2164.中韓の北朝鮮争奪戦



中国と韓国の北朝鮮に対する援助競争が起きている。この検討。
                     Fより

中国の胡主席が北朝鮮に行って、年間20億ドルという大規模な経
済支援の約束をし中朝の友好を高めたようである。しかし、その中
国の胡主席が訪朝後、直ぐに韓国が北朝鮮への支援を5年で5000億
円以上と急拡大した。
これは何かあると見るのが、国際関係を見るときに重要なことであ
る。そこで、この意味を検討しよう。

2年前の2003年8月に中韓で高句麗の帰属問題が起きている。
紀元前37−紀元後668年の高句麗の歴史で、この国は朝鮮であ
ったか、中国の地方国家であったかの論争である。朝鮮民族は中国
にも存在する。朝鮮自治区が中国の東北にある。両国共に結論を保
留しているが、この問題は今後、予想される北朝鮮の帰属問題にな
る。

北朝鮮経済は単独では存続できない。北朝鮮の価値はソ連や中国が
反米統一戦線を引いているときは、その支援で存在できたが、今、
米国と友好関係を樹立すると、一気にその存在価値を失う。これは
金正日委員長も知っている。そして、今後、金独裁政権も維持でき
ない。世界も中国も許さない。

このため、北朝鮮は韓国と統一するか中国の朝鮮自治区に統合する
かしかない。勿論、北朝鮮の金正日委員長は抵抗するかもしれない
が、もう朝鮮民族全体の意思が金独裁政権はNOと言っている。
脱北者の増加や国境警備の弱体化がそれを示している。もう金政権
は長くない。

このように中韓の情報機関も見ているために、この両国は反日では
統一戦線を組むが、北朝鮮統一では競合関係になっている。韓国と
中国の支援合戦もその下地である。北朝鮮で親中派が勝つか、朝鮮
統一派が勝つかの戦いに、そのそれぞれの派に軍資金をこの中韓両
国は提供しているのである。

もう1つ、韓国は文鮮明を通じて、大紀元の中国民主化運動にも資
金を提供しているし、北朝鮮にも統一教会が大きな役割をしている。
このように韓国は北朝鮮との統一に全力を傾注している。

そして、朝鮮統一の主導権争いも起きている。北朝鮮と韓国には天
台宗の寺院が多数あり、この記念行事を両朝鮮天台宗と日本の天台
宗が合同で行う計画がある。中国の天台宗は衰退しているために、
天台宗は日本と両朝鮮しかない。このように仏教と統一教会の主導
権争いも韓国で起きているようである。脱北者の救出も天台宗が中
心で行っている。日本の天台宗も資金援助をしているようである。

しかし、中国もこの韓国の動きを知って、大反撃に出たのが今回の
胡主席の訪朝なのです。さあ、どうなりますか??楽しみですね。
傍観者日本は気楽である。
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韓国、北朝鮮支援を急拡大・5年で5000億円以上計画(nikkei)

 【ソウル=峯岸博】韓国政府は2日、来年からの5年間で北朝鮮に
5000億円超規模を支援する計画を発表した。原則人道援助に限定し
てきた支援政策を転換、電力や鉱工業、農林水産などに対象を広げ
、金額も過去の対朝人道援助総額の約6倍規模に膨らむ。核問題にか
かわらず南北交流を加速させる盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の援助
戦略が本格的に動き出す。

 韓国政府が複数年にわたる北朝鮮支援計画を表明したのは初めて。
今回の計画は7月の第10回南北経済協力推進委員会で決定した12項目
の合意文が基礎になった。

 計画の内訳は、200万キロワットの電力を北朝鮮に直接供給する構
想が3兆3200億ウォン(約3320万円)で最大。このほか、靴、せっけ
んなどの軽工業分野1兆ウォン、農業分野5600億ウォン、鉱業分野1500
億ウォン、科学技術分野1200億ウォン、水産分野1000億ウォン――
などを盛り込んだ。

