2186.アジアの構図の変革



米国が変化している。その延長でアジアも変化している。
その検討をする。                 Fより

バーネットの新戦略論をこのコラムでは数回紹介していたが、今回
コバケンさんが米国としての意味を解説してくれるようである。

グローバルリズムの研究でもある地経学から出たバーネットの理論
は、今までの戦略論とは違い、軍事的な意味より、経済的な意味の
方が大きいことになる。

しかし、米国の軍配備削減の思想がバーネットの理論であるという
見解は、当たっているように感じる。重装備から軽装備にして、経
済発展国同士の戦いから発展途上国地域紛争の戦いになるため、米
軍主体から地域国家主体で紛争に当たる方向にある。たとえば、ス
ーダンの地域紛争にはアフリカ機構軍が当たっている。米軍は費用
負担はするが、軍自体は派遣していない。

それと、万一の場合のためにミサイル防衛をシッカリとする。中国
とロシアの大陸弾道弾ミサイルが米国に発射されたら、そのミサイ
ルを打ち落とすとともに、報復のミサイルが中国とロシアに飛ぶよ
うにする。このため、中国とロシアの近くに観測用の基地が必要な
のである。日本も米国としてはこのために必要なのです。そして、
日本も同様な理由からミサイル防衛をするべきなのです。

この思想からすると、米国は中国との通常戦も想定していないと見
る。
この頃の米国は中国の民主化については要求をしているが、中国と
の友好関係を維持発展する方向に見える。私Fの見解は中国バブル
崩壊が真近であり、その崩壊時に中国の体制が変化するし、IMF
が中国に介入して、共産党独裁から民主化をすると思っている。

中国は香港という資本主義を現に持っている。この地域を拡大すれ
ばいいだけなので、広州省全体や中国南部全体を香港のようにする
だけでいいので、簡単に民主化、資本主義化できるのです。一番の
基本は三権分立と土地の私有制を認めることである。しかし、多大
な資金が必要になる。

このため、米国は日本にも応分の負担を求めてくることは間違いな
いが、主体は米国である。日本は小泉首相が靖国神社参拝問題を起
こし、中国が日本に依頼できない雰囲気を作っている。中国に対す
る政策は成功であるが、国連安保常任理事国入りや米国タカ派のネ
オコンや共和党保守派への影響を心配している。米国は逆に日本を
国連安保常任理事国にしたいのです。間近に迫る中国の混乱を米国
一国では処理ができない。

また、中国もそれを見越して、米国との友好関係を維持する方向で
推移している。それほど、中国の銀行の不良債権が膨らんでいる。
中国政府ではもういかんともしがたい膨大な不良債権になっている
ようだ。国際的な機関が中国の建て直しをするしかない。もう日本
企業は、中国から資本を引き上げるか、これ以上の資本を入れるべ
きではない。

もう1つ、中国の胡主席が韓国に行って、首脳会議をしていたが、
この中で、韓国と北朝鮮の統一を支持すると中国の胡主席は述べて
いる。これは、中国経済拡大をして混乱を遅らせるために大量の韓
国資本の進出をお願いするためと、本格的に北朝鮮体制を変革する
必要を中国も認めたことによると思う。その裏に米国が韓国の支配
を中国に譲渡したようにも感じる。これがないと中国は韓国と北朝
鮮統一を支持しない。韓国に北朝鮮が吸収されるしか、朝鮮統一の
方法はない。

来年1月の6ケ国協議でも、米国が北朝鮮の核廃棄を優先させるこ
とを主張するので、決裂するに決まっている。そうすると、北朝鮮
を除く5ケ国は、次の手を考えることになる。それを阻止するべく
、金正日は子供に政権を移譲して、ある程度の権限を手放して、5
ケ国の追及を逃れようとしている。しかし、どうも苦し紛れのよう
に感じる。この協議は中国が主役になっている。

この延長上で台湾を米中間でどう裏取引したかが疑問になっている。
これは台湾サイドも心配しているようだ。米国は台湾への武器輸出
ができないことでイライラしている。台湾の国民党がその武器輸入
案を審議拒否して国会が通らない。ここでも米中に何か変化したか
どうかのリトマス試験紙になっている。

どちらにしても、東アジアの冷戦構造が崩れることになるのと、も
う1つの問題、中国のバブル崩壊が起こり、中国が混乱して地域紛
争に発展しないことを祈るしかないですね。混乱すると、中国人が
1000万人程度、日本に押しかけられる可能性もある。そしたら
、大変なことになる。

