1496.北朝鮮問題



北朝鮮問題で米国の反応が出てきた。    Fより

6ケ国協議を北朝鮮が拒否していると中国政府は米国に伝えて、米
国の反応を見ていた。中国の米国離れをキャッチした米国は、反撃
に出てきた。

リビアのカタフィーに核放棄させて、それでも北朝鮮が妥協しない
なら、米政府は北朝鮮に対し、3月末までに「核開発断念宣言」な
どを行わない場合、PSI(大量破壊兵器拡散防止機構)の全面発動、
国連安保理での付託など、より強行的な方針をとることを決めた。

ただし武力行使には至らないという。日本に対しては海上保安庁な
どが北朝鮮近海で取締りを行うことを期待している。
また米国のこの方針に従って国連安保理で根回ししているが、露、
中国は反対の姿勢を鮮明にしている。(産経 1月1日 朝刊)

中国は温首相を即座に米国に派遣して、善後策を協議した。この結
果、北朝鮮が6ケ国協議と核廃棄を受諾しないのであれば、米国と
しては、国連安保理に付託すると、行き着く所は、北朝鮮に対する
先制攻撃であろう。この米国ネオコンの強引さを中国は知っている
ため、北朝鮮を説得して、各施設の立ち入りを合意させた。

北朝鮮は、核廃棄と拉致問題を一挙に解決しないと、中国が強引な
手段で金正日を排除することになる。これもすでに預言書で予言さ
れている。暗殺であると。核廃棄と拉致問題解決をしないのであれ
ば、金正日委員長は身近の将軍たちに注意が必要ですよ。
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北朝鮮が米国訪問団の核施設立ち入りで合意 米紙報道 (ASAHI)

 米紙USAトゥデー(電子版)は2日、北朝鮮が来週、同国を訪
れる米国訪朝団に寧辺の核関連施設への立ち入りを認めることで合
意した、と報じた。ソウルの韓国政府関係者は同日、「時期ははっ
きりわからないが、そうした計画があることを承知している」と報
道を確認した。 

 立ち入りが実現すれば、02年12月に北朝鮮が国際原子力機関
(IAEA)査察官を国外退去にして以来、ほぼ1年ぶりの外国人
による核施設立ち入りとなる。 

 同紙によると、訪朝団は核開発の拠点、ロスアラモス研究所の所
長を務めたヘッカー氏や中国の専門家、北朝鮮訪問経験のある上院
議員、交渉窓口だった元国務省当局者らで構成される。6日から
10日までの日程で、訪朝する。 

 核問題をめぐる日中韓ロを含めた6者協議の次回開催決定を前に
、北朝鮮が米国に核施設を「開放」する意向を示した背景として、
同紙は(1)核兵器の保有を実証し、交渉に強い立場で臨む
(2)協議で合意が成立すれば核査察に応じるとの姿勢を示す、な
どの狙いがあると指摘している。 

 また、米政府が12月下旬に表明した北朝鮮への6万トンの追加
食糧支援に加えて今回、専門家らの訪朝を容認したことで、同紙は
北朝鮮が次回の6者協議に応じる可能性が高まるだろうと報じた。
 (01/02 22:25) 
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件名:北朝鮮核問題の行方  

米大統領、対話路線から転換も・さらに強まる国際圧力
日米韓3ヵ国協調強化で対応

 北朝鮮の核問題は米国の大統領選挙年である今年、大きなヤマ場
を迎える。内政面でも政治的経済的危機はいっそう深刻化している。

 一九九三―九四年に続く第二ラウンドの北朝鮮の核問題は一昨年
十月、ブッシュ政権になって初の米朝高官協議の席で、北朝鮮が濃
縮ウラニウムによる核開発を認めて急浮上した。

 北朝鮮はその後、核凍結措置の解除、国際原子力機関(IAEA)
査察官の追放、さらに昨年一月十日、九三年六月の米朝合意に基づ
いて「一方的に臨時停止」させてきた核拡散防止条約(NPT)脱
退効力の即時発生を宣言。九四年十月の米朝ジュネーブ合意枠組み
合意)は事実上失効し、これとは別の新しい枠組みの解決策が必要
となった。

