1224.読者1の声



今週は、読者からの投稿が多く、3回に分けて掲載します。編集人
今回は、イラク戦争と日本の安全保障についてです。

イラクの戦況は、米国勝利で暫定政権の確立をどうするかに掛かっ
ている。米国の文化押し付け型の政権であると、イラク国民に反発
されて、再度反米戦争に逆戻りする。どうか、イスラム文化を尊重
した政治制度にしてほしいものである。国連の出る幕はなくなった
ようだ。チェイニーとラムズフェルドの勝ち。米国は一国主義を
強化するであろうし、シリアやイランに戦争を拡大する可能性があ
る。  Fより
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NO.1214.イラク戦況の分析
拝啓:
ご参考までに一筆いれます。
米国では従軍者の死亡または重傷の場合は、24時間以内に家族に
伝達することになっており、50数名の戦死者の内、20名近くが私の
住むカルフォニア故に、テレビ報道は正確に行われてます。
ロシヤも中国もみな嘘を嘘と思わない価値観の民族。
あてにはなりません。
最後に一言、米国に変わり、世界を公平にリードできる国は?ロシ
ア?中国?それともフランス? 台湾は半世紀に渡り独裁、恐怖政治
の犠牲者、今でも、台湾人は心よりの声を出せない(多くの人達)
奇形的な性格に洗脳教育で整形されました。私は例外ですが。。。
国益優先は物事の道理、反対する方が甘い。
陳辰光
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(Fのコメント)
あなたが、自分の生命を持続するために米国に来たのは、自由です
。その自由な国家がイラク国民が望んでいないのに自由にすると言
って、イラクを侵略することが許されるのでしょうか??
イラク国民が望んでいないことが、イラクの抵抗で十分、分かった
現在でも戦争を止めないのは、米国大統領のイラク国民の自由のた
めの戦争と言うことと反している。米兵がイラクで略奪しているこ
とも大きな反感を買っている。

欧州の独仏などはイラク侵略をしないで、国連の査察を続けようと
したのですよ。米国はそれを振り切って戦争した。しかし、大きな
イラクの抵抗を受けている。大量破壊兵器も見つかっていない。
欧州も私も独裁者フセインをいいとは言っていない。しかし、文化
の違う他国を国民の自由という理由で侵略するのはいけないという
だと思うが。

フセイン政権は、時機に崩壊するでしょうが、米軍統治ではシーア
派とスンニ派の反米組織ができて、近い将来、ゲリラ戦になるでし
ょう。
この時、元のイラク正規軍はこの反米組織の軍になるでしょうね。
米国のベトナム戦争、ソ連のアフガニスタン戦争になってしまう。
どちらが正常であるかその内分かる。ソ連が侵略したアフガニスタ
ンで、ジハードと言って抵抗したゲリラ戦と同じになるでしょうね
。時間がたてば分かると思う。

米国はイラクのゲリラ支援をすると言って、シリアやイラクへの戦
争を始める可能性もある。このため、中東がグチャグチャになる。
もちろん、イラクの石油積み出しもできなくなるでしょうね。イス
ラム諸国全体からアルカイダなどのテロ組織がゲリラを募集するこ
とになるでしょうから、米国はテロ組織を助けたことになる。
CIA長官のテネットが心配したようになる可能性が高い。
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これは本当の戦争と言えるのか      N.H.

3月20日に始まったアメリカの対イラク戦争、これは本当の戦争
とはいえない。実際の内容は、開戦前日3月19日に発信した【ア
メリカの戦争について】で記述したとおり「アメリカは本格的な戦
争をする気など初めからない」ということである。多くの人が感じ
ているとおり、まことに奇妙な戦争である。非現実的でまるで戦争
の実体を欠いている戦争である。戦争の実体とは、敵の撃滅である
。激しい戦闘が終わってみれば、依然としてイラク軍は温存されて
いるという結末である。

