2474.中央アジアの石油事情



中央アジアの石油事情を概観しよう。    Fより

ロシアと中国の地域覇権を掛けた地域への働きかけが面白い。中央
アジアの中でも焦点なのが、カザフスタンとトルクメニスタンの2
ケ国である。カスピ海は石油と天然ガスの宝庫であり、どうも、中
東のサウジからウラル山脈まで帯状に石油埋蔵地域があるようで、
カスピ海の湖底やその周辺から石油、天然ガスの埋蔵が確認されて
いる。

特にカザフスタンのカシャガン油田が有名であるが、この権益を中
国が持っている。このカシャガン油田から中国までパイプラインを
引く計画が出ている。今まで、カザフスタンの石油、天然ガスはロ
シアのパイプラインで欧州に送られていたが、そうすると価格がロ
シアに決められて、カザフスタンとしても不満であったようだ。

このカザフスタンに近づいたのが、上海協力機構の中国である。
ロシアよりいい条件と値段をつけるし、有り余るドルを持って、カ
ナダの石油企業であるペテロカザフスタンを買い取る。今の中国は
米国国債より、手持ちのドルで世界の資源企業を買いあさっている。
米国国債やドルが暴落することを見越した動きをしている。日本の
ような米国国債の運用一本やりではない。

ここに、米国が登場する。バクーからトルコへのBTCパイプライ
ンで主にカシャガン油田の石油を欧州などに送らないかとカザフス
タンに提案した。勿論、カザフスタンは価格が上がる可能性があり
、OKになっている。米ブッシュの巻き返しである。

苦々しく見ているのがロシアで、ロシアは、自国と周辺諸国の石油
と天然ガスをロシアのパイプラインを通じて、欧州に供給して、価
格の主導権を握りたいようだ。ロシアは資源立国を宣言している。

もう1つ、カザフ、トルクメンの石油を積み出せる方法がある。
それはイランで、インド洋への出口がイランしかない。

トルクメニスタンの天然ガスは世界第三位の埋蔵量を誇っている。
ここでも中国とロシアが競い合っている。イランはインド洋への積
み出し港として、位置を確立している。米国はトルコを代理人とし
て送るが、イランを通じてしかパイプラインが引けないために苦戦
しているようだ。カザフとトルクメンの天然ガスと石油をアフガン
、パキスタン経由でインド洋に積み出す計画でアフガンを米国は攻
略したのですが、現在の状況(タリバンにやられている)ではこの
計画は無理ですね。

カフカス地方はグルシア、アゼルバイジャン、トルコが親米派であ
り、このルートでBTCパイプラインが引かれている。GUAMと
いう親米反露同盟にグルシア、アゼルバイジャン、モルトバ、ウク
ライナが加盟していることでも分かる。

このようにカスピ海石油を巡って、中国とロシアが取り合いをして
いる。その石油の輸送路をどうするかがもう1つの争点になってい
る。石油資源戦争が、イラクやアフガンの戦争の裏で繰り広げられ
ている。

そして、農産物や水産物にもその様相が波及する気配にある。中国
12億人が日本並みの生活をしだしたら、これは大変な消費を中国
は行うことになるようだ。この動向を見ないといけない。

石油を使わない農業生産の確立を急ぐ必要に迫られている。世界の
資源の奪い合いが広範囲で始まっている。その仕掛け人は中国であ
る。そして、その中国はとうとう、江沢民派を追い出しに掛かった
胡錦濤主席のクーデターが始まろうとしている。しかし、上海への
外資導入を止め、上海財閥を締め上げると、これは内乱・分裂にな
る。

上海の市政府は共産主義からの脱却を目指して、来年の教科書から
共産党が登場しない、反日がない教科書を使うと宣言した。上海か
ら民主化が始まっていた。これを党中央は潰そうとしている。
しかし、一度、火がついた民主化運動は収拾できないですね。
これは来週、詳しく説明したい。現時点でのマスコミの報道は、そ
の動きを捉えていない。
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英字紙で学ぶ国際エネルギー事情
http://blog.mag2.com/m/log/0000183050/

中国にとってカザフスタンは原油の安定調達先
The New York Times紙、Christopher Pala記者
2006年3月17日金曜日

中国は、一世紀以上にもわたり背を向けてきた中央アジアに対して、中央アジア
最大の国であるカザフスタンに触手を伸ばしてきた。唯一最大の理由は石油である。

昨年、中国の国営石油会社である中国石油天然ガス総公司は、旧ソビエト連邦で最大
の独立系石油企業でカナダ人が所有していたペトロカザフスタンを41億8千万ドル
で買収し、さらには中国との国境までパプラインを敷設するために7億ドルの追加支
出を行った。

