2348.リアリストの理論



この分野はコバケンさんが一番解説には適切なのですが、前座で解
説しましょう。      Fより

リアリストの理論で国際戦略を構築することが重要と述べているの
に、その解説がないとある友人から注意された。解説していた心算
であったがない。今回はリアリストの理論の概要をF流で解説した
い。

リアリストとは日本語にすると、現実主義者となる。しかし、現実
主義という日本語の意味は元もとの英語の意味と少し違うので、こ
のコラムではリアリストと言っている。

リアリズムは、その国の体制や思想を善悪で判断しないで、経済力
や軍事力などの国力を基準に考えることで、その国家がどう行動す
るかを推測する。そして、世界の動きを予測する学問である。

その時、国の行動原理には2つの見方がある。1つは、国は自国の
安全のために自国の領域を拡大しようとする意識が働くと考える理
論ともう1つが自国を防衛するためにだけ意識すると考える理論で
ある。

拡大すると考える理論が攻撃的なリアリズムで、自国の防衛だけを
考える理論が防御的なリアリズムである。攻撃的なリアリストが右
やタカ派と見られ、防御的なリアリストが左やハト派と見られる。
どちらの考え方も国益を重視するので、偏狭な思考をする左右の過
激派とは一線を画している。

そして、もう1つの原理が、国の行動は地理的な条件でその行動が
制約されることである。そのため地政学が国の行動を推測する時に
重要な学問となる。そして、現在グローバル化が進み経済的な関係
が世界的に重要になり、地経学が現在は必要になっていると私Fは
みている。地経学は基軸通貨の戦いでもあると見ている。

この2つの地政学・地経学と複合的な世界の関係から米国、中国、
欧州、ロシアなどの行動を推測し、それに対する日本の行動を考え
るのが日本のリアリストの役割なのでしょうね。

もう1つが、現時点をどう位置づけるかですが、覇権の移行期と見
ている。米国という覇権国家の衰退が徐々に進行して、その覇権を
どの国が、どう移行するのかを見る必要がある時代である。もし、
その移行のやり方が不味いとハルマゲドンという地球最終戦争にも
なる可能性があると見ている。この歴史観がもう1つ必要なのでし
ょうね。

どうもライスの演説を聞くと、基軸通貨から地域通貨への移行を米
国は認めたように感じる。ということは米国から離れてた地域覇権
を認める方向に米国はシフトしたように感じる。このため、日本を
中心にアジア共同通貨を作る方向でASEAN+3の会議では進行
している。これが東アジア共同体になる可能性も高い。米国は徐々
に米国本土に部隊を引き上げる。韓国や日本からグアムまで大部分
の部隊が撤退することが決まり、その分、日本の自衛隊がアジアの
第1線を守る必要が出ている。

地政学的には、日本は隣に中国があり、欧米から距離が離れている
ことと、島国でその行動様式が決まる。それと、その国の歴史が大
きくその国民の意識に作用している。日本の場合は、中国文化は導
入するが中国との朝貢関係を拒否して中国からの独立を志向してき
た。これができたのは海で中国と離れているためである。朝鮮は中
国と陸続きであるために属国となっていた。そして、中国の歴史は
徐々に周辺民族を飲み込んできた。つい最近ではチベット民族を飲
み込み、ウイグル民族も飲み込んでいる。このように中国は拡大す
る国家であることが分かる。

欧米やロシアも拡大する国家である。覇権を争う国家群がそこにあ
る。日本も戦前、その拡大する国家に仲間入りしていた。しかし、
戦後は拡大する国家ではなくなった。米国は拡大から軍事再編とい
う縮小に転じて、覇権を欧州やロシア、中国で共同に行う方向にシ
フトしようとしている。そして、中国はまだ拡大のための軍事拡大
をしているように見える。台湾を自国領土としていることでもその
疑いを強く持つ。このため、日本の場合は、攻撃的なリアリズムの
発想が重要だと考えている。

そして、日本の戦略として、中国の属国化を嫌う歴史的な見方から
欧米と組んで中国の拡大を押さえる志向を強く持つ。しかし、米国
の没落が徐々に進行している。欧州は中国と組んでビジネスを拡大
する方向にシフトしている。

中国は経済的な発展で、世界第4位の経済大国になっているし、軍
事力の増強をしている。そして、今後の発展には民主化が必要にな
っている。この現実を見て、日本は中国との関係を考えることにな
る。地経学的な関係をも見て日本の進路を決める必要がある。

米国はソ連を倒して分裂に追いやり、周辺諸国を独立させ自由主義
圏に巻き込んだ。米国が主導権を現時点でも握っているが、欧州も
共同体を作り、米国とは違う動きができるような政治力を持ち始め
ている。ロシアも石油を武器に政治力を持ち始めている。中国も、
東南アジア諸国に影響力を持ち始めている。欧米露中の4極で世界
の政治は動いている。日本は米国の陰に隠れて、影響力行使ができ
る行動をしていないのと、自由な意見を言っていないために政治力
をもてないでいる。

どちらにしても、日本の国益を考えて、情勢を分析して偏狭なナシ
ョナリズムに陥らない考え方をすることが重要なのでしょうね。


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