2417.イスラエル戦線拡大



オルメルト首相は地上部隊の侵攻をリタニ河まで拡大に同意した。
                      Fより

オルメルト首相の弱気が、世界各国に伝播してイスラエルへの非難
となって帰ってきた。弱気は戦争当事国にとって損になることを
やっと気がついたようである。

その動きに同調して、英米独などが即時停戦に同調しないとなり、
当分停戦がなくなった。イスラエルはシリアからヒズボラへの物資
輸送を徹底的に空爆することから、ヒズボラは補給面で行き詰るこ
とになるが、そのためには数ヶ月の戦闘を行い、シリヤからの補給
を止めることである。これが成功するとヒズボラの武装解除も現実
味を帯びることになる。その後、NATO軍を緩衝地帯に展開する
のが妥当でしょうね。

シリヤからの補給を徹底的に空爆するということは、ベカー高原を
空爆することになり、ヒズボラの本拠を叩くことになる。これが効
果的であるとシリヤが反対にイスラエル軍を攻撃してくる可能性が
出てくる。そうするとイスラエルはシリヤ軍を蹴散らし、ダマスカ
スまで占領できることになり、シリヤにいるハマスを潰すこともで
きる。

イスラエル軍はUAVを大量にこの地域に飛ばしているために、夜
でもトラックのヘッドライトを見つけることができる。発見すると
、爆撃機に知らせるシステムを持っているために、夜でもシリヤは
補給が困難である。人海戦術で運ぶか、ヘッドライトを消して運ぶ
しかない。対空ミサイルがないために、空からの攻撃に対応できて
いない。

しかし、シリヤとの戦争になると、イスラエルも予備役の全てを投
入した大戦争になる。このことも視野に入れて、電撃戦を行い、数
週間でシリヤを制圧するしかない。シリヤとは正規戦であり、イス
ラエルが間違っても負けることはないと思うが、損害をどれだけ少
なくするかが問題でしょうね。

シリヤの若いアサド大統領の采配を見てみたいですね。イスラム教
社会の民衆からカナでの空爆でイスラエルの横暴を見過ごすスンニ
派イスラム諸国に不満が鬱積している。この期待に応えると自国の
破滅になるが、あえて、殉教の精神で参戦するかどうか??

そして、このシリヤをイスラエルが取ると、中東情勢は一編に米国
の息が掛かった民主化国家群になる。イラク、レバノン、シリヤ、
アフガンを取り、次はイランになる。イランは自国の同盟国を守ら
ないと、次は自国への攻撃になることを十分知っているはず。
さあ、どうなりますかね。

しかし、米国はイラクで手一杯ですし、イスラエルは人口500万
人国家ですから、中東全体を征服できるはずがない。どうみても、
無理な計画でしょうね。NATO軍のトルコをレバノン、シリヤ国
境に展開して、防波堤を作ることで今回の戦闘を終わらないと、イ
スラエルの存亡にかかわることになる。ヒズボラのような準備され
たゲリラ戦はイスラエル軍でも難しいことが判明した。

そして、中東民主化の青写真を描いているのが、バーネットの新地
政学ですよ。ネオコンもこれに同調しているし、国防総省もこれを
ベースにして議論をしている。勿論、ライス国務長官も同様でしょ
うね。
バーネットの「新地政学:世界グローバル化戦略」4回シリーズ
http://fuku41.hp.infoseek.co.jp/k7/171126.htm
http://fuku41.hp.infoseek.co.jp/k7/171203.htm
http://fuku41.hp.infoseek.co.jp/k7/171218.htm
http://fuku41.hp.infoseek.co.jp/k8/180114.htm
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報告者:東京財団 シニアー・リサーチ・フェロー 佐々木 良昭
No.387 「アサド大統領戦争に備える」  2006年08月01日

 48時間の攻撃停止がイスラエルによって発表されても、イスラ
エルによるレバノンに対する攻撃が、相変わらず継続されている。
そのため、多くのレバノン人が犠牲になっている。またイスラエル
の攻撃から逃れようとして、南部レバノンから脱出した人たちの数
は既に50万人を超え、このうち半数がシリアに逃れているという
ことだ。

 イスラエルによるレバノンのヘズブラに対する攻撃は、単にヒズ
ボラの居住する南部レバノン地域に対するものだけではなく、ベイ
ルートやレバノン北部のトリポリにまで及んでいることから、この
戦争の意味するところが、ヒズボラ対策だけではないことが想像で
きよう。

 そのことに加え、イスラエルは何度となくヒズボラに対する兵器
の供与が、シリアとイランによって行われていることを強調してき
てもいる。ヒズボラに対する決定的な対応をイスラエルが考えてい
るのであれば、いずれはシリアに対しても軍事攻撃をしなければな
らないということではないか。