これは戦争といえるものではない。戦争ならとっくに終わっている
はずだ。今はまだ戦争の季節ではない。また湾岸戦争のときとも違
う。当時は初めから世界中目立った反対もなく、大軍を集めて早期
に終結する必要があった。また長引いても何の得もなかった。今回
は違う。早期に終結しても何の得もないのだ。またおそらく誰一人
として初めから戦争に賛成のものはおらず、気乗りしないものであ
ることはわかっていたはずだ。これは良くわかっていて、また成り
行きもそのとおりになった。

逆に聞こえるとは思うが、もし今回もまた世界中が賛成であれば、
戦争する必要などなかった。また戦争になることもなかったはずだ
。現在アメリカ軍が苦戦しているように見え、今後の戦局の展開、
世界経済に対する悪影響、アメリカの凋落の始まりについて世界中
で大騒ぎしている。

だが実際には苦戦しているわけではなく、ただ今回の戦闘において
は、相手を攻めて撃滅させるわけには行かないから戦局が展開しな
いだけのことだ。世界中を巻き込むことが必要であり、多少の犠牲
はやむをえないということだ。首都攻略の事前の成算の有無の内容
は窺い知れず、推測に基づくほかはないが。

湾岸戦争、アフガン戦争では、多大の軍人民衆の犠牲も許されたし
顧慮もしなかったが、今回は多くの民衆の犠牲は許されず、また実
際最もその回避に苦心しているはずである。湾岸戦争は威嚇戦争、
アフガン戦争は掃討戦争、今回は侵略戦争であり、すべて敵の撃滅
という戦争の実体を欠いている戦争である。

大規模な国民の支持と世界中の反戦の声こそ必要なのだ。必要とは
言い過ぎかもしれないが、もし世界中が大騒ぎせず、早々とひっそ
り進駐すれば、やはりまたひっそりと撤退もしくは占領するだけと
なり、戦後施策に世界各国の黙認と参加が得られることはなくなる
はずだ。実はそれこそが失敗というべきである。

思うにプランどおりかどうかは別にしても、アメリカの世界戦略実
行のはじめとしては、戦闘の早期終結こそ最も避けねばならないも
のであるはずだ。早期終結すれば、様々な目的が達せられなくなる
。それほど簡単に終わっては元も子もないことになる。大規模戦争
ではなく、大規模紛争が必要であった。中東中央アジア地域は世界
戦略における要の地域である。あまりに簡単に早期終結すれば、
各種の目的は済まされず、さらにその後の施策が迅速に大規模にス
ムーズには行かなくなるのだ。

また非軍備国家ならいざ知らず、少なくとも完全武装で待ち受ける
国家の制圧には、2〜3ヶ月かかろうとも短期といって差し支えな
かろう。軍事の予定は常に未定と同義語であって、予定通りの短期
終結とは敵に対する奇襲撃滅以外になく、現在の状況にはまったく
当てはまらない。

最初から分かりきっている最も困難な時期を選んで、小規模な戦力
で、確実な当てもない民衆蜂起、内乱などを頼みにして、幼児並な
計画を立案するなどありうることではない。戦局の見通しの甘さ、
イラク軍の戦力の過小評価、自軍の戦力の寡少、制服組の意見の軽
視、計画の誤算、あるいは制服組からの批判など、そのような安直
なことが皆ありうることではない。これこそ情報に踊っているのだ。

世界中の多くの識者から、アメリカの安易すぎる誤算の声があがっ
ている。そうだろうか。もし本当にそうならば、あまりに幼稚な誤
算であり、その余波を受ける世界はたまったものではなく、夢も希
望もない悲惨さだ。しかし単に戦局の推移を見て、すぐに全員がこ
のような意見に飛びつくという姿勢もまた、あまりに軽率としかい
えない。

おそらく、アメリカの戦略は、誤差も含めて予定通りというところ
であろう。戦略の多少の手直しはあったとしても、変わりなく強靭
に強引に進められることであろう。善悪にかかわらず。そうせざる
をえないのだ。人事においても変動はあり得ず、英国の脱落もあり
得ない。

戦後には、あれほどに高まった反戦アメリカ批判の嵐、世界経済世
界情勢に対する危惧の声が、嘘のように何事もなかったかのように
、世界中が皆その口をぬぐい経済行為にいそしむこととなるであろ
う。

