1934.アメリカは滅びないを考察



増田さんの「アメリカは滅びない」を考察する。  Fより

アメリカは滅ばない:「アメリカはやがて崩壊する」と主張する論
者が多い中で、私は「パックスアメリカーナは始まったばかりだ」
と言ってきた。アメリカが双子の赤字に陥っていることは事実。経
常赤字、対外債務は毎年レコードを更新、赤字が縮小する可能性は
皆無。だから、必ずアメリカは財政破綻すると彼らは主張する。
アメリカは「覇権を追求するから赤字なのか、赤字だから覇権を追
及するのか」、丁度「卵が先か、鶏が先か」と同じ関係だ。どちら
が先でもアメリカは赤字を増大させ、覇権を追求し続けることに変
わりはない。
世界の仕事は「アメリカの浪費」によって創られる、と言っても過
言ではない。
「サルから人間、人間から猿」を繰り返している限り、そしてアメ
リカの自由(覇権)が世界に拡大する限り、永遠に増え続けるアメ
リカの借金は世界が払うことになる。          増田

この論旨は、米国は軍事力で民主化して、民主化した国家の製品を
米国の市場に売るしかないという論理でしょうね。この論理は今ま
での世界の姿であることは確かであるが、その米国の論理を奪う取
る国が出現している。

お隣、中国である。13億人の市場であり、かつ発展している沿海
州の人口でも2億5千万人と米国の人口とほぼ同じ。この中国沿海
州の2億人が消費に走り始めた。このため、世界の貿易構造が変化
している。物資の流れが米国中心から中国中心に変わってきている
。このため海運会社が好景気である。世界一の消費市場も米国から
中国になる。この意味では米国の消費市場としての価値が落ちてい
ることになる。

それに米国2億人の内には没落して猿になる1億人以上の人口がい
る。中国沿海州の2億人は、生活レベルが年々向上している。人間
化している。この意味でも米国以上の市場になることが明らかであ
る。

農村人口(猿)も8億人もいる。この猿たちを民主化して、製品を
作り、世界に売る。勿論、中国の都市部にも売るのであるが、その
猿が軍人にもなる。猿対米人の戦いである。これは圧倒的に多い猿
が勝つ。

米国もヒスパニックや黒人を軍人にして、猿対猿の戦いにするよう
仕向けている。米国は志願兵制度になり、白人が軍人にならなくな
っている。しかし、米国の軍人死亡率が高いために、軍人の不足が
起きている。このため英語圏の発展途上国(猿)の雇用兵を世界か
ら募っている。イラクでは米軍の10倍以上の雇用兵が死んでいる。
そこにローマ帝国崩壊を見る。そういえば、ブッシュは皇帝のよう
な振る舞いをしているし、軍のトップは黒人やアラブ人などがなっ
ている。この傭兵を集めるために、国防費は45兆円以上になって
いる。米国の経常赤字も6000億ドルとどんどん増えている。

しかし、8億人の中国の猿と同程度の猿を米国は軍人として集める
ことは出来ない。よって、米国は本格的には、中国とは戦えない。
戦っても、石油があるわけはなし、何の利益もない。戦争するに値
しない。中国の大陸間弾道弾ミサイルの防衛をするだけで、中国の
占領を米国は考えていないし、意味がない。台湾の独立も米国は阻
止する。

戦争を安全保障だけで考えることが無意味で、米国は経済理由の戦
争を今、仕掛けているのですよ。ネオコンの意見を取り入れて、中
東戦争に乗り出したが、経済的には失敗であることが明確になり、
ネオコンを政権中核から追い出し始めたのです。ボルトンを国連大
使にし、ウォルフォウィッツを世銀総裁にした。中国にも攻撃しよ
うとするネオコンがいなくなって、ライスなどの攻撃的なリアリス
トが政権中核部を構成する。リアリストは現実主義であるから、
経済価値のない戦争をしないことは間違いない。しかし、米国リア
リストは欧州のユーロ対抗を目指して戦争をしているが、本当の敵
は中国の市場のような気がする。戦略目標を間違えているが、もし
中国の市場と認識しても、手の打ちようがないのでしょうね。

