313−2.国際政治経済の理論について



No.308-1に対して(BBSより)
 ふる@鶴川 
   
>なお、中国脅威論、北朝鮮脅威論などがアメリカから輸入されて
>いますが、結局アメリカ的な思考に基づくイデオロギーであるこ
>とに気づかなければ、いつまでもアメリカに左右されつづけるこ
>とになります。もっと考えなくてはならないことは、なぜ先日の
>台湾の大統領選挙後に中国は台湾に侵攻しなかったか(または出
>来なかったか)、なぜ94年ごろの朝鮮半島危機の時に第2次朝鮮
>戦争が勃発しなかったかという点です。単に軍事的な問題だけで
>しょうか? 

 基本的に柳太郎さんの「日本の理論武装」のご意見は賛成です。
日本の目指す独自の国際戦略・国際関係を確立しなければ、単なる
経済大国、たかられるだけの国、アメリカの外交の追従のままです。 
 しかし、中国・北朝鮮脅威論がアメリカからの輸入と言われます
が、その脅威論を論破できる力が日本にありません。ご存じのとお
り、アメリカは国際関係の分析に、国務省・軍・民間シンクタンク
・情報機関が研究し報告しています。資金・情報量・分析力を日本
の場合と比べると、大人と幼稚園児の違いぐらいではないでしょう
か。 
 理論武装するならば、その基となる他国の政策・経済云々の分析
・評価・政策力が足り無すぎます。このレベルの差を埋めない限り、
根拠のない抽象的な理論武装でしかなく、他国も相手にしないよう
に感じまます。 
 現状では、日本の国際外交の精神を主張するしかないのではない
でしょうか? 
  
 なお、台湾侵攻、第2次朝鮮戦争勃発が起きなかったのは、政治
面もありますが、根本的に軍事面で不可能であったからです。 
 台湾侵攻に関しては、仮にアメリカの介入が無かったとしても、
現時点では中国軍に台湾軍一国を相手としても制空権・制海権を押
さえることができないというのは軍事的な常識です。 
 しかし、中国側の新鋭戦闘機の導入など、このまま軍備の増強が
続けば、確か2005年以降は台湾優位のバランスが崩れるとされてい
ます。 
  
 '94年の朝鮮半島の緊張は、北朝鮮に対して核査察を受け入れの最
終通告を発し、北朝鮮が査察を拒否した場合には、安保理決議に基
づき海上封鎖も含む制裁を行う直前でした。北朝鮮側は、査察受け
入れを拒否することは確実であり、海上封鎖が実行された場合には
、北朝鮮は侵略行為であると宣言しておりましので、事実上、開戦
の直前であったことは間違いありません。 

 この時、日本政府は、半年前からCIAの情報を基に、朝鮮有事
に向けての各省の調整会議が連日行われていましし、自衛隊も米軍
側から開戦に向かっての具体的な協力要請が公式に行われていまし
た。 
 警察庁は、北朝鮮からのミサイル攻撃(ノドン[労働1号])に備
え、湾岸戦争のイスラエルのイラクからのミサイル攻撃に対処した
実例を全国の警察に配布し、また、北朝鮮の特殊部隊による原子力
設備等の攻撃の懸念から、菅沼警察警備局長と冨沢陸上自衛隊幕僚
長が意見交換を行っていました。 
 実は、開戦準備は宮沢首相の時から、非公式に打診を受けており
。'94年2月の細川首相とクリントン大統領との日米首脳会議におい
て、アメリカは、日本に対し北朝鮮への外交努力が実らなかった場
合には、戦争になることを告げられていました。 
当時、韓国では邦人の緊急連絡網が作成され、開戦に備え無線機に
よる使用訓練は5回以上も行われていたのです。 
 従って、紛争が起きなかったのではなく、土壇場で回避されたか
らです。 
  