 具体的には、韓国が北朝鮮に不足している軽工業の原材料や技術
を提供したり、北朝鮮の鉱山開発に大規模投資したりする一方、北
朝鮮の鉱物を韓国に輸出することなどを検討している。 (22:26) 
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中朝蜜月 対米戦略・経済… 利害が一致

 【ソウル=久保田るり子】北朝鮮の核問題を討議する六カ国協議
を前に、中国の胡錦濤国家主席の訪中でみせた中朝関係の“蜜月ぶ
り”が注目を集めている。中朝首脳会談では中国が巨額の長期経済
援助を表明したとの情報や、金正日総書記が後継体制について胡主
席に説明した可能性も取りざたされている。中朝接近は対米戦略な
ど両国の利害の一致からとみられる。

 胡主席の訪朝中、その模様を詳報した朝鮮中央放送は首脳会談(
十月二十八日)について、「すべての問題で見解の一致をみた」と
伝え、両国幹部の同席しない「単独会談」も別途に行われたことも
報じた。

 また歓迎宴でも親密ぶりが際立って報じられた。金総書記は胡主
席に「最も貴い国賓」と最大級の賛辞を贈り、「わが国が厳しい試
練を経たこの十年余、変わらない信義と友愛の情で物心両面の支援
を誠意の限り送ってくれた」と謝意を表した。

 一方の胡主席は首脳会談について、首脳往来、貿易経済協力の推
進、国際舞台での積極的な協力−などでの「共同の利益の守護で一
致」と具体的に述べたほか、「中朝親善強化はわれわれの確固不動
の戦略的方針」と言明した。

 胡主席の訪朝にあわせ両国は経済技術協力協定に調印した。協定
の内容は不明だが、これに関連して共同通信は中国が約二十億ドル
(約二千三百億円)規模の長期経済援助を提案したと伝えている。
 このところの中朝接近は朝鮮戦争を戦った「伝統的な友誼(ゆう
ぎ)」に加えて経済協力が目立つ。中朝貿易は約二年前から活発化
し、二〇〇四年に北朝鮮から中国への鉄鉱石の輸出量は約百四万ト
ンに達し、前年の三十六万トンから倍増、無煙炭、亜鉛、鉛など北
朝鮮からの輸出が急増中だ。中国は鉱物資源を北朝鮮で調達する代
わりに、北朝鮮に合弁会社を続々と設立、技術支援を行っている。

 こうした両国関係について韓国では、中国が投資などで北朝鮮の
安定化をはかり、核問題の緊張を緩和し、地域安保を主導しようと
している−との見方が一般的だが、中国にとっての北朝鮮の“戦略
的な価値”が上がったのは、ブッシュ米大統領と小泉純一郎首相に
よる「日米同盟強化」に対抗するため−との分析も多い。核問題に
ついて廃棄の道筋など具体論を協議する次回以降の六カ国協議で、
こうした中朝関係がどう反映するのかも関心の的となっている。
(産経新聞) - 11月3日2時34分更新
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中国・胡主席、訪朝終え帰国 中朝「共同利益」強調(ASAHI)
2005年10月30日21時37分

 中国の胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席(共産党総書記)は
30日、北朝鮮への公式訪問を終えて北京に戻った。今回の訪朝で
際立ったのは、中国が手をさしのべるばかりだった中朝関係から脱
皮し、中国にも利益となる経済交流や貿易を拡大したいという思い
だ。 

 随行した王家瑞(ワン・チアルイ)・党対外連絡部長は30日に
記者会見し、国家主席として初めて訪朝した胡主席が金総書記と「
新しい中朝関係」への道筋をつけたことを最大の成果に挙げた。両
首脳は前回の6者協議が採択した共同声明の内容を履行することで
も合意した。 

 新華社通信などによると、胡主席は金総書記主催の28日の夕食
会で、中国が「天変地異的な変化」を経験したと説明。中国経済の
発展ぶりを解説する一方で「人口が多く、発展はバランスを欠き、
少なからず矛盾や問題に直面している」と語り、改革の痛みを避け
て経済の再建はないと訴えた。 

