212−1.二重国籍の別視点



Fさん、こんにちは。 オーストリアのチッペルレです。

二重国籍について、別の観点からの投稿がありましたので、
紹介します。投稿の本人には了解をとってあります。

5月11日朝日朝刊論壇(投稿)より
「日本に活力をもたらす2重国籍」
シゲコ・N・フカイ(岡山大学国際政治教授)

二十一世紀に向け、日本に活を入れる効果的な方法がある。原則的
に日本人に二重国籍を認めることである。
日本の国籍法11条は「自己の志望によって外国の国籍を取得した
時は、日本の国籍を失う」と規定している。

しかし、すでに多くの先進国では二重国籍が常識化している。
移民に伴う社会問題に対処するために、国籍取得条件は厳しくして
いるものの、欧州連合(EU)加盟国間では相互付与が原則になり
、加盟各国は小子高齢化社会に対応する為に必要な移民数を計算し
て積極的な導入計画を練っている。

日本も、1995年の生産年齢人口水準を今後50年間保つために
は毎年約60万人の移民導入が必要だと言う予測を国連が出してい
る。

これは、諸条件の変化を考えない単純計算だが、高齢化社会をだれ
がどう支えるか、という問題は待った無しである。

私の二重国籍論は、移民を考える前に、生産性を高めて、一人の労
動で支えられる人の数を増やす事が先決問題だ、という考えに基づ
いている。課題はグローバル化と知識産業化にどう対処するかだが
、ひとつのかぎは、この趨勢を生かせる人的資源の確保にある。

最近、国のリーダーシップで世界的な経済構造変化の流れにうまく
のった例としてアイルランドが注目されている。

19世紀中葉、主食とするジャガイモの大凶作で米国などへ大量の
移民を出して以来、貧しい移民供給国として知られてきたアイルラ
ンドは、政府の積極的な外資導入策の成功で、この数年、欧州抜群
の高成長をとげだ。

その結果、今年の「世界競争力番付」によるとアイルランドは96
年の22位から7位に急上昇している。96年の4位から17位に
下がった日本と対照的である。

アイルランドは二重国籍を認めてきたので、海外に移住して外国籍
を取り、色々な分野で活躍している同国人が続々帰国した。優秀な
人材がすぐ集るというので、同国にソフトウェアーの開発拠点を移
したり、新たに起業したりしようというハイテク企業が相次ぎ、経
済のグローバル化と知識産業化への適用を助け、好況を支えている
のである。

日本も戦前から米国や中南米諸国に移民を出してきた。最近は、日
本国籍のまま海外に定住して仕事を持つ日本人とその二世が増えて
いる。米国にも多い。
実は私自身、長年、米国で生活し、77年に米国籍を取得して日本
国籍を失った。

現在の職場は何の差別も無い気持ちの良い環境だが、外国人なので
、3年ごとに任期を更新しなければならない。また住宅購入の為
住宅金融公庫で融資を得ようとした際には日本の永住権が必要だと
言われた。

米国で生まれた二人の息子は二重国籍となったが、日本の国籍法で
22歳までに一つを選ばなければならない。
二世の中には、二つの言葉と文化を理解し、高度の技術をもつ優秀
な人材も多い。米国企業が実施する科学コンテストのファイナリス
トに、そういう2重文化経験者が多い事は、偶然ではない。親の世
代はもとより日系二世三世には、同世代の平均的日本人よりも日本
への思い入れが深い者が少なくない。

アイルランドのように二重国籍を認めれば、そういう人材のリク
ルートを容易にし、日本での投資意欲、起業意欲を高める効果が
期待できる。
欧米関係と比べ親密さに欠けるといわれる日米関係についても、
二重国籍を認める事には意味がある。ユダヤ系の米国人が米国の中
東政策を大きく動かしている事はよく知られているが、日本の現状
に詳しい米国市民として国政に参加し、米国外交に影響力を行使で
きる日系米国人を増やし、日米関係を強化する事が期待できる。

ボーダーレス化時代に入り地球市民意識の育成も叫ばれている。
二重国籍を認める事は、日本に根を下ろしながら、日本を超えた広
い市民意識への道にもつながる。
国益からも地球益からも有意義かつ直ちに実行できる政策として
提言したい。
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(Fのコメント)
 二重国籍問題は、総連系の人が日本国籍と北朝鮮国籍を持ち、日本
の国政に関与される可能性が高くなるために、今までは、ムリと
言っていたのですが、二重国籍にも、歯止めは必要です。条件として
は、日本と友好関係にある国との二重国籍となるはずです。
それに、期間等の制限は必要でしょう。

移民問題、2重国籍問題等、このコラム発の世論形成が多くなって
きています。とうとう、ここの議論がBISの年次報告書に登場する
のですから、責任重大です。どんどん議論しましょう。政治家の皆様
も参加してほしいですね。
現在、与党と野党の政策差が無さすぎです。もう少し、外交や国内
政策での分かりやすい差がほしいですね。

 移民問題についても、議論を深める必要があると感じています。
10年前と、世界の様相が変わっているのに、日本だけが10年前の
状況に留まっているため、分からないのです。
ドイツは、IT移民を積極的に受け入れる方向にシフトした。
それまでは、労働移民の帰国政策でしたから、大きな違いです。

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