1925.山岡コラム



奢れる者久しからず!   
   
 酒井さんからのメールを転送します。
----------ここから原文----------
連日のニュース:西武とライブドア。そして今日は武富士。
ついに西武もオジャン!!
西武の流通部門:デパート・スーパー(西武百貨店・西友)も既に堤家から完
全脱落。今回は鉄道・不動産・レジャーなどの分野の堤家からの脱落。

これ総て、初代が築いたものは、二代目も優秀だからと見込んで相続させるの
は良いが、これがほぼ100%の確率で凡人とくる。
これが天才的初代の権力をそっくり引き継ぎ、なおかつ初代の伝説的優秀さを
も賦課されるのが一般的。よって二代目(三代目も同じ)がよほど、大番頭任
せにして凡人を決め込み、但し「責任だけは引き取るぞ」という体制にしてお
かないと、大体行きっつく。
武富士の2代目も、1,600億円の申告漏れで、1,300億円の贈与税が
課税されたというニュースが今日入ってきた。これは初代がコケ、二代目もコ
ケ!でもう一族会社からほぼ脱落と見て良さそう。

はて初代32歳のライブドアや如何に!
近々裁判所から仮決定が出ると思うが、それでおおよそは見当が付くが、万一
ライブドアに軍配が上がったにしても、最早まともな企業・経営者は相手にし
ないであろう。その前にIT専門のライブドアの弁護士が、訴訟代理人から辞
任したと言う話し。イザ戦と言う時に指揮官に離脱されるような部隊は、どう
も感心しないし、外野席から見れば「イチ下りた!」という気分ではありま
す。

栄枯盛衰! だからこそ世の中は面白い。
落ちぶれる者があるから、成功する者も出る。先発組が永遠に栄華を誇り続け
られるような世の中は、成功者を生み出せない。
よって事と次第では、「我が子孫」も、運が良ければ巨大な
事業の成功者が出るかも知れない?
それではまた。
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 酒 井 信 和    H17年3月4日   
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     Kenzo Yamaoka
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神様は怒らない?   
   
 酒井さんからのメールを転送します。
----------ここから原文----------
今日から3月。この3月というのは総て日本においては区切りの月!?
私にとっても然り。66歳とも今月の終わりを以てお別れ。
そんなことで出だしの今日1日、鎌倉の神社廻りへ出かけた。
その中の一つで、手広(藤沢に近い)にある「稲荷社」と言うところへ行っ
た。
地図(昭文社版)では「稲荷社」とあり、案内書にも同様「稲荷社」とある。
ところが現地へ行って、町内案内図を見ると「十三番神社」とある。
どう見ても地図や案内書にあるものではなさそう。
しかしところ番地から、この辺に間違いなさそう。
そこで100m位離れたところにある八百屋さんに聞くと、神社の名前は知ら
ないが、鳥居があるところがあるので、多分それだろうと。
そんなことで同じような所を行ったり来たりしてようやく鳥居のある神社にた
どり着いた。とよく見ると「三十番神社」と正面の額に書いてある。
案内書と地図を頼りにして行っては見ても、現地の名前が違う。これで神様も
罰をあてられないほど弱り、落ちぶれてしまったのだろうか?と可成りがっか
り。
まあ名前は一致しないけれども、これで鎌倉の神社の一つは行ったことにしよ
うと、カメラに納めておいた次第ではあります。
神様よ!汝の名前「稲荷社」?「十三番神社」?「三十番神社」?の何れなり
や!!
とにかく氏子にも責任ある人がいないらしい。

日本は神の国とは言ってみても、神様の住まい=神殿・ヤシロのみすぼらしさ
は、日本人の心の荒廃を象徴しているようで寂しい限りではあります。
それではまた。
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 酒 井 信 和    H17年3月1日   
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     Kenzo Yamaoka
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ダボス会議   
   
  重森さんからのメールを転送します。
----------ここから原文----------
今年もダボス会議が1月26日から30日までスイスのダボスで開催された。

2001年には当時の森首相はじめ石原慎太郎、

ソフトバンクの孫社長、楽天の三木谷社長等が

参加したこともあって日本のマスコミにも会議

の模様がかなり報道されていたことを思い出すが、

昨今は日本からの出席者が少ないという報道を読んだ。

あらためてこの会議の歴史を調べてみた。

1971年スイス人実業家クラウス・シュバーブの
提唱の下、以前は結核療養所として高年齢に
人気のあった静かな寒村であったダボスに、
世界の政界・財界・学界の名士が一同に会し、
グローバルな見地から意見を交換する世界経済フォーラムを開催した。

