552−1.環境と文明の世界史(2)



「環境と文明の世界史」 石弘之・安田喜憲・湯浅赳男 洋泉社新書
今回は、縄文時代からローマ文明までを見ましょう。  Fより
「環境と文明の世界史」を読んで、面白い所を紹介しているので、
完全に知るなら、洋泉社新書を読んでください。これは近年に稀な
面白い本だと思います。

4.三内丸山遺跡について
古代文明より5700年前、今から1万4500年前に三内丸山遺
跡が存在したことが重要。定住革命を成し遂げている。1500年
ぐらいは住んでいたようです。
縄文人は、日常的に豊かな物質生活を享受していた。どうして分か
るかというと、至る所から日用品として使ったと思われる漆器のお
椀、ヒスイ、黒曜石、骨角器などが大量に出てくる。

三内丸山遺跡からは、古代文明と違い人を殺す武器が出てこないが
整然とした都市計画のような物があったようだ。海岸に向かう道路
の傍に墓地が配列され、土器塚のようなマウンドが意味を持った場
所として配置されている。それと、共同の便所もあったようですか
ら都市と読んでもいいのではないでしょうかね。

5.地球寒冷化と古代文明を滅ぼした2大民族
紀元前2000年頃に環境の大きな変化があった。気候が寒冷化、
乾燥化したのです。その時期に、長江やインダスの古代文明を消滅
させる人たちが拡大する。西ではインド・ヨーロッパ語族、東では
畑作・牧畜の漢民族が爆発的に拡大するのです。ある環境変動が起
きると、その変動に素早く適応した人類集団が一気に広がる。
そして、牧畜民は環境変動期に爆発的に拡大し、定住民族は環境変
化に弱いのです。この時代は「精神革命」の時代でもある。

つまり、巨大宗教、巨大哲学の誕生があった。1つがギリシャ哲学
もう1つが儒教です。年降水量500ミリ程度で、ヤギやヒツジを
飼うと、森林が荒廃すると回復できないわけです。このため、農地
の荒廃してくる。このこうな事態にギリシャは陥り、ソクラテスや
プラトン、アリストテレスなどの哲学者がでてくる。このような
哲学者がでてくる引き金が環境破壊・危機なのです。

古代文明の破壊者は鉄器を持っている。この鉄器製造は自然界への
激しい破壊力を持つが、青銅器文明を駆逐する。また、その武器の
強さゆえに激しく環境を破壊できることになる。両民族は森林の破
壊者でもあるのです。鉄器製造には大量の木が必要であったためで
す。

6.灌漑農業と天水農業
インド・ヨーロッパ民族と漢民族はなぜ、地域覇権を握れたか??
それは水と鉄です。水がありすぎると植生は森になり、なさすぎる
と植物は育たないで、砂漠になってしまう。その間の非常にきわど
い接点で農耕は出発したようです。このため、古代文明は治水工事
をしたのです。しかし、メソポタミア文明は700年程度やってい
ると、真っ白な粉が浮くほどのすさまじい塩化になるのです。これ
は旧ソ連がやったアラル海周辺の灌漑農業の現状と同じですね。
そして、農地はダメになるのです。
エジプト文明は、ナイル川の氾濫を利用して、上流の栄養素や土を
利用した農耕であるため、メソポタミア文明のようなことにならず、
最終的にはローマ文明に滅ぼされることになるのです。クレオパト
ラとアントニオのお話がそうですね。

それでは、ギリシャ・ローマ文明はどうであったかというと、天水
農業です。農耕の後に遊牧革命がくるのです。塩害が起こらない。
家畜をコントロールする経験から人間達のコントロールもできるよ
うになった。農耕民をコントロールするのである。
実はエジプトは征服されて農業が崩壊したわけではなく、「ローマ
皇帝のパン籠」になるわけです。

古代文明を支えたのは灌漑農耕、古典古代文明は天水農業なのです。
ローマ文明を見ると、地中海は2圃制の天水農業です。天水農業は
市民が独立独歩で生きられるのです。灌漑農業では水の管理が重要
であり、農民は付属物になるのです。天水農業は自営農民を生むの
です。天水農業は塩害が起きにくい。水をやらないため、地下の塩
が地表面に上がってこない。

7.森の破壊と金属器
ギリシャは、始め、森の半島であったのです。しかし、文明が繁栄
するとともに森林破壊をして、衰退するのです。ギリシャは青銅器
や陶器を輸出していたので、製品をつくるために大量の燃料が必要
でした。さらにこの輸出をするため船も必要です。この船をつくる
ためにも木がなければならない。文明の資源としては木は必需品だ
ったわけです。

紀元前2000年ヒッタイト帝国で鉄器ができるようになったが、
帝国崩壊で周辺諸国にその技術が広まった。鉄は精錬炉、溶鉱炉が
必要です。中央アジアにある金属遺跡の存在は、当時まだ豊富な
森林資源があったことを示唆しているはずです。
レバノン杉が有名ですが、これは鉄の燃料ではなく、神殿の建設材
料、船の材料などに大量に利用されたようです。

人類が文明というものを手にして爆発的に拡大した契機は金属器を
持ったことです。そして、ギリシャは工業国であったことです。
イオン銀山は、銀の大量採掘と精錬の煙で、銀山周辺では木が枯れ
、人々が健康に苦しんだと記述されている。ローマ文明も同じよう
な工業国であったのです。

ポンヘイの遺跡では、焼け跡みたいにあちこちで鉛管が露出してい
る。ローマは水道管の鉛害で滅びたという説があるくらいです。
ローマ人は大量の鉛を使用したことが知られている。森を破壊して
そのような金属器を作ったのです。


コラム目次に戻る
トップページに戻る