英国の国際戦略研究所(IISS)の動向に注意する必要がある。
アジア問題を地域指導者を交えて、頻繁に会議をしている。この様
子はIISSnewsに詳しい。米ラムズフェルドは勿論、モンゴ
ルや北朝鮮、中国の国防幹部たちも、この会議に出席している。
日本の大野さんも出席しているようだ。次の世界の構図をIISS
は探っているように見える。この上部にチャター・ハウス(王立国
際問題研究所)がある。

世界的な構図の変革期ですので、注意して国際状況を見る必要があ
る。特にアジアの構図は変化するはずです。どうも米国の変化があ
りそうで、その根本は、バーネットの理論のようです。ここはコバ
ケンさんに解説してもらいますので、楽しみにしていてください。
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6カ国協議、来年1月に再開へ・中国外務次官が見通し(nikkei)

 【北京=桃井裕理】中国の武大偉外務次官は25日、訪中した塩崎
恭久外務副大臣との会談で、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の再
開時期について「来年1月になるだろう」との見通しを示した。日中
外交筋が明らかにした。

 武外務次官は協議再開までに「参加各国が非公式な対話を行うこ
とで議論している」と明らかにした。朝鮮半島の非核化実現に向け
ては「関連する本質的な問題で各国、特に米国が決断できるかどう
かが重要なポイント」と述べた。 (21:45) 
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米大統領、中国の民主化促進を要請・胡国家主席と会談 

 【北京20日共同】中国を訪問しているブッシュ米大統領は20日、
北京の人民大会堂で胡錦濤国家主席と会談、中国の民主化促進を求
めるとともに、対米貿易黒字を削減していく必要性があることなど
を両首脳間で確認した。 

 また、北朝鮮核問題をめぐり、第四回6カ国協議で合意した共同声
明の履行を北朝鮮に促すため、両国が協力していくことで合意。中国
が知的財産権保護の強化や一段の人民元改革に努めることでも一致し
た。 

 会談終了後、両首脳は人民大会堂内で記者団を前にそれぞれ声明
を発表。ブッシュ大統領は胡主席に早期訪米を要請、胡主席は来年
の早い時期に訪問したいとの意向を明らかにした。 

 ブッシュ大統領は「中国は、社会、政治、宗教分野での自由を拡
大する必要性がある」と指摘、胡主席はこの問題について「政治の
民主化や人権状況が改善されていることを大統領に説明した」と言
明。また中国の軍事的台頭への懸念に関し胡主席は「中国の発展は
平和的で開放的、協力的だ」と述べた。 (16:53) 
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中国の胡錦涛・国家主席、韓国と北朝鮮の統一への支持を表明
  
 [ソウル 17日 ロイター] 韓国を訪れている中国の胡錦涛
・国家主席は17日、韓国と北朝鮮の統一への支持を表明した。ま
た、中国と韓国との関係は「これまでで最良の時期に入っている」
と強調した。
 また、中韓は北東アジアの安定のために協力すべきとの認識も示
した。
 同国家主席は、訪韓2日目のきょう議会で演説し、「中国は、韓
国と北朝鮮が対話を通じて関係を深め、信頼感を醸成することを支
持する。そして最終的に独立した形で統一が実現することを支持し
ている」と表明、議員らから喝さいを浴びた。
 また、「(中韓の)両国関係は最良の時期に入っている」とも述
べた。
 核問題をめぐっては、北朝鮮の名指しは避けながらも、朝鮮半島
の核兵器問題の解決に向けて絶え間ない努力を続ける、との意向を
示した。
 同国家主席は、「対話を通じた平和的な朝鮮半島の核問題解決が
、最も現実的で適切なアプローチだ。中国はこの問題に対して、限
りない努力を続けるだろう」と語った。
 
(ロイター) - 11月17日17時14分更新
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成17年(2005年)11月24日(木)
     通巻第1311号   

言論の自由も人権抑圧改善も強調しなかったブッシュ訪中に意義あ
りや?
 ワシントンポストは「ブッシュ政権は中国に弱すぎる」と社説で
批判している

 ジャーナリストや民主活動家、宗教家など数十人が中国の当局に
拘束されたまま。SARSを告発した医師は、ブッシュ大統領が北
京滞在中、自宅からでることを許されなかった。

