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レジオネラ菌に安全な温泉の見分け方 2002年2月

県の温泉関係業務を担当されているKさんから2002年2月にいただいたメールです。

温泉の安全性について

新聞(注1)で、このホームページのことを知り、拝見させていただきました。こういった、ホームページが、温泉利用者に大きな影響力があるだろうと考え、メールを送らせていただきました。

実は、私は、行政で温泉関連の仕事をしております。この業務に関連して最近問題となっておりますのは、レジオネラ属菌を原因とするレジオネラ症の問題です。 レジオネラ属菌が繁殖している浴槽に入浴した場合、老人や子供等の体の弱い人は、レジオネラ肺炎を発症し、酷い場合には死亡するのです。

最近、某県の担当者から聞いた情報では、60件の公衆浴場(温泉を使用しているかどうかは聞いておりませんが・・・。)を調査したところ、6割の施設からレジオネラ属菌が検出されたとのことです。また、平成11年9月に感染症新法(注2)が施行されたことに伴い、レジオネラ症が4類の感染症となり、医者に保健所への報告義務が課せられました。

このため、従来は、単なる肺炎とされていたものが、レジオネラ肺炎と認定され、保健所に報告されることが多くなっております。私ども行政担当者は、このような事実を踏まえ、体の弱い人が保養のために温泉に行くことは、非常に危険なことだと認識しております。

昔は、問題とならなかったこのレジオネラ属菌が、最近問題となっているのは、浴室に設置された循環ろ過装置が主な原因だろうと考えております。循環ろ過装置が盛んになった経緯については、松田忠徳先生の「温泉教授の温泉ゼミナール」(光文社新書)にも述べられておりますが、少ない温泉を有効利用するために、今日では盛んに利用されている様です。

資源の有効利用という面からは、この循環ろ過装置は非常に好ましいものなのですが、利用者の安全という面からは非常に危険なものだと考えます。私も最近知ったことなのですが、昔からある銭湯にもこの循環ろ過装置が利用されております。しかし、一般に銭湯では毎日1回浴槽水が交換されているため、レジオネラ症を発症した人が今までいなかったのです。

毎日換水しないで循環ろ過装置を利用している施設では、1カ月も浴槽水を交換しない例もあるとのことです。最近、東京都で銭湯の薬湯を利用した客がレジオネラ症を発症したことが新聞で話題になりましたが、銭湯初の事件だそうです。これは、経営が厳しい銭湯が、客へのサービスとして薬湯を提供し、薬湯のために、塩素消毒が効かなかったことが原因だそうです。

こういった事実を踏まえ、温泉を楽しむ方にも、安全ということを選択の重要な要素としていただきたいと考えております。それでは、どうすれば、安全な温泉を選別できるのが、いくつかの選別方法をご説明します。

1 循環ろ過装置を利用していないこと。

銭湯の例でも御説明したとおり、循環ろ過装置を利用していても、安全に管理している場合には、レジオネラ症を発症することはありませんが、アルカリ性の強い温泉の場合には、塩素消毒が効かない等温泉の場合には問題が多く、循環ろ過装置が使われていない温泉の方が安全なことは間違いがありません。この見分け方については、前述の松田先生の本にも記載されておりますが、率直に店の営業者に聞いてみるのも良いかと思います。

2 エアロゾル発生装置が設置されていないこと。

ジャグジー、打たせ湯、気泡発生装置等のエアロゾルを発生する装置が浴槽に付いている場合には、浴槽水にレジオネラ属菌が発生した場合、肺にレジオネラ属菌を吸い込み、レジオネラ症を発症する可能性が高いため、危険です。特に、循環ろ過装置を利用している浴槽にこれらの施設がある場合は危険です。

3 貯湯槽の水温が60℃以上であること。

温泉と呼ぶためには、水温が25℃以上あればよいので、温泉の貯湯槽の温度は、必ずしも60℃以上ある訳ではありません。レジオネラ属菌は、60℃以下の水温で繁殖するため、貯湯槽の水温が60℃以下の場合には、貯湯槽においてレジオネラ属菌が繁殖する可能性があります。この場合には、循環ろ過装置を使用していなくても、エアロゾル発生装置が付属していれば、利用者が、レジオネラ症を発症する可能性がありますし、エアロゾル発生装置が付属し
ていなくても、うっかり寝込んでしまったり、東京の銭湯の例の様に、病気のために意識を失い、肺に浴槽水が入った場合には、やはり、レジオネラ症を発症する可能性があります。

4 結論として

原湯の温度が60℃以上あり、浴槽に60℃以上の高い温度のまま給湯しており、循環ろ過装置とエアロゾル発生装置を設置していない浴槽が安全ということになります。

先述したとおり、私ども行政担当者は、高齢化とともに体の弱った老人が保養のために温泉に入る機会が多くなり、レジオネラ症を発症する人がますます増加するだろうと危惧しております。我々も、関係営業者に衛生管理の徹底を指導しておりますが、正直申しまして、業者の衛生意識は非常に低いことが現状ですし、意識が高い営業者であっても、循環ろ過装置を安全に管理することは非常に難しいのです。

したがって、利用者の方にも、十分に安全に注意し、営業者に安全に対する意識を高めるようプレッシャーをかけていただきたいのです。実際、たまたまレジオネラ症に罹っていないというのが、実情かもしれないのですから・・・・・。ぜひぜひ、よろしくお願いいたします。



<補足の追加メール>

一般に、我々業界において、レジオネラ属菌は、どこにでもいる菌で、これを完全に防ぐことは、非常に難しいと認識されていることも事実です。ちなみに、私の所属する部署では、旅館業法と温泉法も担当しておりまして、公衆浴場法及び旅館業法は、厚生労働省管轄で、温泉法は、環境省の管轄となっております。温泉法は、温泉の掘削等の規制をしておりまして、浴場施設についての、衛生管理については、厚生労働省管轄となっております。

厚生労働省からは、一昨年の12月に公衆浴場及び旅館の衛生等管理要領(注3)が出されて、先程指摘した、貯湯槽の温度を60℃以上に保つこと、循環ろ過装置を使用している浴槽に、エアロゾル発生装置を設置しないことは、この中に記載されております。

しかし、循環ろ過装置を使用してはいけないとの記述はありません。これは、先程も述べたとおり、適正に管理すれば、問題がないという面もありますし、それ程、循環ろ過装置が普及しているという面もあると考えます。

我々行政担当者が、苦慮していることは、この衛生等管理要領が、単なる指導の指針であって、なんら法律的な強制力がないとういことです。ですから、保健所で立入調査を実施した場合でも、正直なところ施設の改善については、あまり強くは言えないといった面があります。

しかし、第二の薬害エイズ問題や狂牛病問題にはしたくないとの気持ちもあります。そんな訳、温泉愛好者である千葉様にも、一つ御協力いただき、利用者の安全意識を高めていただきたい訳です。ご質問がありましたら、微力ながら、出来る限り調べてお答えしたいと思っております。

(注1)毎日新聞2002年2月13日(水)17面「立ち寄り温泉の上手な利用法」
(注2)感染症新法「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」平成10法律第114号
(注3) 公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について(2000.12.15厚生省生活衛生局長通知)
※注はクマオがつけました。


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