そして、米国は中国軍事力増強に立ち向かいことが経済的にできず
に、グアムまで防衛ラインを下げたが、ミッドウェイまで防衛ライ
ンを下げる可能性もある。中国の猿達に敵わないことを知って、地
上戦ではなく空中戦で勝とうとしている。中国の軍事的、経済的な
驚異を米国は感じている。そして、中国が民主化すると、米国は戦
争の大義名分を無くしてしまうことになる。

中国の民主化が必要な理由であるし、民主化すると米国の没落は10
年内外で決定的になる。中国が民主化しないと、米国との戦争にな
る可能性がある。さあ、どうなりますか??
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米国産牛肉、輸入再開しないと制裁 上院にも対日決議案
2005年03月18日10時43分

 牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛が見つかってから停止され
ている米国産牛肉の輸入再開問題で、米上院議員9人は17日、
日本が牛肉の輸入を再開しなければ米通商代表部(USTR)が日
本に対して報復の経済制裁措置をとるよう求める決議案を議会に提
出した。すでに下院にも今月3日に同趣旨の決議案が出されており
、日本政府に対する政治的圧力はさらに強まりそうだ。 

 代表して記者会見したスーン議員(共和党)は加藤良三駐米大使
と11日に会談した際、いつ輸入を再開するのか今後の日程につい
て説明がなかったことを指摘。「見通しが立たないことに非常にが
っかりした。畜産業が盛んな州を代表する我々は堪忍袋の緒が切れ
た」と決議案提出の理由を説明した。 

 さらに「米国の消費者と牧場主は米国産牛肉が安全なことをよく
知っている。日本が輸入を再開しない科学的な根拠は何もなく、輸
入禁止は不公正な貿易障壁であり、米国の強い反応を招くことにな
る」と警告した。 

 米議会は21日から復活祭の休会に入るため、決議案の審議は4
月以降になる。たとえ採択されても米政府に対する法的な拘束力は
ない。しかし、米議会対策に苦慮しているブッシュ政権にとっては
重圧になっており、18日から訪日するライス国務長官は日本政府
により積極的な対応を強く求めることになりそうだ。 
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米上下両院予算決議案を可決、国防費3.1%増

 【ワシントン=小竹洋之】米上下両院は17日、2006会計年度
(2005年10月―2006年9月)の予算決議をそれぞれ賛成多数で可決し
た。歳出総額はいずれも約2兆6000億ドルで、ブッシュ大統領の提案
にほぼ沿った内容になった。ただ、今後5年間の追加減税の規模(上
院1340億ドル、下院1060億ドル)などに開きがあり、両院協議会で
決議の一本化を目指す。

 歳出面ではともに国防費を4.8%、国土安全保障費を3.1%増やす
が、これらを除く裁量的支出(政策的経費)を1%程度削減し、歳出
全体の伸びを抑制する。 (14:00) 
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米経常赤字、初の6000億ドル突破

 【ワシントン=広瀬英治】米商務省が16日発表した2004年
の米経常収支(速報値)の赤字額は、前年比25・5%増の6659
億4000万ドルとなり、3年連続で過去最大を更新した。

 経常赤字が6000億ドルを突破したのは初めて。

 低貯蓄を背景とした旺盛な消費需要で輸入が増加し、貿易赤字が
拡大したのが主因だ。

 内訳をみると、貿易収支の赤字額は24・3%増の6170億
7500万ドル。海外から米国への投資(資本流入)は72・8%
増の1兆4331億7100万ドルだった。

 同時に発表された2004年10〜12月期の経常収支(季節調
整済み、速報値)の赤字額は、前期比13・3%増の1878億
9800万ドルだった。

(読売新聞) - 3月17日0時7分更新
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中国の台頭と日米関係   
   
