6235.プーチン戦争の目的は



ウクライナ戦争がどこまで続くのか、ロシア軍がセベロドネスクで
猛攻をしてくるが、ウ軍も反撃をしている。ロシア軍もウ軍も、こ
こに主要戦力を集めて攻防をしている。今後を検討する。
                      津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、5月19日は31,253
ドルに下がり、6月3日は32,899ドルで、6日は16ドル高の32,915ドル
、7日は264ドル安の33,180ドル、8日は269ドル安の32,910ドル、9日
は638ドル安の32,272ドル、880ドル安の31,392ドル。

5月の消費者物価指数CPIは前年比8.6%で、市場予想8.3%を上回り、
FRBの大幅な0.5%利上げは、9月以降も続くとの見方が強まったこと
で、株価は大幅な下落になった。リセッション(景気後退)リスク
も高まり、11月の中間選挙で過半数議席を失う可能性が与党民主党
に出てきた。

インフレのピークは過ぎたという見方も前月比1.0%になり、予想0.7
%、前月の0.3%増より大きく、その見方も否定された。

バイデン大統領もインフレ対策を最優先する経済政策にシフトする
として、シェールオイル増産、製油所能力拡大など石油供給増加策
も行う方向にした。脱炭素経済を一時棚上げにするようだ。このイ
ンフレの大きな原因は原油価格の上昇であり、その価格は120ドル/
バーレルとなり、この価格を下げる必要があるからだ。

インフレ抑制ため、9月の利上げは0.75%になるという見方も出てき
ている。このようなことで、10年米国債金利も3.15%と上昇して、1
ドル134円にもなっている。もう1つ、資産売却も6月から始まり、
9月には月950億ドルづつ圧縮する。ということで、インフレとの戦
いは続くことになる。

しかし、F&Gインデックスは28と高いままであり、5月12日の7から戻
しているが、個人投資家は、パウエルFRB議長が何とかしてくれると
いう希望から、株を売っていないことで、まだ底を確認できない状
態である。このため、一段の株安が起こる可能性が高い。VIX指数も
28であり、40以上ないと底ではないから、まだまだ底に着くまで、
時間がかかるようだ。

現在は、株価が下落する逆金融相場であり、市場でも弱気の見方が
出てきて、SP500は2900Pまで下げるという予測も出てきた。今まで
は、SP500が3500Pになれば、PKOの発動になると言っていたが、その
基準が下にシフトした。現在SP500は、6月10日は3900Pであり、最高
値は1月4日の4818Pであるので25%近く下がっているが、2900Pまで下
げると、66%の下落となる。

ECBもドイツの8%以上の物価高で、7月に0.25%の利上げを行うとラガ
ルドECB総裁は述べ、同時に7月から量的緩和を中止するとした。

一方、日本の黒田総裁は、揺るぎのない姿勢で金融緩和を継続する
ということで、円安に歯止めがなくなりドル円134円になっている。
市場予想は150円まで行くという。

中国の政治状況も変化している。習近平の経済政策が失敗して、経
済政策の実権が李克強首相に戻ってきたことで、IT企業への締め付
けが緩み、不動産企業への融資もできるようになってきた。

しかし、不動産企業の行き詰まりから、不動産バブルが崩壊し、土
地を売る地方政府の財政破綻が起き、その上にゼロコロナ政策で企
業活動が制限され、産業人口も減り始めて、中国は経済的な曲がり
角に来ている。次に銀行の不良債権問題も出てくることが考えられ
る。

このため、習近平の独裁政治に綻びが出て、秋の共産党大会でどう
なるのか見通せなくなってきた。この影響は日本企業にも出るので
、動向を注視する必要がある。

中国は、ロシアへの表立った支援もできず、中国の現状兵器では欧
米に勝てないこともウクライナ戦争で見えてきた。習近平の強気の
対外政策では、経済面でも軍事面でも行き詰まる方向である。

しかし、対米対抗として、中国の南太平洋諸国への安全保障関与や
、飛行場の整備などへの関与を行うことで、中国艦船の基地にする
動きもあり、当面は習近平の強気路線を進むようである。