 北朝鮮は「朝鮮半島の核問題」は米国の対北敵対・圧殺政策が原
因なので米朝間の問題であり、米朝二国間での解決に固執したが、
米国は米朝二国間の枠組み合意が履行段階で十分に機能しなかった
ことを踏まえて、多国間の枠組みでの解決を模索した。

 米朝の緊張が高まる中で、韓半島「有事」を最も恐れる中国と「
有事」の際に最も大きな被害が予想される韓国が積極的な仲裁に乗
り出し、四月下旬の米中朝三カ国協議(北京)に続いて、八月下旬
にはこれに日韓ロ三国を加えた六カ国協議が北京で開催されたが、
米朝両国の溝は狭まらず、結局、年末開催を目指した第二回六カ国
協議は年越しを余儀なくされた。

 米国は「北朝鮮の完全で検証可能、不可逆的な核廃棄」を目標と
して対話(六カ国協議)路線を取っているが、@北朝鮮が枠組み合
意を破って秘密核開発を進めたのだから、北朝鮮がまず核を完全廃
棄すべき(先核廃棄)A核廃棄への見返りは与えないB核廃棄後に
大胆な支援が可能――という基本的な立場を堅持している。

 これは、核廃棄によって最大限の見返りを得ようとする北朝鮮の
同時行動原則に基づく(段階的な)一括妥結案とは根本的に相いれ
ない。また、麻薬や兵器(ミサイルなど)の取引、日本からの現金
・先端技術等の不法流入の取り締まりを強化して、北朝鮮を徐々に
締め付けている。

 米国は昨年十月、北朝鮮の不可侵条約要求を反映して、多国間の
対北安全保証を提供する立場に転じた。しかしこれは、イラク情勢
悪化に伴い、時間を稼ぐとともに韓国の派兵などを誘導するための
「戦術的後退」の色彩が強く、核廃棄と経済支援を取引しない立場
は不変だ。

 事実、北朝鮮が十二月九日、公開要求した核凍結に対応する第一
段階の措置(テロ支援国リスト除外、政治・経済・軍事制裁と封鎖
の撤回、重油・電力などエネルギー支援)には関心を示していない。

 ブッシュ政権は基本的に、北朝鮮の現体制(金正日総書記)に極
めて否定的な認識(悪の枢軸、独裁者など)を持っており、北朝鮮
が核廃棄を渋り続ければ、対北軍事行動を求める政権内のタカ派が
勢いを増すことは避けられない。 

■追い込まれる北朝鮮 
 北朝鮮はだんだん苦しい状況に追い込まれつつある。国内的には
慢性的な経済難、エネルギー難が続く中、イランの核査察受け入れ
表明、フセイン元大統領の拘束、リビアの大量破壊兵器廃棄約束な
どによって、米国の(準)「悪の枢軸」諸国への包囲網が狭まり、
北朝鮮に対する国際圧力が強まることが予想される。かといって、
米国が簡単に強硬姿勢を緩和することは期待できず、米国に完全屈
服することもできない。

 そのような中で唯一の希望は、今年十一月の米大統領選挙だ。幸
い民主党の大統領候補群は一様に米朝直接対話と米朝不可侵条約締
結を通した核問題の解決を主張している。ブッシュ大統領が再選に
失敗し、民主党大統領が誕生すれば、これほどありがたいことはな
い。その半面、ブッシュ大統領の任期があと四年続く場合は、北朝
鮮もこれ以上の時間稼ぎは不可能で、得意の瀬戸際戦術も効力を失
う。

 従って、北朝鮮は今年十一月の大統領選挙まで、米国の国内政治
、イラク情勢、対テロ戦況などを見ながら、米国に最大限の見返り
を要求していく、極めて高度な綱渡り外交を余儀なくされることに
なる。 

■ブッシュ再選の行方で左右 
 問題は、ブッシュ再選に黄信号がともり始める場合だ。北朝鮮は
核問題でより強硬な姿勢に出るものと予想され、ブッシュ政権が
@選挙前解決の放棄A戦術的後退による仮妥協B強硬策による早期
解決――のうち択一を迫られる状況となるかもしれない。その場合
、韓半島は九四年と同じく一触即発の緊張状態に陥る恐れもある。

