1577.日本人の壁



「日本人の壁」中山治 洋泉社新書に、日本人の性格を良く出てい
た。この本の紹介と考察をしよう。  Fより

日本人の性格のモノサシを次の観点から考察している。
1.外向性と内向性:積極的な性格と控えめな性格
2.愛着性と分離性:親和的な性格と独立自尊の性格
3.統制性と自然性:アリの性格とキリギリスの性格
4.情動性と非情動性:もろい性格とタフな性格
5.遊戯性と現実性:ロマン的な性格と写実的な性格
そして、この5つの性格が「国民性のビックファイブ」だそうだ。

1.内向性
日本人は「内向性の極」にある。そして、その結果「自分探し」へ
の異様なこだわりがある。中高年は「うつ」が多い。人との積極的
なかかわりあいをおっくうに感じる。この内向性の性格が自民族中
心主義にもなる。自虐的な言動も愛国のコインの裏返しで、内向性
の極が作用していると。

外国と比較して、日本のよさ、悪さを比較して考えることが必要で
あるのに、そのような活動をしない。国民が外交音痴もになるし、
外交ができないのも外向性の性格がないためで、交渉は基本的に人
と人の交わりの中で決められるので、外向性が無い日本外交は難し
い。

2.愛着性
日本人は愛着性である。東洋的な家族主義である祖先崇拝に起因し
ている。骨肉の愛情を中心とした体系が儒教であり、この影響を受
けている。しかし、日本は天皇を中心とした家で、国民がその家族
としている。中国や韓国との違いは、中韓は血縁中心であるのが、
日本は血縁と地縁をミックスした国家を作ったことである。

分離性とは、真の個人主義で、集団の同調圧力に屈しないことであ
る。日本には個人主義者が極端に少ない。このため、日本には過同
調型集団主義になる。空気を醸成する基盤がある。また、この性格
が「和」や明快に言わない「ぼかし」にもなる。

3.ほんとに統制性か?
日本人は勤勉であるというのは、大うそである。「アリの性格」は
作られたものである。環境の所産であり、日本は昔農業国家であり
、その環境で日本人のマインドを勤勉にする必要があったのです。
平安時代の貴族は趣味や遊びに没頭していたように、環境が無くな
るとキリギリスの性格が出てくる。そして、今日、日本人より外国
人労働者の方がずっと熱心に働く。今の日本人は豊かであり、勤勉
の必要がなくなっている。フリータでも結構豊かな生活ができる。
労働には報酬が必要であるが、その報酬が必要がなくなると、自己
実現が重要に成り、その自己実現が無理であると魂の救済が必要に
なっくる。とうとう、魂の救済の時代になってきたようです。

4.情動性
日本人は情動性の国民である。日本人のものの言い方は神経症的で
ある。日本人の「清潔好き」にもそれが現れている。「禊」以来の
伝統でもあるが、日本人はデリケートな脳の持ち主である。この脳
のために内向性であり、ぼかしたコミュニケーションを好むことに
もなる。ハラキリは日本しかない。マゾヒズムである。ストレスが
強いと、すぐに思考停止状態へと陥りがちで、潔く散ることが美し
いとされる。自殺を美化して、自己正当化を図るようである。

この脳のために「力強さ」の文化ではなく「繊細さ」の文化になる
。日本の美や製品は細部に細かい。美意識は「あわれ」になり、
欧州のタフ系民族は「ユーモア」になる。

5.どちらもいる。
遊戯性と現実性の因子は偏りがない。どちらもいる。日本文学や芸
術が高度で繊細であるということは遊戯性の人がたくさんいること
を意味している。しかし、この日本人の遊戯性は水田稲作農業の「
足元志向」になっている。現実的な範囲での遊び心になっている。
発想が大きくない。このため、「足元志向」の反対概念である「大
局志向」の戦略立案には弱い。

6.まとめ
日本人の性格を心理学的な手法によって、このような分析をされて
いる。これは大いに参考になる。このコラムは戦略を考えようとし
ているが、そのような思考を持ち人が少ないためにこのコラムは意
味があるのでしょうね。

それと、日本人が細部にこだわり、いい日本製の製品を作るのも情
動性の国民気質であることに起因していることが分かります。
反対に外交ができないのは内向的な性格がそうさせている。ここは
注意が必要でしょうね。古神道もこのような日本人の性格でできて
いるように感じる。


コラム目次に戻る
トップページに戻る