今はまだ戦争の時期ではない。別に長期化してもかまわないし、批
判されてもかまわないのだ。ふさわしい敵はまだ育っていない。多
少の角逐はあろうとも、世界中を巻き込んだ大規模な争乱の時は、
まだ幾年も先のことなのだ。

朝鮮戦争ともなれば、本格的な撃滅戦になる。だがこれはあり得な
い。常に脅威はある。しかし朝鮮半島は、風になびく草木なのだ。
今はその風の気配はない。逆風もまた鳴りを潜めている。順風逆風
なきところ、日本韓国に危険はない。今はまだ商売の最中なのだ。
アメリカにとって、国内経済の問題など、実は国内の問題ではない
のだ。したがって国内経済の空洞化はあまり問題にしていないはず
だ。

アメリカの20年戦争という言葉に誤解があるように見える。この
中東地域の戦争の長期化が20年戦争の始まりになるかもしれない
と見られているわけだ。だがアメリカの20年戦争とは戦闘の拡大
継続のことではなく、世界のアメリカ化の課程における世界全体で
の戦争戦略の実行のことである。第三次大戦に繋がり得るとの見方
など、総評論家と化した好事家の児戯に類するものだ。

戦後復興の国連決議案を日本起草で英国が提案することになってい
る。つまり日本主体で責任をもって復興事業を行わなければならな
いということだ。結局お金の引き出しということだ。

今回は戦後復興ということはありえない。何を復興するというのか
。軍事施設と大統領宮殿でも復興するとでも言うのか。あるのは復
興ではなく、公共投資、産業投資ということに過ぎない。誰がする
のか。アメリカ企業に他ならない。復興資金はどこからどこに行く
のか。日本から、アメリカへ。これがつまり戦費の負担だ。戦費負
担の事前要請のなかった理由である。分け前はない一方的なものだ。

これが日本のアメリカ支持の中身であり、これ以外にありようのな
い現実だ。多くの人が国の方針を変える好機と言っているが、実際
には日本は自己主張どころか、アメリカに意見を述べることさえ許
されていないのだ。これが日米安保体制の実態であり、もしそれが
いやなら自前で軍備さらには核装備をするしかない。平和に暮らす
国民に属国という意識がないまま、日本が反戦反アメリカを唱えて
、仮にもしそれが実現したとすれば、反戦デモをする若い母親が我
が子を徴兵に差し出す道を自ら唱えていることになるのだ。

戦争反対はまったく正しいし、必要なことだ。本来、日本はそうす
べきである。だがアメリカの戦争に賛成であれば、子供を戦陣に送
り出すことはなくてすむ。他の国で反戦を言うのと日本とではまっ
たく意味が違うのだ。世界と一緒に反戦デモをすればいいという、
無邪気で平和なわけにはいかないのだ。他のアメリカの同盟国が、
今回のアメリカの戦争に反対しても同盟関係が損なわれることはな
い。しかし日本はアメリカの同盟国ですらなく、支持の声をあげる
ことさえ必要ないのだ。

日本とアメリカは最も対極に位置する国である。一方は古来最も変
わらず、変わることを常に願って外に合わせて自ら変わり続ける国
。他方は最も変革を目指し、自身は変わることなく常に変革を信じ
て他者の変革を押し進める国。おそらくある意味でどちらも性懲り
もなく変わらぬ国である。

それが双方の長所であろう。欠点といわれる面もそこに由来する。
したがって行き詰まりのときにあたって、云々されるのもこの点で
ある。だがしかしこれを失えば、その国の長所をも併せて失うこと
となり、衰退の時を迎えることとなる。アメリカは走り続けなけれ
ばならないのだ。現在の日本では、独立国として自己を打ち出せば
自己を失うのだ。

独立国として自己を世界に打ち出そうと振る舞うには、その前に粛
然として自立する覚悟を定めるという行為が必要なのだ。国民の総
意として、もしくは政府全体の集合的意識化としてだ。この課程を
経ずして、一度失われた状態を再生することはほとんど不可能であ
る。その準備なくしていたずらに自主外交、再軍備、独自経済財政
政策、構造改革などを論じるのは無意味である。

