1013.ヨハネスサミットと外交について



ヨハネスサミットを見ておこう。これには、いい記事があるので、
それを参考にする。    Fより
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(NGOの報告)
今回のサミットで得たもの、失ったもの。
http://eco.site.ne.jp/info/index.cgi?code=00087
2002/09/03
ヨハネスブルグ
 
今回のサミットの主要成果である世界実施文書。WTO支配を押し
留め、持続可能な生産・消費様式へ転換する足がかりはつかんだ。
が、エネルギー転換、人権、市民社会の参画などでは課題も多い。

ヘルスケアと人権を巡る一部のパラグラフを除き、世界実施文書の
内容が固まった(9月3日夜10時時点)。経済のグローバル化を推
し進めるWTO(世界貿易機関)やアメリカの影が交渉全体を支配
するなかで、今回のサミットで前進したものとしなかったものを
世界実施文書の論点ごとに概観する。

まずは、得たものから。

その1:WTO支配を押し留める
 WTOの多国間環境協定支配を決定づける議長案が出され、交渉
担当者が決着ムードに入りかけたその瞬間、エチオピア代表が反旗
を翻した。自分の良心としてこの文言を許容することはできないと
。それまで孤立していたノルウエーが、これで息を吹き返し、キリ
バスなどが後に続き、ドミノ効果でこの表現が削除された。傍若無
人の無敵艦隊WTOが始めて負けた瞬間だった。

その2:持続可能な生産・消費様式への転換で前向きな表現
「10年計画を促進する」という文言は、弱い表現ではあるが、とに
かく目標年限を定めて産業や消費を誘導するという考え方は残った
。さらに、ライフ・サイクルアプローチが入ったのは前向きに評価
されていい。

その3:生物多様性
採択された案は「2010年までに、生物多様性の驚異的な喪失スピー
ドを反転させる」(国連生物多様性条約第6回会合、今年6月)の
ものよりも弱い表現になっている。しかし、とにもかくにもターゲ
ットが入り、しかもアメリカが賛成したことは次につながる成果と
いえる。さらに、非合法な過剰漁業への補助金を削減し、生態系ア
プローチの採用を促す文言が入ったことも明るい材料だ。

その4:貧困削減
貧困削減を目的とする「世界連帯基金」がボランタリーな形であれ
残ったことは、未来に芽を残した。

その5:情報公開・市民参加・司法へのアクセス
国内レベルでの整備を促す、パラグラフ111と146が残り、しかも
それを進める9カ国と世銀、国連開発計画、30のNGOによる約束文
書ができたことは、実行への貴重なステップである。多国間での整
備を促すパラグラフ151は、各国での条件整備が進めば、再び、合意
に向けて議論できる時ができるに違いない。

その6:京都議定書が残ったこと
次いで、前進がなかった分野は、以下の通り。
再生可能エネルギーの数値目標。持続可能な農業・有機農業や公正
貿易の役割の位置付け。遺伝子組み換え食品の正否を明確化。予防
原則、企業責任、人権分野、国際金融システムの規制の分野で前進
がなかったこと。

最後に、3日の本会議場やロビーでの各国首脳の評価を掲載する。
反グローバル化の視点からの発言が多い。
「京都議定書が残って良かった。これは、地球を守る我々の武器。
それに批准しない先進国は理解できない」(メキシコ大統領)

「グローバル化は市場の失敗でもある。今後は、グローバルな炭素
排出税の創設が必要。地球全体の税制を変えて、パラダイムシフト
することが肝要。軍事費の大幅削減を促す文言も必要」
(前コスタリカ大統領)

「現在の国際金融システムを規制するだけでは不十分。マイクロク
レジットなど非営利金融を充実させることが必要。無制限の貿易自
由化は限界に達した。自然にもう一度戻る、そんな哲学を案文に入
れることが必要」(国連開発計画高官)

「新しい資本主義へ移行するためのパラダイムシフトが必要」
(中央アメリカ機構代表)

「世界は平等にはできていない。力が平等でない国同士を平等に扱
うWTOに国連を支配させてはいけない」(エクアドル大統領)

「非営利組織を育成することが持続可能な発展に欠かせない。そう
した案文が少ない」(スーダン政府高官)

