265−3.文明の海洋史観との関係



(NO.264−2文明と文化の続き)MLの議論採録
得丸 久文 樣

> 私は(くりかえしになりますが)こう思います。
> 
> 文化(意識、心)は、個々の人間が自分の力で(勉強したり、
> 意識改革によって、心構えによって)変えうる。
>
> 文明は、人間が皆で心を合わせれば、変えることができる。
> 所詮人間がつくったものですから。
>
> 問題は、本気で変えるつもりがあるかということと、では
> どのような文明を構築するのが望ましいのかというところ
> で合意をえることではないでしょうか。

望ましい文明について・・・

御存じかもしれませんが、川勝平太さんの「ガーデン・アイラン
ド構想」は得丸さんの考えに非常に近いように思います。
最近相次いで出版されている海洋史観を日本で広めた方です。
前小渕首相や榊原英資前大蔵省財務官からの評価も高く「21世紀
日本の構想」のメンバーも務めていました。

質問・・・・

「ボーダーレス時代の行動哲学」における『多様性』について
お考えをお聞かせ下さい。

YS
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実は川勝平太さんと『多様性』とは非常に大きく関連しています。
私も学生時代にこのことに気がついて以来、このことばかり考えて
きました。川勝氏の本を読んだときまったく同じ方面からのアプロ
ーチに正直驚きました。

従ってこれまでの私のコラムの根底には『多様性』への追求があり
ます。エンデの指摘どうり現在のアメリカン・グローバル資本主義
制度がダーウィニズムからくる弱肉強食を都合よく適用させ正当化
させています。
そしてその結果、精神性や文化といったものがないがしろにされて
います。

ダーウィニズムの「種内淘汰」「弱肉強食」が西洋の資本主義概念
にとって非常に都合が良かったため大いに利用されてきたわけです。
しかし、このダーウィニズムに異義を唱える理論が現れました。
今西錦司の「棲み分け理論」です。
まもなく今西理論への世界的な評価が高まるはずです。

このあたりを含めて長くなりますが下記参照下さい。

YS
97.12.06 THE SANKEI SHIMBUN

■書評 文明の海洋史観
http://www.sankei.co.jp/databox/paper/9712/paper/1206/book/book01.htm
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海洋国家だけ近代化した理由
気概にあふれる雄渾な文体
(評者)明治大学教授・入江隆則

 数年前に近世・近代史に関するいわゆる「川勝理論」を引っ提げ
て登場し、大向こうを唸らせた川勝平太氏の新著である。各章は最
初は別々に書かれたものらしいが、有機的に再構成されて、見事な
一書となっている。柱となっているコンセプトは、私の見るところ
「棲み分け」と「海洋」の二つだが、それを論ずるための出発点と
して、著者はやはり本書の始めの部分で、「川勝理論」の概要を繰
り返している。

 それを一口にいうと、十六世紀と十七世紀に西洋と日本によって
なされた「同時平行的な二つの脱亜」という考えになるだろう。
五百年前の広い意味での近代以前には、文明の華はユーラシア大陸
の中心部としてのインドやシナやイスラム世界にあり、ヨーロッパ
と日本はその周辺の遅れた地域に過ぎなかった。この関係が逆転す
るのは、日本では戦国から江戸時代までに、ヨーロッパでもほぼ同
じ時期に、両者ともにそれまでは貴重な輸入品だった木綿と砂糖と
茶と生糸とを自給することに成功したからである。しかしそのやり
方は日本とヨーロッパでは大きく異なっていた。

 日本は、文字どおりの国内の自給体制を整備して「江戸鎖国シス
テム」の完成という方向に向かった。他方の西洋はといえば、ヨー
ロッパとアジアとを当時発見されたアメリカ大陸に結び付けて、グ
ローバルな「近代世界システム」を造ることでそれを行った。「川
勝理論」の見事さは、こうしてヨーロッパが造った「大宇宙」と日
本が造った「小宇宙」の二つは、外見上どんなに違って見えても、
その本質においては同じものだという洞察にあったといえるだろう。

 本書における川勝氏は、今度はその「川勝理論」の幅を広げ、さ
らに深く掘り下げることによって、一つの文明論にまで高めようと
しているかに見える。そのための一つのコンセプトが今西錦司の「
棲み分け」理論である。この問題が集中的に論じられているのは「
歴史観について」と題された章で、川勝氏が今西の考えを西田幾多
郎、梅棹忠夫から上山春平にいたるいわゆる京都学派の人々の思想
と比較・考量しているのは一つの読みどころである。とりわけ三木
清を再評価しているのが面白い。しかし「棲み分け」理論が、人間
の文明へ全面的に適用できるかどうかは、今西自身もその限界を認
めていた通りで、本書においてもその限界が突破できたとはいえな
いように思う。これは今後、川勝氏に残された、一つの課題なので
はないだろうか。

 もう一つの「海洋」というコンセプトはさらに面白いものだ。
川勝氏によると戦後日本の歴史観は、唯物史観であれ生態史観であ
れ、ともに陸地史観に過ぎないという難点があった。なぜなら「新
たな結合」を生じさせる「海洋」という視点が欠けていては、近代
イギリスや近代日本などの海洋国家の本質は解明できないからだ。
この観点から川勝氏が梅棹忠夫のいわゆる「生態史観」を「海から
洗」っている部分は、本書のもう一つの読みどころであろう。

 川勝氏はまた「島」という概念を拡大解釈して、例えばユーラシ
ア大陸さえをも、地球全体を覆う海という観点からは、一つの「島
」に過ぎないといっている。こうなると話は太平洋文明という枠さ
えも越えて、地球社会全体のネットワークの構築にならざるを得な
いが、事実川勝氏はそこまで考えているようだ。

 本書は気概にあふれた雄渾(ゆうこん)な文体で書かれていて、強
く読者を引きつける力を持っている。私は本書が広く読まれて、と
りわけ次代を担う若い人々が、学問の喜びを味わうよすがになって
ほしいと思っている。(川勝平太著/中央公論社・一七〇〇円)
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この本はたしか読んでいます。あまり中味は覚えていないけれど。
「文明の生態史観」の生態を海洋に変えてみたわけですよね。
共感を覚えたかどうかも記憶にない。まったくボケ茄子頭です。

どのあたりが面白かったですか? どこが私と似ていますか?

記憶に焼き付いているのは、入江隆則さんの「世界は江戸化する」
というメッセージです。本のタイトルはなんだったっけ???
時間的には江戸よりも狭い世界に生きていることだけは確かです
からね。

得丸久文

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