2165.米ドル高にシフト



米国がFF金利を0.25%上昇させて、年4%にした。この効果
が即日に出ている。この検討。     Fより

米国の金利と日本の金利差が4%になっている。このため、1ドル
が118円と円安になっている。しかし、円安になると石油などの
価格が対ドルで下落しても、石油価格は円では変化ないことになる。

米国の経済は、実物経済としての物の生産をほとんど止めて、自動
車も海外への輸出ができなくなるが、米国への投資は、日本の円か
らドルに変えるだけで4%の金利分が得ることが出来るので、皆が
円からドルにシフトしている。これにより米国の貿易収支は赤字で
も、米国に資金が流れ込み、資金ショートをしなくなる。

円からドルにシフトしている理由は、他にもあるという見解が出て
いる。インドネシア経済がインフレで低下している。このため、バ
リ島のテロ事件も起きた。この影響が日本にも出ると言うのである。
マラッカ海峡の海賊が増えるとも言う。しかし、これはウソくさい。

しかし、もう1つ、米国の住宅バブルは崩壊しそうである。この対
策を米国は打たないといけない状態にある。このため、金利を上げ
てドルを上昇させて、米国への投資を増やす必要がある。そうしな
いと景気が維持できない。

どうも、米国は最終フェーズに入ったように思う。実体経済が崩壊
して、米国はドルの基軸通貨としての最後のメリットを得ようとし
ているように感じる。グリーンスパンFRB議長が来年1月で退任
して、バーナンケ氏にバトンタッチするが、今後の経済運営は大変
である。

米国の政治もブッシュ政権はローブ次席補佐官にCIA工作員情報
漏洩事件の容疑がかかり、身動きができない。11月中旬にこのブ
ッシュ大統領が日本に来るが、日本からのお土産は牛肉輸入解禁し
かない。日米同盟の強化は米国民にとっては価値がない。石原都知
事が米中戦争で米国は勝てないと米国で発言しているが、米国はイ
ラクで懲りて、中国には国民の民主化を煽り、中国の内紛で自壊さ
せようとしている。しかし、これも来年ではない。

来年の中間選挙に向けて、何か外交上の成果が欲しい所である。本
来は、シリアかイランへの攻撃であったが、今、それができない。
イラクだけでも泥沼であるのに、これ以上の混乱をライスが望まな
かった。

このため、ライスの外遊でイスラエルとパレスチナ和平などの外交
上の成果を探している。しかし、石油価格を下落させて、インフレ
などの経済的な混乱をさせないようにしている。このためにもドル
高にシフトさせたいようだ。今のところ、米国のホワイトカラー以
上の景気は悪くない。

しかし、日本の商品はドル高で安くなっても、中国製・韓国製のよ
うな価格商売をしていない。このため、円相場が下落しても輸出に
は大きなメリットが無い。それより円下落で農産物、石油などの輸
入する資源が高くなり、インフレの懸念が出てくる。

一方、日本は財政破綻させないために、金利を少ししか引き上げら
ない。そして、金利が安い日本の円が世界に出て、バブル現象を起
こしている。しかし、日本の財政状態は700兆円の累積借金で、
その金利0%の状態を続ける必要がある。

しかし、日本はドル米国国債は大量に持っている。この国債の取得
価格は1ドル90円程度でしょうから、このドル高時に売れば、日
本は累積した借金を為替差益で相当レベル返せることになる。日銀
が儲ければ、その儲けは政府に還元される。そうすれば、借金返済
ができて、財政再建に大きな礎になる。ここは米国国債を売って大
儲けをしようではないですか??
日本の米国債売却禁止令をドル高時には、解禁するべきである。米
国は普通の為替平準化の行為であるから何も言えないはず。

ターゲット価格を120円にすれば、1ドルで30円の差益が出る
ことになる。この差益は大きいですよ。もう少し、日本の国益も考
えた為替政策をしましょうよ。円ドル相場も基準内に収まり、一石
二鳥である。今がチャンスである。

米国と日本が対等な関係になって、両方の国益を天秤に懸けて行動
することを確立するべきでしょうね。
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4日のロンドン円は急落・118円台前半で終了

【ロンドン=欧州総局】4日のロンドン外国為替市場の円相場は急落。
前日終値に比べ1円15銭円安・ドル高の1ドル=118円20―30銭で引け
た。

 円は117円台後半に続落して始まった後、午前中はこの水準でもみ
合った。午後に発表された10月の米雇用統計で、非農業部門の雇用
者数が市場予想を大幅に下回ったのを受けて、円買い・ドル売りを
入れた市場参加者が多く、円はいったん上昇に転じた。

