346−2.田中長野県知事を助ける立場



得丸作

男:今年3月に民間からスカウトされて地方行政の組織に入った人間
女:夫を単身赴任させて、東京で子育て中。

ウィーンから帰国するなり女が、田中康夫長野県知事の「名刺折り
曲げ事件」のことを興奮しながら話し始めた。

女「あなたがどんな職場で働いているか、はじめてわかったわ」
男「ニュースは見てないけど、多分僕のほうがもっとひどいところ
にいるんだぜ」

「地方行政に東京から誰か来るとしたら、たいていは中央官庁の人
間が出向でくる。そうでないのが、僕と田中康夫のケースだ。
「後ろに中央官庁がいたら、そいつがどんなむちゃくちゃなことを
言ったとしても、おそらく地方の人間はいいなりになるだろう。
もちろん、赤提灯で愚痴ることはあっても。

「ではそうでない場合、それが僕や田中康夫の場合だ。
「地方公務員は、自分たちの敵意と礼儀知らずと教養のなさをギラ
ギラふりかざして、立ち向かってくる。
「やつらに意識は、完全に凝り固まっていて、柔軟な発想は一切受
け付けない。

「田中康夫は、企業局長をそのまま辞めさせてもよかったのではな
いか。あいつらの意識(心)が、まっすぐになる可能性はほとんど
ない。
「なかよくしようよ」と田中知事が言っても、誰も本気ではとりあ
わないと思うね。

「どうして地方公務員の意識が腐るか、知ってるか。それは人事考
課制度が悪いんだ。
「公務員の人事考課というのは、新規採用で入ってくるときに、持
ち点1000とかあって、それが悪い評価がつくごとに減点される
仕組みになっているんだ。
「だから、上司がどんなに理不尽なことを言ったとしても、自分の
良心や理性を殺して、盲目的に服従することが一番出世の近道なん
だ。

「これを長年やっていると、みんな長野県の役人みたいになるわけ。
何が正しいかなんて、いっさい考えないように頭の構造が出来上る。
そうでない人間は、若いうちに、左遷されるか、徹底的につぶされ
て頭がおかしくなったりするのさ。

「この考課制度は、地方公務員に限った話ではないんだけど、この
地方公務員の世界が一番平穏無事にきたから、今でも根強く残って
いるわけ。
「だから田中知事が、どんなにがんばっても、内部で田中知事の味方
につく人はいないだろうね。仮にそんな人間がいたら、村八分にさ
れるとか、ひどい人事考課をつけられるから、自殺行為だというこ
とをみんな知っているから。

「田中知事は、大変だよ、県民の信任を受けているから、おいそれ
とは逃げ出せない。11月8日のSPAの「一炊の夢」は休みだったね。
それどころではないんだろうね。
「武器としては、断固判子をつかないという手もあるかもしれない。

「僕の場合は、判子をつかなければ、稟議書は僕のところを飛ばし
ていくようになっているし、最近は稟議書もあまり回ってこなくな
った。
どこか外部から金をもらってきて、海外出張に逃げることもできる。
「どっちがらくかはわからないけど、責任は田中知事のほうが重大だ。

「がんがんやめさせて、外部から100人くらい雇ってみたらどう
だろう。そうしたらはじめて県庁職員の意識も変わっていくのでは
ないだろうか。」
(得丸久文 作)
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得丸です。
友人からもらったパロディーのほうがリアルかなと思い、そのまま
お届けします。田中康夫知事を助けるのは、大変そうです。
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男: 地元から1歩も出たことのない地方公共団体職員
女: やはり地元から1歩も出たことのない妻。子育て中。

役所から帰宅すると、女が、いつものように茶を出し、田中康夫長
野県知事の「名刺折り曲げ事件」のことを話し始めた。

女「長野の職員さんも大変ねえ。難儀なこと」
 男「休憩室でニュースを見たよ。オレの所にもこてんこてんにや
っつけたいヤツがいるんだぜ」
「地方行政に東京から誰か来るとしたら、たいていは中央官庁の人
間が出向でくる。そうでないのが、ヤツと田中康夫のケースだ。
「後ろにおカミがいたら、そいつがどんなむちゃくちゃなことを言
ったとしても、絶対にオレたちは言うとおりにするよ。
こっそり、赤提灯で愚痴ることはあっても。

「問題はそうでない場合、それがヤツや田中康夫の場合だ。
「ヤツらは、権威もないくせに、オレたちの知らない言葉と礼儀知
らずと知識をギラギラふりかざして、立ち向かってくる。
「ヤツらは、オレたち=田舎者だという意識に完全に凝り固まって
いて、地元の義理人情は一切受け付けない。

「あなた。お昼に北原さんが菓子折り持って見えて、おばあちゃん
の施設入りよろしくって」
「お、わかった、、、あの企業局長は、田中康夫の名刺で鼻をかめ
ばよかったんだ。ヤツらの不人情が、まっすぐになる可能性はほと
んどない。

「中央のヤツらがオレたちと対話できるわけないんだ。ヤツらの誰
が北原の家を知っているね。
「どうして東京者が頭でっかちか、わかるだろ。それは義理人情を
知らないで勉強ばっかりやって育っているからだ。

「ヤツらは、夏山でセミ取りをしたこともない。たんぼの片隅で、
マムシが真っ赤な目をして、トカゲを食っているのを腰抜かして見
たこともない。隣の井元のおじちゃん達と一緒に神輿を担いだこと
もない。すべて、メディアから入ってくる擬似体験なんだ。

「だから、理念とか論理とかやたらわかんねえことにしがみついて
、上司がどんなに地元の調和を説いたところで、盲目的に反対する
ことが賢いと思いこんでいるんだ。

「ちょっとでも、よそもんが来ると、みんな居心地が悪くなっちゃ
うわけ。何が正しいかなんて関係ない。えらいさんの言うことをき
ちんと聞いていれば、万事おカミがうまくやってくれるんだよ。
ぐだぐだ屁理屈こねる人間は、さっさと左遷させるか、徹底的につ
ぶしておかしくなりゃいいのさ。いらねえクズだもの。

「あなた。戸籍課の島田さんとこの歌子ちゃんのお母さん、もうじ
きボーナスだからって。あれまあ、こんなに、ほら」
「まかしとき。この考課制度は、地方公務員に限った話ではないん
だけど、この地方公務員の世界が一番平穏無事にきたから、今もり
っぱに残っているわけ。

「だから田中とかが、どんなにがんばっても、内部で田中知事の味
方につく人はいないだろうね。仮にそんな人間がいたら、村八分に
されるとか、ひどい人事考課をつけられるから、自殺行為だという
ことをみんな知っているから。

「田中はおもしろい見世物だよ、ちっとばかり県民の人気があるか
ら、おいそれとは逃げ出せない。11月8日のSPAの「一炊の夢」は
休みだったな。それどころではないんだな。なんか愉快だ。

「オレのところのヤツな、かっこつけて、断固判子をつかなかった
のよ。
「バカじゃねえの。稟議書はヤツのところを飛ばしていくようにな
っているし、最近は会議もオレたちだけできっちり回してやるのよ。
どこか外部から金をもらってきて、ウィーンだかどこだか金だけ使
ってきやがって。どうせ酒と女が目的で行ったにちがいないのによ。

「オレたちもヤツらも大変だけど、責任はすべてヤツらに頼むってな。
「がんがんいびって、ひいひい泣かせて、やめさせてやるぜ。毎年
1人ずつ雇ってみたらどうだろう。
 そうしたら少しは県庁職員の力もわかっていくのではないだろうか
。」
(得丸久文 作)

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