8.寅さんの啖呵売
寅次郎の真骨頂、啖呵売です。リズム感をもってテンポ良く読んで下さい。
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*流れる啖呵売*
                 角は一流デパート赤木屋、黒木屋、白木屋さんで紅白粉(べにおしろい)つけた お姉ちゃんから下さい頂戴で頂きますと五千が六千、七千が八千、一万円はする品物だが今日はそれだけ下さいとは言わない! 並んだ数字がまず一つ。物の始まりが一ならば国の始まりが大和の国、 島の始まりが淡路島、泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、助平の始まりがこのオジサンっての。 続いた数字が二だ。二冊こうやって負けちゃおう。兄さん寄ってらっしゃいは吉原のカブ 仁吉(にきち)が通る東海道、日光結構東照宮、憎まれ小僧が出来ないように、教育資料の一端としてお負け しましょうもう一冊。どう? 産で死んだが三島のお仙、お仙ばかりが女ごじゃないよ。京都は極楽寺坂の門前でかの有名な 小野小町が、三日三晩飲まず食わずに野たれ死んだのが三十三。とかく三という数字はあやが悪い。 三三六歩(さんさんろっぽ)で引け目が無いという。ねっ、どう? 負かった数字が四つ。ほら四冊目。四谷赤坂麹町(よつや あかさか こうじまち)チャラチャラ流れる御茶ノ水、粋な姐ちゃん 立ちションベン。白く咲いたか百合の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭い。 一度変われば二度変わる三度変われば四度変わる、淀の川瀬の水車(みずぐるま)、誰を待つやらくるくると。 ゴホンゴホンと波さんが、磯の浜辺でねぇあなた、あたしゃあなたの妻じゃもの、妻は妻でも 『阪妻(ばんつま)よ』ときやがった。続いた数字が六つ。六だっ! 昔、武士の位を禄(ろく)という後藤又兵衛が槍一本で六万石。ロクでもない餓鬼が出来ちゃあいけないと 言うんで教育資料の一端としてお負けしましょうこの本。どう! 七冊目。七つ長野の善光寺八つ谷中(やなか)の奥寺で、竹の柱に茅(かや)の屋根、手鍋下げてもわしゃ いとやせぬ。信州信濃の新ソバよりも、あたしゃあなたの傍が良い。あなた百までわしゃ九十九まで、 共にシラミのたかるまでって云うやつ。どう? ほらっ! これで買い手が無かったらあたし、浅野匠頭(あさのたくみのかみ)じゃないけど腹切ったつもり。ダメか? いくら見てたってダメ。いくら見てたって買わなきゃ。ね、そうでしょ? いくら掘っても畑にゃハマグリ出てこないっていうじゃないの。どう? たいしたもんだよ蛙のションベン見上げたもんだよ屋根屋のふんどしってね。はい! どうです? お安く負けちゃうよ。なぜこんなにお安い品物かと言うと、本来ならばこれ輸出する 品物ですよアンタ。なんで輸出が出来ないかというと、はっきり言っちゃおう! 今まで言わなかったんだ。 わたくしが知っている東京は花の都、神田は六方堂という大きな本屋さんが、僅か百五十万円の税金で泣きの 涙で投げ出した品物! だからこんなに安い。本来ならば文部省選定、衛生博覧会ご指定、大変な品物だこれ。 これだけ安く売っちゃおう。英語の本なんか見てごらんなさいよ。英語、ずーっと書いてある。 最もわかり易いよ、この英語見てごらん。あたしだって読める。NHKにマッカーサー、メンソレタームにDDT。 こういう昔の古い英語から出てるんだから、買って頂戴よ。どう? はいっ! どうも有難うございました!












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