 米ジョンズ・ホプキンス大学ライシャワー東アジア研究所所長 ケント・カルダー氏に聞
く
日米双方に「バイパス現象」/政治的脆弱さもたらす対話不足/尖閣諸島問題に影響も
 現在の日米関係は小泉、ブッシュ両首脳の蜜月関係もあり、「戦後最良」といわれてい
 る。だが、この一般的な見方に対して、「日米関係は政治的に脆弱(ぜいじゃく)」と
 警鐘を鳴らしているのが、駐日米大使特別補佐官などを務めた知日派政治学者のケント
 ・カルダー・米ジョンズ・ホプキンス大学ライシャワー東アジア研究所所長だ。同氏に、
 中国の台頭が日米関係に及ぼす影響について聞いた。
 
 (聞き手=ワシントン・早川俊行。世界日報)掲載許可
  
  ――現在の日米関係をどのように見ているか。

 防衛面では親密な協力関係が進んだことは確かだ。しかし、それ以外の分野は無視され
 ている。特に経済問題で、貿易、エネルギー、金融分野がそうだ。これらは不均衡が大
 きく、長い目で見れば調整の必要がある。だが、現在のブッシュ政権の下では、これら
 の問題に対してほとんど関心が払われていない。

 日米は同盟関係にありながら、政策対話がなされていない分野が多過ぎる。同盟という
 建前を自慢するだけで、問題があること自体が分からなくなっている。意外に多くの人
 がこのことに気付いていないのは残念だ。

 例えば、エネルギー問題では、世界の需給関係がだんだん厳しくなっており、エネルギ
 ー価格も上がっている。しかし、それに関する日米対話はほとんどなく、ワシントンの
 政策決定過程の中で、日本の利益に十分な注意が払われなくなる可能性がある。これは
 深刻な問題だ。

 具体的にいうと、中国もエネルギー事情が深刻だが、これが日本のエネルギーのニーズ
 と矛盾した場合はどうなるか。日中は、ロシアから天然資源を運ぶパイプラインのルー
 トをめぐって競合している。もし米国内に、中国の方が大事だという意見が圧倒的に強
 くなれば、日本の利益が無視される恐れがある。尖閣諸島の問題についても同様だ。

 ――中国の台頭によって、尖閣諸島の領有権問題が軽視される恐れがあるというのか。

 そうだ。もちろん、日本は同盟国であるから、国防総省や日米防衛に直接携わっている
 人は非常に意識している。しかし、国務省の政策立案者や米政府内の親中派は、日本の
 政治・経済のニーズについて特に意識はしていない。

 中国が成長すればするほど、日米間の「バイパス現象」が強まる心配がある。その観点
 から、もっと親密な日米の政策対話が大事だ。

 ――逆に、米中関係はそれほど深化しているのか。

 米中の企業の結び付きは、日米のそれより急速に強まっていると思う。中国製品を米国
 に輸出するのは米国企業だが、日本製品を米国に輸出するのは主に日本企業だ。その意
 味で米中の経済関係は日米とは根本的に違う。

 また、米中関係の人脈では、元大統領補佐官が多い。例えば、キッシンジャーやスコウ
 クロフト、ブレジンスキーがそうだ。彼らは中国との関係強化のために努力したことか
 ら、基本的に中国と友好関係を築いている。彼らは大統領と直接的な付き合いがあり、
 かなりの影響力がある。

 これに対し、今まで日米関係中心という大統領補佐官はいない。同盟国であるにもかか
 わらずだ。もちろん、アーミテージ前国務副長官ら日米関係を重視する人はいる。しか
 し、日米関係を自分のキャリアとして積極的に応援する人は少ない。ロビイストはたく
 さんいるが、大統領補佐官とは米国の意思決定との結び付きが違う。