 外遊先で中国の指導者が、国内に問題を抱えていると打ち明ける
のは異例だ。対外開放に及び腰の北朝鮮に改革を促し、最大の支援
国としての負担を軽減し、難民の流出をはじめとする地域の不安定
要因も取り除きたいとの思いがにじむ。 

 首脳会談でも胡主席は、経済交流や貿易の拡大で双方が「共同利
益」を得るべきだと強調。北朝鮮だけでなく、中国にとっても利益
となる2国間関係を目指す姿勢を鮮明にした。 

 金総書記の案内で胡主席が29日に視察した「大安親善ガラス工
場」は中国が無償援助した。中国側も「協力関係の象徴」と呼ぶが
、「私たちに依存しているくせに核問題で言うことをきかない」「
北朝鮮への支援が中国の利益につながっていない」との不満もくす
ぶる。朝鮮戦争以来、中朝双方は「鮮血で固められた友情」との表
現で関係の深さを強調してきた。最近は党機関紙の人民日報も、そ
うした表現から遠ざかっている。 
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中韓印など6カ国、関税減免対象を4000品目に拡大(nikkei)

 【北京=桃井裕理】アジア諸国間の貿易協定「バンコク協定」に
加盟する中韓印など6カ国は2日、北京で閣僚級会議を開催した。
2006年7月1日から関税減免の対象を農産品や紡績品を含む4000品目
に拡大することを決定。協定名を「アジア太平洋貿易協定」と改め
、他のアジア太平洋諸国の加盟を広く募っていくことで合意した。

 「バンコク協定」は1975年、国連の指導下で発展途上国間の貿易
拡大を目的に締結された。現在、中韓印のほか、バングラデシュ、
スリランカ、ラオスが加盟し、関税の減免などを実施している。中
国は01年5月に加盟した。

 中国の薄熙来商務相は記者会見で「投資の拡大や知的財産権の保
護など幅広い問題を扱う場としたい」と強調した。 (07:00) 
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中越首脳、経済や安保協力拡大で一致・共同で資源調査も [日本経済新聞]

 【ハノイ=長谷川岳志】中国の胡錦濤国家主席(共産党総書記)
は31日、ベトナムを公式訪問し、チャン・ドク・ルオン大統領、ノ
ン・ドク・マイン・ベトナム共産党書記長と相次いで会談した。両
国首脳は経済、安全保障の両面での協力関係をさらに拡大すること
で一致。ベトナム北部での火力発電所建設支援やトンキン湾での共
同資源調査実施などを含む合意文書に調印した。 

 胡主席はルオン大統領との会談で「両国の友好関係強化は地域の
一層の安定、発展につながる」と語り、経済を軸とした協力の必要
性を訴えた。中国の最高指導者によるベトナム公式訪問は2002年3月
の江沢民主席(当時)以来。 

 中国はベトナムに対する政府開発援助(ODA)として、北部ハイ
フォンなど3カ所の石炭火力発電所の建設資金の借款や、ハノイ市の
通信および信号システムの改善の支援を表明。両政府は南シナ海北
西部のトンキン湾で天然ガス田を共同調査することを含む13の合意
文書に調印した。中国輸出入銀行はこれらのプロジェクトに参入す
る中国企業やベトナム政府向けに計50億ドルの融資枠を設定した。
 (23:03) 
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中国、韓国 「高句麗」めぐり歴史紛争気配
(SANKEI) 2003年08月14日(木) 

統一視野に「領土」意識
中国/「編入」大規模な研究が進行
韓国/「文化的侵略」学界強く反発

 【ソウル=黒田勝弘】韓国と中国の間で「歴史紛争」の気配が出
ている。紀元前後に中朝国境地帯から中国大陸にかけて存在した高
句麗(こうくり)(紀元前37−紀元後668年)の歴史をめぐっ
て、中国が「中国の歴史」に編入しようとする大規模な研究活動を
国家的事業として進めていることが最近、明らかになった。「高句
麗は韓民族の国家」とする韓国の学界は「文化的侵略」「新中華主
義」と強く反発している。