 「ワシントンの要求に軽く応ずるふりをしただけで人権問題、政
治の自由化への努力について、なにごとも圧力をかかなかったブッ
シュ大統領は、いったい中国に弱味でもあるのか。インターネット
の検閲一つをとっても大統領が前回訪問した2002年より、中国
の状況は悪化しているのに」(ワシントンポストの社説、
11月22日付け)。

 前回は中国の学生をまえに熱烈に自由についての講演を展開した
がブッシュ大統領だったが、テレビで講演が中継された。
今回は米中首脳会談の共同記者会見さえなく、貳ヶ月前に釈放を要
求した民主活動家、宗教家のリストに、たった一言の言及も北京側
からなされなかった。
 「いや静かな圧力をかけている」とライス国務長官は言う。

 「これという成果はゼロの訪中だった」と総括したのはイギリス
のフィナンシャル・タイムズ(21日付け)である。
同紙は続けた。
「教会へ行ってブッシュ大統領は神に祈った? その報道は中国で
は一切なされなかった。ボーイング70機、40億ドルの商談だけ
がまとまった」
 まさか、中国同様にカネに目がくらんだ?
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■産経新聞【主張】米中首脳会談 戦略的協調に限界みえる

 米国にとって中国は戦略的なパートナーなのか、ライバルなのか。ブッシュ大統領と胡
 錦濤国家主席による米中首脳会談は、両国間の摩擦を調整し、協調関係を維持、発展さ
 せることで一致した。
 経済成長と軍事力増強を続ける中国は、米国の一極支配に対抗する戦略を明確にしてお
 り、米中の協調には限界も見え始めたといえる。

 首脳会談で、ブッシュ大統領は多くの問題で中国側に注文を付けた。今年は二千億ドル
 を超す見通しの米側の対中貿易赤字、中国企業による知的財産権侵害、人民元の低レー
 ト、中国の石油買いあさりなど通商・経済問題から、中国の人権、信仰の抑圧や民主的
 権利の侵害まで注文は多岐にわたった。

 通商問題では、胡主席は改善努力を約束したが、人権や民主化問題では、「中国の国情」
 に沿って改善していくとし、事実上要求を拒否した。ブッシュ大統領は先の訪日中、台
 湾の民主化を称賛し、中国が開かれた民主国家になるよう期待を表した。中国は「重要
 な国」だが、真のパートナーではないという認識だ。

 両首脳は北朝鮮の核問題から鳥インフルエンザ対策まで協調を確認した。米中枢同時テ
 ロ事件以降、米中の国際協調は多分野に広がったが、安全保障戦略では、米国に対抗す
 る動きが目立ってきた。中国は、ロシアと合同演習を実施するなど軍事協力を強化、中
 央アジアと構成する上海協力機構は、反米色を濃くしつつある。

 米国の懸念は中国がユーラシア大陸東部から東南アジアを含めた周辺外交を積極化、地
 域共同体への動きを加速していることもある。来月、マレーシアで開く第一回東アジア
 首脳会議もその一つだが、米国を排除した東アジア共同体構想は、小泉純一郎首相が提
 唱、日本がリーダーシップを取るからこそ、米国は黙認したといわれる。

 東アジア情勢は、歴史問題における中韓の「反日連合」にロシアも加わる気配が見えだ
 した。この連合は北朝鮮の核や人権問題でも、日米とは距離をおく。米中首脳会談の陰
 には東アジアの安保と地域協力をめぐる戦略問題が隠れている。

 こうした中で、日本が米国との関係をより緊密化する必要がさらに強まっているといえ
 よう。
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米中首脳会談/冷ややかな対立の中の協調   
   
  ブッシュ米大統領と中国の胡錦濤国家主席との首脳会談は、大国としての存在感を高め
 つつある中国と唯一の超大国・米国が、対立の中での協調関係を打ち出すという複雑な
 ものとなった。
宗教的自由の拡大求める

 最大の対立点は価値観の相違だ。特に米政府が重視しているのは、信教の自由である。
 米国の議会と政府が合同で組織している政策勧告機関「中国に関する議会・政府調査委
 員会」は十月中旬に発表した年次報告で、「この一年間、中国では共産党支配により信
 仰、出版、言論、結社などの自由が抑圧された状況は改善されていない」と指摘した。

 ブッシュ大統領は同政権のアジア政策を総括した京都演説の中で「自由な国家は、他国
 を脅かすことはない。地域的に自由が行き届くことで、われわれすべての国家が繁栄す
 る。アジアでの自由の広まりは、人類史上偉大なものであり、それをさらに推し進める
 時期に来ている」と述べた。と同時に、政治の民主化と経済の自由化で繁栄をもたらし
 た台湾との対比で、中国国民が表現の自由や信教の自由を求めていることを指摘した。

