518.稲作農業蘇生への私案



[稲作農業蘇生への私案]          ken
 
小泉首相説→→地球規模で人口が急増するなか、安全で安定した
農業を確立し、自給率向上に努める。 あらゆるモノの再利用と
土に還す循環型社会を目指し、ゴミゼロ社会を目標にした施策を
進める。
 
減反拡大政策発表→→00年9月28日付農水省発表では、減反面
積を5〜10万ヘクタール拡大し、100万ヘクタール以上とし、人道
的海外援助用に75万トンを備蓄する。さらに、今年度、15万トン
を政府米と交換して飼料用に回し、5万ヘクタールに相当する25
万トンを特例で政府が買い入れする。減反は、年度当初5万ヘ
クタールとして全国に割り当て、加えて需給調整水田5万ヘクター
ルを設定し、豊作が見込まれる場合、青刈りする。青刈りの場合、
来年度の特別措置として現行に4万円を上乗せし、83000円とする。
減反拡大による水田転作作物は助成金を5000円〜4万円上乗せする。
熊本と宮崎県の飼料用稲は、反当現行73000円の助成を93000円と
し利用する畜産農家にも反当2万円の助成をする。ソバは63000円。
 
減反政策差し止め訴訟・原告団→→減反政策の誤り
生産調整を目的の転作、休耕、青刈りの「減反」は、24年間にわ
たって行なわれ、永年の減反強要は作付け水田面積を30%減少させ、
農家の耕作意欲を著しく減退させ、水田は荒廃に向かいつつある。 
農業「近代化」で生産性を上げるべしとする見解の誤りは、1961年
以来の「近代化」が全くの失敗に終わっている事実が証明する。減
反政策をただちに中止して稲作の復興を図るべき。
稲作を守るのは、食の安全を確保し、農村を守り、地域社会を守り、
景観環境を保全するためにも不可欠。この裁判は生産者と消費者が
一体となって国の減反政策に異を唱えようとしている。消費者運動
の人たち、産直グループの人たち、減反強要に強く抵抗してきた人
たちなど多彩。
 
日本消費者連盟→→遺伝子組み換えイネ反対署名運動
日本の試験場や企業および海外の化学企業が遺伝子組み換えイネの
研究開発を急ピッチで進めており、日本での作付け開始も懸念され
る。主食自給作物の米が遺伝子組み換えされることは、健康、環境
農業に対して大きなリスクを負うことになる。
 
河北新報00年8月10日付→→宮城県農業センターは、「水田生態
系における生物機能を活用した減農薬病害虫制御技術の確立」をテ
ーマにした研究を平成11年度より行っている。実際の水田や室内試
験を行い、アマガエル、コモリグモ類がツマグロヨコバイを捕食す
る量や、それぞれの生息密度などを調査した。
ツマグロヨコバイを要防除水準以下に抑制するには、1平方メート
ルあたり2〜3匹のアマガエルが生息すればいいという結果がでた。
今後も引き続き研究を進め、有機栽培農家と慣行農家の水田の生物
相比較やイナゴの幼虫とトンボ類、アメンボ、カエルなどとの関係
の研究も行う。これまで、有機農業技術への基礎的な研究はあまり
されておらず、この研究は注目に値する。
 
ロイター00年6月16日付→→●中国、遺伝子組み換え作物の商業
生産へ。 中国は、2001年より遺伝子組み換えトウモロコシ、大豆
コメの商業生産を行う見通し。チャイナ・リサーチ・インスティチ
ュート・オブ・アグリカルチュラル・サイエンスへのインタビュー
による。
 
●高関税で輸入は少量
毎日新聞インターネット版00年4月17日付によると、食糧庁は、
99年4月からのコメ関税化にともなう輸入量を発表した。それによ
ると、輸入されたのは128件、225トンのみ。
 
●改正JAS法と有機米
河北新報00年5月1日→→改正JAS法の有機農産物認証制度 
改正JAS法は、2001年4月から実質運用される見通しで、2000年
5月にも施行される予定。この検査項目に、「河川からの直接取水
井戸水利用、沼地からの取水−」と用水について定められており、
上流の水田を経由した水を下流の圃場で取り入れた場合、有機米に
はできない。水田の取水口に水の浄化装置を付ければ基準をクリア
させる」
 
