1556.資源獲得競争の時代



どうも、石油をめぐる戦いの幕が上がったような感じがする。 
                         Fより

2020年に石油生産のピークが来て、その後はだんだん生産量が
減少するようである。しかも、次世代エネルギーとして期待されて
いる燃料電池の水素は天然ガスから生み出すために石油が必要にな
るし、メタンハイドレードなどはその利用にはまだ相当な時間を要
することになるようだ。

一方、中国の石油消費量は米国についで多くなっている。インドの
消費量も多くなっている。世界での需要が大幅に伸びている。この
ように石油需要が増大しているので、石油価格も上昇することが、
期待できる。

しかし、石油生産の新しい油田の可能性は中東のイラクとカスピ海
周辺で、後は開発費用が嵩む海底油田になっている。中東やカスピ
海周辺はイスラム教国家群である。このため、イスラム教の世俗化
をしないと、米国や欧州勢力が安心して石油開発ができない。この
ため民主主義が必要になっている。この面では欧州も米国も同じ考
え方になっている。

米国は、イラク独立後もバグダッドに世界最大の米国大使館を建設
して、常時3000名の米国人と1万名以上のイラク人を収容でき
るようにするようだ。米軍も10万人規模で常駐させるようで、
日本と同じ体制を確立して、イラクを属国化するようである。狙い
はイラクの石油の確保である。石油の値段が倍になれば、この経費
は捻出できると期待しているようである。一方で世界に展開する米
軍を削減する方向で石油支配シフトを取るような気がする。

米国経済を見ると民間機で欧州のエアバス社に完敗し、かつ自動車
では日本のトヨタ・ホンダ・日産に負けている。韓国の現代も追い
上げて来た。製造業での敗北が近い。ITではデル社が低価格商品
で頑張っているが、製品価格の高いSUN、EMC3などは苦しい
。このように全般的に米国の競争力が落ちている。

このため、石油資源獲得に米国は乗り出さないと経済が持たないこ
とが分かる。しかし、この石油獲得競争には、同じような戦略を実
施しているロシアとの地域獲得競争をする必要がある。
ロシアのプーチンは石油と兵器で国家経済を延ばしてきた。ロシア
の生命線である。

ロシアはユコス社を米国資本から守り、チェチェン紛争ではチェチ
ェン独立を封鎖して、カフカス地域をロシアの手から離すまいとし
ている。しかし、グルシアでは米国が仕掛けたクーデターが成功し
て親米政権を樹立させている。中央アジア諸国では米軍が駐留して
中国とロシアをけん制している。地図を見れば分かる通り、紛争が
起きているのがカスピ海周辺であることが分かる。この地域の争奪
戦を米露中で行うことになる。このために中国の軍事費も増大して
いる。

イラクでの戦争はそれで終わるのではなく、石油獲得競争の始まり
を意味しているのである。これは長期の石油不足とその価格が上昇
することを想定して、世界の各国が行動しているためです。国家戦
略として動いているのです。EUもトルコを加盟させるのは中東に
足ががりを作るために必要であるからです。

米国は現在、中東からの石油に大きくは依存していない。それは中
東が不安定になると見ているからで、ロシアと中南米の石油を中心
に使っている。日本はサウジ・カタールなど中東の石油が中心であ
る。中東の安定が重要なのは日本である。

しかし、どうもサウジも不安定になりそうである。親米ファハド国
王と違い、次期国王になるアブドラ皇太子はロシアと米国をバラン
スさせるような動きをしている。基本的には反米的な人である。
このため、米国はけん制の意味で民主主義をサウジにも入れようと
仕掛けている。サウジ王制が揺らぎかねない。対抗上、アブドラ皇
太子はロシアを親善訪問して、石油生産国として今後協力していく
ことが決まっている。

サウジはイスラム教原理主義のワハーフ派を擁護する宗教国家であ
る。この宗教的な原理があるために、今でもアルカイダにサウジか
ら喜捨の資金が提供されているようである。
これを米国は問題視すれば、米サウジ関係はいつでも壊せることが
出来る。これは米国としてもサウジの石油生産があるためにしない
だけである。しかし、アブドラ皇太子が国王になったら、問題視し
て王制を揺るがす可能性がある。

この意味することは中東最大の石油生産地が紛争・戦乱に巻き込ま
れることを意味する。戦乱になれば石油生産などはできない。そう
すると、第2次石油ショックが起きかねない。このため、いち早く
米国は中東の石油を使わないようにしている。そしてイラクを中東
の軍事基地化している。それに欧州も同調する可能性がある。

日本も、中東石油獲得競争に巻き込まれないように、中東のサウジ
の石油からロシアの石油へ乗り換える必要がある。米国の動きは恐
ろしい。この動きは民主党のケリーでも同じはずである。
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米大統領「大中東圏」の民主化促進計画を策定へ=米紙 [ロイター]

[ワシントン 2月9日 ロイター] 9日付の米ワシントン・ポ
スト紙によると、ブッシュ政権は、1975年に旧ソ連や東欧の民
主化につながったヘルシンキ条約を模範とし、「大中東圏」におけ
る民主化促進計画の策定を進めている。

 同紙が米国および欧州高官が語ったとして伝えたところによると
、同計画は、アラブ諸国および南アジア各国に広範な政治的改革を
促すとともに、各国が人権問題に対する義務を負い、経済改革を導
入することを目指すという。

一方、この計画に協力する西側諸国は、民主化促進計画対象国の政
治的取り組みおよび援助を拡大し、世界貿易機構(WTO)への後
押しするとともに、安全保障を促進する、という。

同紙によると、この計画は6月に米ジョージア州で開催される主要
国首脳会議(サミット)で発表される予定で、米政府当局者は欧州
の主要国とすでに交渉を開始した、という。


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