 同大統領の自由への期待は、北京入りした日の早朝、市内のプロテスタント教会を訪れ
 て礼拝に参加した後、記者団に「中国政府が、礼拝のために集まるキリスト教徒を危険
 にしないよう期待する。健全な社会とは、すべての信仰を受け入れる社会だ」と強調し
 たことでも明らかだ。

 胡主席との会談でも同大統領は、宗教的、政治的、社会的自由の拡大を求めた。両首脳
 立ち会いの合同記者会見で同大統領は「中国で社会的、政治的、宗教的自由が拡大する
 ことは重要だ。われわれは自由拡大へと中国が歴史的な移行を行うことを励ます」と述
 べた。

 しかし、ブッシュ政権にとり、地域的軍事パワーとしての中国の存在は無視できないと
 ころだ。だからこそ、同大統領は記者会見で「中国との関係は米国にとり重要であり、
 訪中は米中関係強化のために行われた」と中国重視の姿勢を打ち出した。首脳会談の冒
 頭、同主席の訪米を要請したのもこのためだ。

 だが、自由や人権問題などを中心とする価値観の相違という冷ややかな空気の中で打ち
 出された両国の協調関係には限界があった。

 第一は、北朝鮮の核問題だ。両首脳は六カ国協議で合意した共同声明の履行を北朝鮮に
 促すため協力していくことを確認した。しかし、日米両国に比べて中国は、韓国ととも
 に北朝鮮寄りだ。北が非核化の前提としている軽水炉提供問題についても柔軟であり、
 米中協力が具体的にどこまで行くかは不明である。

 米政府の最大の関心事の一つである対中貿易赤字拡大の問題については、具体的措置の
 発表はなかった。記者会見でもブッシュ大統領は「中国市場への接近を求める米農民や
 ビジネス界に公正な機会を与えるため中国はもっと努力すべきだ」と不満をぶちまけた。
 知的財産権保護や人民元切り上げの問題についても胡主席は「努力」を約束しただけで、
 具体的措置は公約しなかった。

日米基軸で冷静に注視を

 中国側は表面的な協調で摩擦抑制を狙っているようだが、米国の「一極支配」を批判し、
 東アジアから米勢力を追い出して自らの主導権確立を狙う中国と米国との協調には限界
 がある。

 日本は価値観の共有を前提に日米同盟を外交の基軸とすべきであり、米中関係の行方を
 冷静に注視する必要がある。 世界日報掲載許可
     Kenzo Yamaoka
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寧辺核施設を即時凍結せよ   
   
 北朝鮮は約束の履行を/次回協議で米朝衝突も予想
外交評論家 村岡 邦男
前進なく休会した6カ国協議  世界日報掲載許可

 十一月九日から三日間北京で行われた北朝鮮の核問題をめぐる第五回六カ国協議は、前
 回協議で採択した共同声明の全面的履行を再確認する旨の議長声明を発表しただけで、
 核放棄に向け何の前進もなく、休会に入った。再開時期についても「出来るだけ早い時
 期」とするだけで日程を確定できず、再開は年を越すと見られる。

 注目されたのは、北朝鮮が初日の全体会議で核廃棄に向け、@核実験の保留A核移転の
 禁止B核追加生産の禁止C検証を通ずる核活動の中止と核廃棄D核拡散防止条約(NP
 T)復帰と国際原子力機関(IAEA)の保障措置協定履行、の五段階のプロセスを提
 案したことである(韓国統一相が十四日発表)。

 @とAは既に行われていることで、核放棄に向けての新たな措置ではない。Dは核を放
 棄すれば当然とられる措置である。結局この五段階の中身は、Bの核活動の凍結とCの
 検証を伴う核廃棄、の二段階だけになる。

 この案に対して米国は、凍結はいつでもそれを中止して開発を再開できるから、放棄と
 異なる段階を設ける意味はなく、且つ各段階ごとに北に報酬を与えることは二重払いに
 なるとして即座に拒否し、既存核施設の即時凍結を要求した。

 この五段階に対応して北側は、@韓国に核兵器がないことを確認するための査察実施A
 北を核攻撃する意思がないという米国の保証B韓国に対する核の傘の提供や韓半島地域
 への米の核持ち込み放棄等を要求したと伝えられる。