>中国は外交において日本よりも何枚も上手で、極めてまともな精
>神状態を維持した国ですから、核兵器を日本に飛ばすようなまね
>は絶対にしないでしょう。つまり、その時点で自国の得にならな
>いことを知っているということです。アメリカも北朝鮮もぎりぎ
>りまで行きましたが、結局お互い戦争をやる気はなかったでしょ
>う。やる気があるんだたら、とっくに勃発していてもおかしくな
>いわけです。 

 中国の外交上手は、4000年も前から、権謀を繰り広げてきた
外交のエキスパートですから、おしゃるとおりです。 
 しかし、「極めてまともな精神状態を維持」しているというのは
疑問です。「まともな」というのは、他の民主的な先進諸国と「同
等である、非常識で無い」と言う意味でしょう? 
 中国が尖閣列島や南沙諸島の領有権をとなえる根拠は、「両地域
は中国の大陸から大陸棚が続いているので陸続きだ!」と、主張す
る国です。とてもまともとは言えません。尖閣列島に至っては、明
らかに日本側が占有していたものであり、沖縄返還前まで米軍が射
撃場に利用していた時は、全く主張をしていなかったものです。 

 共産主義至上国家である限り、まともであるとは言えないと思い
ます。もちろん、政治的メリット高くなければ、やみくもに核ミサ
イルをぶっ放すなどの馬鹿なことはしないでしょうが、日本の関わ
り合いによって、自らの共産主義政権が崩壊に繋がる虞が生じた時
、躊躇なくミサイルを向ける可能性がることは間違いないと思いま
す。当然、恫喝が最初でしょうが、脅しではなく、やる気でです。 
 最近まで、解放軍は核兵器は防衛のためのものであって先制使用
はしないと宣言してましたが、最近、「中国に重要な影響を与える
時は、躊躇無く使用する。」と、その縛りを無くしました。 
 自らの国家体制を守るためには、多数の人間が亡くなっても為政
者は躊躇しないのは、過去の歴史が証明しています。 
 また、もし核使用の使用によって国際的に叩かれても、あの国は
10年、20年先にメリットがあると思えばするでしょう。かの国
の時間の単位は長いですから… 
==============================
 ふる@鶴川 様 

コメントいただき有難うございます。 

>なお、台湾侵攻、第2次朝鮮戦争勃発が起きなかったのは、政治
>面もありますが、根本的に軍事面で不可能であったからです。 

台湾と中国の軍事バランスに関しては以前このBBSで論議されてい
ましたから存じております。 

>'94年の朝鮮半島の緊張は、北朝鮮に対して核査察を受け入れの最
>終通告を発し、北朝鮮が査察を拒否した場合には、安保理決議に
>基づき海上封鎖も含む制裁を行う直前でした。北朝鮮側は、査察
>受け入れを拒否することは確実であり、海上封鎖が実行された場
>合には、北朝鮮は侵略行為であると宣言しておりましので、事実
>上、開戦の直前であったことは間違いありません。 

朝鮮半島でぎりぎりまで行ったことも存じ上げております。(ただ
、細かい点は詳しく存じ上げませんでしたので、参考になりました。 

>従って、紛争が起きなかったのではなく、土壇場で回避されたか
>らです。 

前回のポイントはここです。なぜ、ぎりぎりまで行ったのにもかか
わらず回避されたのでしょうか?北朝鮮に「本当に」開戦の意思が
あったと思われますか?逆に、これは北朝鮮側が挑発することでぎ
りぎりの緊張状態まで持ってゆき、今後の立場的に「経済支援を受
ける側」であっても、ただ単にそうではない状態を作り上げるため
の戦略であったと捉える方が正解のような気がします。アメリカが
うまく策略を練らないない限り、アメリカ側から攻め入らないこと
は分かっていますから。 

