545.ロシア情勢



国際戦略コラム 編集者さま

いつも楽しく拝見しています。ところで、ロシアからのニュース
おそらくそちらにも届いているかと思いますが、EUが将来的なエ
ネルギー問題を見据えてか、ロシアに急接近してきているようです。

実際にプーチン首相とEU代表との会談でも、かなり具体的な局面
にも言及し、将来的にEU通貨に統合する話まで出たとか。
(すると、相手もかなり真剣なのでしょうね)
プーチンもご満悦で、計画的に実行するという案に対し、「10年
でなくて5年という数字はなかなかいい」とコメントしたとか。

現在のロシアでは、事実上アメリカドルがかなりの幅を利かせてお
り、ルーブルで貯蓄すると目減りがするということで、一般市民で
もたいていが箪笥預金を米ドルでするというのが主流。
そのため潜在的な米ドルの国内貯蓄(表に出ない額)が相当の金額
に上っているといいます。これをEUは、丸ごとユーロにして欲し
いのでしょうかねえ。

それにしても、ネックはやはり人権問題らしく、チェチェン問題を
はじめ、マスコミの発言の自由などについても多少取り沙汰された
ようですが、EUもガス・石油などの資源をロシアに握られている
手前、そう高圧的にもなれないのか?

とはいえ、国内事情は最近でも特に目立っていいことなどあまりな
いように思えます。
たしかに、首都モスクワだけを見ていると裕福層の拡大はかなりの
もので、けっこう海外旅行に行く人も多いし、自宅を贅沢なイタリ
ア製の一式で改装してしまう人から、新築のアパートに移る層、若
い世代は新しい携帯が出るたびに飛び付いているし、ファッション
もここ数年ですっかり様変わりし、どんどん新しくなっている部分
もあります。

その一方、貧困層は一本10円にもならないビール瓶を集めて
なんとか日暮らししているような人々もかなりおり、年金生活者と
なると、目減りしたルーブルで毎月もらう僅かな額(たしか一人5
0ドル未満くらい)の年金から種を買って、花や野菜を作って売る
などして、ようやく暮らしが成り立っているのが現状です。
(それも地方では滞っているとか)

地方都市では、いまだにソ連時代が終焉してから、潰れた国営企業
の工場なども、そのままになっているようで、仕事がまずないこと
が多い上、若い層のほとんどが軍隊に召集され、帰還できたところ
で、給料未払いに、薬物問題に、同性愛、と問題だらけのようです。
(武器の横流しに、チェチェン側に買収される人も、かなりいるよ
うですし)

国内犯罪率も相変わらず、去年を上回るペースで増えています。
ヨーロッパでもっぱらロシア人の評判がよくないのに加え、(イギ
リスなどは、かなりビザの制限も厳しいらしい)
実際に不法滞在者でロシア圏からの人が多いということで、ベルギ
ー大使館がビザ発給を見合わせるなど、最近も情けなくなるような
ことまである有様。
さて、このロシアとどうやってEUは共栄していけるのか?

相変わらず、スイスではエリツイン時代の裏金問題で法廷がパベル
・ボロジンという政治家を呼びよせて、審議を続けているようです
が、これも結果的にはロシア政府が大金を払って解決させたような
もので。
最初は、アメリカのケネディー空港で捕まって、どこかの法廷で裁
判にかけられ、だいぶたってから、スイスに移送され、結局は長い
ことかかって、金で解決。
まったく、ロシアの政治も無茶苦茶です。

しかも、昨日今日には潜水艦クールスク号の引き上げ問題で、ヨー
ロッパのどこかの企業に依頼して、前金を払わなければいけないこ
とになる模様。
これも難航しそうな、大変危険で困難な作業になりそうです。
さあ、それでもEUは合併しようというのですから、これはなかな
か覚悟の要る話でしょう。

また、日本の領土問題でもおそらくそちらにも届いているかもしれ
ませんが、ビクトル・イシャーエフというハバロフスク州の政治家
の発言で、「4島全部日本に返還すべきだ!」という、意見まで出
て、やはり事情を知っているロシア人にとっては、まともな医療機
関もないまま、離れた島を統治し続ける限界を感じているようです。

さて、こちらもどうなるのでしょうか?
ま、強行なプーチンがそう簡単にこのような意見に同意することは
なさそうですが、ロシア人政治家にしては、かなりまともな発言と
して捉えるべきでしょうね。

それでは 長くなりましたが、これからも楽しみにしています。

モスクワより  CHOCO
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(Fのコメント)
CHOCOさん、ありがとうございます。
ロシア情勢は、私も気に掛けているが、欧州はロシアに気を使い、
米国と離反するのですから、この先はどうなるか興味深々ですね。
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ロシア政治経済ジャーナル No.85:2001/5/19号より転載