このダボス会議は会員制で、その年の世界情勢を
左右する高級エリート会議といわれ、「サミット・
オブ・サミット」又は「影のサミット」と呼ばれるようになった。

今年は90カ国以上、約2,500人が出席、ブレア
英首相、シラク仏首相、シュレーダー独首相を
はじめ、ハリウッドからシャロン・ストーン、
リチャード・ギア、アンジェリーナ・ジョリー、
ロック界からU2のボノなども出席し、特にシャロン・ストーンはアフリカ  
          より貧困をなくそうと言って1万ドルの寄付を申し出、
賛同者を募ったら5〜10分で100万ドル集った
と話題を集めたそうである。

                    以上  重森一郎
     Kenzo Yamaoka
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「不自由な国」に転落したロシア   
   
 米の人権団体が昨年厳しい評価/独自の民主化説くプーチン大統領
長岡大学教授 中澤 孝之
米露首脳会談で民主主義論争 (世界日報)掲載許可

 ブラチスラバでの米露首脳会談の最大の焦点は「ロシアの民主化」の問題であった。同
 会談の数日前、訪問先のブリュッセルでブッシュ大統領は「ロシア政府は民主主義と法
 の支配の決意を新たにしなければならない」とロシアの民主化の後退に懸念を表明した。
 一方のプーチン大統領は、スロバキアのテレビ・インタビューで「民主主義はロシアの
 現実や伝統、歴史に沿うように適用されるべきである」と民主化後退論に反論し、「民
 主主義というテーマを外交目的達成の手段に使うことには反対だ。『発達した民主主義
 国』にも問題はある」と米国を牽制した。

 会談後の会見で「ロシアの民主主義」問題に質問が集中したのは予想された通りだった。
 ブッシュ大統領は「プーチン大統領と建設的かつ友好的に、懸念を共有することができ
 た。二十一世紀の強国は強い民主主義によって築かれる」と強調するとともに、民主主
 義に欠かせない要件として、法の支配、少数者の保護、報道の自由、活発な与党の存在
 の四点を挙げた。

 これに対して、プーチン大統領は「ロシアは十四年前に独力で外部からのいかなる圧力
 も受けずに民主主義を選んだ。それは自らの利益によって、自らのために、自らの国民
 のために行われた。この選択は決定的なもので、過去への後戻りはありえない。国内の
 社会情勢から見て、全体主義を選ぶことは不可能だ。私自身、国内の民主化問題には最
 大限の配慮をしている」と弁明。そのうえで、「ロシアにおける民主主義の履行と強化
 は、民主主義の概念を外れないと信じている。米国とロシアには(民主主義の概念をめ
 ぐって)大きな隔たりがあり、民主化の『多い、少ない』を議論することは正しくない。
 ましてや民主主義の原理原則の実行が国の崩壊や貧困を招くものであってはならない」
 とロシア独自の価値観をもとに持論を展開した。米国式の民主主義を鵜呑みにするつも
 りはないということである。

「圧政国家」イランに原発協力

 米国がプーチン政権の民主化後退を指摘する背景には、長年のチェチェンでの人権侵害、
 一昨年夏以来の大手石油会社ユコスおよびその社長だったロシア最富豪オリガルヒ(政
 商)ホドルコフスキーに対する弾圧、昨年秋の「ベスラン学校占拠事件」の後の地方統
 治の中央集権的な動き、さらには、ウクライナ大統領選挙をめぐるロシアの反ユーシェ
 ンコ姿勢などがある。周知のように、ライス新国務長官はイランを圧政の拠点六カ国に
 含めたが、米露首脳会談直前、そのイランの最高安全委員会ロウハニ事務局長とプーチ
 ン大統領はクレムリンで会談し、イランの核エネルギー開発への協力続行を伝えた。両
 国はイラン南部プシェールでの原子力発電所二号炉の建設で合意に達している。また、
 プーチン大統領はシリアへの地対空ミサイルなど武器輸出の継続をイスラエルに伝達し
 た。米国およびその同盟国イスラエルは危険な国に対するこうしたロシアの独自の政策
 に苛立ちを隠していない。

