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蔵王と山形市周辺の温泉 byやませみ

蔵王温泉について

国内の数ある酸性泉のなかでも、蔵王温泉は成分の濃厚さで王者の位置にあります。「最上高湯」といわれた古湯ながら、スキー場の温泉というイメージが強いせいか温泉ファンには意外に敬遠され、いわゆる「名湯」のガイド誌などでも存外に軽い扱いになっているのは残念なことです。

スキー場の前面に開ける温泉地の領域は広大ですが、かつての温泉場は旧温泉街の狭いエリアで、自然湧出する多数の小源泉が各旅館の自家源泉として利用されています。大型ホテルの立ち並ぶ新温泉地区は近年の引湯事業で開けたもので、源泉は一度川から三度川のそれぞれ上流にあります。

いささか古い資料ですが、山形県の1987年源泉調査では、
   旧温泉街源泉群 33カ所 40.1〜50.5℃ 4100 L/min
   一度川源泉群 12カ所 40.0〜53.5℃ 1600 L/min
   二度川源泉群 5カ所 50.0〜65.0℃ 2200 L/min
   三度川源泉群 2カ所 52.3〜55.8℃ 870 L/min

現在の蔵王の源泉はどこもかなり熱いですが、昔はもっと低温で、浴用にできるのは旧温泉街のごく一部の源泉だけだったようです。大湯共同浴場の1950年の記録では43℃、1881年にさかのぼると39℃で「冷えの湯」とか「子供の湯」と呼ばれていました。一度川などの源泉地ではもっと低温で、もっぱら湯の花採取にのみ利用されていました。

ところが、1950年代以降になって各源泉の温度がどんどん上昇するようになり、浴用に利用できる湯量が飛躍的に増大しました。ちょうどスキー場開発が盛んになった時期でもあり、新規にできたホテルなどでも新たに源泉を掘削したりしないで温泉を供給できるという、全国でもまれな発展過程をみています。





【蔵王温泉1】

 

■蔵王温泉「上湯共同湯」

  TEL/023-694-9328(蔵王温泉観光協会) 630-2230時 200円

<掲示> 脱衣所に分析表
  近江屋3号源泉 H1.12 蔵王温泉47
  酸性Fe・SAlSO4・Cl 49.7℃ pH=1.35 総計=7119 ER=3487
  H=44.4(47.6) Al=279.9(33.6) Fe(II)=68.5
  Na=67.9 K=60.0 Mg=63.7 Ca=102.0 Mn=2.3
  Cl=808.8(24.6) HSO4=2833(31.5) SO4=1886(42.4) F=27.5 Br=0.8 I=0.5
  H2SiO3=221.2 HBO2=8.6 CO2=634.0 H2S=10.3 mg/kg (mval%)

旧湯温泉街の上部、かつて「大湯」といわれた歴史ある共同湯です。すぐ前の駐車場は狭いので引き返す車がかなり多いです。蔵王体育館Pに停めて少し歩くほうが無難でしょう。温泉街の道路もたいへん細いのでうかつに進入するとすれ違えずに苦労します。

浴場は男女別の内湯のみで、カラン等の設備はいっさい無いので純粋に漬かるだけの湯です。3.6mx1.6mの大きめな浴槽が浴室の大半を占め、湯面ぎわのパイプから48℃の湯が50 L/minほど注がれて熱め44℃。浴槽全体からしずしすと溢れていきます。たたき部分に湯花が付いて滑りやすいので要注意。

緑がかった澄んだ湯は鮮度が高いです。イオウ臭と明礬臭の混じった酸っぱく焦げたような荒削りな匂いが浴室に充満しています。レモン汁を濃縮したような強い酸味と渋みで、口中がぎしぎし鳴るような収斂(しゅうれん)味は数ある酸性泉のなかでも横綱級。

全身をぎゅーっと締め付けてくるピリピリ緊張した浴感がたまりません。それと同時に硫酸で皮膚が溶けるようなぬるっとした感触もあり、うかつに長湯すると危ないぞと頭の中で別の自分が警告を発しています。(2003.10.19)


背後はおおみや旅館です

左中央が湯口です



■蔵王温泉「おおみや旅館」

  山形県山形市蔵王温泉46 TEL/023-694-2112 湯めぐりこけし 1030-14時
  http://www.zao-onsen.co.jp/

<掲示> 浴室入口に分析表
  近江屋2号源泉 H1.12 蔵王温泉47
  酸性Fe・SAlSO4・Cl 48.6℃ pH=1.40 総計=6474 ER=3223
  H=39.8(45.9) Al=274.2(35.4) Fe(II)=69.9
  Na=59.7 K=52.7 Mg=62.9 Ca=87.5 Mn=2.1
  Cl=743.9(24.3) HSO4=2484(29.7) SO4=1844(44.5) F=24.9 Br=1.0 I=0.4
  H2SiO3=213.2 HBO2=8.2 CO2=497.5 H2S=8.5 mg/kg (mval%)

  近江屋源泉 H1.12*
  酸性泉 43.3℃ pH=1.3 総計=8857 ER=3489
  H=46.3(44.0) Al=355.8(37.9) Fe(II)=94.9
  Na=107.0 K=28.6 Mg=50.0 Ca=120.3 Mn=2.8
  Cl=922.4(24.9) HSO4=4459(43.9) SO4=1554(30.9)
  H2SiO3=164.4 HBO2=3.8 CO2=910.4 H2S=27.5 mg/kg (mval%)
  *) 日付だけ貼り替えられている

