352−1.『らいおんハートとジェンダー論』開始



(管理人Tより)
このシリーズはBBSの採録です。詳しくは、BBSにて論議くだ
さい。
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 ☆★☆★ふたつのイエのジェンダー★☆★☆ 
YS
今回は公開形式にしました。どんな意見が飛び出すか楽しみですね。
私の家族は男1人、女3人の4人家族のため、いつも肩身の狭い思
いをしています。ただ子供の将来を考えると避けては通れないテーマ
です。

先日その子供たちにせがまれてSMAPの「らいおんハート」を借り
てきました。 
『♪ 君を守るため そのために生まれてきたんだ』とあります。    

私なんかにはとてもとても似合わない言葉ですが、多くの女性たち
には支持されているようです。 
当然のことながら、相手にもよると思いますが(笑)、 
日本人女性の守られたい願望が強いことの表れなんでしょうか? 
それとも守ることのできない男性が多くなったからでしょうか? 

ちなみに私のかみさんになにげなく尋ねると「どっちが守ってると
思ってるの!」とピシャリ! 早々と退散する事態が発生しました。 

なんともなせけないスタートとなりましたが、ジェンダーをめぐる
議論から21世紀の『薬箱』が見出せればうれしいですね。 
まずは身近な問題である「ふたつのイエのジェンダー」をテーマに
開始したいと思います。 

ひとつは「家族としてのイエ」、そしてもうひとつが「会社という
名のイエ」です。多くの男性は「会社という名のイエ」に逃れてき
ました。 和を尊ぶ組織の中で安心感に浸りながら自分の存在を隠し
てきたわけです。 
一時は世界からも絶賛されたこの制度もグローバリズムという大波に
巻き込まれ機能不全に陥ってしまいました。 

その余波は「家族としてのイエ」をも直撃します。男性の経済力だけ
では生活を支えることが困難となり未婚化、少子化を進行させます。 
自分の存在意義を見失った男性達が彷徨い続ける中、女性の元気さだ
けが華々しく輝いています。 

どうやら男と女の関係に大きな変化が訪れているようです。 
皆様のまわりの風景をおしえて下さい。 
YS
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気楽に意見交換しましょう 柳太郎   2000/11/12 00:59 
   
 ジェンダー(性差による社会的分業体制の構造)は案外漠然としてい
て、とっつきにくい話題かもしれませんね。では、順を追って話し
を進めてみましょう。まず、「会社というイエ」に関して皆さんに
お聞きしたいのは、なぜ男性が外で働き、女性が家事をするといっ
た構造が生まれたのかという点です。これは日本に限ってでも結構
ですし、世界的に見てそうだと思われるならなぜそうなのか、簡単
なコメントでも結構ですので、ご意見をお聞かせください。(もちろ
んそうではないと思われる方のご意見もどうぞ。) 

私個人の意見としましては、「男性中心」と呼ばれる社会構造の根
底には「戦争」や「いくさ」がある(あった)からではないかと思
っています。 

また、海外では必ずしもそうではないといった事例をご存知の方は
、ぜひともそれをお聞かせください。 

女性の方は特にこのような社会構造に疑問を抱いている方が多いと
思います。自分がいつも思っていることをまずは何でも結構ですの
で、思い切ってご意見をお聞かせください。 
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 YS   2000/11/12 23:57 
   
 なぜ男性が外で働き、女性が家事をするといった構造が生まれたの
かという点については、やはり高度経済成長期の国策的なものの影
響でしょうね。 

企業戦士として産業発展を支える男性を何よりも最優先される中で
女性は男性の疲れを癒す役割と家庭での将来の戦士の教育係りとし
ての役割を担わされたんでしょう。 

今問題なのは大手企業の多くがまだこの時の栄光が忘れられないで
いる点にあるように思います。 

2000/11/06 No.579の『ジェンダー論について』で田中さんが次の
ように書いてくれています。 

『正常な人間関係を築くには、まず個が自立していることが前提です。 
自分を大切にしていない 人間は他人を大切にできないし、 
自立していない人間は建設的な人間関係を創造することは難しい。』 

これは多くの男性にあてはまると思うのですが、 
「会社というイエ」の存在自体が個を犠牲にしてきたことが 
その自立を妨げてきたような気がしてなりません。 

すべてとはいいませんが、日本の会社の場合、上に行けば行くほど 
責任を取らずに済む妙な慣習が残っているようにも思います。 
責任者が誰なのかあいまいなままで「個」などが育つわけはないと
思うのです。 
従って建設的な議論などできるわけがない。しがみつくことで精一
杯になります。 