★北方領土に関する森前首相の発言とロシア側のリアクション
(読者からの投稿文)

5月4日夜ののロシアのニュース・報道はどの局も北方領土問題の
話でもちきりでした。
ことの発端は例によって森元首相の発言・・・。
「協議を二分して、一方では歯舞・色丹島の具体的な引き渡し方法
について話し合い、もう一方では、国後・択捉島の帰属を話し合う
・・」ということで「日露が同意した」(・・・と森元首相が言っ
た)。

・・・つまりそれは、日露が「まずロシアは歯舞・色丹を日本に引
き渡す。次に平和条約を締結する。それから国後・択捉の帰属問題
について協議に入る」
ということで「同意した」(・・・と森元首相が言った)。
ということである・・・と(ホントか?)、
ロシアのテレビは伝えていました。

なのに、新しい小泉首相は「ロシアが四島の日本の主権を認めなけ
れば話に応じない」と強硬で、さらにわざわざ「四島」と書いてプ
ーチン大統領に手紙を送りつけた・・・、
対するロシア下院議長は「平和条約と領土問題と結びつけるべきで
はない」・・・、ロシア外務省も「ロシアは歯舞・色丹を日本に渡
すつもりはない(ましてや国後・択捉は言うまでもない?)」と言
っている・・・
つまり事態は紛糾している・・・
と、アナウンサーは深刻な表情で報じていました。

考えてみれば私の4年間のロシア生活でこんなにも一斉に北方領土
のことがテレビのニュースで取りあげられたことはなかったと思い
ます。
たまに島の今の暮らしを伝えるドキュメンタリー番組をやっている
を見たことがありますが、ここまで全局が一斉に取りあげているの
を見たのははじめてです。

ある局は夜のニュース番組の半分以上を北方領土問題の特集が占め
ていました。政治家、政治評論家、日本専門家が出てきてそれぞれ
インタビューに答えていましたが、「四島なんてとんでもない!
二島に満足するどころか四島要求してくる日本はなんだ?」
という雰囲気が大勢を占めているように感じられました。

しかし不思議なことに、領土引き渡しを認めない彼らは平和条約の
締結については「絶対に必要」という認識で一致しているようでし
た。なかには「平和条約はロシアにとって必要です。平和条約を結
べば、ロシアに日本の投資がどっときます。日本はロシアの経済的
可能性に気がつきます。ロシアは過去を清算して、世界に文明国で
あることを証明する絶好の機会です」
と、言っている日本問題の専門家(親日派?)もいました。

一方、ある政治評論家は、「戦後はじめて1956年の日ソ共同宣
言の条約を認め、実行しようとする指導者が現れた」とプーチン大
統領を評価。
日本人の父を持つイリーナ・ハカマダ議員も「プーチンにまかせる
しかない」と言ってました。

彼女は世論や議会を中心に解決をはかることの無理さに気がついて
いるのかもしれません。
夜の対談番組では、生放送で北方領土の帰属問題について電話世論
調査をやってました。一般視聴者への質問は「千島諸島を日本に渡
すべきか?」。
結果は・・・、「渡すべき」(64人)、「大金と引き替えなら」
(48人)を大きく引き離して、
「とんでもない話だ」という人が304人の圧倒多数だったのでし
た。(↑この三択の立て方にも問題あると思うが・・・)
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米国の対応も変化している。
機動力重視、兵器の革新も推進  日経
 【ワシントン25日=池内新太郎】ブッシュ米大統領は25日、メリ
ーランド州アナポリスの海軍士官学校の卒業式で演説し、国防戦略
の包括的見直しに関連して米軍全体の規模を削減する一方、機動力
を向上し、新しい技術を兵器開発に積極的に導入する考えを明らか
にした。大統領は海外に駐留する米軍の前方展開戦力について「こ
うした戦力は保険のようなものだ。同盟国に安心感を与え、敵対勢
力を抑止する力になる」と重要性は変わらないとの認識を示した。 
 そのうえで、迅速な配備が可能で耐久力もある軍に再編していく
必要性を指摘。技術革新の成果を新兵器開発に反映し、レーダーに
探知されにくいステルス性を高めるほか攻撃精度の向上や情報技術
の導入などを重視する方針を表明した。大統領は当初、今回の演説
でラムズフェルド国防長官が進める国防戦略見直しの概要を明らか
にするとみられていたが、その方向性や長官の手法に議会や軍内部
から批判や反発が噴出。とりまとめにはさらに時間がかかる見通し
となったため、具体的内容には踏み込まず、基本的な考え方を示す
にとどめた。 


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