154.M&Aで「かわらなきゃ!!」



YS/2000.04.15

★急増する対日直接投資

日本銀行のまとめによると1999年の外国企業による対日直接投資は
前年比3.4倍の1兆4千億円となり、過去最高を更新した。仏ルノー
による日産自動車への資本参加に代表される国際的なM&A&Dが活発
化している点が注目される。今年に入っても独米ダイムラー・クライス
ラーと三菱自動車などの大形案件が発表されており、その勢いは止まり
そうにない。

★M&A&Dとは

M&A&Dとは合併(マージャー=merger)、買収(アクイジション=
acquisition)、事業分割(ダイベスティチャー=divestiture)の頭文
字を組み合わせたもので一般的にはM&Aと呼ばれている。

失われた10年を象徴するリストラ(=リストラクチャリング)との関
連からここでは事業分割=Dも含めることにした。

★リストラクチャリングの誤った認識

本来リストラクチャリングとは再構築、再編、編成がえを意味しオペレ
ーショナル・リストラクチャリング(事業再構築)とファイナンシャル
・リストラクチャリング(財務再構築)に大別される。

ファイナンシャル・リストラクチャリングは企業や金融機関が、自社株
の買い戻しや債券償還、スワップ、資産売却を通じて財務構成や収益率
改善をはかるものである。

一方オペレーショナル・リストラクチャリングは企業や金融機関が事業
部門別、製品種類別構成をグランド・ストラテジーに対応して再編成す
ることである。

一般的にM&Aにおいては結果として期待どうりの成果が得られない場
合に部分的なものも含め転売(=事業分割=D)したり、負債返済のた
めに一部を売却(=事業分割=D)する。従って常にM&Aと事業分割
=Dは堅く結びついている。

どうも日本国内では経営者も含めてリストラといえば人員削減の意味と
思い込んでいるようであるが誤った認識である。

★日本における単純すぎるM&A議論

日本ではM&A=非友好的なものと解釈し特に海外企業が対象になった
場合感情的な議論に陥ることが多い。「乗っ取り」や「買い占め」のイ
メージが先行しているからであろうが、M&Aの母国アメリカでも敵対
的買収はさほど多くなく、友好的なM&Aが大半を占めている。

★M&A&Dの効果

見落としている方が多いので1985年1月19日に発表されたアメリ
カ経済白書(正式名;経済諮問委員会年次報告「THE ANNUAL REPORT OF
 THE COUNCIL OF ECONOMIC ADVISERS」)を振り返りたい。 当時アメリ
カ国内でもM&Aの功罪について議論されており以下がその要点である。

「アメリカ経済の成否の鍵は、熾烈な経済競争の手の中にある。競争に
打ち勝つために、経営者は、日進月歩で進歩する技術、たえず変化する
需要、不安定な資本市場に対応することを迫られる。競争のため、手に
いれた地位はつねに脅かされ、経営者は現状に安住することを許されず、
つねに組織改革を行い、新しい資金調達手段を考案していかなければな
らない。要するに、競争の結果、効率的な生産形態が発展し、寿命のつ
きた製造方法や組織が消滅することにより、経済は成長していくのであ
る。」とし「企業買収にたいする連邦規制を強化することは、時期尚早
かつ不必要であり、また、賢明ともいえない。」と結論付けている。


★歴史的転換期を迎える日本的伝統経営

現在まさに自動車に象徴される製品の成熟化や消費者ニーズの多様化、
そしてIT分野を含めた情報通信革命によりますますスピードアップす
る産業構造変化に対応するにはM&A&Dは避けては通れない効果的な
手段である。

確かに「寿命のつきた製造方法や組織」を分割する際に多くの場合人員
削減につながるが、場合によっては異業種を含めた新たな組織のもとで
再生・存続させることも可能となる。本来ここに経営者の能力が試され
るべきである。M&A&Dをいかに日本的にアレンジしながら企業戦略
に活用できるかがこれからのテーマとなろう。ベンチャー育成と同時に、
事業分割(ダイベスティチャー=divestiture)を重視した高度な金融
技術を有したM&A&D斡旋型再生機関の出現も現在の日本にとって必
要不可欠である。

このところ石原慎太郎氏や「マネー敗戦」の吉川元忠神奈川大学教授に
代表される経済的嫌米ナショナリズムとも言うべき思潮が次第に根を張
り始めている.この種の主張にみられるのは、何故かこの世代の方に比
較的よくみられる「すべてアメリカが悪い」という責任転嫁型思想であ
る。