米国は対北強硬路線に転換へ

 今回の協議で北は軽水炉提供を要求はしたが、前回のように執拗には繰り返さなかった。
 これを、北がこの問題について軟化したと歓迎する論者もあったが、北が要求を取り下
 げた訳ではなく、経済協力案件と同様、核廃棄の当然の前提と考えているにすぎない。

 核の平和利用は、NPT上も認められた権利であると北は主張し、中韓両国もこれに同
 情的である。しかし権利を主張するならば、義務も果たすべきである。NPTは非核国
 に、核兵器保有に向けた行為を禁止し、IAEAの査察受け入れを求めている。「北朝
 鮮の核エネルギー平和的利用は、北がすべての核兵器と既存の核プログラムを除去した
 ことの検証が完了し、NPTとIAEAの保障措置を完全に履行することが前提」との
 米国の立場は確固不動である。軽水炉が最重要問題の一つとして再燃することは必定で
 ある。

 また北側は、米側によるマカオの銀行を通じた資金洗浄疑惑の摘発、ブッシュ大統領が
 金正日を「暴君」と呼んだことを取り上げ、これらは共同声明の精神に反するだけでな
 く、「われわれがその履行のために行った公約を実現できなくしている」と非難した。

 九月中旬、米国はマカオの「デルタ・アジア銀行」が北朝鮮の政府機関や関連企業によ
 る資金洗浄に関与した疑いがあるとして制裁を科した。この結果同銀行では取り付け騒
 ぎが起こり、マカオ当局が経営権を接収した。報道によれば、同銀行は金正日の個人、
 または労働党や国防委員会の秘密取引に利用され、金大中が南北首脳会談実現のため金
 正日に支払った五億ドルもマカオ経由で送金したとされる。

 この問題は別途米朝間の直接交渉により解決が計られることになったが、核問題協議の
 場にあえて金融制裁という場違いな問題を持ち出したところに、金正日の苦衷が見える。
 彼の痛いところをまさに衝いたのである。

 米国は六カ国協議を意識して北を刺激することを避けてきたが、最近はこの路線を転換
 したように見える。十月中旬、「北朝鮮政府の支援の下に同国内で製造された大量の偽
 造ドル紙幣」の流通に関わったアイルランド人の引き渡しを英国に要求し、同下旬、大
 量兵器拡散に関わった北朝鮮企業八社の在米資産凍結した。ブッシュの暴君発言は十一
 月六日である。これに対し北朝鮮は、六カ国協議を人質にとり、自らの不法行為に対す
 る追及をかわそうとしている。次回協議では米朝の激突は避けられないようだ。

譲歩獲得の道具にされる協議

 十一月九日付ワシントン・ポスト紙は、国立ロスアラモス研究所のヘッカー元所長らが
 昨年一月に続き本年八月にも訪朝、今回は寧辺の核施設は訪問できなかったものの、同
 施設の責任者より事情を聴取し、五メガワット実験炉(〇三年再稼働、今年四月燃料棒
 取り出しのため稼働停止、六月に再稼働)はいまやフル稼働中であること、九四年当時
 建設中で凍結されていた五十メガワット炉は再設計を完了し、いつでも建設を再開でき
 る態勢にあり、二年程度で完成できるとの示唆を受けたと報じ、北は「フルスピードで
 核兵器開発に進んでいるようだ。今後もプルトニウムを生産、抑止力を強める考えのよ
 うだ」とのヘッカー氏のコメントを伝えている。

 このように北が核開発に狂奔している現実からは、核放棄の約束が誠意あるものとは信
 じられない。六カ国協議をできるだけ長引かせて時間を稼ぎ、その間核開発を全力で進
 め、六カ国協議は関係国から種々の譲歩を獲得する道具として利用する、これが北の意
 図であろう。北がこのような態度を続ける限り、六カ国協議の先行きは暗い。もし真に
 核放棄の意思があるなら、寧辺核施設の凍結を即時実行して、真意を世界に示すべきで
 ある。
       Kenzo Yamaoka
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【正論】評論家・鳥居民 中国人の大量流入警戒するロシア   
   
 中露蜜月に隠れたつばぜり合い  ≪核戦争発言には人口問題≫
 ロシアのプーチン大統領が約五年ぶりに来日し、小泉首相との首脳会談が開かれたが、
 今回もまた北方四島の問題に進展はなかった。

 ところで、私が思い浮かべるのはまったく別のことだ。もう四カ月も前のことになるが、
 中国のエリート軍人で朱徳の孫という人物が、アメリカと核戦争をやろうと怪気炎をあ
 げたことがある。読者のだれもが記憶していよう。

