200−1.ナショナリズムについて



YS/2000.06.05
★紹介

民族問題について非常に面白い本が出版されていますので御紹介します。
朝日選書なので中規模の書店でも購入できると思います。
関根政美『多文化主義社会の到来』(朝日選書、2000年4月刊、1200円)

なお長崎大学の谷川昌之教授がこの本の紹介をしていますので参考にし
て下さい。
http://www.edu.nagasaki-u.ac.jp/private/tanigawa/review/sekine.htm

以下谷川教授の紹介序文

 ●多文化社会化と現代版「国体護持」論

 現代はグローバリゼーションと多文化社会化の時代であり、日本もそ
の例外ではありえない。いわゆる保守主義者たちはこの流れに目をつむ
り、古来の日本文化を継承する日本民族の日本国家を再建強化しようと
しているが、要するにそれは「国体護持」の現代版であり、歴史的根拠
もなければ、世界政治の中での現実性もない。しかし、多くの日本人に
とって、このロマンチックな幻想は――特に経済不況や社会不安の中で
は――聞くに心地よく、サイレンの歌声のごとく、危ないと分かってい
ても、つい引き込まれてしまう。
 この現代版「国体護持」論は、裏返せば「国体」がいよいよ危なくな
っているという危機感の現れ、つまり加速度的に進行する日本社会の多
文化・多民族化を押しとどめようとする時代錯誤的な抵抗に他ならない。
しかし、国民国家ナショナリズムは妖艶な魔力を持ち、脱魔術化の努力
を怠れば、再びこの近代の妖怪が跋扈することになろう。
 国民国家ナショナリズムは、いわば近代政治原理の鬼っ子であり、親
の弱みをついて生長する。親の弱みとは、政治における文化の問題であ
り、たしかに近代政治原理はこの問題と真っ正面から取り組むことを避
けてきた。しかし、この問題を避けていては、現代版「国体護持」論の
脱魔術化はおぼつかない。
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★警告どうりいよいよ<ハンチントンの罠>に落ち込んでいくようです。
 参照 YSからの謹賀新年2000.01.01YS
    http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/120102.htm

 ●2000年6月4日(日) 20時29分

<神の国発言>ワシントンポスト紙が社説で「米の指導者は留意を」>

 【ワシントン4日清宮克良】4日付米紙ワシントン・ポストは社説で、
森喜朗首相の「神の国」発言について、「日本における民族主義感情の
力強さを示すものだ」と位置づけ、「民族主義感情が日本の対米関係を
損なう方向に発展すれば、重大な損害をもたらすだろう」と米国の政治
指導者に留意を呼びかけた。

 社説は「日本の首相が自国を『天皇を中心とする神の国』と呼ぶ時、
米国の政策決定者は注意を払う必要がある」と勧告。その上で、日本で
高まる民族主義を「日本の拡張主義の機運を駆り立ててアジアに走らせ、
さらに米国との戦争に向かわせた神秘的で熱狂的な愛国主義への郷愁を
内包している」と分析し、「神の国」発言と戦前・戦中の軍部・右翼思
想との連続性を指摘している。

 社説はさらに「日本である種の民族主義が高まる事態はおそらく不可
避であり、米国は抵抗すべきではない」と主張しながら、「問題は、こ
うした新しい主張が日米同盟を強化するか弱体化するかだ」と問題提起
している。

 また「昭和の日」制定の動き▽国旗・国歌法の成立▽改憲派の増加▽
国連安保理常任理事国入りのための運動▽国際通貨基金(IMF)専務
理事選での候補擁立―など最近の動きを列挙。「新しい主張は反米の方
向に向かう可能性がある。日本人が無視されたと感じれば、西側に対す
るかつての恨みが復活し、自国の安全保障を米国に依存してきた知恵に
疑問を抱き始めかねない」と警鐘を鳴らしている。

[毎日新聞6月4日] ( 2000-06-04-20:21 )

原文(英語) Japan's Two Nationalisms
 http://washingtonpost.com/wp-dyn/print/asection/editorials/A58578-2000Jun3.html


米ワシントンポスト紙、日本のナショナリズムに注目 
2000.06. 5 
Web posted at: 3:13 AM JST (1813 GMT) 

   (CNN) 米ワシントン・ポスト紙は4日、森喜朗首相の
「神の国」発言を取り上げ、日本におけるナショナリズムの台頭が
両刃の剣であることを指摘し、反米感情の芽生えを警戒しつつも、
ナショナリズムが日本をアジア圏防衛の要へと発展させるのではな
いかとの期待を示した。 

   同紙は「日本の2つのナショナリズム」と題された社説の中で、
森首相の「神の国」発言に代表される日本のナショナリズムが「米国
との戦争に導いた、愛国主義に対するノスタルジアを含んだもの」と
警戒しながらも、新しい世代の中に生まれつつある別種のナショナ
リズムは、アジア圏防衛のパートナーとして、日本への役割分担増に
必要ともしている。 

   また、「日本で何らかのナショナリズムが台頭するのは避けられず
、米国はそれを抑えようとするべきでもない」とし、戦争を経験した
世代が消えつつあり、日本で平和憲法の改正に賛成する空気も広がって
いることを紹介した。 

   最近の日本の自己主張強化の傾向は、今後の米国政権の対応次第
では反米感情を招きかねないとしながらも、若い世代の多くは「親米
」的であり、今後、アジアにおける日米の防衛協力関係の発展への
原動力となるはずとの見方から、米国は、日本の2つのナショナリズム
のバランスを保ち、次期米大統領の対処法次第で、日米安保の強化に
導くことができるとの見方を示した。 

   しかし、同紙は同社説の中で、森首相の発言は「沖縄でのG8
サミットを前に同首相の国際的指導力が問われる時期だけに衝撃
だった」と言明している。 
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ロイタービジネスニュース

<日本の対GDP比債務比率、対処不可能な水準に向かっている=BIS>
2000 年 6 月 5 日

[バーゼル 5日 ロイター] 国際決済銀行(BIS)は、日本経済を立ち
直らせようとする日本政府の努力は、日本の債務を持続不可能な水準
に押し上げる、との見方を示した。 BISは年次報告で、「財政刺激策
が民間需要と税収の持続的回復をもたらしていないことから、国内総
生産(GDP)に対する政府の純債務比率は現在、国際基準に照らせば控
えめな水準としても、対処不可能な水準に向かっている」と指摘した。 

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