憲法を改正して自主路線をとるべきとの論議が起こっているが、
もしこの過程を経ずしてその果実を得れば、その日から日本の悲惨
が始まるのだ。この過程なき自主路線は自殺行為なのだ。繰り返す
が、日本はアメリカの同盟国ですらなく、自己主張どころかアメリ
カに意見を述べることさえ実際に許されていないのだ。

自主独立とは世界中あたり前のことだが、日本にとっては決してあ
たり前のことではないのだ。そしてこの過程を受け入れることが出
来るようになるには、さらに今一段の道程が必要なはずである。何
が日本の真の脅威であったかという認識は、そのときにおいて始め
てすべての日本人の心に定まるはずである。

また日本が現在の行き詰まりを打破するには、ただ無闇に不合理非
効率を排し、合理的に改革すれば良いというものではない。日本の
歴史に鑑みて、古来からの変わらぬところに立脚して変革を行わな
ければならないのだ。さもなければ、改革とは自己亡失に他ならな
いのだ。改革は成功しても失敗しても、日本国民を幸せにすること
は決してないのだ。

アメリカはヨーロッパの軛を嫌って新天地に逃れてきた人々の集ま
りである。したがってその古さを笑いつつもその伝統の重さに畏敬
を感じている人々である。おたがいに困ったものだと嘲笑しあって
いる気心の知れた仲間である。あたり前のことだが皆独立国であり
、軍備を備えている。しようと思えば何でも出来るのだ。
                        四月五日
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kiyosidayといいます。
最近、あまり読んでないのですが(ほとんどタイトルだけ・・すみ
ません)
 
3月30日のスコットリッタ氏の記事を見て、つい書きます。
 
3月20日は後世、奢れるアメリカの没落の第一歩として記録される
だろう。これが、私の第一印象でした。
理由は、いろいろ誤魔化してもブッシュは十字軍の騎士気取りだし
、歴史上の十字軍もその実、イスラムの富を目当ての簒奪者であっ
たからです。
 
しかし、開戦以来アメリカ=十字軍気取りとの指摘は(多分、意識
的に)見当たりませんでした。今日、初めて発見して「ハッキリ、
言う人はいるものだ」と感心しています。
 
バクダッドが陥落するか否かは、もはや問題ではない。
十字軍は十字軍である故にイラクでは止まらない、「イスラム諸国
を全て、アメリカ式の民主国家にする」というのは「すなわち、全
てキリスト教を基本においた国にする」と少なくともイスラム諸国
には理解される。
宗教戦争に他ならない、アメリカは敢えてそれを仕掛けたのだが、
どんな収束を考えているのでしょうか。
 
アメリカとイギリス(新教)がイスラム攻撃を始め、ヨーロッパ(
旧教)が一歩引いているとすると、後は、数の問題のようにも思え
るが・・・
その先のことは、あまりに悲惨、凄惨、暗黒すぎて考えたくなくな
る。
 
それにしても、ブッシュ、ラムズフェルドの戦法は酷すぎる。
高価な(二人とも、ハイテク兵器を使うほどボロ儲けとの話もある
ようですが)爆弾を多量に使って、その後、パットン将軍気取りで
突っ込めば首都は陥落で一件落着とは、余りに信じ難い。
 
戦後処理にしても、日本で天皇を戦犯にしてたら占領統治はうまく
行ってただろうか。
 
ベトナムを例に出すまでもなく、歴史上、空爆で勝敗が決した事は
ないでしょうし(原爆は例外でしょうね)人民の海の中で侵略者は
生き残れない(中国の日本軍)、首都陥落は終わりではない(モス
クワ)アメリカには戦史研究所はないのでしょうか(冗談)
私は、戦争術は全くの素人ですが、判りませんね。
 