 米国の対北核施設攻撃や金正日政権除去による韓半島の混乱は、
中国が最も嫌うところだ。また、北朝鮮が核保有国として国際的な
認知を得ることも、韓国、日本、台湾の核兵器保有に口実を与える
ことになるため、絶対に容認できない。

 中国はそのため、今年も自らの影響力を最大限に発揮できる六カ
国協議の枠組みの中での核問題解決に向けて最大限の努力を払わざ
るを得ない。

 韓国も米朝緊張が高まれば高まるほど、米韓同盟と南北交流協力
の矛盾が拡大して太陽政策を継承した盧武鉉政府は苦境に陥らざる
を得ない。そのため、六カ国協議の「促進者」として外交に全力を
傾注せざるを得ないはずだ。

 あまりにも流動的な要素が多い〇四年の韓半島情勢に対し、日本
は日韓米三国協調を強化しながら、あらゆる状況に対応し得る政策
オプションを開発する努力が必要だ。 
(ソウル・武田滋樹・世界日報) △掲載許可済み
Kenzo Yamaoka
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件名:米「北の核」に期限 3月末までの放棄迫る 強硬方針、PSI発動視野  

 ■海上警備 日本に要請
 【ワシントン=樫山幸夫=産経】北朝鮮の核問題をめぐり、米政
府は、三月末までに「核開発断念宣言」など事態の進展がみられな
い場合、北朝鮮に対するPSI(大量破壊兵器拡散防止構想)の全
面発動、国連安全保障理事会への付託など、より強硬な手段に移行
する方針を決めた。武力行使という最後の段階には至らない見込み
だが、実質的な「期限」が設定されることで六カ国協議の行方にも
影響を与えることになる。

 ワシントンの朝鮮半島関係筋が産経新聞に明らかにしたところに
よると、米政府が実際に方針を転換するのは公式な形での「核開発
放棄宣言」のほか、これと同様の明確な姿勢変化を北朝鮮が示さな
い場合。

 また、ワシントンの別の外交筋は、北朝鮮が六カ国協議の再開に
応じない場合、その時点をもって米国が、強硬方針に移行する方向
であることを明らかにした。いずれの期限も三月末だが、六カ国協
議の今後の展開などを勘案したうえでのぎりぎりのタイミングだ。

 ボルトン米国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)は、最近、
ワシントンで開かれた非公式会合で、明確にこうした方針を言明し
たという。

 米国が事態解決に向け実質的な期限を設定するのは、六カ国協議
の第一回会議が二〇〇三年八月に開かれたものの、第二回会議は年
を越し、現時点では開催のメドも立たない状況を考慮したためだ。
問題解決に手間取っている間にも、北朝鮮の核開発が着々と進展す
ることを米国は懸念し続けており、こうした事態を避けるために期
限が必要と判断した。

 PSI発動の場合、米政府は、本来の目的である核、ミサイルな
ど大量破壊兵器の北朝鮮からの輸出阻止だけでなく、麻薬、偽札な
どについても取り締まりを強化する構えだ。
 とりあえず、日本の海上保安庁に対し、朝鮮半島周辺の海域や日
本海などで主に活動するよう要請する方針だ。

一方、国連安保理での協議は、PSIへの国連の支持を得る目的だ。

 現在、PSIを発動しても各国は自らの領海、領空内で国内法に
よってしか行動できないが、これを国際法にのっとって公海上、
公海上空で発動できるよう決議採択を目指す。

 あわせて北朝鮮非難決議採択なども検討されているが、制裁論議
については米政府内で依然として慎重論が強い。

 米国はすでに、こうした方針を安保理常任理事国各国に非公式に
伝えており、根回しに着手しているが、中国、ロシアは反対の姿勢
を鮮明にしているとされ、実際の論議は困難が予想される。