 ただ、117円台前半では損失限定の円売り・ドル買いを入れる市場
参加者が増えたため、円は急速に下げ幅を広げた。引け前に一時、
118円35銭と、2003年8月19日以来の安値を付けた。

 「急速に円安が進んだことで、円売りに達成感が出ている一方、
120円台乗せを見込む市場参加者も増えている」(邦銀ロンドン支店
)との見方があった。

 円の対ユーロ相場は続伸。同95銭円高・ユーロ安の1ユーロ=
139円60―70銭で引けた。対英ポンドでは急反発。同1円05銭円高・
ポンド安の1ポンド=206円85―95銭で取引を終了した。
  (11/5 1:46)
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●米連邦準備理事会(FRB)は1日の米連邦公開市場委員会
(FOMC)で、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)
 金利の誘導目標を0.25%引き上げ、年4%とすることを全会一致で
決定、即日実施した。
 FRBの利上げは昨年6月末から12回連続。いずれも0.25%刻みで
、累計では3%の引き上げとなった。
              日本経済新聞 11月2日夕刊

   佐々木の視点・考え方

★昨日、日米の金利差の話をしたが、今回の利上げで日米差は4%
になる。
 
 FRBのコメントを見ると、アメリカ経済の力強さに自信を持っ
ている姿勢が強く伺えるし、今回の決定も前回とは異なり理事全員
一致とのことだから、 次回12月23日の0.25%上げは確実
で、打ち止めがいつかが判断しずらい。
http://www.federalreserve.gov/boarddocs/press/monetary/2005/20051101/

 さっき見れば為替が117円に手をかけつつある。
http://ichart.finance.yahoo.com/z?s=USDJPY=X&t=5d&z=m&a=v&p=s

 チャートはあまり信用しない方なのだが、2004年5月の円安
のピークを抜いてきてるので、先行きの天井が無い状況になってい
る。
 http://fx.sauder.ubc.ca/cache/USD-JPY-0000-0-0-11-2452217-2453676.png
 
 外国株等の海外投資を積極的にされている方にとっては、思わぬ
ボーナスを支給されているようなものだ。
変化はチャンスでもある。
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成17年(2005年)11月5日(土曜日)
   通巻 第1286号

ドル高の傾向が顕著になった
 株式高騰に浮かれている場合ではありません

 金と石油市場が湧いている。インドと中国の金買いと石油買いが
主因。

 4日の東京株式市場で日経平均株価が年初来高値を更新した。
 これは四年半ぶりで14075円。
 ちょうど四年半前、小泉政権が発足した当日の終値より、多少高
めだった。
 市場では「日本のデフレ脱却期待や好調な企業業績などを背景お
よび外部環境の好転を手がかり」として幅広い銘柄に買いが入った
。売上高も過去最高を記録した。

 東証株価指数(TOPIX)も4日続伸した。
 とくに大手銀行・証券など内需関連およびハイテク株が堅調で、
その一方、新日鉄やJFEなど鉄鋼株は中国特需が陰り、利益確定
売りが目立った。

 さて問題はそんな表面の事象ではない。
同じ日の為替市場をみよ! 一ドル=117円を突破する”円安”
にぶれてきている。

 米国はバーナンキFRB新議長が、グリーンスパン議長の後継路
線を表明しているが、学者としてたとえ優秀でも市場への手綱裁き
の優劣は未知数。
 ブッシュ不人気をイラクと言い立てる馬鹿なマスコミが多いが、
元凶はガソリン代金の暴騰である。

 GM、フォードの大型車はのきなみ売れ行き不振、他方、”省エ
ネ”に優れた日本車のみがブーム。この傾向は世界的で、中国でも
トヨタ、ホンダに人気が集中している。

 米国は来年の中間選挙を控え、GDP成長3・5%達成を目標と
している。このためにガソリン代を人為的に下げる妙案とは?
 簡単ではないか。ドル高誘導である。

 原油高はインフレ懸念を強める。グリーンスパン議長がもっとも
嫌いなのは「インフレ」なのだ。たしかに以前までは米国はデフレ
懸念が拡大、そのためにドル安路線を踏襲してきた。
これが反対に振り子がぶれた!
 
すでに米国の有力な投機筋および投資ファンドは海外展開を次々と
手じまい、高金利、ドル高の米国へ巨大資金を環流させつつある。
 ドル高は異様なスピードで進行中!

