YSからの謹賀新年



YS/2000.1.1

ここ数年21世紀に向けたあらたな世界構造を模索する意欲的な著作
が相次いで出版されていますが、なかでも話題をあつめたものとして
サミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』(集英社、1998年)
があります。以前より彼の論文については一応目をとうしていたので
さほど期待もせず書店での立ち読みにて失礼させていただきました。

この著作の原形は1993年夏号の外交問題評議会発行の「フォーリ
ンアフェアーズ」掲載の論文『文明の衝突?』です。まだ『?』があ
れば許せたせたものを・・・。「過去の失敗を今なお顧みないアメリ
カ中心主義的かつ文化と文明を幼稚なほど混同した政治史観ではない
か」というのが私の評価です。

ハンチントンはハーバード大学戦略研究所を拠点に活躍する政治学者
で、かっては国家安全保障会議(NSC)のコーディネーターを勤め
たこともあります。

多くのマスコミが絶賛するなか私同様の極めて辛辣な批判が行われて
いました。

『米中のパワーゲームの狭間で日本の孤立化を招く』ことを<ハンチ
ントンの罠>の核心としたうえで

「ハンチントンの論文が日本人にとって不愉快なのは、西洋対非西洋、
西欧分明対イスラム文明・儒教コネクションの構図の中で、むしろ日
本が孤立することに展望の重点をおいているかに思えるからだ。実際
に湾岸戦争からバルカン危機やチェチェン紛争にいたる国際政治の緊
張をはらんだ構図の中で、日本の政局と世論の動きを見ると、日本が
いよいよ<ハンチントンの罠>に落ち込んでいくように思えてならな
い。」

(「文明の衝突か、共存か」東京大学出版局、山内昌之教授序章より)

山内昌之氏は東京大学教授で前外務大臣高村正彦氏のもと「チャレン
ジ2001−21世紀に向けた日本外交の課題」をまとめた提言作成
メンバーのひとりです。<ハンチントンの罠>が現在の中国問題と重
なって見えてしまうのは私だけでしょうか。

アメリカの中国に対する評価は現在完全に分裂しておりハンチントン
の主張は総意ではありません。いみじくも英国戦略国際問題研究所デ
ィレクターであるジェラルド・シーガル氏が今年の「フォーリンアフ
ェア−ズ」にて『中国を過大視するのは止めよ』と題する論文が掲載
されています。ただ日中関係に対するアメリカの反応は一種異常であ
る事は事実です。巨大な中国市場での利権獲得に向けて大物キッシン
ジャー氏がディズニーや通信大手のGTEの顧問となって動き始めて
います。くれぐれも田中角栄の二の舞いにならぬよう祈るばかりです。

田中角栄失脚の原因は日中国交正常化とチュメニ油田開発協力合意に
よることは自民党内一部ではいわば公然の事実となっています。田中
氏自信国際感覚に難点があったようですが現在の国内政局を見る限り
あまり進歩していないような気がします。

参考までにロッキードに絡む汚職事件でもうひとりオランダあたりの
世界的大物が失脚しています。この事実を関連させれば非常におもし
ろい分析が可能となるはずです。



以上長い前置きになってしまいましたが新年ということもあり私なり
の今年の抱負を『日本の将来』にからめて描かせていただきます。

年内をめどに大手事務機メーカーと約2年間にわたって共同開発して
きた循環型インフラ製品の市場投入を行う予定です。アメリカ型グロ
ーバル資本主義は地球環境との共存において致命的な欠点をもってお
り近い将来に崩壊するというのが私の見解です。

ポストアメリカ型として『循環型グローバル資本主義』を提唱いたし
ます。

日本国内の大手メーカーの「ライフサイクルアセスメント」への取組
姿勢は水面下で大きく進展しており、仕事上で接する研究開発者達の
姿勢に自信と誇りが戻ってきています。静脈物流構築など今後大きな
ハードルが残されていますが自らも主体的に参加することで解決に向
けて努力したいと思っています。またバブル崩壊後も「ライフサイク
ルアセスメント」を維持強化してきた各企業トップの「将来に向けた
願い」に敬意を表します。

循環型社会システムはそれ自体「閉鎖的ループ」を描く点でナショナ
リズムに結びつきやすい特性を持っています。それゆえに世界に向け
た『健全な戦略思考』に基づくネットワーク構築が必要です。

その点でパートナーとして歴史的成熟度の高い中国を含めたアジア各
国並びにヨーロッパ各国との連動が不可欠です。

マクロとミクロを混同しているかもしれませんが、「二人の愛する娘
の将来のため」が原点です。私はそれでいいと思っています。

BGM/-99 Monkeys-BOB NEUWIRTH

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