経済分野で政策対話促進を/米国で減少する日本専門家

 ――日米両政府が先月発表した「共通戦略目標」は中国を強く意識したものになってい
 る。中国の台頭は、日米関係を強める方向に作用するのでは。

 安全保障面では親密になっているが、問題はその周辺課題だ。長期的に経済問題などの
 周辺課題が重なると、同盟自体に影響が出る恐れがある。

 ――日米の経済問題の一つとして、自由貿易協定(FTA)の議論がほとんど進んでい
 ない。

 日米の政治、経済、貿易体制は異なっており、すぐにFTAができることはない。だが、
 話し合いのプロセスによって、「日米バイパス現象」を抑えることが大事だ。

 一九九九年に突然、日米間で鉄鋼問題が浮上した。摩擦の時代ではないといわれていた
 が、盛り上がった。これは二国間の調整メカニズムが薄くなっているからだ。

 ――これまでの自動車摩擦に比べると、最近の日米貿易関係は安定しているように見え
 るが。

 最近の摩擦は性格が違うことをぜひ理解してほしい。九五年の自動車摩擦はある程度予
 想できた問題だったと思う。自動車産業は日米貿易の中で大きな割合を占め、不均衡も
 大きかったからだ。

 しかし、鉄鋼問題が全く異なるのは、不均衡がそれほど大きくないにもかかわらず、急
 にぼっ発したことだ。誰も予想していなかった。つまり、両国が対話をしていない、相
 手のことを意識していないために、問題が急に出てきたのだ。このときは、特に米国が
 日本の傾向を十分見ていなかった。これも「バイパス現象」だ。

 今後も予測できない問題が急に表れる可能性は非常に高い。それを防ぐためにも、貿易
 協定に関する対話が重要だ。

 ――米国と他の国々との政策対話は、日本より進んでいるのか。

 韓国やフランスなど進んでいない国もある。だが、日本は特に深刻だ。なぜかというと、
 非公式対話が少ない。一杯飲みながら話すといった非公式対話は非常に重要だ。

 もう一つの大きな問題は日本の国会法だ。大臣は長く海外に出ることができない。だか
 ら、日本の意見を聞いたり、折衝したりしたくてもできない。別の観点でバイパス現象
 になりやすい。

 谷垣禎一財務相は先月、ロンドンでの先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)に
 出席したが、一番大事な金曜日の夜のミーティングに出られなかったと聞いている。国
 会がもっと長く答弁してほしいと求めたためだ。

 ――米国の大学では、日本研究に対する関心が低下していると聞くが。

 自分の職業を考えて日本研究に進む人が非常に少なくなっている。ただ、語学指導を行
 う外国人を招く「JETプログラム」は大成功だった。このプログラムで日本に駐在し
 た経験の持つ人は、日本研究に進む確率が高い。

 だが、彼らを除くと、日本研究を希望する人が少なすぎる。次の世代で、日本専門家が
 少なくなることが心配だ。大学側がプログラムを十分用意していない。だが、今後、日
 本の経済改革が成功すれば、金融やビジネスなどの分野で日本専門家がますます必要に
 なる。
=プロフィール= 

 ケント・E・カルダー 1948年、米国ユタ州生まれ。ハーバード大学政治学部エドウィ
 ン・O・ライシャワー教授の下で、日本の政治経済を研究し、博士号を取得。プリンス
 トン大学教授、戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長、駐日米大使特別補佐官など
 を経て、現職。著書に「自民党長期政権の研究」「アジア危機の構図」など。
       Kenzo Yamaoka
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ライス国務長官の外交スタイル―パウエル前米国務長官との違いクローズアップ   
   
 迅速な行動と明確なメッセージ
 【ロサンゼルス16日宮城武文】ライス米国務長官は欧州歴訪に続いてアジア歴訪の途に
 就いたが、就任早々、パウエル前国務長官とは違った迅速な行動と明確なメッセージを
 相手側に伝える外交スタイルがクローズアップされている。
 パウエル氏が共和党穏健派とされ、ブッシュ政権内でもラムズフェルド国防長官ら対外
 強行派と確執があったことがよく話題になったが、ライス長官のスタイルは前国務長官
 のそれとは大きく懸け離れている。

 例えば、@エジプトのムバラク大統領が反体制派指導者を牢獄に入れたことで、予定さ
 れていたエジプト訪問をキャンセルAカナダ首相が米国の防衛ミサイル網に入ることを
 拒んだことで、カナダ訪問をキャンセルBレバノンからのシリア軍撤退を求めているレ
 バノン前首相が暗殺されたことで、米国の駐シリア大使を召還し、シリア軍の即時撤退
 を求めた――などの動きを矢継ぎ早に行っていることが挙げられる。

