レジオネラ菌問題

レジオネラ菌といえば、数年前に24時間風呂の装置で問題となってから、なんとなくお風呂の怖い細菌という程度しか分からなかった。温泉施設にもレジオネラ菌の脅威が切実にあることが分かってきたので、レジオネラ菌問題がどういうことなのか調べてみた。(2002年2月)

レジオネラ症

レジオネラ症は、1976年にアメリカのフィラデルフィアのホテルで米国在郷軍入会総会が開かれ、その参加者が集団で原因不明の肺炎がかかったことが発見の発端だ。このとき221名が発症し、34名が死亡した。この病気は在郷軍人会Legion(レジオン)の名前をとって「レジオネラ症Legionella」という病名がつけられた。

レジオネラ症の症状は、レジオネラ肺炎とポンティアック熱の2種がある。ポンティアック熱はインフルエンザのような症状で治るものだ。一方のレジオネラ肺炎(別名:在郷軍人病)は劇症といわれるほど悪化が早く、死亡率も高い。このためレジオネラ症は、マラリアと同様に保健所に届け出る義務がある病気とされている。

レジオネラ菌

レジオネラ症は、レジオネラ属菌が感染して起こる病気だ。レジオネラ菌には多種類がるので、レジオネラ属菌と呼ばれ、毒性は異なっている。このレジオネラ属菌は土壌や河川、湖沼など自然界に広く生息している。この菌は酸や熱に強く、50度のお湯の中でも死滅しない。

レジオネラ属菌はアメーバなどの原虫に寄生して増殖する。自然界では大量増殖するものではないため、普通は人間に感染するものではない。発見当時は、大変な病原菌と考えられていたが、現在は幼児や老人など体の弱った人に感染するものと考えられている。



×1000 赤色がレジオネラ菌 
東京都衛生研究所のサイトから引用

感染経路

土壌や淡水に生息しているレジオネラ菌が土ぼこりとともに空調設備の冷却塔などに入り、増殖した菌が冷却水の工アロゾル(目に見えないような細かい水滴とともに飛散し、人の呼吸器系に侵入してレジオネラ症を起こすといわれている。

レジオネラ菌はお湯の中でも死滅せず、よどんだ水の中で増殖するので、カロ湿器、給湯設備、循環式浴槽、人工の滝や噴水などが感染源となることがあり、特に昨今の温泉施設においても深刻な問題となっている。

レジオネラ菌への感染は人から人へは感染しない。エアロゾルを吸い込んで肺に感染する。このため、もし浴槽にレジオネラ菌が増殖していれば、ジャグジーや打たせ湯などでミスト状のお湯を吸い込むことで感染することになる。

日本での感染例

レジオネラ菌による感染例を研究機関などのサイトから拾ってみると、日本でもたくさんある。特にレジオネラ症の報告義務が決められた感染症新法ができてからは、報告数が増加している。

1998年5月
東京都内の特別養護老人ホームの循環風呂で1人感染、死亡。
1999年6月に名古屋市の病院で水中出産での感染と考えられ新生児が死亡。
2000年3月
静岡県掛川市の温泉利用の入浴施設で、23人感染、2人死亡。
2000年4月
山形県大江町の温泉利用の入浴施設で、2人感染。
2000年6月
茨城県石岡市の総合福祉センター内の入浴施設で、疑いのあるものを含め42人感染、3人死亡。
2000年7月
愛知県名古屋市の大学附属病院の24時間風呂で1人感染、死亡。

温泉施設でのレジオネラ問題

温泉の湧出量が少なくても、湯船のお湯を循環させたり、温泉水をタンクに貯めてから配給するなどすれば、大きな温泉施設を作ることができる。しかし循環したり貯めたお湯はレジオネラ菌の増殖装置になってしまう恐れがある。

当サイトで紹介している各地の立ち寄り温泉施設、特に自治体などが作ったいわゆるセンター系の温泉施設にはほとんどといってよいくらい温泉の循環装置がついている。そもそも掛流しであればレジオネラ菌の心配はいらないが、管理の悪い循環浴槽であれば本当にレジオネラ菌が発生している恐れが大きい。

特にそのような大きな施設では、打たせ湯やジャグジーがあって、エアロゾルによる感染の危険性がより高くなっている。気持ちよくジャグジーに入って長湯をすると、もしかするとレジオネラ菌を肺いっぱいに吸い込んでいるかもしれない。


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