この失われた10年を謙虚にみつめれば、日本の政治経済システム自体
の問題に起因していることがわかる。「経営者は手にいれた地位をつね
に脅かされ、現状に安住することを許されず、つねに組織改革を行い、
新しい資金調達手段を考案していかなければならない」と静かに語れる
人はいつになったら現れるのだろう。

オリックス・イチロー選手の「かわらなきゃ も かわらなきゃ」が最
後に選んだ方法は、自分達自身の能力で変えることもできなかった誇り
高い国民の最後の手段だったのである。「すべてルノーが悪い」と言っ
て欲しくないので日産自動車の復活を切に望む。
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NY株下落は崩壊の始まりか、一時的調整か(朝日)

14日のニューヨーク株式市場で株価が史上最大の下げを記録したこと
に対して、高騰を続けた株価の崩壊が始まるのか、一時的な調整にとど
まるのか、米国内でも見方が割れ、週明け以降の市場の動きを警戒する
空気が広がっている。過熱気味の景気を安定成長軌道に戻すことを政策
課題とする米政府や米連邦準備制度理事会(FRB)にとって、株価の
一定の下落・調整は不可欠。しかし、過度に下落すれば、史上最長に達
している現在の景気拡大がストップする恐れもある。
米ホワイトハウスは、「株価の下落にはコメントしない」と表向きは
平静さを保っている。しかし、ある米政府関係者は「過熱気味の景気を
冷やす適正な調整になるのか、週明けの市場を見極めたい」と極めて
慎重な構えも見せている。
この日の株価の下げは、消費者物価の上昇がきっかけだが、市場が「イ
ンフレの芽を摘む目的で予防的利上げを繰り返してきたFRBの出遅れ
・政策運営の失敗」と受け取ることができる余地を残しており、政策当
局には「嫌な下げ方」(同関係者)となっている。
昨年10―12月期に国内総生産(GDP)の実質成長率は年率7.3
%と、約16年ぶりの高い伸びを記録し、米経済の過熱は明らかになっ
ている。年率3.5%前後の安定成長軌道に戻すためには、株価の一定
の下落は必要にはなっており、株価の下落が週明け以降、ある水準でと
どまれば、FRBのシナリオ通りの展開にもなる。
しかし、株価が政策当局の思惑通りに動く保証はない。グリーンスパン
議長も、この日のワシントンでの講演で「(株価などに対する)人間の
評価には、生来染みついた不確実さがある」と指摘しており、当局の
シナリオを超えて下落する事態となれば、10年目に突入した景気拡大
の先行きも不透明になりかねない。(12:22)


 米FRB議長、市場の急落に備え銀行が十分な資本を準備するよう
要請(ロイター)

 [ワシントン 14日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)の
グリーンスパン議長は、金融市場の急激な下落が生じるのは時に「避け
られない」ものであり、銀行はこれに備えて十分な資本を準備すべきだ
、と述べた。
 同議長は、講演草稿で、資産の価値判断は本質的に不透明なものであ
り、これが「こうした不透明さの認識における突然の変化」の可能性を
高めることになる、とした。
 さらに、リスクを管理する者は最低でも、モデルの基本としている
想定をチェックし、いくつものシナリオの下でポートフォリオの変動を
考慮する必要があるとした。
 議長は、こうしたプロセスの結果として、「投資家が信頼を失った際
に避けられない損失に備えるために、危機への対応措置、すなわち準備
金や資本を備えておくことが推奨されることになる」と述べた。
 議長は、この講演のなかでは株式市場の変動には直接言及せず、また
、FRBの金利政策の見通しにも明確な方向性を示す発言はしなかった。


日経平均銘柄入れ替え

日経平均株価の30銘柄、24日から入れ替え・日本経済新聞社

 日本経済新聞社は15日、日経平均株価(日経平均)の銘柄選定基準を
改定し、改定基準による銘柄入れ替えを24日に実施すると発表した。
採用・除外銘柄はそれぞれ30銘柄になる。NTTドコモのほか、
JR東日本、日本興業銀行、京セラ、イトーヨーカ堂などの有力銘柄が
新たに採用される。業種別では電気、銀行の採用が目立つ。除外銘柄は
富士紡績、日本カーバイド工業など素材関連が多い。日経平均は日本
経済新聞社が管理・運営するわが国の代表的な株価指数。東京証券取引所
第1部上場の225銘柄を対象に毎日1分間隔で算出・公表している。

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