1591.イラクでの日本の対応



米国がイラクの混乱を引き起こしているように感じる。それに日本
が引き込まれている。そして日本人人質。その検討。  Fより

米国国務長官パウエルが主権委譲の権限を縮小して、米軍が今後も
イラク統治に当たる方向で検討していると。ラムズフェルド米国防
長官は増派も検討しているようだ。10万人から13万人規模にす
ると明言している。

米国議会の方も、それに対応する法案提出の動きが出ている。
シーア派の強硬派サドル師の雑誌の発禁で、今回の紛争に突入して
、シーア派民兵が反米に立ち上がって、スンニ派だけではなく、シ
ーア派も反米闘争に立ち上がっている。イラク人対米国の構図が出
来ていている。しかし、この構図は米国が意図していることのよう
に感じる。このまま主権を委譲し選挙をするとシーア派が権力を取
り、米国はイラクから追い出される危険があった。

世界の支持を得るためにイラクに国連の参加が必要というポーズは
取るが、米国の本音としては国連の関与はありがたくない。
イラクの石油を独占するためには、国連の関与やイラクの主権をイ
ラク人に渡すことは、いいことではない。米国が追い出される危険
がある。暫定政権のメンバーはイラク国内では人気がない。このメ
ンバーは親米であるが、イラク国内指導者は反米に近い存在になっ
ている。

このため、米国としてはイラクのシーア派も含めて紛争の拡大状態
にして、世界の各国からイラクの米軍が治安を確保するしかないと
認めさせる必要があったのです。シーア派穏健派のシスターニ師は
米国の気持ちを読んで、反米闘争に出なかった。まずは、主権委譲
をさせることが重要と。その裏にはイランがいる。イランも今、米
国と問題を起こしたくない。しかし、イランの統制が効かないサド
ル師が反米に動いてしまった。サドル師はシーア派国民の感情を代
弁している。

このようなイラクの紛争拡大期に日本人がイラクに入国しようとし
て、テロリストたちに捕まってしまった。イスラエルとパレスチナ
の紛争真っ只中の聖母教会に入ろうとしたバカカップルと同じよう
な状態だと思う。

昨年のイラク戦争直前以来の外務省による「退避勧告」
(http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040408ig90.htm)
を無視してイラクに赴き、3人は日本政府に大変な迷惑をかけるこ
とになってしまった。
 フリージャーナリストの一人はともかく、人道支援目的を標榜し
ていた二人に対して、功名心のために人道支援をするななんてもっ
てのほかだ。特に18歳の青年がリスクを犯してもイランの人たち
に何のメリットがない。絵本を書くために取材にイランに行ったそ
うだが、平和になってイラクの劣化ウランの影響を調べてばいいだ
けだ。緊急性も無い。

しかし、日米は米軍特殊部隊デルタフォースで日本人の救出を行う
方向で検討に入ったようだ。日米の一体化、同盟化はイスラムから
見ると米国と同様な敵と日本が見えるために、一層防備に弱い日本
人の民間人の拉致や殺害が増加すると考えられる。このため、民間
人はイラクから緊急に脱出するべきである。サマワで自衛隊を取材
している記者は自衛隊と一緒にいるべきである。基地内に従軍記者
としているべきだ。戦争地域であると早く政府も見て対応を取るべ
きだと思う。
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米、イラク統治「出口戦略」修正に動く(nikkei)
 【ワシントン=秋田浩之】邦人人質事件が象徴するイラクの最近
の治安悪化で、米政府が「出口戦略」の修正に動き出した。駐留米
軍の縮小計画を遅らせる方向で調整に入ったのに続き、6月末の主権
移譲は堅持しつつイラク側に引き渡す統治権を制限する姿勢も見せ
始めた。足抜けから一転、関与継続の流れが強まりつつある。

 日本人拘束の一報が入り、米外交当局者が慌ただしい対応に追わ
れた8日。与党・共和党の重鎮、ルーガー上院外交委員長がパウエル
国務長官を訪れ約45分間の昼食をともにした。