●緊急総合コメ対策は市場介入である
毎日新聞インターネット版00年9月30日付は、政府の緊急総合コ
メ対策を市場介入であるとして批判した。9月29日の自主流通米入
札前に打ち出した総合コメ対策によっても、価格の下げは収まらな
かったが、この対策によって財政負担が大幅に拡大する。10月末の
在庫は280万トンと推計。適正水準は上限200万トン。
 
ヤマタネ→→ 国内外の「有機米」取り扱い開始
12月16日付け日経新聞によると、ヤマタネは来春から国内外の「
有機」栽培米を取り扱う。ヤマタネはすでに精米工場でアメリカの
有機農産物認証機関FVOの認定を受けており、国内では、九州で
FVO認定を受けた米農家と契約し、初年度約10トンを取り扱う見
通し。また、OCIA認定のカリフォルニア産有機米18トンをすで
に落札し、来年3月以降販売する。 
 
井上ひさし説→→(1985年総理府統計)1勤労者世帯3.8人の
家庭が、米に使うおカネは1日204円。米価が半値になっても、
月3000円の家計支出減にしかならない。日本の米の収量は反当
500キロ、隣国半島は600キロ、カリフォルニアは540キロ。
それが森島東大教授は輸入完全自由化後のコメの国内自給率は33
%以下になるといい、農林統計協会の出版書によれば、コメの国内
生産量は200万トン以下になり、輸入は1000万トンにもなる
という。日本産のコメは貴重品になり、よほどの金持でなければた
べられなくなる。「貧乏人は外米を食え」ということになるだろう。
 
Ken→→いま中国ではコメの反収800キロを目指しているらしい。 
戦前日本の反収は2.8石、上田で3石から3石2斗止まりと言わ
れた。つまり450キロくらいが限度で、肥料は硫安、過燐酸など
と大豆、干鰊(ほしか)のような天産物が半々であった。当時のコ
メの消費は1人1石(150キロ)、現在は70キロ程度で、増産
技術の発達がなくてもコメ余りは当然の時代となった。
 
北海道の乾鰊が入る前の維新前後までは、里山の落葉や藁刈草
などが主肥で、収穫は2石5斗、つまり350キロ止まりだったらしい。
それがいまでは反当500キロ収穫になっているが、なお前述のよう
に韓国や中国(800キロ収穫を目指している)、アメリカなどの
平均収穫よりだいぶ少ない。 
別に技術が劣るのでなく、わが国では美味しいコメ、つまり良質の
コメををつくる方向にあり、いきおい収穫量が少ないのである。
 
大雑把な数字でいうと、日本の水稲圃は全部で300万ヘクタール。
現在、その三分の一の100万ヘクタールを半強制的に転作・休耕
させ、政府補償金を反当6-10万円程度支出している。 
それでなおコメ余りが甚だしい上に、ウルガイラウンドにより輸入を
強制されている。 
農地の仮放擲により、美しかった農山村の景観は荒廃し、治水は
おろそかにされ、かって遵風美俗だった農村の勤労意欲は大幅に
減ってしまった。
政府はただ減作を奨励するのみで、稲作の将来像については完全
に無策のままである。 
主食自給の原則、景観保存、治水政策、自然のもとでの勤労、とい
うような国家千年の目標のために、いま何かの方策を水稲農業と
絡ませて考えなければならない。
 
いろいろ整理して考えると、どうやら問題のもとは、「コメ作り」
という自然社会の基本的な営みの中へ、単純にも「量産」あるいは
「生産性」という工場資本主義の原則を持ち込んできたところにあ
るようだ。 
400キロ作れば、450キロ、450キロ作れば500キロ、500キロ
つくれば600キロと、科学肥料や農薬を無限に投入して反当収穫
を増やし、それで、他の工業生産品と同じように、量産化で農業経
営を成り立たせようとしたところ根本的な誤謬があったのではない
か。
 