『人間関係に価値があるのはその相手が自分にない物を与えてくれ
るからです。同性の友人からももちろん得る物は多々ありますが、
身体的にも大きく異なる異性との コミュニケーションは、より大
きな補完関係が築き上げられる可能性があるからこそ価値があるの
であり、それはまず、自分と相手は異なった能力、性を持っている
と言うことを認識した上で成り立つ物であると思います。』とも
田中さんは書いています。 

「会社というイエ」の中では女性の多くは、結構割り切っています
から、ずばずば言いたいことを言いますね。 
このあたりに真実が隠されているケースが多いようです。 
しかしイエ的な会社が果たして受け入れることができるのかどうか
非常に疑わしく思います。従って残念ながら現状では補完関係につ
ながることはないと思います。 

「335−2.らいおんハート」にてYokoさんから『女性の社会進出
という点でまだ遅れている日本でも、女性がトップに立つケースは
増えてきており、男だから女だからという点で区別をする習慣自体
今後少なくなってくるのではないでしょうか。』との御意見もいた
だきました。 

しかし長引く不況によって若い世代の女性の就職は今なお厳しい状
況に置かれていますし、大手企業の一部は派遣社員だらけで数少な
い女性社員のほとんどが縁故採用となっているところも少なくない
ようですよ。 
結局弱いところにそのツケがまわってきているようです。 

最近のひきこもりの問題や自分の子供をあっさりと殺害する痛まし
い事件を見ていると、どうも男と女の役割についても原点から見直
すべき時期に来たように思えてなりません。 
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得丸です。
いつも男が女に教えるような状況設定はやめることにしました。
Politically Correctを目指します。

さて、ジェンダー論ですが、ごらんのとおり私はまったくの素人です。

素人が素人なりに考えるとどうなるかを、やってみたいと思います。
これは別にちゃちゃを入れたいというわけではなく、議論を整理す
るための思考訓練です。

> 男と女の関係
> から21世紀に向けた理想像を見出せればと思います。
>

人間には、男と女がいます。大人と子供がいます。老人と若者がい
ます。言葉や文化生活習慣を異にする人々がいます。

それらのさまざまな切り口(カテゴリー)があるときに、ジェンダ
ー論だけで21世紀の理想像が見出せるわけではないでしょう。

ジェンダー論を語るにあたっては、したがって、それ以外の大人ー
子供関係論、老人問題、異文化交流などの中で、どのように位置付
けられるか、相互に関係づけられるか、ということとともに議論さ
れてもいいのではないでしょうか。

> なぜ
> 「社会には男の役割・女の役割が存在するのか?」、「その弊害
> は何か?」、また「どのように改善できるか?」

ちょっと問題が大きすぎて、議論がしにくくありませんか
==============================
YSです。

得丸さん、どうもお久しぶりです。

>人間には、男と女がいます。大人と子供がいます。老人と若者が
>います。言葉や文化生活習慣を異にする人々がいます。

最近中間的な方もいらっしゃるようですが、
男と女しかいないことも事実ですよね。
> 
>それらのさまざまな切り口(カテゴリー)があるときに、ジェン
>ダー論だけで21世紀の理想像が見出せるわけではないでしょう。

当然そのとうりだと思います。
とはいえ私自身もそうですが、
結構自分の得意なカテゴリー(フィルター)で世の中見てしまいが
ちになりませんか?
今回のジェンダーは私自身にとってすごく恐いですよ。
だから選んだところがあります。

> 
>ジェンダー論を語るにあたっては、したがって、それ以外の大人
>ー子供関係論、老人問題、異文化交流などの中で、どのように位
>置付けられるか、相互に関係づけられるか、ということとともに
>議論されてもいいのではないでしょうか。
> 
>> なぜ
>> 「社会には男の役割・女の役割が存在するのか?」、「その弊害
>> は何か?」、また「どのように改善できるか?」
> 
> ちょっと問題が大きすぎて、議論がしにくくありませんか。

本当はある程度ストーリーを描いた方がよかったのかもしれませんが、
柳太郎さんも私もこの件について本当にド素人です。
従ってより多くの方が参加いただいていろいろな御意見を知りたい
と思っています。

先入観をできるだけ排除したいのでしばらく手探りの状態が続くか
もしれません。ぜひ参加いただき御指導ください。
この先はBBSにてお願いします。
YS
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 柳太郎   2000/11/13 04:39 
   
>なぜ男性が外で働き、女性が家事をするといった構造が生まれた
>のかという点については、やはり高度経済成長期の国策的なものの
>影響でしょうね。 

この点に関しては、私は考えが違います。もしYSさんのこの意見が
正しければ、高度成長期に入る前の日本社会はもっと女性にも開け
たものであったということになります。しかし、実際はもっと以前
からから「男は外、女は内」的な発想が強く根付いていたのではな
いでしょうか? 

