358−1.ロジカルな議論について



川崎
いかに自分の意見を客観視しつつ、説得力のある、ロジカルな議論
をすすめるかは私自身の課題でもありますですので、この場をかり
て、自分自身を反省しつつ考えてみました。

〜いかに論理的議論をすすめるか
日本語で論理的、かつ説得ある議論というのは、なかなか難しい。
ここでは、考えられる理由と、論理的議論をすすめていく上で必要
な条件を考えていきたい。

日本人が議論になれていないといわれる理由について、二つ考えら
れる。まず、言語自体の特徴があげられる。ヨーロッパ言語がロゴ
ス(知)的であるのに対し、日本語は、パトス(情)的の世界なので
、知的攻撃に対しても情的に反応する傾向性がある。
形容詞へこだわってしまうのである。一方、ヨーロッパ言語はロジ
ックであり、あいまいさを嫌い、直線的に前進することを好む。
こうした言語の性質は、歴史的、社会的土壌の違いを反映している
と推測されるが、現時点で国際的に要求されている議論のスタンダ
ードはヨーロッパ型なので、その基準にそって議論を進める必要性
がある。

二つめに考えられるのが、討論、議論の教育がなされていないこと
である。 たとえば、アメリカでは、ディベート教育は盛んにおこ
なわれる。ある命題に対して、各人の意見はさておき、賛成側と
反対側にたたせ、その根拠を立証させる。フランスでは、一定のル
ールにそって立証をさせる論文を徹底的に書かせたり、限られた
時間内で自分の意見を発表させ、その意見について反論、防衛をさ
せたりする。知識の量よりも、結論に至る過程をより重視している
ともいえる。一方で日本の教育は、幅の広い知識をより要求してお
り、自分で立証するという場を欠く。

議論・討論をする上では、いかに論理的な論証が立てられるか、と
いうことがかなめになってくる。説得力のある議論を分析すると、
6つの重要な要素によって組みたれたてられていることがわかる。

1、結論 : 議論により立証したい要素。自分のポジション
2、論拠、証拠 : データ、結論を立てるための理由。結論がし
  っかりして信用しうるところを立証するための証拠と理由付け
3、梃拠 : 論拠が結論に結びつくための正当性 
4、てこ入れ : 3にいたる裏付け、念押しの証拠
5、確立限定 : 結論の限定。まちがいなくか、おそらくか
6、バッキング : 5にいたる裏付け

こうしてみると、自分の中の客観性が要求されていることがわかる。
自分のみちびく結論に対して、常に賛成と反対の対話を繰り返しな
がら、議論を発展させていくことである。

次に、議論というのは与えられた命題に対しての論理の応酬だから
、たてられた相手の論理に対していかに反応するかも重要になる。
その際、何に注意すればよいか、まとめると以下の点があげられる。

・与えられたサイドに忠実に議論を展開していく。
・相手のペースにのらない。(形容詞をきりおとし、論点をみぬく)
・相手のいうことをよく調べる。情報量がものをいう。
・ロジックを分析する。相手の論拠はなんなのか、他のロジックは
 たてられないか?
・ユーモアのセンス。(自他の論理を客観視する上で重要。口頭での
 討論では、相手の警戒心を解き、意表をつき本音を引き出す)

こうして、自他の意見を徹底的に客観視したところから、冷静な議論
がうまれてくる。個人的な経験では、フランスでの議論では感情的
になった方が負け、ということである。感情的になると議論がそこ
で打ち切られるので、説得の余地すらなくなるからだ。

しかし、日本での議論は、日本なりの矛盾も生じる。日本語的な要素
がなくては、共感の得られる議論ができない。翻訳調の冷たい議論
では、日本の場合、かえって逆効果をあげることもある。パトスに
訴えない主張では、日本ではかえって支持を集めない可能性もある
からだ。こうした討論・議論が日本に本当に根づくには、気の長い
教育が必要なのかもしれない。

川崎
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(Fのコメント)
 川崎さん、有り難うございます。本当に日本での論理的な議論は
できるのでしょうかね。戦略的思考も論理的に考えないと、失敗す
るため、この状態であると、日本では戦略思考もできないことにな
る。世界的な論理の広がりについていけないことになるような気が
する。

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