ボクはここで方向を変えて、日本の稲作農業から「量産による生産
性向上」という現代的資本産業図式を真向から変更してしまったら
いいのではないかと思う。
 
いままでの「多収穫多収入」志向の稲作から、国家的な方向として
「高品質適量生産」稲作へ転換したら全てがうまくいくように思う。
現時点での朝鮮・中国の反当600キロ生産に対してわが国の500
キロ生産というのは、そうした「高品質適量生産」方式の萌芽、もしく
は社会的な趨勢であると見るべきだ。
ただし、「高品質」が現状では「美味しいコメ」の別名になっているの
を少々変更し、「美味しい」の代わりに、いわゆる「有機農法米」なる
ものを「高品質米」として定義付ければ、「高品質適量生産」を米作
農家育成のための国家による新しい農業政策になるはずだ。
 
「美味しい」という概念は、個人差があって捉え難く、それを「高品質
」というには無理が伴うが、健康のためという前提で考えれば「有機
農法米」や「無農薬米」を「高品質米」と呼称しても間違でない。

「有機農法米」は、ときとして政府や全農の反対勢力となる傾向す
らあるものの、現実にどんどん普及し、よりポピュラーなマーケッ
トを醸成しつつある。 
いま、稲作農業部門で「有機農業」を国家の向かうべき農業の将来
の理想像として積極的に認知し、奨励し、誘導し、国民にも「日本人
の主食は有機農法米」という考え方を定着させ、その方向へ日本社
会を持ち込めば、健康にもいいし、さらに本論考の主題たる稲作農
業蘇生の具体策にもなるように思える。

なぜなら、化学肥料を使わない「有機農法米」は、不可避的に反当
収穫を減らし、稲栽培面積を増やすことに直結するからだ。
いま政府は300万ヘクタールの水田を200万ヘクタールしか使わせ
ず、残りの100万ヘクタールの休耕地には、農家への休耕補償金を
タダで与えている。 休耕地10アールに付き5万円ないし10万円だ。

大雑把に見て「有機農法稲作」は、「化学施肥稲作」の3分の1程
度の反当減収量とみればよく、100万ヘクタールの荒廃予備地を
水田に戻して有機米を耕作すれば休耕田は無くなり、差し引き現在
と同じ米の総収穫量になり、健康志向の主食がすべて国産で賄える。 
農家の反当収穫減の補償ついては、いままで減反補償金という名目
で払っていたカネをそのまま流用して支払えばいい。 
どうせ今後は、巨大ダムの造成などは住民パワーで減ってゆくだろう
から、その建設予定費も「治水報償費」という名目で、有機産米農家の
減収補償に充当すればよい。
農山村景観の回復にも、治水政策にも、そして自然回帰にもすべて
いいことずくめだ。
 
そのためには先ず政府が、国民に有機農法米の常食運動を起こす
ことが必要だ。
「健康のために吸い過ぎに気を付けよう…」という宣伝の反対で、
「健康のために有機米をたべよう・・・というスローガンで全国民
を引っ張っていき、全世界に、「日本人は有機米しか食べない」と
認識させれば、農薬まみれの外米の輸入自由化などちっとも怖くな
い。
言いかえれば、一種の新興宗教のように、ややもすると遠ざけ、横
目で見るばかりだった自然農法、有機農業を、将来の本命として積
極的に国家の農業、および保健食糧計画の中枢に置き直すべきであ
る。
 
量産志向のコメ作り農業法人などの尻を叩いて、生産費の低廉化で、
10倍も安いという外国産米に対抗させようとしても、所詮は農地価
コストの大幅な違いで、どだい無理がある。 
それより、「日本人の嗜好では有機米しか食べない」という、ごく自然
な輸入拒否策の方が國際自由市場ではより簡単で、これならガットも
苦情が言えまい。 

もちろん、農薬や化学肥料まみれのコメでも、安ければその方を食
べるという日本人には、「どうぞ結構です、輸入しておあがり下さ
い」という態度を、わが政府が維持しておいての話である。(1家
族平均3.8人の家庭の1日当りコメ消費コストが208円という総理
府の統計が正しいとすれば、それより安い輸入米を食べたいという
日本人はあまり居ないはずだ。)
 