上湯の背後に建つ蔵王きっての老舗旅館です(平安時代の創業という)。白塗りの外観はまったく味気ないですが、館内は木材を多用した黒基調のシックな和の風情で重厚な雰囲気が漂います。いかにも高級そうでちょっと緊張しますが、立ち寄りにも親切な対応でほっとしました。

浴場は石垣で覆われた崖から自然湧出する4カ所の源泉を直近で利用できるように設けられています。男女が昼夜交代制のようで、昼間は右側が男湯でした。

総木造の内湯には1.7mの四角い浴槽が2個、お雛様のように行儀良く並んでいます。左側は「泡風呂」と札があり、槽内のパイプから気泡を伴って39℃の湯が推定40 L/minほど入りぬるめ38℃。青緑がかった澄んだ湯で、レモン様の酸味収斂味とともに明瞭な炭酸の清涼味を感じます。蔵王の源泉は遊離炭酸を多く含むのが特徴ですが、この湯ではその存在感をはっきり認識させてくれます。ぬるめのこともあって入浴感が優しく、ここはたいへん気に入りました。

右側は「檜風呂」と札があり、瓢箪ふうの妙な湯口から43℃の湯が40 L/minの投入で熱め42℃。灰色のささ濁りで、酸味・収斂味とも少し薄い感じです。

露天は1.7mの四角い木製浴槽で、「近江屋3号」と札がある石垣に差し込まれた木樋から直に44℃の湯が10
L/minほど少量注いでぬるめ39℃。緑灰色のとろりとした濁り湯(30cm)で、焦げ酸っぱいイオウ臭がたいへん強く、何度も湯を鼻先にかざしては陶然としておりました。ぬるめのほうが明礬臭が控えめになり、そのぶんイオウ臭が前面に出てくるのかと思います。

女湯(左側)の浴室も拝見しました。露天は「近江屋2号」と札があり、やはり石垣から木樋で直に湯が入っています。内湯は「玉子風呂」と札のある大きめな楕円形の1槽で、美しい緑白色に濃く濁った湯です。

ぬるめなので不思議に思い、窓外を見ると木樋の途中で少し加水されていました。男湯の「檜風呂」も同じ木樋の分岐らしいのでやはり加水されているのでしょうか。源泉温度が微妙なところなので、無加水の少量投入と加水の大量投入ではどちらがよいか悩むところです。

以上計5カ所の浴槽があるわけですが、それぞれ微妙に違いがあってとても楽しく、宿泊してじっくり堪能してみたい湯です。(2003.10.20)


泡風呂はぬるめで炭酸気があります

白濁が濃い女湯側のたまご風呂

石垣から湧出しています




■蔵王温泉「高見屋旅館」

  山形県山形市蔵王温泉54 TEL/023-694-9333 湯めぐりこけし 10-12・15-20時
  http://www.zao.co.jp/

<掲示> 浴室入口に古い分析表
  高見屋源泉 S26.7
  酸性泉(含硫化水素強酸性明ばん緑ばん泉) 42.8℃ pH=1.3 総計=8588 ER=3370
  H=45.6(45.6) Al=334.3(36.8) Fe(II)=91.3
  Na=105.5 K=30.5 Mg=50.1 Ca=114.6 Mn=2.69
  Cl=918.8(25.7) HSO4=4386(44.8) SO4=1424(29.4)
  H2SiO3=163.2 HBO2=3.5 CO2=882.2 H2S=24.6 mg/kg (mval%)

温泉街の最上部に建つこちらも蔵王を代表する老舗です(享保年間の創業)。黒い梁に白壁の木造3階は、最近の改築ながら重厚な堂々としたつくりに圧倒されます。みすぼらしい格好で入るにはかなり勇気がいりますが、玄関まわりに控える法被の若い衆は入浴だけと告げても愛想良く出迎えてくれます。

浴舎は2カ所ありますが、奥の山水荘が改装中なので「せせらぎの湯」は休みでした。宿の前面に湯屋がある「長寿の湯」にも桶露天が脱衣所に直結するように改装されています。

湯殿つくりの内湯は湯気抜きが高く乾燥していて快適です。切り子の大正ガラスからのソフトな採光もとても良いです。浴室の半ばを2.7x1.5mほどの木製浴槽が占め、木筒湯口から49℃の湯が10 L/minほど少量投入されてぬるめ41℃。

緑灰色の濁り湯(20cm)は鮮度はあまり高くないですが、そのぶん攻撃的な浴感は弱まり滑らかなとろみのある柔らかい感触になっています。上湯の新しい湯も荒削りで好きですが、こちらもまた別の良さがあって甲乙つけ難い気がします。

新造の桶風呂はいったん脱衣所に上がって入ります。四周が囲われているので眺望はありませんが、外気が通って涼しいです。径1.3mの浅めの桶に、ちょっと無粋な黒いパイプから49℃の湯が10 L/minの投入で熱め適温42℃。鮮度は中間的といったところでしょうか、新しい木の香りに包まれての入浴はとても清々しい気分です。(2003.10.20)


ずいぶん大きな高見屋の遠景

優しい情緒の漂う内湯です


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