 また、ライス国務長官は、「中東が変化していることを認めようとしない国家は実際に
 変化を阻止しているのであり、非難されるべきだ」と発言するなど、パウエル前長官が
 微妙なニュアンスを含ませる発言を行ってきたのとは違い、明確なメッセージを当事国
 に与えるスタイルだ。北朝鮮に対しては「圧制国家」という言葉を使い、北朝鮮当局か
 ら激しい反発を買っているのも記憶に新しい。

 さらに、インナーサークルと呼ばれる信頼している少数のスタッフと重要外交問題を討
 議し、政策決定を行っているのもパウエル前長官と比べ、際立ったスタイルだ。このイ
 ンナーサークルには、前通商代表であるロバート・ゾーリック副国務長官、北大西洋条
 約機構(NATO)の米大使だったニコラス・バーンズ氏、そして9・11テロ調査委員
 会で功績を上げた、弁護士、外交官、歴史家の肩書を持つフィリップ・ゼリコウ氏がい
 る。

 ライス長官の強みは、ブッシュ大統領の絶大の信頼を得ていることで、外交問題の政策
 論争で閣内に強硬なライバルが存在しないことがある。ラムズフェルド国防長官は、国
 防省の改革に力を入れており、イラク問題などでも大きな異論を唱えることは少なくな
 るとみられている。

 しかし、パウエル前国務長官時代に保守派とは違った見解がブッシュ大統領に提示され
 たのとは違って、ライス新国務長官の下ではホワイトハウスの政策スタッフとあまり違
 いのない見解、提案がブッシュ大統領に提示されるため、同大統領の情報、政策の選択
 肢が極めて狭められることを危惧する専門家もいる。’世界日報)掲載許可
 
      Kenzo Yamaoka
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注視すべき国際条約への対応   
  
 ブッシュ大統領 極めて少ない署名回数
自由を縛る条約に拒否反応
 国際条約批准問題を調査している研究機関によると、ブッシュ大統領は過去二十年間で
 国際条約に署名した回数が最も少ない大統領との分析がされている。同大統領が、AB
 M(弾道弾迎撃ミサイル)条約離脱など一連の国際条約締結に反対する働きを行ってき
 たジョン・ボルトン氏を国連大使に指名したことで、ブッシュ政権の国際条約軽視の傾
 向が強まるとの見方もある。(ロサンゼルス・宮城武文・世界日報)掲載許可

 五百五十に及ぶ国際条約の分析を行った米農業貿易政策研究所の発表によると、ブッシ
 ュ大統領政権一期目には、六つの国際条約の署名、八つの国際条約の批准がされた。こ
 れはクリントン前大統領が二期八年内で三十二の国際条約に署名し、三十の条約を批准
 させたケースや、父親のブッシュ元大統領が政権一期内に十三の国際条約に署名し、十
 の国際条約を批准させたケースに比べると、極端に少ない。

 ブッシュ大統領が模範的大統領として尊敬しているレーガン元大統領は、二期八年の間
 に十四の国際条約に署名、二十の条約を批准させた。

 今年発効し、百四十一カ国が批准した地球温暖化防止のための京都議定書についても、
 国際条約軽視の傾向がみられる。先進国では米国とオーストラリアだけが参加を拒んで
 いる。地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの排気規制を割り当て制で行うのは、非
 現実的で経済発展を阻害する上に、科学的根拠が十分証明されていないというのが、ブ
 ッシュ政権の立場だ。

 ブッシュ政権はまた、国際刑事法廷に関する条約や地雷禁止条約にも批准しないとの意
 向を明らかにしている。

 こうした国際条約への参加を拒否する姿勢を持っているブッシュ政権の意図は、国際条
 約が米国内法に優先する形になり、米政府の自由な行動が制約されるとの懸念があるか
 らだ。米国はイラクへの対応でも見られたように、米国がコントロールできる連合協定
 には関心を示すが、米国の手が縛られる国際協定や条約には拒否反応を示す傾向がある。
 米国の外交政策の基調が一方的であると、国際社会から批判される原因となっている。