「グローバル経済を健全化するためにもグローバルなNGOが必要
」(イスラエル政府高官)

「先住民やローカルな知恵で、新しいコンセプトを作り、平和、
透明性、繁栄を築きたい。その面では案文に不満が残る」
(グアテマラ政府高官)
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9月2日
皆様、ごぶさたしております。

ヨハネスブルグのインターネットカフェで用意しているパソコンに
は、日本語サポート機能が入っておらず、今日やっと日本語の打て
るパソコンを日商岩井の事務所で借りています。

おかげさまで、水俣から参加した患者さんたちも無事に帰国し、今
回の仕事の大部分がおわりました。

黒人居住区の民宿に宿泊したのは、とても正解でした。おかげで現
地の人たちとも交流できましたから。

とりいそぎ近況をご報告いたします。

得丸
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週刊新潮にヨハネスサミットに参加した日本人を批判した記事があ
るそうです。僕はまだ目を通していませんが、話題になっています
ので、よかったら読んでみてください。

僕はNGOの集るNASRECにばかり行っていましたので、会議
の様子はおいかけていませんでした。

どんな成果が出たのか、興味深いことではあります。

得丸
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(Fのコメント)
得丸さんは、ヨハネスサミットに参加するNGOのメンバーの一員
として、主にNGOの皆さんの活動を円滑にするための支援で行っ
ていました。このヨハネスサミットの裏方の事情は、報告していた
だきたいですね。
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件名:中東和平  
"A Start Toward Peace"と題するイスラエル・パレスチナ衝突に関
する事実調査委員会メンバーであるミッチェル元上院声義員及び
ラドマン元上院議員の寄稿文の概要は以下の通り。

イスラエル及びパレスチナ領土における暴力は、過酷で、危険な、
かつ混乱させるようなサイクルで拡大している。我々がメンバーと
なっている事実調査委員会は、ブッシュ大統
領に対しその結果を提出した。本日公開される我々の報告書は、当
事者が暴力の連鎖を断ち切り、相互信頼を回復し、紛争解決を目的
とした交渉に戻るのに貢献すると我々か希望する提言を含んでいる
。我々は、当事者が断固とした行動をとれば、これらの目的が達成
し得るものと信じている。

早急な目的としては、暴力の終結でなければならない。政治的指導
者が断固として行動する時である。我々の報告書の中で、我々は当
事者が暴力の即時かつ無条件停止を実行するよう求めている。

暴力の終結に向けた取り組みの一部は、暴力の防止とテロ対策を
目的としたイスラエル政府とパレスチナ当局の治安上の協力を直ち
に再開することを含むべきである。

暴力の終結に向けた早急な行動をとる他に、当事者は相互信頼を回
復する必要がある。我々は、当事者が信頼を回復するのに講じ得る
15以上の措置を提言している。これらは、扇動を非難し反対するこ
とや、ユダヤ教徒、イスラム教徒及びキリスト教徒にとって神聖な
聖地を守るという当事者の努力を含んでいる。我々は、パレスチナ
当局が武装者に対しイスラエル居住地への発砲をさせないよう求め
、イスラエル治安部隊に対しては、非武装のパレスチナ人デモ参加
者に対して致命的でない対応を行うよう求める。

更に、我々は、具体的な行動を通じ、テロが非難すべきものである
と同時に容認できないものであり、テロ活動を防止するよう試み、
管轄内で犯行を行った者を罰することをパレスチナ当局か明らかに
するよう呼びかける。また、我々は、イスラエル政府かパレスチナ
地域の閉鎖を解除し、イスラエルで雇われていたパレスチナ人労働
者が職場に復帰するよう認めることも勧告する。その代わりに、
パレスチナ当局は、イスラエル国内で雇われた労働者がテロに関与
する組織及び個人との関係がないことを確保するためにイスラエル
当局と協力しなければならない。

 信頼醸成に関するもう一つの提言は、イスラエル政府が西岸及び
ガザ地区における全ての入植地建設を凍結することである。入植地
拡大はパレスチナ国家をもたらす紛争解決に関する交渉へのイスラ
エルの意図に対する、パレスチナの信頼を損なうものである。
 入植地拡大が紛争解決にとって障害であるという我々の見解は、
過去四半世紀に及ぶ米国の政策に一致している。