先にボクは「有機農法米の反当生産量は3分の1」と言ったが、室
町時代以来のわが国の自然流水を取り込む水田稲作法は、ナイル
川の氾濫によって肥沃な農耕地を確保したエジプト農業と同じく、
輪作が可能で、落ち葉や古藁を肥料にして、毎年同じ水田稲作を
数百年続けてきた実績からみて、反当(10アール)350-400キ
ロ収穫は難しくない。
 
さらにその上、最近はアヒル農業とか雨蛙で除草といったふうな自
然有機農法の技術が急速に進歩しつつある。 政府は、こうした具
体的で有用な農業技術について、積極的に援助育成すればまだまだ
改善発展の余地があるに違いない。

それを、いままでは「反当収穫量増大」のみを農業の生産性向上に
繋ぎ合わせてきたが、今後は反当収穫量などは二の次にして、よい
品質の米、つまり、より健康志向のコメの生産に力を注ぐべきだ。
 
資本主義下の工業生産と異なり、こと稲作農業に関する限りは、景
観、治水、自然志向、健康増進というような人間生活の根本に係る
いわば「人間のいきざま」の締めくくり部分だから、「生産性」などと
いう「金儲け」の手段などとは自ずから別のところに価値を置く生産
形態を、国家の意志として採用しなければならない。
 
以上、ボクが述べたのは国家主導型による有機農法米の生産および
消費運動への提案である。 たいして新しい法改正も要らぬし、と
くべつ大きな予算措置もいまのところ不要だ。 
もちろん、大規模農業法人による在来型米作も禁止しない、やりたい
人にやらせばいいのだ。 コメの輸入もすべて自由化すればいい。

ただ、「日本ではほとんどの家庭が有機農法米を食べる習慣」へ向け
て政府が音頭を取り、生産農家の反当収入の減少分だけを、農家へ
補償してやればコト足りる。 
有機農法は手間がかかり、大規模農業経営には不向きで、小規模
篤農家や脱サラ自然主義農家の営農分野である。 景観とか治水
の現場にとってはまことに適切な人たちである。 政府の補助金・補
償金の出し甲斐がある相手だ。

有機農法米が一般化すれば、いくら安くても農薬漬けの外国米や
遺伝子交換の疑いがある輸入米は姿を消すだろう。
一日一家208円のコメ代をもっと節約して、外米を食べるというのは
余程の変わり者である。 
たとい米の値がいまの2倍になったとしても、なお健康志向を優先
させて国民のほとんどが有機農法米を食べるようにするのはそう難
しいことではない。 要するに、政府の気構え一つだ。

以上、 ぼくのこの案、どこか間違っているかしら。
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(Fのコメント)
kenさんの農業問題に視点の追加をしたいと思います。

農家から出荷する米に政府が補助金を出しているため、その補助金
との関係で減反政策が必要なのです。だから、もし、農家が減反反
対をするなら、米の自由市場化をすればいいのです。反減反の運動
の視点はおかしいと思っている。補助金はほしいが、減反はしたく
ないということだと理解しているため。国民の理解を得るためには
、農家の甘えを排除して、金銭的保護政策を止めるべきだと思う。
輸入制限等の対応は必要かもしれないが。

農家に対して、二重・三重の保護政策を取っているが、もう限界が
近いと思う。日本国家全体が貧乏になってきているのに、農家の保
護だけを従来どおりにしてほしいと主張することはできない。
農業の自由化を進めて、都市生活者も農業が簡単にできるようにす
るべきである。そうすれば、そこで、いろいろなアイデアが出てく
る。これから、遺伝子改造などの高度な技術も適用されるため、農
業の企業化も必要になるでしょうね。恐らく。しかし、農産物のセ
ーフガードは必要であると思うが、市場経済化は進めるべきである。
消費者が農産物を選択する。いいものは、支持され残る。農薬を利
用した農産物は、消費者に選択されずに敗退する。このようなメカ
ニズムが必要なのでしょう。
勿論、政府は、国民の健康に重大な支障がある農薬の使用制限をす
る必要はあるが。


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