 しかし、米国はテロ資金供与防止国際条約や国際たばこ規制条約などにも二の足を踏ん
 でいるが、こうした条約への参加を拒むことは米国の国際的影響力、発言力をそぐこと
 になると、批判する専門家もいる。カリフォルニア大学バークレー校のハリー・シャイ
 バー教授(国際法)は、「批准の意思がないのならば、道徳的方向性に協力を求める資
 格がない」と指摘する。

 歴史的に米国の外交政策は、国際条約に愛憎半ばする立場を取ってきたのも事実。戦前
 の国際連盟の理想を出しておきながら、肝心の米国が参加しなかったために、国際連盟
 は強力な機能を発揮できなかった。イラク戦争でひび割れが生じた米欧関係の修復にブ
 ッシュ政権は力を入れようとしているが、全般的に国際社会の一員として尊敬を集める
 ために、ブッシュ大統領が国際条約への参加をどう運営していくか、今後の注目を要す
 るポイントだ。
     Kenzo Yamaoka
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イラン政策を変えつつある米国−UPI通信   
   
  ブッシュ政権は三月十一日、イランの世界貿易機関(WTO)加盟に反対しないことを
 明らかにするとともに、同国への航空機部品売却も認める用意があると発表した。これ
 はイランを封じ込めてきた米国の従来の政策から大きく転換することを意味する。
 新たなイラン政策を発表するに当たって、ライス米国務長官は、今回の決定は英、仏、
 独三カ国が行っているイランとの交渉を支援するためのものであると言明した。欧州の
 三カ国は、イランに対する経済的見返りや、西側との友好関係を約束する代わりに、イ
 ランが核開発を断念するよう交渉している。

 米国とイランの関係は、一九七九年十一月にテヘランの米国大使館がイラン人学生に占
 拠されて以来、緊張が続いてきた。近年はイランの核兵器開発疑惑についてのメディア
 報道や、核拡散防止を目指す国際機関からの報告が相次ぐ中で、両国の非難合戦が続い
 てきた。イラン側は核疑惑報道を一蹴し、同国の核開発は発電目的であると主張してい
 る。

 一方の米国はイランの説明を退け、石油など天然エネルギー資源が豊富なイランが、発
 電のために原子力を必要とするはずはないと論じてきた。

 昨年十一月十四日、イランは欧州連合(EU)の上記三カ国が提案した妥協案を受け入
 れ、これに基づき「すべてのウラン濃縮・再処理の過程」を即時に停止することになっ
 ている。

 米国の発表は、イランがガス遠心分離器を、パキスタンの悪徳原子力科学者カーン博士
 から購入したことを、パキスタン政府高官が確認した翌日だ。ガス遠心分離器はウラン
 濃縮によって核燃料を製造し、特に兵器レベルの濃縮ウランを作るために必要なものだ。

 ライス長官によれば、「欧州の関係者はイランに対して、民間の原子力計画を核兵器開
 発の隠れみのにしていないという、客観的かつ確実な保証が必要であると明言してきた」
 。そして米国はEU三カ国と、国連を代表してイランと原子力問題で協議を続けてきた
 国際原子力委員会の努力を評価していると語った。

 その一方で、ライス長官は「欧州諸国がイランの人権や民主主義の問題、テロ支援とい
 った過去に対する懸念を共有している」と牽制した。さらに米国と同盟諸国が、イスラ
 エル・パレスチナ紛争の終結に向けた「歴史的な機会」(同長官)に向けて努力してお
 り、「イランは中東和平を阻害するために暴力を行使する諸勢力への支援を中止すべき
 だ」とクギを刺した。(米UPI通信)
     Kenzo Yamaoka
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『米大統領支える「設計士」』ほか <三浦祐一郎>   
   