 久しぶりに為替予測をするが、年末120円、2006年は夏頃
までに一時的に、一ドル=130円を窺う展開になる可能性が大き
いだろう。
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成17年(2005年)11月2日(水曜日)
     通巻 第1280号 

グルーンスパンの18年間で、アメリカはそれほど豊になったのか?
 借金は対GDP費で183%から204%に増えていた


 一月にFED議長に就任するバーナンケ氏への期待が予想より高
い。それはバーナンケが、グリーンスパン路線を継承すると見られ
るからである。

 で、グリーンスパンは過去18年間、曲がりなりにも米国経済の
成長軌道を遵守し、成長の巡航速度が失速する愚は繰り返さなかっ
た。
前任のポール・ボルカーをついで、FED議長としてレーガン大統
領から任命されたのは1987年8月11日だった。
三ヶ月後の10月19日、ウォール街はブラック・マンディという
株価大暴落に見舞われるが、新星グリーンスパンの辣腕は、このと
きから十二分に発揮された。

 18年間で、インフレは3・9%から2・0%へと落ち着きをみ
せた。失業率は6・0%から5・1%へと改善された。
 生産性向上は2・3%から3・1%への上昇カーブを描き、株価
は2・12倍となり、しかし賃金は6%の上昇をみただけである。

 18年間で富裕層の所得は二倍豊かになった。けれども労働者の
ふところは6%暖かくなっただけ。
財政は、くにの借金が対GDP費で183%から204%に増えて
いた
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次期FRB議長の指名   
   
  ブッシュ大統領が、連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長の後任に、ホ
 ワイトハウスのエコノミスト、ベン・バーナンキ氏を指名したことは、見事な選択であ
 った。この指名は、ブッシュ大統領2期目に経済政策を担当する地位を埋めるものとし
 て、飛び切り重要であり、超党派で強く支持されるに値する。
 10月に指名したことで、バーナンキ氏の優秀な資格を再検討したり、グリーンスパン氏
 の任期が切れる1月末前に、指名承認投票を行ったりするのに、十分過ぎる時間が、上
 院には与えられるはずである。バーナンキ氏のFRBの理事としての指名は、通例は14
 年の任期になるのだが、FRB議長としての任期は4年になる予定である。世界日報掲
 載許可

 今年少し前に中央銀行を辞めて、大統領経済諮問委員会(CEA)委員長に就任した、
 元FRB理事のバーナンキ氏は、大統領が太鼓判を押した「非の打ち所のない資格証明」
 を本当に間違いなく持っている。マサチューセッツ工科大(MIT)で博士号を取得し、
 プリンストン大学で経済学部長だったことがあるので、バーナンキ氏は第一級のエコノ
 ミストである。同氏は、金融経済の高度に専門的な分野で極めて深い教育を受け、その
 結果、「インターナショナル・ジャーナル・オブ・セントラル・バンキング」の創刊者
 兼編集者になった。

 「私が選ぶいかなる者も、政治からの独立性を持った人物であると見られることが重要
 である」とブッシュ氏は、今月少し前に語った。CEA委員長としての任期は短かった
 が、あらゆる点から考えて、バーナンキ氏は最終的なテストに耐え得る。数年前、FR
 Bの若手理事として、彼は強い独立性を発揮して、例えば、インフレ目標問題をめぐっ
 てグリーンスパン氏と公に議論を戦わせた。バーナンキ氏の戦略上の持論は、FRBは、
 例えば、年2%といった明確なインフレ目標を公表して、金融政策をその目標達成に向
 かって取っていくというものである。明確なインフレ目標がなければ、元来ある柔軟性
 がより多く確保されるので、その方を好むグリーンスパン氏は、その戦略には反対して
 いる。

 グリーンスパン氏の優れた業績を考えれば、政策の柔軟性の利点は明らかである。例え
 ば、同氏のFRB議長としての18年間には、二度の株価の暴落(1987年および2000〜02
 年)、二度の国際金融危機(メキシコ『1994〜95年』および、東アジアとロシア『1997
 〜98年』)、「ロングターム・キャピタル・マネジメント」(LTCM)のヘッジファ
 ンドの内部崩壊、9・11テロ攻撃、企業ガバナンスのスキャンダル、そして、現在進行
 中のエネルギーの需要と供給の衝撃などに遭遇したが、経済不況は、比較的緩やかなも
 のと短期のものと、二度しか体験していない(1990〜91年および2001年)。一方、バー
 ナンキ氏の極めて情報量の多い講演を再検討してみると、明らかに、同氏が提唱する
 「制限付き自由裁量」は、同氏のインフレ目標政策が政策を束縛するものではないこと
 を明示している。