 そのような兆候が見え始めている。イスラエルのエルサレム・ポ
スト紙は「アサド大統領が戦争の準備を始めている」と報じている
し、アサド大統領もシリア軍に対し、戦争に備えるように命令を発
している。

 アラブの新聞が、南部レバノンに接するゴラン高原で、シリアと
イスラエルの戦闘が始まるのではないか、と報じ始めているが、現
実に既に、イスラエル軍のパトロール車を狙った爆弾テロが起きて
いる。

 ブッシュ大統領はイスラエルがレバノンに対し攻撃を継続するこ
とに、グリーン・ライトを点したが、イスラエルの説明によれば、
中途半端なヒズボラ攻撃で終われば、再度同じことが起こるから、
この際徹底して叩かなければならないということのようだ。ブッシ
ュ大統領はそのイスラエルの説明を受け入れたのであろう。

 ブッシュ大統領は同時に、シリアとイランがヒズボラを支援し、
イスラエルを攻撃させていると非難したが、このことは、場合によ
ってはイスラエルのシリア攻撃を黙認する、というシグナルなのか
もしれない。

 そう考えると、レバノン戦争の停戦には、まだ時間がかかるので
はないか。停戦から和平というプロセスよりも、現段階で判断する
と、危険の拡大を予測しておくべきではないのか。
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EU「即時停戦」合意できず 外相理で英など異論(ASAHI)
2006年08月02日01時06分
 欧州連合(EU)は1日の外相理事会でレバノン危機を協議した
が、議長国フィンランドが示した「即時停戦」を求める共同声明案
では合意できなかった。AFP通信によると、英国、ドイツ、オラ
ンダなどが賛成しなかった。 

 フィンランドのトゥオミオヤ外相は、理事会後の記者会見で「長
続きする停戦を目指し、直ちに敵対行為をやめるべきだという点で
は一致した」と述べた。だが、強い声明を出せなかったことで、イ
スラエルへの外交圧力は期待できそうにない。共通外交を建前とす
るEU内の不一致は、国連での合意づくりにも影を落としそうだ。
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イスラム諸国、レバノン情勢で3日に緊急首脳会議
(nikkei)
 【クアラルンプール=伊東義章】イスラム諸国会議機構(OIC
)議長国のマレーシアは1日、レバノン情勢を協議するため、緊急首
脳会議を3日にクアラルンプール近郊のプトラジャヤで開くと正式発
表した。レバノンやパレスチナ自治政府など18カ国・地域が参加。
マレーシア外務省によると、イランからはアハマディネジャド大統
領が出席する。

 会議ではイスラエル・レバノン国境での戦闘の無条件停戦、レバ
ノンやパレスチナに派遣する国際部隊へのOIC加盟国の参加、レ
バノンとパレスチナへのOIC諸国からの人道支援などが主な議題
となる。国連や国際社会に対するイスラム諸国からの要求を強める
とともに、中東情勢の打開策を探る。 (23:00)
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イスラエル、レバノン国境から30キロの占領計画決定

 【エルサレム=林路郎】イスラエル政府当局者が当地のメディア
に明らかにしたところによると、イスラエル政府は1日未明の緊急
閣議で、レバノン国境から約30キロ・メートル北のリタニ川以南
の地域からイスラム教シーア派組織ヒズボラの武装勢力を排除し、
国際部隊が展開するまでの数週間に限って一帯を占領するとの戦略
目標を決めた。

 国軍の投入戦力はほぼ倍増の5個旅団になる見込みだ。

 軍発表によると、地上軍は1日、レバノン南部アイタシャブに新
たに侵攻した。対戦車砲で応戦するヒズボラとの激しい戦闘となっ
ている模様だ。イスラエル放送は同日午後、レバノン国内からの目
撃情報として、イスラエル軍がレバノンとの国境沿いの7地点を突
破し、レバノン南部を北上し始めたと伝えたほか、AP通信による
と、リタニ川沿いの複数の目標に対して計3波のイスラエル空軍に
よる空爆があったという。
(読売新聞) - 8月2日2時50分更新
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イスラエル、レバノン攻撃拡大で予備役を追加招集へ=ラジオ
  
 [エルサレム 1日 ロイター] イスラエル・ラジオが1日報
じたところによると、イスラエルは、内閣がレバノン南部のイスラ
ム教シーア派民兵組織ヒズボラに対する地上攻撃の拡大を承認した
ことを受けて、予備役を追加招集する方針。
 同ラジオは、少なくとも1万5000人の予備役を意味する3師
団が追加招集されると伝えた。
(ロイター) - 8月1日9時32分更新

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