我々は、これら全ての措置が相互信頼を回復し、決断力のある交渉
を再開するのに当事者を支援するものと信じている。しかし、如何
なる措置についても、他の措置と関連づけられたり、あるいはその
前提条件と見なされるべきではない。当事者間の敵意、緊張及び不
信のしベルが高いことから、しれらの信頼醸成措置を行うタイミン
グと順序は極めて重要である。これは当事者によってのみ決定され
得るが、我々は、彼らがそのプロセスを直ちに開始するよう促す。

イスラエルとパレスチナは長年にわたる残虐な紛争、政治的対立及
び経済不振によって特徴づけられた将来の見通しに直面し、奈落の
底を見つめている。米国をはじめとする諸国は、暴力の即時かつ無
条件停止を要求し、和平に向けて勇気ある、かつ政治的に困難な措
置を講じるのにイスラエルとパレスチナを支援することによって、
その混沌から抜け出し、交渉のテーブルに戻る方法を見出す支援を
行うことができる。それは容易ではないだろうが、可能なことであ
るし、またそうすべきものである。
Kenzo Yamaoka
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件名:日本人の主権意識の麻痺こそが問題  
▲本筋から批判を外すな
この一年、外務省や防衛庁に対する国民の風当たりは強かった。
日本の外交や防衛の基本がダメになった根本原因は、外務省や防衛
庁自体の問題というよりも、私は戦後のわが政府や国民が国家の主
権というものに関するリアルな感覚を失ったことにあると考えてい
る。
この根本問題をしっかり見据えるべきであり、外交機密費とか大使
館の建設費が無駄遣いであるとか、大使館にプールやテニスコート
を作っているとか、大使がサウナやゴルフなどで優待されていた批
判は、気持ちとして分かるが外交の本質論ではない。

中国の日本領事館への北朝鮮からの亡命者の駆け込み事件の時は、
およそ緊迫感を欠いた日本外交官の対応に、さすがに外交や主権の
問題に鈍感な日本の世論も唖然とした。

しかし、私も含めて、誰であれ今の日本人があの立場に置かれたと
き、あれ以外の対応ができたかどうか疑問である。おしなべて日本
人は、国家とか主権の問題にまったく鈍感になってしまっているか
らだ。

外国の主権領域である大使館や領事館に亡命者が文字通り命がけで
飛び込んでくるのは、主権が絶対的なものであると信じているから
だ。しかし日本側にはその意識はない。
日本の主権を脅かした不審船との銃撃事件の後も、日本政府は引き
揚げ調査に躊躇した。
主権の意識が希薄だからだ。北方領土問題に関して二島先行論に引
っ張っていこうとした鈴木宗男氏の外交私物化の背後にも、主権問
題を蔑ろにするわが国の政治風土がある。

▲国家の存亡にかかる事柄
二十一世紀はボーダーレスあるいはグローバル・ガバナンスの時代
であって、国民国家の主権や領土という観念は博物館行きだという
見解もあるが、完全に間違いである。

今でも世界の秩序は最終的には主権国家やその連合などによって
保証されているし、これが簡単に変わることはない。
欧州統合と言っても、フランスは独自に開発した核技術を絶対に
ドイツと共有しようとはしないし、これが主権の本質なのである。

主権は国家の存亡に関わる事柄であると同時に、しばしば個人や市
民の命に関わる問題である。それゆえビザの発行という行為が、
ときに個人に対する生殺与奪の権と化するのである。

外交官も防衛関係者も対外的にこのような主権を担っているのであ
り、常に「前線」に立っているのだ。そのような緊迫感と信念を有
しているか否かが今問われているのである。
かって誇り高き外交官は後輩に対しては、「国外に出たら金を残す
な、お前の財産はお前の人脈であり、使える金があれば人脈づくり
のためにすべて使え」と諭したものだ。

外交機密費とは本来このよなことのために使うものであろう。
外交官が自らの使命をはっきりと自覚し、このような目的のために
外交機密費が使われるのであれば、私は外交機密費は数十億円など
というはした金ではなく、幾桁も大幅に増額すべきだとさえ考えて
いる。独自の情報もなくして、独自の外交も安全保障もありえない
からだ。