 米大統領支える「設計士」
2期目の主要政策担当/次席補佐官就任のローブ氏
 「圧政からの解放」を掲げて船出した第二期ブッシュ政権は、就任式から一般教書演説
 までの間に行われたイラクでの選挙の成功によって、大きな浮揚力を得た。

 極めて厳しい選挙を見事に戦い抜いたブッシュ大統領は、選挙の勝利で得た政治的資産
 を本来目指していたさまざまな政策の遂行に注ぎ込もうとしているが、いかに圧倒的な
 支持を得て再選された場合でも、二期目の半ば以降は、国民の関心が次の大統領選挙に
 向かうために、いわゆる「レームダック」と化してしまう。

 ところが、ブッシュ大統領は予想外の大差で再選されたという自信と、上下両院を共和
 党が押さえたという政治情勢を背景に、極めて野心的な内外の施策を実行に移そうとし
 ている。ブッシュ氏が四年足らずという限られた期間に、自らの政策を実現することに
 いかに本気で取り組もうとしているかについて、「ニューズウィーク」2月21日号は、
 最側近のカール・ローブ上級顧問の大統領次席補佐官就任という出来事を通じて迫って
 いる。

 この記事の「キング・カール」という見出しが、ローブ氏の第二期ブッシュ政権におけ
 る同氏の立場を雄弁に物語っているが、ブッシュ大統領は昨年秋の大統領選挙直後、再
 選に至る青写真を描き、それを実現したローブ氏を「アーキテクト(建築家、設計士)」
 と呼んでその功績をたたえた。

 ブッシュ氏は政権誕生とその再選に決定的な役割を果たしたローブ氏を、政権中枢の政
 策遂行の責任者ともいうべき位置に据え、内政面では社会保障制度および税制改革と、
 外交・安全保障問題では本土防衛やイラン・北朝鮮問題に取り組ませようとしていると
 いう。
 テキサスからワシントンまで、まさに「政治のプロ」としての評価を高めてきたローブ
 氏だが、具体的な政策、ことに外交政策に選挙戦の時のような手腕を発揮できるのかに
 は疑問を呈する向きも多い。

 しかし、「ニューズウィーク」誌は、ホワイトハウスが今回のローブ氏の人事について、
 「たいしたことではない」と述べているにもかかわらず、「ローブ氏の今回の使命は歴
 史におけるブッシュ大統領の位置を決定することを助けることになるかもしれない」と
 評価しているが、今回の人事は、ブッシュ大統領の評価を高める可能性だけでなく、今
 後数十年にわたる共和党長期政権を目指すローブ氏の野心の将来をも左右することにな
 るようだ。
「民主主義論」
「圧政からの解放」の哲学 

 カール・ローブ上級顧問を大統領次席補佐官に据えたのが、ブッシュ大統領の二期目の
 政権構想の人事上の要であるとすれば、思想面で決定的な役割を果たしそうなのが『民
 主主義論・圧政と恐怖を克服する自由の力』の著者で、旧ソ連の全体主義政権下で反体
 制活動家として辛酸をなめたナタン・シャランスキー氏との出会いではなかろうか。

 「エコノミスト」2月5日号は、ブッシュ大統領にとってシャランスキー氏とその著作
 との出会いの持つ意味について考察した論文を掲載している。

 ブッシュ氏といえば、哲学的思考や深遠な思想からは対極にあり、行動の指針といえば
 ローラ夫人に導かれたキリスト教右派の教説ぐらいとしか考えられていなかったが、同
 氏は、二期目の就任演説や一般教書演説で「自由」の尊さを訴え、「圧政からの解放」
 を軸にした「ブッシュ・ドクトリン」と呼ぶべき外交政策を高らかにうたい上げた。

 これは、反米テロリストによる本土攻撃という未曽有の危機に対して守勢に立たされ、
 テロリストの掃討と本土防衛のための戦いの先頭に立つことを余儀なくされたブッシュ
 大統領が、「自由」の拡大と「自由」を抑圧する「圧政」の打破という目標を掲げるこ
 とで反転攻勢に出た宣言とみることができる。これは、規模は少し異なるとはいえ、歴
 史や世界を善と悪の間の戦いと見て、当時のソ連を「悪の帝国」と呼んで、世界的各地
 の自由のための戦いを支援したレーガン大統領の外交政策と相通じるものがある。