 今後の米露関係の行方を注目したいが、ロシアの民主化に関する興味ある最新資料を紹
 介したい。フリーダムハウス(FH)という有名な米国の人権関連非営利団体がある。
 FHは一九七二年以来各国の民主化状況を指標で表している。

 「〇五年世界の自由」と題する報告書の各国別解説と指標からロシアの部分を拾い上げ
 てみる。この報告書は〇三年十二月一日から〇四年十一月三十日までの調査結果を基に
 したものだ。指標は政治的権利(Political Rights=PR)と市民的自由(Civil 
 Liberty=CL)に分けられ、前者は政党結成の権利、公正で自由な選挙を通じて大統
 領や首相などを選出できる権利を、後者は宗教、人種、経済状態、言語による差別がな
 く、言論、良心、集会、結社などの自由が保障されていることを意味する。いずれも、
 その水準を最高の1から最低の7までのスケールで表示している。

 昨年十二月二十日のFHの前記報告書に関するプレス・リリーズによると、ロシアは
 「一部自由の国」から「不自由な国」に転落した唯一の独立国家共同体(CIS)の国
 である。ロシアのCLは5のままだが、PR指標は5から6に下がった。

政権の権威主義的傾向を指摘

 その理由として、FH幹部はプーチン政権下における「政治的権威への集中」「メディ
 アへの攻撃と脅迫」および「司法システムの政治化」の三点を挙げ、こうした動きはロ
 シアの権威主義傾向を強めていると指摘した。

 また、〇三年末のロシア下院選挙と〇四年三月のロシア大統領選挙での不正疑惑も民主
 化評価を下げる要因になったという。ロシアはエリツィン時代の九七年にはPRが3、
 CLは4だった。ついでながら、CIS十二カ国に「自由な国」は一つもない。「一部
 自由の国」はアルメニア、グルジア、モルドバ、ウクライナの四カ国だけで、ロシアも
 含めて残り八カ国は「不自由な国」に仕分けされている。

 ちなみに、「不自由な国」は世界に四十九カ国(全体の26%)あるが、PRもCLも
 7という最も民主化の遅れている「完全に不自由な国」はミャンマー(FHは今なおビ
 ルマと表記)、キューバ、リビア、北朝鮮、サウジアラビア、スーダン、シリアおよび
 CIS所属のトルクメニスタンの八カ国で、チェチェンとチベットも「完全に不自由な
 地域」だ。「自由な国」は八十九カ国。米国や英国はPR、LCともに1で、日本は
 「自由な国」に入っているが、どういうわけかPRが1で、CLは2となっている。

 いずれにせよ、大統領以下ブッシュ政権担当者がこのFHのロシアの民主化指標を参考
 にしているだろうことは想像に難くない。

     Kenzo Yamaoka
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アメリカが抱える課題   
   
  中南米の専門家らでつくる「米州の対話」は二十四日、報告書「アメリカ二〇〇五年の
 課題」を発表、この地域が直面している政治、経済、安全の危機に米国はもっと関心を
 払うべきだ、と強く主張した。
 報告は、「中南米での米国の政策は、米国にとっても、中南米、カリブ海諸国にとって
 も、十分に利益になっていない」と指摘、この地域の民主国家の多くは「脆弱(ぜいじ
 ゃく)」であり、それは貧困、麻薬取引、汚職のためだとしている。報告は、中南米諸
 国の元大統領、クリントン政権、第一次ブッシュ政権の高官らから成る専門委員会がま
 とめた。

 報告は、ブッシュ政権の移民改革・外国人労働者プログラムを評価した上で、自由貿易
 協定を承認するよう議会に求め、政府には犯罪の撲滅と民主主義の強化のための支援を
 呼び掛けた。同時に、共産主義の島国キューバへの制裁を解除し、政治改革へ圧力を掛
 け続けることを求めた。