ペトロカザフスタンは、中国企業による今までの最大の外国企業の買収であった。
中国の石油企業は、すでにカザフスタンでより小さい油田を4ヵ所操業していた。

ブリュッセル自由大学の中国と中央アジアの関係に関する専門家であるThierry
Kellner氏によると、「中国の中東の石油に対する依存度は急速に高まっており、
台湾との間の緊張が高まった時に、封鎖を回避できる供給ソースを欲している」
との事。

【解説】
旧ソビエト時代、中央アジア諸国の石油資源は、主にその北側のロシアとパイプライ
ンに繋がられていた。ソ連崩壊後も、ロシア企業が支配するパイプラインによってし
か、中央アジア諸国の石油資源は国際石油市場にアクセスできない状態でいた。

石油市場に自力でアクセスできないと言う事は、アクセスする手段をもっているロシ
アのパイプライン会社に販売の生殺与奪を握られてしまう事に他ならない。
まさに、生 命 線 なのである。

このような状況下、中央アジアの産油国はロシアを通じないで輸出する道を探って
きた。中央アジアの真北にロシアがあるわけだから、西、南、東の三方を模索する
事となる。

西の方向には、黒海につなぐ方法がある。しかし、黒海まで原油を運べても、黒海
から、ボスポラス海峡を抜けて地中海に運び出す必要がある。そのボスポラス海峡
がすでに、タンカーで満杯状態になっており、これ以上は無理な状況となっている。
この問題を回避するために、カスピ海と地中海を直接結ぶ1,768KMのBTC
パイプラインが昨年開通した。
BTCとは、アゼルバイジャンのバクー、グルジアのトビリシ、トルコのジェイハ
ンのそれぞれの頭文字を取ったものである。

※参考:国際石油開発(株):BTCパイプライン
http://www.inpex.co.jp/business/project/caspian.html

南の方向は、イランが横たわっており、すでに数年前から、カスピ海の最南端にあ
るイランのネカ港に海上輸送で原油を渡し、ペルシャ湾からイランに同数量の原油
を返してもらうSWAP取引が開始している。ネカからテヘランまでのパイプライ
ン拡張も行われ、少しずつこのルートも増えてきている。

※参考:『南コーカサス地域のエネルギー輸送』(篠原建仁、外務省調査月報2004)
 (ちょっと古いが、よくまとまっています)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/pub/geppo/pdfs/04_1_2.pdf

東の方向が、今回取り上げた記事の中国へのパイプライン構想である。しかし、この
ルートはパイプラインの長さが約3,000KMにも及ぶ非常にコストのかかるもの
である。昨年12月に開通したのはその一部の約1,000KM部分である。まだ、
カザフスタンのカスピ海にある油田とは繋がってはいないが、カザフスタンにとって
は、直接どこの国をも通過しないで、原油を輸出できる初めてのルートであり、まさ
に悲願のパイプラインだった。

中国にとっても、原油輸入に占める中東依存度は45.4%(2004年)となって
おり、このままでは経済成長とともの、ますますその依存度が上がってしまう情勢で
ある。上の記事では、台湾問題が中国が中央アジアに目を向ける理由だと述べている
が、むしろ、経済合理性い基づいた行動ではないかと考える。

中国海岸部の製油所はタンカーで中東から運んだ方が当然コスト的に安いが、内陸奥
地にある製油所には、海岸部からパイプラインや陸上輸送で運んでおり、かなりのコ
ストがかかるものと思われる。従って、中央アジアからパイプラインで原油が運ばれ
てくれば、コスト的には安くつくと思われる。また、中央アジアの原油は、中東産より
低硫黄であり、その点もメリットはあると思われる。

今後、ますます、中央アジアの原油については、地政学的な要因もあり、注目度が
高まっていくと思います。
長年、ロシアに支配され、国際マーケットから分離されていた同地域の原油が、今後
どんどん、国際市場に流れてくるのを楽しみにしています。

(参考ホームページ・文献)
1.中国石油天然ガス総公司(英語)
  http://www.cnpc.com.cn/english/index.htm
2.『中国カザフ間の石油パイプライン開通』(日経新聞、2005年12月16日)
3.『カザフに見る中央アジア新パイプライン地政学』
  (十市勉、新潮社『フォーサイト』2006年2月号)
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旧ソ連における地域協力の現状と展望 
−中央アジアを中心に− 
2006 年 6 月 
http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/search-text.do?url=05001263
日本貿易振興機構(ジェトロ) 
海外調査部 

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