 「歴史紛争」の背景には国境問題を含むこの地域に対する双方の
領土的関心がある。中国の動きは北朝鮮情勢や朝鮮半島の統一まで
念頭においたもので、「統一朝鮮との領土紛争は必至」との考えか
ら「まず歴史を固めておく」との意図があるとして韓国側は警戒を
強めている。

 「高句麗は中国の一地方政権だった」として歴史再検討を進めて
いるのは、中国の国家機関である中国社会科学院・中国辺境史地研
究センター。昨年二月から王洛林・社会科学院副院長を中心に五年
計画の「東北工程(プロジェクト)」をスタートさせ、東北三省(
旧満州)地域の歴史研究を本格化させた。

          ◇    ◇    ◇

 これらは先ごろ現地を訪問した韓国の金蒼浩・中央日報論説委員
(学術専門委員)が地元学者を通じ確認した。金蒼浩論説委員が入
手した研究計画書によると研究の主要任務は「中華民族の愛国主義
伝統」による「国の統一と辺境地域の安全のため」とされ「国防の
最前線である辺境地域の軍事戦略的な重要性」を指摘している。

 全体で二十六件の研究課題には中国大陸に存在したという高句麗
以前の「古朝鮮」や高句麗以後の「渤海(ぼっかい)」など韓国側
が「韓民族の国家」と主張する地域史の研究や、領土問題に直結す
る「国際法上の問題に関連する研究」「白頭山をめぐる国境問題に
関する研究」なども含まれている。

 高句麗の歴史をめぐってはこれまでもセミナーなどで韓国と中国
の学者による論争がしばしばあった。

 中国側は当初、一つの歴史を二つに解釈する「一史二用」の立場
だったが、一九八〇年代後半以降から高句麗史を中国領域内の「地
方史」に位置付ける主張が台頭し、「韓民族の独自性を持った独立
国家」という韓国側の立場を否定する方向に変化しつつあった。

 金蒼浩論説委員によると「中国における最近の辺境史認識は、清
朝の版図が基になった現在の中国の支配領域を基準に、千年前の古
代史まで解釈しようという国家主義的な考えから出ている。中国内
の朝鮮族の学者たちは今回の研究プロジェクトに対し、自らの民族
感情と中央政府の国家的要請のはざまで悩みが深い」という。

          ◇    ◇    ◇

 中国は北ベトナムの武力統一戦争を支援しながら統一後は国境(
領土)問題でベトナムと戦争になっているが、金蒼浩論説委員は「
中国と韓国(朝鮮)の民族問題はもっと複雑だ。中国側に領土問題
の意識があることは間違いない。朝鮮半島の統一も視野に入れて高
句麗史の再検討をはじめているようだ」と語っている。

                  ◇

 ≪高句麗≫ツングース系の朱蒙(しゅもう)が建国したといわれ
る。朝鮮半島北部を中心に領土を広げ、4世紀末に最も栄えた。百
済(くだら)、新羅(しらぎ)と抗争。668年、唐、新羅の連合
軍に滅ぼされた。
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「キムチ戦争」に発展−中韓   
   
 寄生虫検出、報復合戦が激化
 【北京1日時事】中国国家品質監督検験検疫総局は一日までに、韓国から輸入されたキ
 ムチと唐辛子みそ、焼き肉たれを検査したところ、寄生虫の卵が検出されたと発表した。
 同総局は「消費者の健康安全」のため、卵が検出された銘柄のキムチなどの輸入を禁止
 したほか、検疫を強化し、不合格品は韓国に送り返す措置を決定した。
 一方、韓国も十月下旬、中国産キムチから寄生虫の卵が検出されたとして輸入手続きを
 停止、安全なものだけを通関させる措置を実施中。韓国メディアは今回の中国の決定を
 「韓国食品業界を狙った報復措置」と位置付けており、中韓両国による「キムチ戦争」
 は激しさを増している。