 「中南米で米国の安全が危機にさらされている。一部の国々、特にハイチ、ベネズエラ、
 コロンビアが依然、地域の不安定化の根源となっている」

 「米国で消費される違法麻薬の大部分は、この地域からのものだ。中南米の国境紛争が
 米州の安全を脅かしている。米国も中南米諸国も、これらの問題を単独では解決するこ
 とはできない」

 報告は、地域の最も差し迫った問題は犯罪と貧困と主張、「犯罪は、ほとんどの中南米
 諸国にとっては悪夢以外の何ものでもない。これらの問題が世界の足を引っ張っている。
 自殺率は世界平均の二倍だ。中米では、若いギャングが都市を不安に陥れている」と強
 調した。

 さらに報告は、麻薬の密輸は、テロの資金源ともなり、地域の安全保障問題を複雑にし
 ている、と指摘。「ハイチは事実上破綻(はたん)国家であり、暴力と大量の移民を米
 国や近隣諸国にもたらす脅威となっている」とした上で、ベネズエラのチャベス左翼政
 権を、「民主的手続きをあまり尊重していない」と非難した。

 米国は、自由貿易協定と、合法的移民を促す移民政策で、経済的発展を促進することに
 より、問題の解決に貢献できる、と提案した。

 米国の合法・不法移民の母国への仕送りは、年間三百億j以上に上り、送金は多くの中
 南米諸国の重要な収入源となっている。
(コラム「大使館通り」から)世界日報 掲載許可

     Kenzo Yamaoka
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<チャイナ・ウォッチング>「開発区之森+中国解体新書」提供
 ●掲載許可済みです
                ★中国をめぐる米欧対立★

イラク戦争による対立が米欧間に突き刺した楔(くさび)を取り去るためブッ
シュ大統領は先週、欧州各国を歴訪した。

「傲慢で友好国の意見に耳を貸さないならず者(カウボーイ)」というレッテル
を貼られたブッシュ大統領、今回の訪問は前回のライス国務長官による欧州「癒
しの歴訪」に続くもので、自ら「耳を傾けるツアー」と称したほど、欧州との
関係を改善したいとの強い意志が働いたものとなった。

しかしながら、その関係改善に向けた強い意志の前に立ちはだかる一つのやっ
かいな問題がある。それは、今年6月に予定されている欧州連合(EU)によ
る対中国武器禁輸措置の撤廃をめぐる対立だ。以前から指摘されていた問題と
はいえ、イラク問題における傷の癒しが進行するなか、米欧間に残る大きな懸
案としてなおさらクローズアップされることになった。

今回のメルマガではこの問題に関する米欧のスタンスを見ることで、それぞれ
の対中国観や思惑を探ってみたいと思う。

● 中国観の違い

そもそもこの武器禁輸措置が出された背景には1989年の天安門事件がある。
この事件を中国政府による「民主化運動の弾圧」と見る米欧政府が、中国を罰
するためにとった象徴的な意味合いの強い措置だ。

あれから15年あまりが経ち、米欧間には中国の人権状況を見る目に違いが出
てきている。その見方の違いが、今回の武器輸出解禁をめぐる両者間の対立の
一つの原因になっているといえよう。

「反体制活動家の逮捕など、そもそも禁輸措置の原因となった政府による人権
抑圧は依然として続いている」と見るアメリカ政府。それに対して欧州側は、
この(武器禁輸)問題が欧中関係を次の段階に高めるうえでの障害とみなし、
早期の撤廃を望んでいる。

さらに、もう少し深いレベルで米欧間の対立の原因となっているのが、中国を
どう見るかという中国観の違いだ。ブッシュ大統領の欧州訪問を伝えるニュー
ヨーク・タイムズの記事によると、そこには「深い哲学的な乖離」があるとい
う。(*1)

「交渉や約束事によって中国と積極的に関与したい」とする欧州に対して、「将
来の強敵(となる可能性のある国)」としてアメリカは強硬な姿勢を採りつつあ
る。おそらくこうした「哲学的な乖離」が埋まる可能性は、少なくとも短期的
にはほとんどないと見ていいだろう。どのような問題であれ、物事を見る目と
いうのは短期的に出来上がったものではなく、それを変えるということは簡単
にできないからだ。

なお、この点については、以前のメルマガで紹介した「選択的認識」の問題を
参考にしていただきたい。(*2)