その直後の金大中大統領の「太陽政策」を抜きに考えても、北朝鮮側
と韓国側での取り決めにはこの結果が反映されているように見えま
す。(以前、ロンドンで韓国ロンドン大使の講演があり、終了後個
人的に「アメリカの対北朝鮮政策がとたんに変わったのは、逆に東
アジア情勢を緊迫させておく為では?」といった旨の質問をしたこ
とがあるのですが、この点に関しては95年か96年(私の記憶が
あいまいです)の北朝鮮側と韓国・アメリカ側の合意に基づいている
ためであるとの事でした。) 


>中国の外交上手は、4000年も前から、権謀を繰り広げてきた
>外交のエキスパートですから、おしゃるとおりです。 
>しかし、「極めてまともな精神状態を維持」しているというのは
>疑問です。「まともな」というのは、他の民主的な先進諸国と「同
>等である、非常識で無い」と言う意味でしょう? 

「まともな」という言葉は確かにあいまいですね。申し訳ありませ
ん。私がこの言葉で意味しようとしたのは単に「自国に損になる行
動はしない」という意味です。中国の行動が他の国にとって常識的
かまたはそうでないかは別に捉えていただければと思います。 

>共産主義至上国家である限り、まともであるとは言えないと思い
>ます。もちろん、政治的メリット高くなければ、やみくもに核ミ
>サイルをぶっ放すなどの馬鹿なことはしないでしょうが、日本の
>関わり合いによって、自らの共産主義政権が崩壊に繋がる虞が生
>じた時、躊躇なくミサイルを向ける可能性がることは間違いない
>と思います。当然、恫喝が最初でしょうが、脅しではなく、やる
>気でです。 

本当にそうでしょうか?なぜソ連が崩壊する時に核ミサイルが一発
も発射されなかったのでしょう?あのときのソ連の指導者の中には
急進的な人たちが多数存在していたはずですが。 

>自らの国家体制を守るためには、多数の人間が亡くなっても為政
>者は躊躇しないのは、過去の歴史が証明しています。 

ここがポイントですね。私が中国をまともであると考えているのは
、第1次大戦ならびに第2次大戦以降といった歴史の教訓をヨーロ
ッパの国々のように真剣に研究していると思うからです。共産体制
一辺倒だった中国がなぜ経済特別区(資本主義)を認め導入したか、
中国のシンクタンクでさえ、今後の中国の動きとして、人権・民主
化はさらに進展すると考えていることを考慮すれば、中国の指導部
は変化を取り入れていくでしょう。ただ、彼らは事が急進的に進む
のを恐れていると思います。国家体制を維持しつつ、どのように変
革していくかが中国の目指していくところでしょうから。 

>また、もし核使用の使用によって国際的に叩かれても、あの国は
>10年、20年先にメリットがあると思えばするでしょう。かの
>国の時間の単位は長いですから… 

まず、核を日本に落としたとして何のメリットがるのでしょうか?
さらに、核を使うのなら、他の核保有国も同時にたたかなければ自
国を危険にさらすことになりかねません。全面核戦争が将来の中国
にとって有利に働くとする根拠は見当たりません。経済開発に10
年、20年の遅れが生じれば、それはさらに数十年のディメリット
をもたらすことになるのは明白です。 

きっと、中国が一番恐れているのは急進的な国家体制の変化による
国家崩壊の可能性でしょう。これは単に中国が現状を維持しようと
しているという保守的思想とは少し異なると思います。つまり、中
国政府は変革が必要なことを知っているが、そのスピードが収まり
のつかなくなることが怖いのです。資本主義諸国との経済交流によ
り、自国の法整備の必要性を感じているのは明らかです。 

私は、「核を持っているから」、「核で脅すから」中国は「極めて
」危険だとする論調に「ちょっと待ってくださいよ。」と申し上げて
いるわけですが、何も楽観的に捉えているわけではありません。核
が飛んでくる可能性はあります。が、注意すべきことは、日本が戦
略を練るにあたり、それを前提にしてしまうと、結局はアメリカに
もっていかれるということです。新たなアイデアを模索すべきです。 
柳太郎

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