 中国が今回、寄生虫の卵を検出したのは七社の製品。しかし、多くは韓国内の大手食品
 企業で、一部の社は「中国にはキムチを輸出していない」と主張しており、中国の検査
 方法に疑問を投げ掛ける見方が強い。

 韓国では中国産キムチが大量に出回っているが、寄生虫疑惑が広がる前の十月中旬には
 「中国産は鉛の含有率が高い」とのうわさが広まり、韓国食品医薬品安全庁が「安全性
 に問題はない」と打ち消す騒ぎになった。しかし、中国では「『泥棒を捕まえた』と大
 声で叫んだ後に小声で『泥棒はあなたではなかった』と言われても、中国産のイメージ
 は大きく傷ついた」(中国紙・国際商報)との不信感が強い。

 中韓貿易は一−九月で前年同期比25%増となる急激な伸びで、韓国製品は中国に大量
 流入している。今月中旬の胡錦濤国家主席の韓国訪問を控え、韓国の国民食である「キ
 ムチ」をめぐる騒動は両国の国民感情に悪影響を与える懸念も出ている。

     Kenzo Yamaoka
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核問題解決、見えない道筋   
  
 「友好」頼み、合意優先−中朝首脳
 【北京28日時事】北朝鮮の金正日労働党総書記と胡錦濤中国国家主席(共産党総書記)
 による二十八日の会談では、次回の第五回六カ国協議での「新たな進展」を促した胡主
 席に対し、金総書記による「出席約束」以上の踏み込んだ発言は伝えられなかった。胡
 主席が二○○二年十一月の総書記就任後、友好国の北朝鮮を訪問できなかった背景には、
 核問題で強硬姿勢を崩さない北朝鮮への「抗議」の意味があったが、核問題解決への道
 筋はまだ見えない。
 九月の六カ国協議で初めて採択された共同声明で北朝鮮は核放棄を確約。しかし、核放
 棄を最優先する米国と、軽水炉提供を核放棄の前提とする北朝鮮の対立は残っている。
 今回の首脳会談ではこうした相違点には具体的には触れず、「合意」だけを内外にアピ
 ールし、お互いの威信を優先したもようだ。

 中国にとって十一月は、第五回六カ国協議、同協議の首脳が集まる韓国・釜山でのアジ
 ア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、ブッシュ米大統領の訪中と、外交日程が
 立て込んでいる。中国外交筋によると、胡主席の訪朝時期については「韓国よりも先に」
 とメンツに強くこだわる北朝鮮の要請に応じた形だ。

 中国は今回の訪朝では「伝統的友好」をてこに経済貿易面での協力を強化しながら、核
 問題での柔軟化を求めていく構えだ。ただ、党・国家・軍、メディア、市民を動員した
 北朝鮮の厚遇ぶりが目立つのに対し、中国側は四年前の江沢民国家主席の訪朝時に随行
 した副首相級や軍首脳の姿がなかった。「友好」を強調しながらも、「特別な関係」
 (共産党関係者)からの転換を図る「アメ」と「ムチ」を駆使した手法で、中国にとっ
 て周辺地域の安定に不可欠な核問題解決を北朝鮮に迫る狙いだ。世界日報掲載許可

     Kenzo Yamaoka
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日朝交渉再開/拉致問題の全面解決を求めよ   
   
  日朝の政府間交渉が三日から北京で約一年ぶりに再開される。政府間交渉は昨年十一月
 に平壌で開かれたが、北が横田めぐみさんのものとして提出した遺骨を日本側が別人の
 ものと判定したことで中断したままになっていた。九月中旬まで開かれた北の核問題を
 めぐる第四回六カ国協議で日朝両国代表団が交渉再開に合意し、日取りの調整が続いて
 いた。
北に日米分断の思惑も  世界日報掲載許可

