YS/2000.01.10 チェチェン問題はこれまで幾度となく繰り返されてきた石油利権をめぐ るもので、今後ロシアがアゼルバイジャンに侵攻した場合、米露衝突の 可能性をも秘めている。現在水面下で米露を軸に外交的決着に向けた交 渉が行われているものと思われる。 カスピ海油田を有するアゼルバイジャンの首都バク−は、20世紀初頭 には全世界の産油量の過半数を占めていた。そしてその利権によりノー ベル家やロスチャイルド家に巨万の富みをもたらした。その後掘り尽く されたはずの街に1994年頃からアメリカ・オイルマンが多数押し寄 せることになる。ソ連崩壊後、海底で145もの新たな油田が発見され たのである。その埋蔵量は約2000億バレルと予測されている。 この内バク−市沖合いのアゼリ、チラグ、グナシリの3油田(40〜5 0億バレル推定)の油田開発には国際コンソーシアム「アゼルバイジャ ン国際操業会社(AIOC)」が行う。 AIOC構成企業−アメリカ Amoco(17%),Pennzoil(9.8%),Uno cal(9.5%),McDermott(2.4%) イギリス BP(17%) ロシア Lukoil(10%) など (この内BPAmoco誕生により合計34%に、McDermottは日本の伊藤忠 商事に探鉱・開発権益を売却) 次なる利権獲得を狙うエクソン・モービルを含めたアメリカ国際石油資 本の支援にはキッシンジャー元国務長官を筆頭にベーカー元国務長官、 スコロウフト元大統領補佐官、ブレジンスキー元大統領補佐官、ベンツ ェン元財務長官、チェイニー元国務長官などのロックフェラー系インナ ーサークルのメンバーが結集している。また1999年11月にはクリ ントン自らが立ち会い新パイプライン『トルコ・ルート』の建設合意文 書が調印された。 この中でアメリカの外交指南役を自任するブレジンスキーの活動は注目 される。最近の著書「ザ・グランド・チェスボード」にてヨーロッパ・ ロシア・中国にまたがる「ユーラジー」をアメリカの新たな覇権戦略の 軸とするものでアゼルバイジャンへの取組はこのドクトリンに基づくも のであろう。また同氏はかって日米共同インクともいうべき『アメリッ ポン構想』を提唱したこともある。 アゼルバイジャンは「最後のフロンティア」として米・欧・露・中国・ 日本が激しい争奪戦を今なお繰り広げられている。特にロシアのとって はその10%なる権益に満足するはずもない。クリントン大統領の調印 に同行したバーガー大統領補佐官も「新パイプラインはロシアと敵対す るためのものではない」との配慮を行っている。 私自信は過去の事例から米露衝突は回避されるものと予測する。エリツ ィン辞任がロシア側からアメリカに向けたメッセージとの判断からであ る。ただしロシア側の一部マフィア主導による暴走に一抹の不安が残さ れている。(アメリカは過去にもこうした読み違いをたびたびおかして いる。) 再三指摘しているようにアメリカのとって石油は安全保障上の最重要戦 略資源である。その戦略方法はかってのジョン・マクロイ、ロバート・ マクナマラ時代がらさほど進化していないので参考にしていただきたい。 ただ当時と違って国際関係は複雑化しており米露の動向にイラン・イス ラエルあたりが今後どう関わってくるか注目される。新たなケース・ス タディーを示唆するであろう。 引用(共にインターネット検索による) 産経新聞 「ユーラシアは動いた」 船橋洋一 「中央アジア国際石油政治、台風の目はアゼルバイジャン」 Yellow Hiro's TOPIC「原油/石油/ガソリンの価格動向」 共同ニュース、伊藤忠ニュース、NSニュースカプセル など BGM-OLD LABEL-JONI MITCHELL & JAMES TAYLOR −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (Fのコメント) アゼルバイジャンへ波及すると、米ロ紛争が拡大することですね。 また、トルコがロシアへチェチェン紛争を非難している。 裏は、石油権限の争いですね。YSさん、ありがとうございます。