▲外交施設は国のシンボル
ロシアに関して言えば、エリツィン大統領はクラスノヤルスクで橋
本首相とサウナ会談をしようとした。サウナやテニスコートなどの
施設を大使館が所有することは、国際的には何ら例外的なことでは
ない。また、大使館自体の建物や大使の公邸が立派であることも華
美にすぎない限り許容される。

というのは、それらは国のシンボルであり、外交の場だからだ。
外交の目的が自国の存在感を少しでも大きくすることにあるとすれ
ば、シンボルはある程度立派でなくてはならない。少なくとも青函
トンネルや瀬戸内海に三本も橋をつくる無駄に比べると、税金を
ドブに捨てるようなものではない。

こうしたことはいわば国際的常識によって判断、処理すればよいこ
とであって、この面ばかりに焦点を当てると、本筋を見失うことに
なる。

小村寿太郎は日露戦争の講和条約締結のとき、自国民に殺され覚悟
で信念を貫いた。
外交関係者が、辞表を懐にいれてでも信念を貫こうとするするので
あれば、そして身体を張ってでも主権を守ろうとする気概を有して
いるのであれば、横領や腐敗は論外であるが、外交官たちがたとえ
様々な特権を有していたとしても、それを批判する者はいないであ
ろう。逆にそれらの信念や気概がないとき、当然、全ての特権や贅
沢は批判されるだろう。

以上産経新聞(正論)青山学院大学 国際政治経済学部長 
                        袴田 茂樹氏
Kenzo Yamaoka
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件名: 米国製憲法の奥の深さ  
ハワイ王朝史外伝 米国製憲法の奥の深さ 
 外交評論家の岡崎久彦氏と話していて、よく注意される。「あの
ねえ、『アメリカ人』でくくれるようなアメリカ人はいないんだ。
彼らは徹底した個人主義で、みな考え方が 違うんだから」 
 強いて共通点を挙げれば、民主主義を重んじ、個人の権利を抑圧
する者には強く反発する、そういう人たちだという。 

 でも、浅学を顧みずに言わしてもらえば、「これがアメリカ人」
と思えるような共通項がほかにもいくつかあるように思う。 

 例えば「ポインセット」型米国人である。モデルのJ・ポインセ
ットは十九世紀、駐メキシコ公使を務めた外交官だが、一般には
クリスマスのころに葉を赤く染めるメキシコの花木を持ち帰ったこ
とで知られる。ポインセチアの名は彼にちなんだものだ。 

 しかし、彼の本当の業績は植物図鑑には載っていない。彼はメキ
シコ政府に今のテキサス、カリフォルニアなどを売れと迫った。 

 それが拒絶されると、今度はメキシコ政府内の対立勢力を支援し
て国の分裂を図った。
 国が乱れれば、それを口実に米国が介入し、あわよくば領土だっ
て取れるかも、という算段だった。 

 メキシコ政府はそれに気付いて追放した。彼のアイデアはテキサ
スで活かされ、入植した米国人が「自由」を求めて独立運動を起こ
し、テキサス共和国を樹立する。そして米国が併合、となる。 

 この型の米国人はその後も数多く登場する。米西戦争のおりに
スペイン領フィリピンの独立運動家アギナルドを支援したマッキン
リー大統領もその一人だろう。 

 やがてフィリピンは解放されるが、マッキンリーは独立の約束を
反故にし、アギナルドの一派を徹底掃討してしまう。 

 コロンビアの一州だったパナマが二つの大洋を結ぶ運河の最適地
として浮上すると、同じように自由を求める反政府勢力を育て、
軍事介入して独立させた。その見返りは半植民統治と国を分断する
形の運河用地の接収だった。 

 つまり、ポインセット型とは表向き「虐げられた外国人に自由の
手を差し伸べる」(ロサンゼルスにある米西戦争記念碑)善意のポ
ーズを取りながら、実はその裏で領土的野心など自分の欲望を満た
そうとするタイプをいう。 

 ジョン・スティーブンス型というのも多い。モデルは十九世紀末
の駐ハワイ王国公使になる。 

 その当時のハワイ国王カラカウアは外遊の道すがら、日本に立ち
寄り、次の次に王位に就く予定のカイウラニ王女の婿を日本の宮様
からほしいと申し出ている。「さもないとハワイ王国は米国に呑み
込まれる」という危機感をこの国王はもっていた。 