 米政府は、次回の六カ国協議について、「新年の可能な限り早い
時期」(バウチャー国務省報道官)を目標に、各国との折衝を続け
ているが、現時点では一月中の開催も微妙な情勢になっている。
                  ◇

 【PSI(大量破壊兵器拡散防止構想)】ブッシュ米大統領が
2003年5月にポーランドを訪問した際の演説で提唱。主に北朝
鮮とイランの大量破壊兵器輸出入を阻止する目的で、各国が船舶、
航空機などを使って協力し合う。日英豪など16カ国が参加し、各
国合同の演習も03年中にすでに数回、行われている。 
Kenzo Yamaoka
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件名:あり得ぬ米の一方的軍事行動/北の報復は周辺国に多大な犠牲  

あり得ぬ米の一方的軍事行動/北の報復は周辺国に多大な犠牲/多国間の不可侵声明は可
能
ジェームズ・リリー元米駐韓大使、駐中国大使に聞く
 ――北朝鮮の核危機への対応は、米朝中の三カ国協議から六カ国協議に進展してきたが、
 協議の見通しは。
 米国、日本、韓国は最近、北朝鮮への共同アプローチをつくり上げた。それを中国に託
 し、北朝鮮に伝達することを頼んだ。中国が伝達すれば、それは三カ国の共同提案への
 暗黙の支持を意味する。三カ国提案は北朝鮮による大量破壊兵器放棄とその検証、米国
 を含む関係諸国による北朝鮮の安全への保証、北朝鮮の協力を引き出すための経済的イ
 ンセンティブの模索といった内容を含む。北朝鮮は経済援助など欲するものを獲得する
 前に、具体的に何かをしなければならないという形になっている。北朝鮮はこれを欲し
 ない。北朝鮮は、最初に多くの経済支援を受け、自国の体制変化は最小限にとどめると
 いう一九九〇年代の方式に戻りたい。

 北朝鮮は提案に抵抗するだろうし、話し合いは難航するだろう。しかしわれわれは北朝
 鮮に五十年以上対処してきた。交渉を継続してゆかねばならない。いま米国はある種の
 同盟を形成しつつあり、北朝鮮に効果的に対処できる立場に立ちつつある。同盟の構成
 員、中国、米日韓、ロシアはそれぞれ違った狙いを持っているので、それを維持するの
 は困難だ。三カ国が共同アプローチで合意し、中国に託したのは前進だ。

 ――米国は不可侵条約についての北朝鮮の要求を拒絶してきた。いま米国が北朝鮮の安
 全保証で合意しているのは、米国の立場の軟化を意味するか。

 米国は不可侵条約を結ぶことはできない。韓半島に関しての多国間における不可侵声明
 なら可能だ。そこでは北朝鮮も侵攻しないことを誓約する。一九五〇年に(韓国動乱で
 南に)侵攻してきたのは北朝鮮である。一九六八年に朴大統領を暗殺するために部隊を
 送り込んだのは北朝鮮である。一九八七年に大韓航空機を爆破したのは北朝鮮である。
 一九八三年にラングーンで韓国の閣僚を殺害するテロ攻撃をしたのは北朝鮮である。

 北朝鮮の不満に配慮して、米国は中国、韓国、日本、ロシア、北朝鮮とともに韓半島で
 軍事行動を回避するという声明を出すという立場を取った。現在の危機に対しては、軍
 事的解決は問題外である。外交的、政治的、経済的な手段による問題解決を図らなけれ
 ばならない。軍隊は、北朝鮮の攻撃を抑止する役割を担っている。

 ――軍事的解決が問題外である理由は。

 もし北朝鮮に対して軍事行動を起こすならば、北朝鮮は報復するだろう。そうすると、
 韓国で五百万人が命を落とし得る。報復攻撃は韓国および日本で壊滅的結果をもたらし
 得る。それに中国、韓国は、米軍の軍事行動を支持しない。多くの国々は米国が一方的
 軍事措置を講じたと言って批判しているが、北朝鮮の場合は米国は決して一方的行動に
 は出ない。多国間の支持がなければ、軍事行動は考えられない。これらの二つの要因の
 故に、米国が北朝鮮を軍事攻撃することはできない。