● 「将来の大国」を牽制し始めたアメリカ

それではここで前掲のNYタイムズの記事を参考にしながら、米欧間の対立に
ついて、さらに詳しく見てみることにしよう。

今回の欧州による中国向け武器禁輸措置の撤廃にアメリカが「深い懸念」を表
明している最大の理由は、欧州の進んだ武器を中国が手にすることで、中国と
台湾の間の軍事バランスが崩れるとアメリカ側が見ているからだ。

こうした見方はブッシュ大統領や政権党の共和党だけでなく、民主党にも共通
したものだ。同記事によると、今月初め下院では欧州の決定を非難する決議案
が411対3票の大差で可決されている。さらには上院外交委員会のリチャー
ド・ルーガー委員長はフィナンシャル・タイムズとのインタビューで、欧州側
が先端技術の移転を防ぐための強い保証を提示しない場合、アメリカから欧州
への先端軍事技術の売却に制限を設けることを支持すると語っている。

このような国内の強い反発をバックに、今回の欧州訪問でもブッシュ大統領は
アメリカ側の懸念をはっきりと表明、特に最新のレーダーおよび通信システム
が中国に流れることを懸念すると欧州各国の指導者に伝えている。また、中国
に流れた先端軍事技術がアメリカの敵国や敵対する勢力に流れることも懸念し
ている。

こうしたアメリカ側の強い懸念に対して欧州側では、アメリカにとって敏感な
先端技術が中国の手に渡らないように新しい「行動規範」を設けると約束して
いる。また、そのなかで問題になる可能性のある武器を中国に売却する場合は、
アメリカ側に通知し、アメリカが武器の流れをきちんとモニターできるように
するとも表明している。

しかしながら、中国を「将来の仮想敵国」と意識し始めているアメリカは、い
まのところ欧州側のそうした約束を「現実世界で有効に機能する行動規範なの
かどうか提示された後に内容を吟味する」として、強硬な姿勢を崩していない。

ただし、欧州側が売却する武器が戦闘機やミサイル、戦車の場合、アメリカは
それを妨げるものではないと伝えており、中国の戦闘能力を「次世代」に高め
るうえで必要な先端技術だけを問題にしていると、同記事のなかでワシントン
にある戦略国際問題研究所の担当者は述べている。

● 中国市場にかける欧州

私自身は今回の欧州の決定を何となく「胡散臭い」というか、少なくとも気持
ちよく受け取ることができずにいる。東アジアの住人から見れば、無責任とも
思えるほどの単純さがそこにあるように思えるからだ。また、あまりにもビジ
ネスの臭いが強いと感じられるからだ。

実際、今回の決定には対中ビジネスが大きく関係していることが、同じくNY
タイムズの別の記事を読むことでよくわかる。(*3)つまり、巨大な市場として
の存在感が増す一方の中国市場において、一歩先んじたいと願う欧州各国(特
に仏・独)の思惑が強く作用しているのだ。(ちなみにイラク戦争ではアメリカ
とともに戦ったイギリスも今回は仏・独と歩調を合わせている。)

つい先日もイギリスからブレア首相の後継者と目されるブラウン蔵相が中国を
訪れ、盛んに英中間のビジネス交流の促進を謳いあげるとともに、中国の発展
を賞賛する発言を繰り返している。イギリスだけではない。ドイツのシュレー
ダー首相やフランスのシラク大統領も何度も中国を訪れては、さながらセール
スマンのように自国製品や技術の売り込みに躍起となっている。(ちなみに19
62年に当時の池田首相がフランスのドゴール大統領を訪れ、手土産にトラン
ジスタラジオを進呈したところ「トランジスタのセールスマン」と揶揄された
話は有名だ。あれから40年以上が経ち、いまや各国首脳がセールスマンにな
ったといえるのかもしれない。ちょっと悲しい気がするのは私だけだろうか。)

別に商売自体が悪いとはいわないが、「商売のためには何でもやる」的な言動は
どうもいただけない。特に、東アジアの地政学的状況に影響を与えかねない敏
感な領域においては、もう少し慎重な行動をとってほしいと思う。今回の決定
からは、どうもそのような慎重さが欠けているような気がしてならない。