 明治天皇はしかし、その申し出を断った。明治十四年、まだひよ
こ国家であり、米国と対決する力も備わっていなかったからだ。 

 国王の心配はその数年後、事実となった。王国の経済を握り、
閣僚の多くを占めるようになったハオリ(米国系白人)がある日、
彼らの私設軍隊ホノルル・ライフル部隊を出動させて国王に新しい
憲法に署名するように迫る。 

 世に「ベオネット(銃剣下の)憲法」といわれるものだ。国王に
は署名を拒む力はなかった。以下はその憲法の骨子である。 

 ・国王は国家の象徴にして、国事をつかさどる。 

 ・国王は議会の承認がなければ閣僚を罷免できない。 

 ・国王は議会の採択した法案にサインする。拒否権はない。 

 ・選挙権は高額納税者に限り、アジア系市民は除く。 

 最後の一項は、貧しいハワイの島民と、当時、総人口の四〇%を
占めた日本からの移民を除外するためのものだった。 

 しかし、次のリリオカラニ女王は、少なくとも王国の民である島
民には選挙権を与えるべきだとする憲法改正を打ち出した。 

 ここにスティーブンス公使が登場する。彼は米巡洋艦ボストンを
呼び寄せ、砲口を王宮に向けて女王を退位させた。王国は消滅し、
ハワイ共和国が誕生する。 

 女王は芸術をたしなみ、あの「アロハオエ」を作曲した文化人だ
ったが、スティーブンスは「残忍で淫乱な女王は、専制君主制を復
活させようとした」、「ハワイの人々は無慈悲な絶対君主制でなく
民主的な立憲国家を望んでいる」と介入を正当化した。ハワイ共和
国はその後まもなくして米国領に併合される。 

 企みごとを「美しい言葉で飾る」手法に加え、ここでは陰謀のた
めなら「よその国の憲法もいじる」新しい手法が登場している。 

『アメリカ人』はその半世紀後にも、よその国の憲法を作った。
「彼らは四つの島に閉じ込めて消滅させねばならない」とF・ルー
ズベルトが遺言した国である。 

 作ったものは民主的で、米国の憲法よりすばらしい、と草案づく
りをしたベアテ・ゴードンが参院憲法調査会で自賛している。 

 でも、あの人たちが過去に示してきた習性を考えると、今度は
陰謀抜きでいいもの作りましたといっても、ちょっと額面通りには
受け取れないような気もする。 

 何より、王国を滅ぼすために書かれたハワイの憲法にその文章が
酷似しているのはなぜか、ちょっと気になる。 
Kenzo Yamaoka
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「平和の枢軸」 

悪と正義のバランスをとる「平和の枢軸」 
国際平和協会理事 中野 有 著

 アラスカで開催された国際会議に出席し、北東アジアについての
思いを語る機会に恵まれた。そこで、ブッシュ大統領が一般教書演
説で語った「悪の枢軸」に対抗し、「平和の枢軸」についてのスピ
ーチを行なった。
 9.11の悲劇を2度と繰り返さないためにも、また国際テロの
根源を挫くためにも、悪の枢軸である国際テロと関連がある国々に
対し、強硬姿勢を示すことも大事であるだろう。9.11の同時多
発テロをきっかけにアフガン戦争が発生した。21世紀型の戦争は
、国家間の大規模戦争でなくテロをきっかけとした途上国を巻き込
んだ戦争であり、最悪の場合、民族、宗教と普遍的に広がる無気味
な戦争であると考えられる。悪があれば正義がある。その正義の役
割を果たすのがアメリカであろうか。アメリカは、軍事力
 により悪の退治を目指している。もちろん、悪と戦うためには軍
事力が不可欠である。
 しかし、テロを根絶するためには軍事力プラスアルファーの正義
がなければいけない。