 しかし、交渉再開の狙いについて日朝両国は全く噛み合っていない。北は「過去の清算
 問題」を優先させようとしているが、日本側は拉致問題を最優先させ、同問題の解決な
 くしては国交正常化も核問題の解決もあり得ないとの基本的立場を貫くべきだ。日朝政
 府間交渉に続いて九日にも六カ国協議が開かれる見通しだが、拉致と核問題の同時進行
 を目指す日本側の主張を貫くためにも、政府間交渉で一歩も譲歩してはならない。

 六カ国協議で日本側が目指したのは、日朝協議の実施と共同文書への「拉致」の明記だ
 った。日朝協議は今回の政府間交渉につなげることができた。

 しかし「拉致」の明記は実現せず「懸案事項」という文言にとどまった。北は拉致問題
 は「解決済み」の立場で、今回も同じ立場だろう。だが、共同文書は「日朝は、平壌宣
 言に従って過去を清算し、懸案事項を解決し、国交正常化のための措置を取る」とうた
 っており、拉致が重大な懸案事項であることは明白だ。

 北が政府間交渉再開に応じた背景として、九月の総選挙で自民党が大勝し、日朝平壌宣
 言に署名した小泉首相の政権基盤が強化したことが考えられる。北は、首相の総裁任期
 が切れる来年九月までの在任中に国交正常化の道筋をつけ、平壌宣言でうたわれた無償
 資金協力、低金利の長期借款および国際機関を通じた経済協力の取り付けを望んでいる
 とみてよい。

 警戒しなければならないのは、北が対話に乗り出したいま一つの狙いとして日米分断の
 思惑が考えられることだ。六カ国協議の共同文書は北の核放棄の原則をうたっただけで、
 具体的プロセスは決まっていない。北は核放棄の前提として軽水炉提供を求めるなど難
 題を突き付け、米国の強い抵抗を受けている。北が存在を否定する濃縮ウランの問題に
 ついても米朝間の厳しい対決が予想される。

 北の核の平和利用の権利については、中、ロ、韓国ともに肯定的であり、核兵器ととも
 に既存の一切の核計画の放棄を先決としている日米両国とは微妙に姿勢が違っている。
 六カ国協議で日米対中ロ韓の足並みの乱れを北が突いてくる可能性があり、米国を孤立
 化させるため日本との直接対話に乗り出したとも考えられる。

 しかし、核問題が拉致問題と密接にリンクしていることを忘れてはならない。北が軽水
 炉を持ち出したのは、核保有を諦めていないためではないかとの疑惑が出ている。その
 点、北の核放棄は国家としての信頼性の問題でもある。拉致問題はそれを測る「踏み絵」
 であることを北に認識させるべきだ。

 政府間交渉で日本側は拉致問題の真相究明と拉致実行犯の引き渡しとともに、行方不明
 者や特定失踪者問題についても北を追及し、生存者の速やかな帰国を求めるべきだ。核
 やミサイルはそれからの問題である。

国交正常化を急ぐな

 拉致問題への国際的関心は高まっており米議会や国連人権委員会でも解決を求める決議
 が採択された。拉致問題の全面解決抜きで日朝国交正常化を急いではならない。
     Kenzo Yamaoka
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6カ国協議を前に尾を引く米朝対立   
   
 「軽水炉」で譲れぬ米国
北朝鮮は対中協力強め牽制
 今月上旬に予定される六カ国協議を前に、米朝間では軽水炉供与問題をめぐり対立が続
 いている。北朝鮮は中国との協力関係を強化するなど、米国を牽制(けんせい)する動
 きを続けているが、米国も譲歩の姿勢は見せていない。六カ国協議では九月に達成され
 た合意の実施手順をめぐり交渉が難航しそうだ。(ワシントン・横山裕史・世界日報掲
 載許可)
 北朝鮮外務省は先月二十四日、今月上旬に予定されている六カ国協議に参加する方針を
 表明した。声明では「対話を通じて朝鮮半島の非核化を実現しようというわれわれの立
 場は一貫し、変化はない」とし、「六カ国が公約した通り、十一月上旬の合意する期日
 に第五回協議に参加する」と言明した。さらに、先月二十八日に平壌で行われた胡錦濤
 中国主席と金正日総書記との会談でも、金総書記は「期日通り第五回六カ国協議に参加
 する」と明言した。