以上、素人一読者の感じた事です。
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kiyosidayといいます。
先ほど、「(アメリカが)現代の十字軍気取り」で投稿しましたが
、関連で、このとき日本は「中国と共同戦線で解決に当たるべき」
と思いますが、理由は、日本も中国も十字軍(キリスト教とも、イ
スラムとも)と無関係だからです。
「イギリスと組んでアメリカを説得する」などとテレビで解説して
いた識者もいますが、頓珍漢な気もします。
日本一人では何も出来ん。アメリカ、イギリスは当事者、フランス
、ドイツ、ロシアも全部キリスト教国(少なくともイスラムから見
れば)
後、組めるのは(両方に近づけるのは)中国しかない、
 
しかし、何処にもこんなこと言う人いませんね。
もしかして、Fさんご存知でしたら、そんなこと言ってるサイト教
えてください。

あつかましく、お許しください。
以上です。
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(Fのコメント)
この指摘は、もっともです。西洋対非西洋の戦いになる可能性が、
高いからです。イスラム圏のマレーシアやロシアもイスラム教が多
い。ASEAN(マレーシア、インドネシアを除く)と日本、イン
ド、中国などの非イスラム、非キリスト教の諸国が、米国とイスラ
ム諸国の両方を止めたいと、十字軍からの怨念が再発する可能性が
ある。

しかし、もう1つの戦いがある。米国国内のネオコンの一国主義対
パウエルの国際主義の戦いです。この国際主義に英独仏などEUは
一致している。このため、一国主義対国際主義に日本はどうかかわ
るかを検討する必要がある。
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件名:ロシア  
ロシアでは 8割の人々はイラク応援だそうです。
キョウノ
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(Fのコメント)
これはイラク情報を和訳していてもよく分かる。ロシアがシリヤや
イラク、イランに武器を補給していたし、軍事援助もしていた。
反米諸国へ武器を輸出して、ロシアは利益を受けているのですから
どうしても、反米的になる。武器にはその効果的な使用、戦術も必
要であるので、その講義をする軍事援助が必要になる。
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kusimitama
「單なるモンキー」
 高坂相
先の大戰の敗戰後、日本はアメリカの屬國になりましたが、東南アジアや中東やアフ
リカなどでは、「日本は單なるアメリカのモンキーではない」と思はれてきました。
それは、かつての日本が、有色人種として初めて歐米列強に挑戰し、日露戰爭で勝利
を收め、植民地解放を謳つて世界を敵に廻して大東亞戰爭を戰つた(最後には特攻隊
まで飛ばして徹底的に戰つた)といふ物語を持つてゐたからです。

この物語は、勝者の側の聯合國史觀では否定されてゐましたが、日本の一部と非西歐
世界の一部では共有されてゐましたし、勝者の聯合國側からも、日本はその歴史ゆゑ
に畏れられてゐました。「敗れたのは仕方がない、日本は非白人世界の代表として白
人世界にチャレンジしたのだ、そして世界の價値觀を變へた」と思つてくれてゐる
人々が、少し前までは世界中にゐたのです。

へらへらした日本人の背後には、幕末の武士や帝國軍人や特攻隊の影がちらついてゐ
た、と言つてもよいでせう。先祖の御靈のおかげで、「日本人は、今はアメリカ從屬
を忍んでゐるけれど、彼らの本當の姿はこんなものではない」と思つてもらへてゐま
した。このやうな日本に對する評價は、先人の遺産として我々に與へられてゐたので
す。

勿論、戰後の經濟復興も、日本人の團結と努力と民族的ポテンシャルとを世界に知ら
しめたものであることは言ふまでもありませんが、經濟で頑張つた日本人は、幕末の
武士や帝國軍人や特攻隊と連續した大和魂の持ち主として見られてゐたのです。アメ
リカに敗れた日本が、その後の冷戰構造の形成に於いて對米從屬をしたことも、已む
を得ない選擇として理解されてゐました。これは日本人自身にとつてもさうでした。

しかし、この度のアメリカのイラク侵攻を積極的に支持した日本政府の對米追隨は、
この近代の遺産を、無にしたものと見ることができます。せめて「理解する」とだけ
言つておいて、人道支援等日本ができることをやつておけばよかつた。日本政府の對
米追隨を支持した保守派は、もうなかなか大東亞戰爭や特攻隊を稱揚できないでせう
(最初から大東亞戰爭を無謀な戰爭とのみ捉へ、特攻隊を野蠻な愚行と裁斷してゐた
連中は別です)。