 こんなおかしなことを言った人物は譴責(けんせき)されないのか、党は軍を抑えるこ
 とができないのか、と思った人も多かったのである。彼は上級幹部から注意を受けたは
 ずだと私は思っている。だがそれは、「バカなことをしゃべるんじゃない、アメリカを
 挑発したりするな」としかられたのではないと私は考えている。

 実は朱成虎・国防大学防務院長(少将)は、七月十四日のその「講話」で、核戦争によ
 って「アメリカ問題」を解決してしまうと、おとぎ話を語った中で、次のようにしゃべ
 っていた。

 核戦争を開始するにあたっては、人口希薄なシベリア、中央アジア、蒙古に中国人を移
 住させ、中国の大きな問題「人口問題」をも同時に解決するのだ−と。これまた突拍子
 もない話をしたのである。

 アメリカの政治家や軍人は、この中国軍人の恫喝(どうかつ)を不愉快とは思っても、
 「この幼稚なほら吹きめが」と笑っただけであったろう。だが、ロシア人が思ったこと
 は違ったはずだ。これを説明する前に、もう一つ別の話をしよう。核戦争と人口問題を
 結びつけて論じた朱院長でなくとも、中国人誰もが知っている次のような話である。

≪火種抱えた極東国境地域≫

 今世紀の末には、中国本土を除く全アジアに二億人の中国人が住むようになる。他に北
 アメリカには一億人、ヨーロッパに五千万人、オーストラリアに五千万人、アフリカに
 一千万人…。推測の数字を並べただけで、まじめに取り上げるほどのものではないが、
 それでも気になるのは、「中国を除く全アジアに二億人の中国人が住む」ことになると
 いうくだりだ。

 まさか、ベトナム、インドネシア、インド、バングラデシュといった、人があふれる国
 に中国人が浸透するとは考えられない。中東のいくつもの都市にチャイナタウンができ
 つつあるが、そこに住む人の数はしれていよう。

 どこへ流れ込むのか。ロシアだ。まずはロシア極東地域である。カムチャツカ、サハリ
 ン、沿海地方、ハバロフスク、アムールといった州だ。二〇〇二年の人口は総計で七百
 万人を切っている。十年前に比べ百万人の減少だ。

 さて、ロシア極東地域に隣接する満州、東北地方には、一億四千万人の中国人が住んで
 いる。中国公安の首脳が、中国全土のどこよりも、明日の騒乱を恐れる地域がそこであ
 る。

 ロシア政府は当然ながら、ロシア極東地域への中国人の浸透を阻止したい。なによりも、
 その地域の人々がヨーロッパ・ロシアへ流出するのを食い止めたい。

 そこでロシアは日本と結び、日本の経済協力によってロシア人の減少を防ぐというのが、
 日本の外交官、研究者、政治家が説いてきたことだ。北方四島の問題の解決も視野に入
 れての構想だ。

≪共通する恐れは体制変革≫

 ところが、これがロシア政府の計画とはなっていない。石油価格の異常な高騰で、プー
 チン大統領は日本に頼る必要はないと考え、中国と組むようになっている。なによりも
 ロシアと中国との利害が一致してのことだ。共通の敵はアメリカの民主化支援だ。

 中国の党中央政治局の面々がもっとも恐れるのは、「和平演変」、英語で言えば「レジ
 ーム・チェンジ」(体制変革)だ。ロシアが恐れるのも同じだ。ブッシュ大統領はラト
 ビアを訪問し、「自由主義へと移行したバルト三国は、専制から抜け出そうとする国々
 の貴重な前例だ」と説いた。

 ロシアが中国と手を握れば、アメリカの同盟国・日本は、何十年ぶりかで再び両国の共
 通の敵となる。今年の初夏から夏にかけての中国の反日のシーズンには、ロシア政府の
 反日宣伝もなかなかのものだった。

 本稿の初めで、中国の国防大学防務院長は譴責を受けたに違いないと記し、しかし、彼
 がしかられたのはアメリカを恫喝したからではないと述べた。彼が叱責(しっせき)さ
 れたのは、ロシア人がもっとも警戒していることを迂闊(うかつ)にしゃべるなという
 警告だったはずだ。

 さて、中露の奇妙な蜜月はいつまで続くのであろう。そこで、どのような対応を日本政
 府は考えているのか。(とりい たみ)産経新聞

     Kenzo Yamaoka


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