 第五回六カ国協議は予定通り今月上旬に実施されそうだが、協議の中身は決して楽観で
 きる状況にはない。

 六カ国協議参加国は九月十九日、第四回協議の最後に共同声明を発表し、北朝鮮はその
 中で既存の核兵器、核開発プログラムの廃棄、核拡散防止条約(NPT)への復帰、国
 際原子力機関(IAEA)査察受け入れ再開を約束し、他国は北朝鮮に対してエネルギ
 ー関連の援助を行うことを約束した。共同声明には、北朝鮮の核開発放棄期限、その検
 証方法、軽水炉供与時期などについての具体的内容に関する言及はなかった。

 その後、北朝鮮政府は、米国がまずエネルギー援助の一環として軽水炉供与に合意すべ
 きであり、その上で初めて核開発プログラム放棄などの約束を実施すると主張。これに
 対して、米政府は北朝鮮がまず核開発停止などの約束を実施するなど核の先行放棄をし
 た段階で初めて軽水炉供与については考えるという立場を打ち出し、対立が続いてきた。

 北朝鮮の対米交渉実務責任者である韓成烈国連次席大使は先月二十七日、ワシントンの
 連邦議会議事堂内で講演し、軽水炉供与が核放棄の前提という従来の姿勢を改めて強調
 した。協議における米国首席代表であるクリストファー・ヒル国務次官補(アジア太平
 洋担当)は、軽水炉供与は北朝鮮が核開発プログラムを放棄しそれが確認された後に初
 めて考慮するという姿勢を崩していない。

 米国は九月の共同声明で、核兵器その他の兵器により北朝鮮を攻撃する意図はないとい
 う北朝鮮不可侵宣言、北朝鮮との国交正常化に努力する意思表示など、従来の路線から
 かなりの譲歩を行った。軽水炉供与問題は譲れない一線である。一九九四年米朝合意で
 は北朝鮮が核開発プログラムを停止した後に軽水炉を供与するという順序だった。しか
 し北朝鮮の核開発継続の事実が明らかになり、軽水炉建設も反古(ほご)にされた経緯
 がある。北朝鮮側の要求を今回のめば、北朝鮮の合意違反を大目に見たばかりか軽水炉
 事前供与という報償まで与えたという結果になってしまう。

 ヒル次官補は当初、協議再開前に北朝鮮を訪問することを計画していたが、訪朝は断念
 した。金正日総書記に近い北朝鮮高官との直接交渉、政治決断による軽水炉問題妥結が
 難しいと判断したためとみられる。同次官補は、他の協議参加国と事前に足並みをそろ
 え、協議の場で北朝鮮に対して多国間の圧力を強め、軽水炉問題での譲歩を迫る戦略に
 転じたもようだ。同次官補は、ワシントン、ハワイで韓国、中国の協議担当者と話し合
 い、三十一日には訪日して協議に向けての調整を行った。

 北朝鮮側はといえば、協議前のあらゆる外交機会を活用して、米国を牽制する動きに出
 ている。胡錦濤国家主席の先月二十八日からの北朝鮮公式訪問で、金正日総書記は胡主
 席と六カ国協議進展に向けた協力を確認した。金総書記は中国を引き寄せ、米国を牽制
 する意図があったとみられる。北朝鮮は十月中旬から下旬にかけて、ビル・リチャード
 ソン米ニューメキシコ州知事をはじめ十人の米代表団を受け入れたが、これも軽水炉問
 題で強硬姿勢を維持するブッシュ政権への牽制になっている。
     Kenzo Yamaoka

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