いや、對米追隨派だけではなく、對米追隨に反對してゐる者も、日本の現状では特攻
隊の子孫を名乘ることは恥づかしい。「アメリカのモンキーが何を言つてやがるん
だ」と嘲笑されるだけだからです。これは、とりわけ若者にとつては氣の毒な状態で
す。逆に、過去の拘束から解放されて、迷ひなくグローバルスタンダードを追求でき
る契機になるとも言へるかもしれませんが。

近代の遺産を使ひ果たした日本人は、これから新たに仕切り直さなければなりませ
ん。これからは、たとへばこれまでは尊敬をこめた親日であつた中東や東南アジアの
イスラム教徒から冷やかに見られることになります。支配者側についた日本人は、こ
れからはアジアや中東の人々から、ある種の仲間意識によつて腹を割つて話して貰ふ
といふことも難しくなるでせう。そもそも今後も世界に「親日派」がゐてくれるのか
どうか、微妙なところです。親日になつたところで仕方がないからです。

勿論、日本には古い歴史があります。しかし、素晴らしい古代文明を持つてゐるから
と言つて今のギリシャが別に尊敬されてゐないやうに、またチンギス・ハンの子孫で
あるからと言つて今のモンゴルが別に畏怖されてゐないやうに、どれほど輝かしい歴
史を持たうとも、民族の意志を今に繼いでゐない日本人が畏敬されることはなくなり
ます。日本の歴史は、現存する日本人とは切り離された歴史學の對象として扱はれる
やうになるでせう。これからの日本人は古へのロマンに思ひを馳せるしかありませ
ん。

親米派には、命あつての物種と澁々對米從屬を選んでゐる消極的親米派と、アメリカ
を盟主とした新帝國主義秩序の中で繁榮を享受するといふ將來像を描いてゐる積極的
親米派とがゐるやうです。現状ではイギリスが番頭なら日本は丁稚(金持ちの丁稚)
なので、何とかイギリスと竝ぶ番頭に出世したいといふのが積極的親米派の夢でせ
う。多くの日本人は、このビジョンに乘つて行くしかないのでせうか。

日本人は近代の遺産ゆゑに尊敬されるといふ財産を失ひましたが、アメリカをバック
にしてそれなりの經濟力を維持できれば、そのパワーに對しては一目置かれるでせ
う。さらに集團的自衞權を行使してアメリカの武力行使に參畫すれば、アメリカの一
部として世界から脅威を感じて貰へるでせう。さうなつたら、名譽白人よろしくアメ
リカ人になつたつもりで威張る奴らも出て來るかもしれません。

このやうな状況は一種の「墮落論」的状況ですが、我々はこの現實から生きて行くし
かありません。雌伏して、祖先の心に思ひを致しながら、遠い將來に向けて日本人の
理想(自分たちの物語)をもう一度構築し直すしかないでせう。

民族の過去を繼承する集團といふ實體がないので、これからは個人の仕事が大切にな
ります。體制の推進する愛國心教育などといふ腑拔けたものにはろくな效果はないだ
らうし、惡くすれば人間を萎縮させるだけで却つて有害でせう。平和主義を據り所と
する愛國心も不可能になりました。その意味では、右の據り所も左の據り所もなくな
つたと言へます。

とにかく、アメリカの單なるモンキーである限り、日本人は輕々には大東亞戰爭や特
攻隊を稱揚するやうなことは言はぬがよい。それが廉恥心といふものです。
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(Fのコメント)
日本は単純な反米ではだめです。軍事力強化も安全保障のための
集団安保もできない日本は、覇権国家でも次期覇権を狙える国家で
もない、反対に経済力があるため、北朝鮮のような失う物が無い国
家でもない。
このため、日本の豊かさを保障するためには、国際状況を見て賢く
行動する必要がある。
このため、激動な時代には単純な反米も親米もよくない。今までの
主義に囚われずに、状況を見て心を自由にして、対応する必要があ
るのです。このことに右も左もない。日本の将来が掛かっている。


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