この同じ記事のなかでブリュッセルにある欧州アジア研究所の所長は次のよう
に述べている。

「欧州は車や香水を中国で売りたいと考えており、武器禁輸措置の撤廃がもた
らす(武器売却による)どんな利益よりも、こうした非軍事的な目標のほうが、
今回の決定においてはずっと重要なのだ」

同所長はさらに、今回の決定が欧州の中国におけるビジネスの見通しを改善す
ると同時に、中国を「戦略的なパートナー」と考える欧州が両者間の関係を深
めるうえでの象徴になるだろうと指摘する。

ただし、肝心の対中武器輸出については、欧州の軍事メーカーの間に躊躇が見
られると同記事は伝えている。つまり、彼らにとって巨大な顧客であるアメリ
カを敵に回してまで、中国に武器を売却するメリットはないというのだ。

記事のなかでイギリスの軍事メーカー、BAEシステムズの広報担当者は、「わ
が社の成長にとって大事なのはアメリカ。もしも対中ビジネスが対米ビジネス
の支障になるとなれば、われわれはアメリカを選ぶ」と述べている。

つまり、欧州の軍事メーカーにとって、大口顧客であるアメリカのほうがはる
かに重要なビジネスパートナーということだ。

こうした「矛盾」を抱えながらも、欧州は対中武器禁輸措置を撤廃するという
のか。私は最近のアメリカの対中政策を見ていて、多少以上の危うさとある種
の納得を感じているが(この「納得」は、「アメリカが敵なしには存在できない」
という理解からきている)、こと今回の問題についてはアメリカを支持する。

以下でその理由を説明したい。

● 余計な言動は慎むべし

私は、武器輸出の問題が人権問題といまだにリンクしているという点について
は、もはや時代遅れだと思う。その観点からすれば、欧州が次の段階に進みた
いという気持ちはわかる。何らかの形でデリンクする(関連性をはずす)必要
はあるだろう。

しかし、欧州がほとんど気にかけていないと思われる東アジアの軍事バランス
という観点からは、承服することのできない決定だ。いや、私は今回の決定で
中国側に軍事的なバランスが急に大きく傾くと思っているのではない。実際の
ところ、現状のまま中国がたとえ台湾を「奪取」しようとしても、それができ
るだけの軍事力を中国が持っているとは思わない。

専門家のなかには「現在の中国の『軍拡』はあくまでも台湾の軍事力にキャッ
チアップするためのもので、それ以上のものではない」と指摘する人がおり、
私もそう思う。つまり、そうした実質的な影響を懸念するという意味からでは
なく、あくまでもシンボル的な意味から私は今回の欧州の決定に反対している
のだ。

実際、中台間にはこれまでの経緯からして「一触即発」とまではいかなくても、
ぴりぴりした雰囲気が現実に存在するのであって、私はそれに少しでも油を注
ぐような行為は、どの国であれ、してほしくないと思う。すべきでないと思う。

その意味で、日米安全保障協議委員会が先日、「台湾の平和的解決」を日米共通
の「戦略目標」の一つにしてしまったことは、非常に残念だ。「大陸と台湾間の
直行便が就航するなどして関係改善の芽が出てきたときにこのような『挑発的
な行為』が日米から出されたのは遺憾だ」とする中国側の言い分は、彼らの立
場からすれば、まことにもっともだと思う。もしも、日米が本気で中台問題の
平和的解決を望むのであれば、ただでさえナーバスな関係に刺激を与えるよう
な行為をとるべきではない。

台湾には友人も多く、彼らの不安定な立場はまことに気の毒なことだと私も思
う。しかしながら、結論的には現状維持しかオプションはないような気がする。
中国大陸における将来的な変化を期待しながら、ベターな方向にものごとが進
むことを祈るしかないと現状では思う。

はたして、いたずらに対立を煽ってだれが得をするというのか?台湾の一部の
政治家および大陸に反感を持つ住民のなかには喝采を叫ぶものもいるのかもし
れないが、「独立宣言後」のことを真剣に考えて行動しているのか、私にはきわ
めて無責任な行為としか思えない。気持ちはわかるが、とても冷静な大人のす
べきことだとは思えない。