 世界第一と第二の経済大国であるアメリカと日本が、日米同盟を
基盤として21世紀型の戦争に対処するため、どのような日米の役
割分担が考えられるのであろうか。その答えを導くにあたり、ブッ
シュ大統領の日韓中の3カ国訪問が参考になる。東京で「悪の枢軸
」の支持を取りつけたブッシュ大統領は、ソウルでは金大中大統領
の「太陽政策」の支持を表明した。また、北京では江沢民国家主席
に、北朝鮮の金正日国防委員長との会談の調整を依頼したと言われ
ている。このように、ブッシュ大統領は北朝鮮に対し「悪の枢軸」
の一環として強硬な軍事的なスタンスを示すと同時に融和政策をも
表している。そこには、大いなる矛盾があるようだが、「飴と鞭」
の幅を利かせた、軍事政策と融和政策の両端を組み合わせたと考え
れば、アメリカの北朝鮮政策が見えてくる。

 日米同盟に関し、周辺諸国は恐らく日本が考えている以上に、
日本が再び軍備増強に走らないための必要条件として米軍の駐留を
認めている。日本は米軍に相当な資金を提供し、平和の維持という
「酸素」の提供を受けている。日本が米軍をサポートすることは、
 日米同盟の維持のためにも重要である。加えて日本が、ブッシュ
政権の対北朝鮮政策に見られる「飴」の部分を積極的に推進するこ
とは、軍事的関与でなく経済協力というソフトの分野で朝鮮半島の
安定に貢献できるという意味で重要である。日本は大陸に進出し、
戦争を導きそして敗戦と被爆という人類史上稀なる大きな犠牲を被
った。犠牲の上に平和を追求する国家が成立したのである。このよ
うな20世紀の日本の大陸への関与を鑑みると、日本は北東アジア
の安定と発展のために、現在の優柔不断な態度でなく、更なる建設
的な関与が不可欠である。

 ブッシュ政権が「悪の枢軸」という北朝鮮へのテロ撲滅の作戦に
より、北朝鮮の選択のオプションが狭められてきており、その結果
として北東アジアの地政学的変化が現れようとしている。そこで、
日本はこのタイミングを生かし、旧満州地域を含む歴史的清算を行
うためにも北東アジアに夢のある開発の「グランドデザイン」を描
写し、アメリカが手の届かない北東アジアの開発に協力することが
重要であると考える。日本の役割は、北東アジアの多様性を認め、
北東アジアの市民が共に北東アジアの発展を享受できる共生圏を構
築することにある。

 そのような活動こそが「平和の枢軸」となるのではないだろうか
。日米の2国間の関係がしっかりしているから日本は、テロの根絶
に役立つだろう貧富の格差の縮小等を目的とした経済協力の活動に
集中できるのであろう。悪と正義のバランスをとるために「平和の
枢軸」の一翼を担う活動を推進すべきであろう。アメリカが「鷹」
なら、日本は平和を導く「白い鳩」である。「平和の枢軸」を提唱
することにより、日米の役割分担が明確になるのみならず、21世
紀型の戦争を未然に防ぐ市民が参加できる活動に発展していくので
はないだろうか。
Kenzo Yamaoka
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英国式無銭外交 日本の褌で老かい相撲 

アフリカは七〇年代までアジア諸国よりGNPが高かった。 
 それも当たり前で、シエラレオネやボツワナなんてあまり聞きな
れない国でもダイヤがざくざく出て、コンゴでは金も採れる。 

 豊かな地下資源に加えて、土壌も肥沃とくる。貧乏になるのが難
しいぐらいだったのが、あのオイルショックのころからにわかに
がたがたになっていった。 

 一つには東西冷戦もある。日本となじみの深いエチオピアはハイ
レ・セラシエ皇帝が追われて、収拾もつかない混乱と飢餓が続く。
サウジ王族のプレースポットだったスーダンもしかり。 

 部族闘争もある。ウガンダに始まって、コンゴ、ルワンダでも殺
し合いが続く。 

 紛争があれば、あの天才詩人ランボーがやったように武器を売っ
て金もうけする輩も出てくる。 

 ストックホルム国際平和研(SIPRI)によれば、ここに群が
ったのは米ソのほか、仏、中、英の五カ国になる。中でも英国は
商売熱心というか因業というか、ボツワナ、ケニア、カメルーンな
どいわゆる「サハラ以南の最貧国」にも販路を広げ、いまだに年間
五億ドル前後を売り上げている。 