 1990年代にFRBの副議長を務めたプリンストン大学のエコノミスト、アラン・ブライ
 ンダー氏は、バーナンキ氏を「完全自由主義者的共和党員」と言い表している。それは
 完全にグリーンスパン氏像の描写と同じように聞こえる。ということは、バーナンキ氏
 はグリーンスパン氏がつくり上げた歴史を引き継ぐのにうってつけの人物ということに
 なる。
 
      Kenzo Yamaoka
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リビー副大統領首席補佐官の起訴   
  
  ディック・チェイニー副大統領首席補佐官、ルイス・リビー氏が28日、起訴され、続い
 て辞任したことは、政権にとっても、また、国家にとっても、暗い影を落とすものだ。
 ジョセフ・ウイルソン元大使の振るまいや、中央情報局(CIA)の工作員だった妻の
 バレリー・プレイム夫人の身元暴露で彼自身が果たした役割を、人がどのように評価し
 ているかは、さておき、偽証、司法妨害、それとCIAの情報漏えい事件捜査で虚偽供
 述をしたとの容疑は重大で、検察側によるブッシュ政権に対する魔女狩りなどと言って
 片付けてはならない。
 司法妨害1件、偽証2件、そして、虚偽供述2件のすべての容疑に有罪判決が出たら、
 リビー氏は、最高量刑禁固30年、罰金125万jに直面することになる。

 従って、次のことはいくら強調してもし過ぎることはない。起訴状に書かれている情報
 に間違いがなければ、フィッツジェラルド特別検察官は、リビー氏が忘れっぽいことと
 か、証言する際、毒にもならないような「技術的」ミスをしたことなどを取り上げて、
 リビー氏をわなに掛けようとしているわけではないのだ。起訴状によれば、プレイム女
 史がCIAの工作員であることをいつ知ったか、同氏が記者たちに彼女に関して何を語
 ったかについて、リビー氏は、捜査官を欺くために組織的運動を行ったのだということ
 になっている。

 リビー氏が「知っていながら故意に、著しく虚偽で、架空で、詐欺的な供述を現に行っ
 た」とされる1例として、記者たちが政権に対してプレイム夫人はCIAの職員だと言
 っているが、リビー氏はそれが本当かどうかはっきり知らないと、2003年7月に連邦捜
 査局(FBI)に語った、と起訴状には記されている。起訴状には、大陪審の証言例や、
 このような主張をいろいろな言い方でリビー氏が繰り返したとされる捜査官とのインタ
 ビューが、無数に列挙されている(同じようなごまかしをリビー氏は、NBCニュース
 のティム・ラサート氏やタイム誌のマシュー・クーパー氏のようなジャーナリストとの
 インタビューの中でも、行ったとされている。)しかし、検察官は、リビー氏が2003年
 6月12日に、チェイニー氏にプレイム夫人をCIAに雇用するよう助言されたというこ
 とを示す証拠を示す予定である。

 リビー氏が政権を去ったので、今度は、捜査継続中のブッシュ大統領の次席補佐官、カ
 ール・ローブ氏に関心が集中している。パトリック・フィッツジェラルド特別検察官は、
 捜査を完結しなければならず、また、政権に黒雲が立ちこめるままにしておいてはなら
 ない。ローブ氏は1人の公民であるばかりでなく、対テロ戦争中にあってその助言が極
 めて重要な上級官僚である。

 フィッツジェラルド氏は、徹底した捜査を完結させるためのあらゆる正規の訴追手段を
 持っているに違いないことは、私たちも十分分かっているが、ローブ氏は、同氏を巡っ
 て訴追の黒雲が立ちこめ続けるようであれば、十分に責務を遂行することができないで
 あろう。国益上、フィッツジェラルド氏は、無罪とするか起訴するかしてローブ氏の身
 分に結論を下す必要がある。

 党との関わりと関係なく、私たちは重罪に対する告発を極めて深刻に受け止めている。
 1人の人間が刑事上の有罪判決を認めたら、その後は法に身を委ね、刑罰を受けるべき
 である。(世界日報掲載許可)

      Kenzo Yamaoka
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カザフスタンめぐる米中ロの確執   
   