 「エコノミスト」誌によれば、ブッシュ大統領は再選が決まってから九日後にシャラン
 スキー氏をホワイトハウスに招き、一時間余りにわたって同氏の著作について語り合っ
 たというが、このエピソードも二十年余り前、ソ連からの脱出を図る潜水艦艦長の戦い
 を描いた「レッドオクトーバーを追え」の著者、トム・クランシー氏をホワイトハウス
 に招いたレーガン大統領を思い出させる。

 世界の運命を左右しかねない超大国の外交政策の根幹の理念が、同時代人の哲学に依拠
 しているというのは、いささか底の浅さを感じないわけにはいかないが、「エコノミス
 ト」誌はブッシュ大統領が「自由」や「民主主義」をあまりに理想化しすぎることが問
 題というよりも、「自由」や「民主主義」という思想や理念について、借り物ではない
 自分の血肉の思想としていないことが問題だと指摘している。

 非人間的な体制下で、自分の考えを鍛えたシャランスキー氏の思想は、命を刻むように
 して構築されたものに違いないが、ブッシュ大統領がその思想を引用することなく自分
 の言葉で国民や世界の人々を説得することができれば、自由を拡大し圧政からの解放を
 目指す同大統領の外交政策は多くの人の支持を獲得し成功を収めることになろう。
  (世界日報)掲載許可

苦闘するウォルマート
商慣習や消費性向が壁 

 産業再生機構の仲介で丸紅グループがパートナーに決まったことで、わが国の不良債権
 問題の象徴とみられてきた「ダイエー問題」も解決に向けて一歩を踏み出すことになっ
 た。

 全国五十店を超える不採算店舗の閉店と、総合スーパーから食品主体への業態転換など、
 ダイエーが昔日の勢いを取り戻すまでには、これからも相当の年数がかかることが予想
 されている。

 米経済専門週刊誌「ビジネス・ウィーク」2月28日号は、米国の巨大スーパーマーケ
 ット・チェーン、「ウォルマート」傘下に入ってダイエーに先駆けて再建の道を歩んで
 いる西友の苦闘について報じている。

 閉鎖的な商慣行や日本独特の消費性向から、長い間、わが国の市場は外国の商業資本に
 とって突き破ることのできない、ブラックホールのような市場だといわれてきた。

 事実、鳴り物入りで日本市場に参入した小売業世界第二位のフランスのカルフールが、
 日本の消費者の心をつかむことに失敗し、撤退を前提に全国八カ所の大規模店舗の売却
 先を求めていると報じられている。

 西友はウォルマートの傘下に入り、そのビジネスモデルである「エブリディ・ロウ・プ
 ライス(EDLP)」を導入することで復活を図ろうとしているのだが、三年を経てな
 お業績は改善せず、二〇〇四年度は予想の三倍の一億千七百万j(約百二十二億円)の
 赤字を記録し、売り上げは前年比3・7%減の一兆二百九十億円に落ち込み、この傾向
 はさらに今年から来年にかけても続くと予想されている。

 ウォルマートの誇るEDLPは、独自のコンピューターシステムを導入することで、消
 費者が何を購入し、店舗の棚に何がどれほど残っているかを正確に把握しながら、店長
 が的確な仕入れができるようにし、それによって店舗の業績を上げることを目的として
 いるが、「安価なものは安っぽい」と考える日本の消費者の心をEDLPはとらえきれ
 ておらず、高額のシステム導入に見合った結果が出ていないことで、西友の苦闘はつづ
 いている。
 しかし、西友の三万六千人の従業員にとってウォルマートは最後のそして最高の希望で
 あることを考えると、世界第二位の市場における西友の再生は、西友だけでなくウォル
 マートの未来をも左右することになると、「ビジネス・ウィーク」は分析している。
     三浦 祐一郎  世界日報 掲載許可
     Kenzo Yamaoka

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