 面白いことにそういう商売熱心な国にかぎって、「紛争や飢餓に
あえぐ国々への人道的支援」を声高にいう。それでIMFからカネ
を引き出し、日本にも「国際貢献してみたら」なんていう。 

 で、日本は素直に「サハラ以南の最貧諸国」に借款や技術支援を
続けて、今、返してもらっていない二国間ODAの債権が九十億ド
ルもたまっている。 

 これに次ぐのが、そのあたりをかつて植民地にしていたフランス
で五十億ドル。しかし同じように植民地王国を誇ってきた英国はた
だの一千万ドルだけ。やっぱり因業という印象はぬぐえない。 

 ところが、その紛争と飢餓に加え、もっと深刻な問題が九〇年代
に表面化した。エイズである。 

 世界保健機関の発表では問題の「サハラ以南」の国々では
約二千五百万人、十人に一人があのHIVに感染しているという。 

 例えば旧英国植民地のザンビアでは「約四万人の学校教師のうち
毎年一千人がエイズで死に」(外務省経協局)、教育システム自体
が危機に瀕している。別の役所や企業も同じで、日本がいくら人的
資源を育てても成果が出る前に消えてしまう。「もはや国家として
の機能も失いつつある」ともいう。 

 当然、ODAの返済は行き詰まるし、英、米にすれば、せっかく
売った武器の代金回収もおぼつかなくなるわけだが、それ以上に深
刻なのが、そういう国々の人々が旧宗主国を頼ってロンドンやパリ
に続々やってくることだ。 

 「英国やフランスで、社会保障費が爆発寸前」(同)に陥ってい
るのも、そのフランスがかつて出入り自由だったマリ、セネガルな
ど旧植民地からの移民制限をこの九〇年代にどんどん強化していっ
たのも、そういう裏事情があってのことである。 

 英国も手を打った。今にして思えば、実にスマートなやり口で、
その一つが九六年に英国で誕生したNGO「ジュビリー2000」
だった。その掲げる看板がいい。「サハラ以南」の極貧諸国が先進
国ODAの債務支払いに苦しんでいる。「このさい債権国は債務を
帳消しにするべきだ」と。 

 そして「帳消しで生まれた資金を教育や医療に使う」(六月十七
日付朝日新聞)よう、関係国に働きかけをしていくというのだ。 

 でも、前述したように最大の債権国は日本だ。要するにこの運動
は日本に債権放棄を迫る、というのが真のねらいになる。沖縄サミ
ットでは世界中からこのNGOの活動家が集まり、日本の出方次第
ではこの前のシアトルみたいな騒ぎも起こす、という話も聞く。
  
これに続くのが、昨年末のクレア・ショート英国際開発省長官の演
説である。彼女は今のODAの仕組みが歪んでいる、日本などは
ヒモ付きのODAで援助国を食い物にしている「無慈悲な恐竜だ」
とまでいう。そして「どうでしょう。ODAを各国がばらばらに行
うのではなく、その資金を公正な機関が預かり、最貧国のためにな
る形で運用するというのは」。 

 外務省に言わせれば、彼女のいう日本のヒモ付きローンは一割も
ない、「ろくにカネも出さずによく言うぜ」と悔しがるが、そうい
ううそを真実らしく、かつ説得力豊かに言いおおせるところが何と
も心憎い。 

 おかげで、というか、事前の打ち合わせ通りというか、クリント
ン大統領も「エイズ問題は国際協調で」と言い出し、今度の沖縄サ
ミットでは彼女の主張も「ジュビリー2000」の運動もそのまま
通りそうな雰囲気なのだ。 

 そうなれば英国は日本のODAで英連邦最貧国にばんばん病院を
作れ、同時に英本国の財政負担も大幅に減らせることになる。 

 さらに日本の債権帳消しにでもなれば、そういう国々の武器代金
滞納もなくなるし、もっと武器を売り込める期待も生まれる。 

 外交とは、いかに格好よく、いかに自国に都合よくコトを運べる
かの戦略だとショート女史はほのめかす。日本語に訳せば「いかに
美しく人の褌(ふんどし)で相撲を取れるか」ということである。 
Kenzo Yamaoka


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