 「現実外交」で巻き返し図る米国
米国務長官、民主化問題を事実上不問に
中ロは「上海協力機構」利用し取り込みへ

 中央アジア諸国をめぐり米中ロがパワーゲームを繰り広げているが、特に、豊富なエネ
 ルギー資源を持つカザフスタンをめぐる綱引きが活発化している。十月中旬の中央アジ
 ア歴訪でライス米国務長官は、カザフスタンの民主化問題を事実上不問とする「現実外
 交」で、同国ナザルバエフ政権との関係強化を図った。一方、中ロは上海協力機構(S
 OC=中ロと中央アジア四カ国が加盟)を利用し、カザフスタンを取り込む構えだ。
 (モスクワ・大川佳宏・世界日報掲載許可)

 中央アジア最大の面積と、豊富なエネルギー資源を持つカザフスタン。ロシアと長大な
 国境を接し経済的なつながりも深く、ロシアの「伝統的友好国」の立場を保ってきた。
 転機が訪れたのは昨年五月。ロシアを経由しないカスピ海産原油の輸出ルートとして、
 米国が主導し建設するBTC油送管計画(BTCは油送管が通過するアゼルバイジャン
 のバクー、グルジアのトビリシ、地中海沿岸のトルコ・ジェイハンの頭文字)への参加
 を表明した。

 BTCパイプラインは今年五月に完成し、カザフスタンはバクーに向けタンカーによる
 原油輸出を開始した。米国にとってカザフスタンの参加は、中央アジアへの影響力拡大
 だけにとどまらず、BTC油送管を採算ラインに乗せるだけの原油量を確保する上で極
 めて重要である。カザフスタンにとってBTC油送管は、政治・経済的にロシアにのみ
 込まれないための切り札だ。

 一方、ロシアにとっても、カザフスタンは中央アジアへの影響力確保の上だけでなく、
 その石油資源が大きな魅力だ。ロシアは原油生産で世界一、二を争うものの、西シベリ
 ア油田の生産は次第にコスト高になりつつある。東シベリア油田開発には巨額の資金が
 必要な上、欧州の消費地から遠い。

 石油・天然ガス輸出を通じた「エネルギー外交」を進めるロシアは、カザフスタンが計
 画するバクーまでのカスピ海底油送管建設をなんとしても阻止し、同国の石油資源をロ
 シアのコントロール下に置きたいところだ。

 中国もカザフスタンの石油資源を狙っている。今後、爆発的にエネルギー需要が増大す
 る見込みの中国は、カザフスタンの石油が喉(のど)から手が出るほど欲しい。中国石
 油天然ガス(CNPC)が現在、カザフスタンに開発権益を持つカナダの石油会社ペト
 ロカザフスタンの買収を進めている。

 ところで米国は今年五月、ウズベキスタン東部アンディジャンで起きた暴動の鎮圧をめ
 ぐりカリモフ政権を批判し、ウズベクの離反を招いた。それでなくても中央アジア各国
 はどこも大統領の独裁的政治が顕著であり、米系団体が背後で支援したグルジアやウク
 ライナの「カラー革命」を目のあたりにし、カザフスタンをはじめとする各国は、米国
 への警戒感を強めつつあった。

 このような中で行われたライス米国務長官の中央アジア歴訪では、人権問題などを不問
 とし、各国政権との関係拡大を示すことで、中央アジアでのプレゼンスを確保する姿勢
 が顕著だった。

 大統領選を十二月に控えたカザフスタンでは、野党弾圧や人権侵害などが数々指摘され
 るが、ナザルバエフ大統領と会談したライス国務長官は共同記者会見で、人権・民主主
 義の問題に触れなかった。そればかりか、ナザルバエフ大統領に「カザフスタンの民主
 主義や大統領選の問題について、われわれは完全な相互理解に達した」とまで言わせて
 いる。

 この米国の「現実外交」による巻き返しに対抗するロシアは、SOCの枠組みを最大限
 に活用する構えだ。十月二十六日にモスクワで行われたSOC首相会議でプーチン大統
 領は、SOCの重要な課題として「テロとの戦い」を示し、軍事面での各国の連携を強
 化する方針を示したほか、中国の温家宝首相との個別会談を持った。

 中央アジア諸国はロシアと中国に挟まれる一方で、米国は地球の裏側にある。SOC首
 相会議とは別に、ロシアが中国との個別の会談を持ったことからは、他の加盟国に対し、
 中ロの蜜月関係と、SOCが中ロ主導で運営されていることを改めて見せ付けることで、
 各国に政治的圧力を掛けようという狙いが見え隠れする。
       Kenzo Yamaoka


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