456−2.拡大日本戦略と分散型社会



YS/2001.02.24
 これまでシリーズでコラム化してきた「燃料電池」および「分散型エ
ネルギー」も国際戦略コラムのTさん、Fさんの合流により新たな展開
に差し掛かってきたようだ。ただしこれまで読者の方々に充分な説明を
しきれていないように思う。ちょうどタイミングよく日本経済新聞で優
れた記事がありここで全文を紹介したい。

 現在「分散型エネルギーシステム」は加速度を増して進展しておりこ
の10年で確実に普及する。この時の社会構造の変化についても示唆を
与えてくれる内容となっている。また技術的分野で先頭を走るのは米日
独であり、国際戦略上でも極めて重要なテーマとなる。日本は、アジア
を先導する形で独自の戦略が求められている。ここに「拡大日本戦略」
とを結び付ける鍵がある。

 個人的には「個の自立」と「個の求心力」への期待から「拡大日本人
戦略」にも興味をひかれる。合わせて議論できれば新たな萌芽が期待で
きるかもしれない。

 kenさんの御意見をいつも楽しみにしているが、「拡大日本戦略」
のケーススタディとして例に出されたYKKとよく似た企業にニフコ
(NIfCO)がある。工業用プラスチック・ファスナーの最大手であ
り、自動車の研究開発の現場では彼らの姿をよく見かける。独自のパテ
ント戦略を構築されており、今後家電分野でのリサイクル技術において
も彼らの技術が再認識されるだろう。

http://www.nifco.co.jp/
 

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■「分散型経済社会元年」01年2月24日日本経済新聞−大機小機−

 年明け後の政治、経済は方向感覚を失ったまさにカオスというべき様
相を呈している。直接の原因は、政治においては現政権および与野党を
含めた政策戦略のなさや機敏な実行力の欠如、経済面では株式市場の波
及に対する不安感の増幅にある。

 さらにその深層を探ると、戦後20世紀後半にわが国経済社会の成長
と繁栄を可能にしたパラダイム(枠組み)が、21世紀には逆に負の作
用に転じたことに根因がある。

 前世紀後半の政治は、全国的な平等社会を構築することを最大の課題
として、公共事業をはじめとする画一的な中央集権的行政が形成された。
一方、経済面では良質の規格量産品の内外への供給を目的に、多様な事
業分野にわたる生産・流通機能をすべて本社統括のもとに一元的に抱え
込むワンセット経営方式は主流となった。

 ところが、21世紀の経済社会が希求するものは、前世紀の中央集権
型とは対極的な分散型システムである。現時点の混迷はそのパラダイム
転換の調整局面と認識すべきではないか。

 では分散型経済社会とは何か。これを2001年における三大潮流で
例証してみよう。

 第一は、企業経営における会社分割・分社化の加速である。いまエレ
クトロニクス業界を中心に、EMS(受託製造サービス)という新ビジ
ネスモデルを活用した工場の分社化や売却によって、生産部門の独立性
を強め資本効率の画期的向上を目指す動きが、グローバルに進展してい
る。また、特定の事業部門の業績に株価が連動するTS(トラッキング
・ストック)という方式を通じて各部門の独立性を強める経営改革も、
ソニーを皮切りに今年は大きく動き始めるであろう。

 第二は、行政における地方主権の進展である。中央省庁主導による全
国画一型公共事業で選挙民の支持を得る時代は過去のものとなった。今
後は各種事業の公開入札、民生・税務など国民生活に密着した行政の電
子政府化も地方が主役となり、中央離れの加速は必至である。

 第三は、分散型エネルギー時代の到来である。21世紀前半のエネル
ギー革命を担う「燃料電池」はその象徴。当面の目玉は来年にも実用化
の自動車であり、近い将来の本命として家庭用発電時代も予感される。

 国家も企業も分散型社会のなかで自らの求心力をいかに維持するかが
問われよう。

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金属の高温超電導を発見・産業応用加速も(日経)

青山学院大学理工学部の秋光純教授の研究チームは金属系で従来の2倍
近い高い温度で電気抵抗がゼロになる新しい高温超電導体を発見した。
金属系は現在主流になっている酸化物超電導体に比べて安価で加工がし
やすいため、効率的に電力を蓄えることができる電力貯蔵システム向け
の線材や超高速コンピューター用の素子などを開発しやすくなる。高温
超電導体の産業応用が一気に加速する可能性を秘めた発見だ。

 秋光教授らが発見した物質は、金属のマグネシウムとホウ素からなる
「2ホウ化マグネシウム」。電気抵抗がゼロになる臨界温度は絶対温度
39度(セ氏零下244度)。これまでの金属系超電導体はセ絶対温度23度
だったため、臨界温度は2倍近く高まった。この物質はこれまで試薬と
してメーカーが販売していたが、超電導状態を示すことはこれまで見つ
かっていなかった。発見された物質を手掛かりに、さらに臨界温度の高
い超電導体が開発できる可能性に道を開いたといえる。


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