtube.com/watch?v=HunPzfV6IEU&list=PL4c39BYnfCsduXDFpE4nkwmnboNn4BVwq
  Publication of the Seminar on “Museums, Decolonisation, and Restitution” Released(ICOM 2025/06/09)
 https://icom.museum/en/news/publication-of-the-seminar-on-museums-decolonisation-and-restitution-released/
125) 『文化をつなぐミュージアム―伝統を未来へ―』第25回ICOM(国際博物館会議)京都大会2019報告書、国際博物館会議(ICOM)ICOM 京都大会 2019 組織委員会、2020年。25頁。
 https://icomjapan.org/wp/wp-content/uploads/2020/03/JP_ICOM2019_FinalReport.pdf
126) More countries join cultural heritage alliance, deepening dialogue on civilizations(the Global Times 2024/06/19)
 https://www.globaltimes.cn/page/202406/1314429.shtml
  China’s new proposal of returning lost cultural objects earns international support(the Global Times 2024/06/20)
 https://www.globaltimes.cn/page/202406/1314543.shtml
  亚洲文化遗产保护联盟理事会第二次会议在青岛召开(中国艺术品鉴定网 2024/06/21)
 http://www.jiandingwang.com/article/list/index_text_new?detail=true&id=4869
  殖民背景流失文物保护与返还国际研讨会在青岛召开(中国艺术品鉴定网 2024/06/21)
 http://www.jiandingwang.com/article/list/index_text_new?detail=true&id=4870
  关于保护和返还殖民背景下流失或通过其他非正义、非道德方式 获取之文物的青岛建议书(中国艺术品鉴定网 2024/06/21)
 http://www.jiandingwang.com/article/list/index_text_new?detail=true&id=4871