繰り返すが、きわめて敏感な「両岸関係」を刺激するような言動はどの国であ
れ、慎むべきだ。あくまでこれは中国の「国内問題」というコンセンサスを守
り、中台間でうまく処理されることを祈るべきだと思う。もちろん、それが平
和的に解決されるように側面から支援することを否定するものではない。しか
し、その場合も相手の立場に立った、慎重な支援が必要なのは当然だろう。

● 開けてはならない「パンドラの箱」

とにかく、今回の欧州の決定にしても、しばらく前の台湾をめぐる日米の発表
にしても、私は各国がもう少し慎重に動いてほしいと思う。以前のメルマガで
紹介した「戦争の霧」というドキュメンタリーでアメリカの元国防長官、ロバ
ート・マクナマラが教訓の一つとして挙げていた「相手の立場に立って考える」
という行為がここには欠けていると思う。(*2)

このドキュメンタリーのなかでマクナマラは、「キューバ危機は相手の立場に立
つことができたためにアメリカは勝利できた。しかし、ベトナム戦争ではこれ
ができずに失敗した」と述べている。いつの時代であれ、この教訓は活かされ
なければならない。日米はもっと中国の立場を理解し、欧州はもっと台湾や日
本の立場を理解すべきだと思う。

はたして、中国は本気で台湾と戦争をしてまでこの島を奪取したいと思ってい
るのか?私は決してそうは思わない。それは、単に現在の軍事バランスが依然
として台湾側に傾いているという軍事的な観点からだけではないだろう。

簡単にいうと、戦争で得するものがほとんどないからだ。当然、経済発展には
支障が生じて、国内に社会的な混乱が生じないとも限らない。危機に際して国
全体がまとまるという可能性もあろうが、これまで抑えられていた力が戦争を
きっかけにして爆発する可能性も否定できないと思う。それには各地の独立勢
力や虐げられてきた農民、さらには失業問題に悩む元国営企業労働者などが含
まれる。

いわば中国にとっては、これまで何とか抑えつけてきた「パンドラの箱」を開
けてしまう可能性があるわけだ。そうなれば共産党の基盤は多いに揺らぐこと
になろう。そんなことをしてまで戦争をしたいと思っている指導者はおそらく
トップにはいないと思われる。もちろん、一部の軍人や強硬派政治家にはそう
いう人がいるかもしれないが、トップの指導者にはそのような短絡的で危険な
考え方はないと思うし、そう信じる。

● 日本の長期的な国益

いずれにせよ、この武器禁輸措置撤廃の問題については、私もアメリカの立場
を支持する。しかし、これも前述したように、アメリカ、そして日本にも物申
さないわけにはいかない。EUの武器輸出解禁を批判する一方で、中国側を刺
激するような政策を発表するのは「偽善」に見える。

前述のごとく中国を将来の敵と本気でみなし始めたアメリカからすると、こう
した「偽善」は、国益を追求するうえで当然のことなのだろう。もはや「敵な
しでは生きていけない」国・アメリカにとって、反テロ、イラクといったフラ
イ級・ミドル級のあとには中国というヘビー級がくるだろうことは以前から予
想してきたことだ。

問題は、そのアメリカの戦略に日本が「のほほん」と相乗りしていいのかとい
うことだ。少なくともこれから30年後、50年後の世界を見据えた場合に、
中国を敵とするアメリカの戦略の片棒を担ぐような役割を自ら進んで演じてい
いのだろうか?それは日本の長期的な国益にかなったことなのだろうか?私は
心配でならない。

当然のことながら、アメリカは所詮アジアの一国ではない。しかし、日本は幸
か不幸か、アジアから離れることはできない。その離れられないアジアにおい
て巨大な隣国とあえて敵対的な関係になるような言動を続けていていいのだろ
うか?私にはもっとましな国益の追求の仕方、そしてもっとましなアジアの一
員としての生き方があるような気がする。

私の中国に対するスタンスはいまも昔も変わらない。「是々非々で臨む」という
ものだ。そのスタンスに照らし合わせてみて、少なくとも今回の欧州の決定に
ついては「NO」を表明する一方、中台間の緊張を煽りかねないアメリカの対
中敵対政策に相乗りすることにも明確な「NO」を表明したい。

     Kenzo Yamaoka

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