原潜クルクスの沈没の評論が大体できるようになってきたので、 ここで考えましょう。 まず、沈没の原因は、恐らく液体燃料魚雷の取り扱いを間違え て、爆発し、その爆発で艦内の酸素・水素に引火して誘爆を起こし たものと、思われる。 しかし、ロシアの内情がよく分かった事故でしたね。まず、ソ連 時代に比べて、ロシアの海軍の予算が10分の1以下になっている ため、潜水艦の整備がほとんどできていないことが判明した。 ということは、今後もこのような事故は発生しうるということに なる。もし、核兵器を積んだ原潜だったらと思うと、ヒヤッとした ことになったでしょうね。 もう1つ、ロシアの海軍の内部の命令指示系統が複雑で、即応能 力がほとんどないようだ。これも判明した。その副産物として、 軍全体の戦略で、上層部が揉めていることも分かった。 参謀本部は、通常兵器の強化をするべきと考えているのに、政府 トップは、核戦略を重視している。このため、通常兵器の整備に ほとんど予算が付いていないことも分かった。 チェチェンでのロシア軍の被害が大きいが、約1万人以上が死傷 している。毎日10人程度が死亡し、50人程度が負傷しているよう だが、この通常兵器の更新ができていない。ka−500のような 優秀なヘリを持ってしても、被害が出ることになっているようだ。 このヘリの話も、今後する予定。 クルスク事故の影響: http://user2.allnet.ne.jp/tsuday/siryou/120819.htm ============================== 8/22 17:20 原潜事故は核戦略にも影響 「弱いロシア」を露呈 ロシアの原子力潜水艦「クルスク」の沈没事故は、同国軍の多く の問題を浮き彫りにした。事故がロシアの軍事戦略に与える影響な どを防衛庁防衛研究所の三井光夫・主任研究官に聞いた。(共同= 折坂浩史) ―原潜の現在の役割は。 「攻撃型原潜のクルスクは、目の前の敵である北大西洋条約機構 (NATO)の空母艦隊や潜水艦を狙うことを基本任務とするほか 、巡航ミサイルを搭載しており、米本土に接近し、沿岸部の重要施 設を狙うこともできる。さらに核弾頭を装着することも可能で、戦 略型も含めた原潜の総数が減少している中では、核戦力の一部にも なりうる。今回の事故で、攻撃型原潜そのものの問題を露呈したほ か、広い意味でのロシアの核戦略に少なからず影響があると言える 」 ―冷戦終結後も米国を狙う潜水艦が必要なのか。 「昨年のコソボ紛争を契機に、ロシアが安全保障のよりどころと してきた国連の安全保障理事会が機能しなくなったほか、NATO の東方拡大も進むなど、第二次大戦後、ロシアの安全保障上、最も 厳しい状況が生まれていると言える。そこで、以前にも増して軍事 力、特に核戦力が重要な意味を持ち始めた」 「一方で、ロシアはこれまで以上に米国に対し対等な立場を要求 し始め、軍事的な態勢を取る必要があった。今回の大規模な演習も 、強いロシアを誇示することが目的の一つにあったが、結果的に弱 いロシアを見せるという皮肉な結果になってしまった」 ―軍の弱体化が顕著になったということか。 「潜水艦は高性能の小型原子炉、秘匿性を保つための消音性能な ど最先端技術のすべてを結集しなければならない。ロシアにはそれ を建造する技術はある。ロシアには乗組員救助のための潜水艇がな いなど、技術水準の低さを指摘する声もあるが、今回の事故で露呈 したのは、技術がないのではなく、軍を維持する金がなかったとい うこと。ロシア軍の中でも海軍は置き去りにされ、整備すらできな いのが現状。このため、日本海の原潜も稼働しているのは一隻だけ とのうわさもある」 ―事故によるロシアの対外政策の変化は。 「事故原潜の引き揚げでは外国と協調する以外になく、これまで 主張してきた『強いロシア』のトーンは対外的にも低下せざるをえ なくなるのではないか」 (了) 000822 1720 ============================== 08/21 16:25 危険な液体燃料魚雷を搭載 軍需ロビーが圧力 【モスクワ21日共同】ロシアの原子力潜水艦クルスクの沈没事 故は、艦内での魚雷爆発説が強まる中、クルスクが軍需産業ロビー の圧力で、爆発の危険性の高い液体燃料式魚雷を搭載していたこと が悲劇を招いたとの見方が浮上してきた。 クルスクは、一九九八年に白海沿岸のドックで、魚雷を固体燃料 式から液体燃料式に交換しているが、最近のロシア国防省機関紙「 赤い星」は、海軍高官の話を引用し「極めて安価だが爆発しやすく 、保管方法が複雑な液体燃料式の納入を軍需産業側がねじ込んだ」 と内幕を報じた。 ノルウェーの環境団体ベローナによると、液体燃料式魚雷は、そ の危険性などから八○年代には固体燃料に順次更新されていた。そ のため海軍指導部は当初時代遅れの液体燃料式の配備に反対してい たという。しかし、軍部は恒常的な財政難に苦しんでおり、軍需産 業側に押し切られたとみられる。 事故原因については、ロシア政府も、衝突などの衝撃で魚雷が爆 発した可能性を指摘している。 海軍指導部は、乗組員の危険を十分に承知の上で経済性を優先さ せていた可能性があり、今後内外の厳しい批判が高まるのは間違い ない。 (了) 000821 1625