(聞き手=ワシントン・横山裕史・世界日報) 

 ジェームス・リリー 1958−75年米国務省外交官として多様なポストを歴任。85−86年
 米国務次官補代理、75−78年中央情報局(CIA)国家情報分析官、81年国家安全保障
 会議(NSC)東アジア上級専門家、86−89年米駐韓大使、89−91年米駐中国大使、91
 −93年国防次官補、93年よりアメリカン・エンタープライズ研究所研究員。 △掲載許
 可済み
Kenzo Yamaoka
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件名:「日本、将来核武装も」 米政府機関2020年国際予測  

 【ワシントン=近藤豊和=産経新聞】公的文書、異例の言及 米中央情報局(CIA)
 の所属機関である米国家情報会議(NIC)が二〇二〇年の国際情勢を予測分析した報
 告書の中で、日本の防衛力拡大のための憲法改正と核武装の可能性に言及していること
 が分かった。日本の改憲や核武装をめぐる議論は米国内に以前からあるが、公的機関が
 まとめた報告書で言及されたのは極めて異例だ。
 報告書によると、二〇二〇年までに、朝鮮半島や中台関係などをめぐって北東アジアの
 各国はそれぞれの異なる度合いで軍備強化を進め、日本はその中で最も技術的に優位な
 軍備を持つ地位を、駐留米軍とは別に保持すると分析。

 そのうえで、「(日本は)自衛のための積極的な役割を増すことを可能とするために、
 憲法を改正するだろう」との見方を示している。

 また、韓国は最終的に朝鮮半島の統一という国益を守るために軍備増強を続けると予測。
 中国については、台湾海峡への米国の干渉を制止するために、軍事力の近代化を進める
 とし、北東アジアは他地域に比べても軍事的緊張が非常に高い地域になるとしている。

 こうした状況の中で、朝鮮半島が統一された場合、日米同盟に圧力がかかることが予想
 されるほか、「北東アジアの駐留米軍の存在は、もはや韓国を防衛するということで
 (駐留を)正当化できなくなる」と指摘。こうした情勢変化は、日本と統一された朝鮮
 半島の双方を「核能力の獲得」へと導く可能性があるとしている。また、米国のこの地
 域での安全保障は継続されるものの、駐留米軍の再編や脅威への認識の変化によって
 「(同盟国との)結び付きは緩くなる」とも予測している。

 日中関係については、中国が地域で確実に伸長する中で、日本は難しい選択を迫られ、
 地域での主導権を握ろうとするか、米国に接近するかのいずれかだと指摘している。

 ワシントンのシンクタンク「スチムソンセンター」が十二月に発行した「日本の核の選
 択」などによると、米国内での日本の核武装論議は一部で活発化しており、北朝鮮の核
 開発計画の中で、米国が中国などに「北朝鮮の核開発を中止させないと、日本が対抗上、
 核武装する事態になりかねない」との見方を示すことで、北朝鮮の核開発問題解決に中
 国を引きつけるという狙いが背景にあると指摘されている。

 今回、NICが報告書の中で「日本の核能力の獲得」に言及したことも、こうした議論
 が影響している可能性がある。

 しかし、「将来の日本独自の核武装の可能性」にNICの報告書が言及したことで、米
 国の「核の傘」という戦略は将来、日本には適用されなくなる可能性を示唆したとも解
 釈でき、日本の安全保障に重大な転機が来ることも予感させる内容となっている。 
Kenzo Yamaoka
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件名:「日本の安全保障」  

自衛官が置かれた任務遂行の重みをルポで伝えたNHKの好番組「日本の安全保障」
週3回の作戦会議
 ちょっと目を疑いたくなるようなシーンだった。自衛隊幹部が米中央軍作戦司令部で世
 界から集まった五十六カ国の代表と中央軍幹部に、自衛隊の役割をレクチャーしている
 のだ。十二月十九日に放映されたNHK「21世紀日本の課題―シリーズ安全保障」での
 一シーンだ。
 これまで、自衛隊は日本の防衛だけが任務ということで、国際的な安全保障戦略の協議
 の場に臨むということはまず考えられなかった。ところが、テロ特措法に基づいてアフ
 ガニスタンへの対テロ作戦に貢献して以来、状況が変わってきているようだ。