 ルーガー氏の持論は「主権移譲の先送り」。このままイラク側に
主権を渡したら大混乱を招くとして、主権移譲を遅らせるようパウ
エル氏に迫ったもようだ。米議会内ではイラク駐留拡大論さえ出て
いる。

 こうした空気に呼応するようにパウエル長官も軌道修正を図る。
「イラクと合意のうえで、主権移譲に一定の制限を設けるかもしれ
ない」。長官は8日午後の議会証言で、6月末の主権移譲を部分的に
とどめる可能性に触れた。 (07:01) 
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政府、日米連携で早期救出目指す・イラク邦人拘束事件(nikkei)

 政府は9日、イラクでの邦人人質事件で、米国との連携を軸に拘
束された日本人3人の早期救出を目指す対処方針を決めた。チェイ
ニー米副大統領が10日に来日するのを踏まえ、米国中心に韓国や連
合国暫定当局(CPA)などとも連絡を取り合い、拘束場所の特定
や犯行グループとの接触に全力を挙げる。イラクに滞在する日本人
を避難させるため自衛隊機の派遣も検討する。 

 福田康夫官房長官は9日夕の記者会見で「関係国やCPAなど必
要なところには協力を要請し、いろいろと協議している」と述べ、
米国などと具体的な協議に入ったことを明らかにした。 

 川口順子外相もパウエル米国務長官と8日に電話で話し合い、す
でに支援を要請した。小泉純一郎首相は12日にチェイニー副大統領
と会談し、イラク情勢を中心に意見交換する。  (07:06) 
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                 400字で斬る国際情勢ニュース(634)
                    ◆騒乱のフセイン政権崩壊1年◆
(2004/04/09)

 米英軍部隊を前に、首都バグダッドのフセイン像が引き倒され、
イラクのフセイン政権が音を立てて崩壊してから4月9日でちょう
ど1年。統治評議会が設けられ、6月末の政権移譲を控えてはいる
ものの、イラク情勢は、反米シーア派の騒乱が各地に飛び火、先行
きは極めて不透明だ。

 サマワに自衛隊を派遣している政府は4月8日、同地の自衛隊宿
営地近くで砲弾が着弾した事態を重く受け止め、福田官房長官は記
者会見で「(宿営地の)近くなので狙ったと思えないわけではない
」と指摘、迫撃砲かロケット弾かの分析や、入射角度から発射場所
の特定を進めていると言明。要するに戦闘地域、非戦闘地域という
考え方自体が、現況に合致していないことを認めた形だ。

 シーア派の騒乱を見て思うのは、イスラエル軍のベイルート侵攻
に象徴されるレバノン戦争(1982年)で、ベイルートに進駐し
た米海兵隊の運命。右派キリスト教徒によるパレスチナ難民虐殺の
再発を防ぐためという名目だったが、レバノンのシーア派と良好な
関係を築けず、ベイルート南郊の米海兵隊司令部爆破事件で200
人以上の海兵隊員が瞬時に殺されるなどした末、1984年初めに
あえなく撤退していった。

 イラク総人口の6割を占めるシーア派を味方に引き入れる「シー
ア派カード」は、フセインという重しがなくなった以上、イラク戦
争の戦後処理を円滑に進める上では最も重要なファクターというこ
とを再三にわたり指摘してきたが、そのカードは武力だけではうた
かたのように消え去ってしまう代物。キリスト教徒(米軍)は、イ
スラム教徒をついに理解できないのかもしれない。

 AP通信などによると、イラク中部ファルージャの騒乱で、米軍
の掃討作戦の結果、イラク人の死者は280人に達し、負傷者は
400人に上ったという。モスク攻撃も、戦術的には必要だろうが
、戦略的にはマイナスなのだが。シーア派左派のサドル師逮捕だけ
に限定すべきである。(了)
国際情報ファイル・深層海流主幹 石川純一(文責)


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