>今問題なのは大手企業の多くがまだこの時の栄光が忘れられない
>でいる点にあるように思います。 

私は上記のように考えているために、この点にも疑問を感じます。
つまり、既存の社会構造がまだ男性優位であるために、現在でも
企業は男尊女卑的な扱いをするということです。(No.594で「戦争」
に触れたのは、男性優位を認めさせる口実としての例です。)した
がって、今問題なのは今までは多かれ少なかれ認められてた社会構
造の欠点を多くの人が認識することで、変化しつつある新たな社会
にどう対応すべきかという点ではないでしょうか。(近代以前の「戦
争」の在り方が、社会情勢の変化と技術の近代化により、もはや口
実で在りえなくなりつつある。) 

もちろん、企業がイメージアップのために女性を取り入れるといっ
た動きは今後も増えてくるでしょう。しかし、社会基盤が男性中心
としたら、その動きも緩慢または不十分なものになるのではないで
しょうか? 

さて、No.579での田中さんのご意見は、学生さんにしてはすばらし
い文章だなあと感心して読んでいました。ただ、一箇所気になると
ころがあります。 

田中さんは、『出産問題は働く女性にとって、大きな問題の一つだ
と思いますが、そのことについても補間関係としての夫婦関係があ
ることが大切なのではないかと思われます。ただ、実際に女性の方
がどうしても時間的、労力的負担が大きいことは否めませんが、
そのことについては、母親である以前に、一個の人間としての実り
多き人生を歩むために必要とあれば、自分のために生きることが家
族のためにもなるのだという認識の元にベビーシッターや家政婦を
雇うなどの方法を用いることも一つの方法だと思います。』と書か
れています。 

私が常々疑問に感じていることなのですが、女性の社会進出のため
には家政婦などの社会制度を整えるべきなどという議論を時々耳に
しますが、これは本当に良い解決方法かということです。ジェンダ
ーやフェミニズムを議論する時には、どうしても「大人」中心の議
論になります。つまり、一番大切なのは「大人」の「個人」として
の人生ということです。ですが、子供の立場になって考えると、私
は上記の意見に反対とは言いませんがあまり賛成できません。子供
にとって大切なのは親の存在なのではないでしょうか?極端な例が、
最近世の中を騒がせている某女優だとおもいます。家庭教師や家政
婦に任せておけば何とかなると思っていたのでしょうか?そして、
現在のアメリカで問題になっているのも、このような家庭のあり方
だということを聞いたことがあります。 

これを解決する方法は、男性でも女性でも長期の育児休暇をとれる
社会にするという、北欧的なやり方が良い参考例になるように思い
ます。ただ難しいのは、日本の企業はどうしても個人間の信用で成
り立っている部分があるので、企業が同じでも担当者が変わること
が問題になる点ではないでしょうか?ジェンダー問題(の解決法)は
一般化できないというのは、その社会の歴史的風土を考慮に入れな
くてはならないからですが、この例がまさに物語っているといえま
す。 

>「335−2.らいおんハート」にてYokoさんから『女性の社会進
>出という点でまだ遅れている日本でも、女性がトップに立つケー
>スは増えてきており、男だから女だからという点で区別をする習
>慣自体今後少なくなってくるのではないでしょうか。』との御意
>見もいただきました。 
> 
>しかし長引く不況によって若い世代の女性の就職は今なお厳しい
>状況に置かれていますし、大手企業の一部は派遣社員だらけで数
>少ない女性社員のほとんどが縁故採用となっているところも少な
>くないようですよ。 
> 結局弱いところにそのツケがまわってきているようです。 

この点に関しては全くの同感です。以前に、マッキンゼーのベテラ
ンのコンサルタントの方とお話しをする機会があったのですが、そ
の方は、「もし俺が女だったらぜったいに日本企業になんて就職し
ない。」と言っていました。それだけ女性に対する差別がひどいと
認識されているようです。 

これを解決する方法の一つに、女性に対するPositive Discrimination
という考え方があります。これは日本語でどう訳されているかは知
りませんが、会社などでの職員の採用に関しての例でいうと、男性
の方が採用基準を十分に満たしているにもかかわらず、わざとぎり
ぎり満たしている女性の方を採用するというやり方です。 

現在、国連などではこれが行われています。世界的な女性の地位向
上を目指したものです。さらにアメリカの名門校などの競争率が高
い大学では、大学に女性(や有色人種など)の定員比率を義務付け
ているケースがあります。これにより、平等な社会構造への変革を
目指しているものと思われます。ですから、ジェンダーを考えると
いうことは人権を考えるということでもあります。そして、日本が
アジアの牽引者となるためには、この点において見本となるような
変革を目指さなくてはならないでしょう。これが、日本の国際戦略
において、ジェンダー問題を議論する意義になります。 

話しが少しそれた感もありますが、なぜ日本社会は「主婦」を受け
入れても「主夫」を受け入れないのかといったことが基本的な問題
提起につながると思います。 

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