 海上自衛隊の柴田有三・一佐らが参加しているのは、フロリダのタンパにある米中央軍
 司令部。アフガニスタンやイラクでの米陸・空・海軍と海兵隊を指令する権限を握って
 いる。同司令部に、対イラク作戦参加の五十六カ国軍隊の代表が集まり、中央軍による
 両地域での最新の軍事情報を得ているのだ。

 作戦で連帯している国々は「コアリション」(有志連合)と言われ、最先端の情報を得
 るために、参加各国の代表は神経を張りつめて臨んでいる。週に三回開かれる作戦会議
 で、作戦を立案するウィットコム中央軍参謀長が会議室に現れるやいなや、参加者は直
 立不動の姿勢に。その意気込みが伝わってくる。ただ、取材が撮影が許されていたのは
 冒頭の三分間だけだった。

自衛隊について説明

 別の場所では、米ディール准将によるこれまでの経緯に関するブリーフィングも行われ
 た。これは撮影できたようで、同准将は、湾岸戦争に関係しドイツが戦後五十年で初め
 て域外派遣したこと、日本も第二次大戦後初めて自衛隊が海外に出ることになったこと
 などを紹介。だが、アフガニスタン作戦に関し、日本の艦船が米艦に燃料補給活動をし
 てきたにもかかわらず、その貢献について、米国が昨年二月の発表で日本の名前を落と
 すという事態が生じた。このため、在米日本大使館のイニシアチブにより、自衛官の中
 央軍司令部参加が決定されたという経緯もNHKは説明していた。

 しかし、フランスのようにアフガニスタンへの作戦には参加してもイラク作戦には不参
 加の国は、この参謀長のブリーフィングに参加することはできない。ただ、各国の事務
 所が軒を連ねている中央軍のエリアに代表オフィスを構えることはできている。

 さて、冒頭のシーンである。柴田一佐は、日本代表に与えられた発表の機会で、「日本
 がなぜ日本軍と言わないで自衛隊という名称を使っているか」について説明。それが憲
 法九条の規定から来ており、国際紛争を解決する手段としては陸海空の戦力保持を放棄
 したことを明解に流ちょうな英語で語っていた。

 ところが、説明後の質問になって米軍幹部から出てきた質問は、「航空自衛隊が保持す
 るC―130輸送機をイラクで米軍が必要としている空輸の支援に使えないか」という
 ものだった。憲法九条の理念について論議しているような状況ではない、というのが作
 戦現場での雰囲気のようだ。これに対して柴田空将の説明も適切なものだった。「これ
 は政治的な判断に関係するものであり難しい問題」としながらも、「そういう要請が出
 されたことは本国に伝えておきます」と述べた。

「頼られる自衛隊」へ

 最近では、航空・陸上自衛隊の幹部も常駐するようになり、イラクでの自衛隊の役割が
 大きくなりつつある。実践的な現場での交流を通じて、情報の質を高め、陸海空の指揮
 系統の統合など、より効果的な対応ができる自衛隊になるように脱皮を迫られている。

 アフガニスタンの作戦については、「直接的戦闘参加に発展しないか」という自衛官の
 悲観的な日記が紹介されたりしていた。だが、総じて、世界の安全保障において、制約
 がありながらも可能な任務については積極的に遂行することで、頼られる自衛隊になり
 つつあることをリアルに伝える番組だった。

 番組では、イラクを意識しながら、検問など国内でのテロ行為に対処する訓練を試行錯
 誤しながら効果的なやり方を探っている様子も紹介された。

 わが国の防衛論議は、いつどういうケースに武器を使えるかなどといった画一的なマニ
 ュアルの論争が多い。同番組のように、自衛官が具体的に置かれている訓練や情報収集
 の現場から、その任務遂行の重みを伝える報道がもっと必要だろう。
(山本 彰・世界日報)△掲載許可済み
Kenzo Yamaoka


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