ということで、米中対決も太平洋上で激突する可能性が出てきた。
逆に、米国でもウクライナより中国への対応が必要だという意見が
出ている。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、6月3日は27,761円で、6日は154円高の
27,915円、7日は28円高の27,943円、8日は290円高の28,234円、9日
は12円高の28,246円、10日は422円安の27,824円。

日本株は、28000円を一時回復して、200日平均線より上になった。
米国株に比べて好調である。しかし、10日は400円以上の下げになり
、上げ基調の一旦の停止になった。

28000円への上げの原因は、海外投資家の買いが6000億円もあったこ
とで、しかし米株の大幅な下落で、海外投資家の買いから売りに転
換した可能性がある。上げも空売りの買戻しが中心であり、それが
一巡したという。

しかし、コロナ明けのインバウンド需要期待、国内旅行期待、リオ
ープンのサービス・小売り業期待、防衛費のGDP比2%まで増額での防
衛産業期待、食糧関連、エネルギー関連、円安で輸出企業などの株
価が上昇しているし、この傾向は変わらないはずで、押し目は買い
と思う。

しかし、バルチック海運指数は下落方向であり、海運株は下落の方
向である。主役交代であろう。

円安で国内製造業の在庫が不足しているし、旅行回復で人手不足も
深刻化する。日本は好景気になりそうである。それと、人手不足に
よる賃金UPにもなる。

岸田政権は、何もしないというが、中国からの工場回帰や積極的な
移民政策、防衛努力などの目に見えない政策をするだけでよいはず
で、このような好景気にしたのは、円安効果であり、黒田日銀の金
融緩和政策がやっと効いてきたからである。

しかも、黒田総裁は、今後も金融緩和を続けるという。日本経済的
には非常に良いことであるはずなのに、野党政治家や評論家は批判
しているし、特に野党の経済センスのなさが目立つ。

このようなことから、参議院選挙も自民党が圧勝する可能性が高い。
今後は、維新の会や国民民主党と自民党の主導権争いになる。

それに比して、立憲民主党の退潮が止められなくなるし、ロシアの
味方をする橋下さんと鈴木宗男氏を切らない維新の会も大阪以外は
厳しいと思う。

2.ウクライナ戦争の推移
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ウクライナ東部での戦争は、ロシア軍の全勢力をセベロドネスクに
投入して、把握を目指すが、ウ軍もここでの決戦が勝敗を左右する
として、撤退と見せかけて、ロ軍を誘い込み、叩く手法で互角に戦
っている。

ドネツ川北側の高台のリシチャンスクからの砲撃も効果的であるが
、M777榴弾砲も多数破壊されている。ロシア軍の203m自走榴弾砲の
威力もすごく、その数が多いので、火力の面で負けている。

しかし、ウ軍撤退となり、ロ軍戦車部隊20BTGはリマンなどに転戦し
て行き、その後、ウ軍は戻り市街戦に持ち込み、この戦いには砲撃
ができないので、近接戦にウ軍はロ軍を誘い込み叩く戦術に転換し
ている。これがある程度の効果を発揮している。だが、まだ激戦で
あり、勝敗の行方を見通せない状態である。

どちらにしても、ロ軍は、持てる力のすべてをつぎ込んでセベロド
ネスクと周辺を攻撃しているので、ルハンスク州を完全に取れない
と、ロ軍は攻撃する体力がなくなる。相当な消耗になっているはず
で、20BTGも実質は10BTG程度になっている。ウ軍も大きな犠牲を出
しているようだ。

ロ軍は、とうとう戦車が不足して、T-64戦車主体のBTGをもセベロド
ネスク周辺に投入したようであり、T-72戦車もなくなってきたよう
だ。

反対に、ウ軍もTB2ドローンが撃墜されて、数が少なくなっているよ
うであり、ロ軍203m自走榴弾砲の攻撃に使われていない。203m自走
榴弾砲は、M777榴弾砲の射程外にあり、叩けないので、ドローンで
の攻撃しかできない。ということで、スイッチブレードが使われて
いるようだ。これらの操作のために外人部隊が投入されている。

そして、ウ軍の司令官は、砲門の不足が「悲惨なまでの状態にある
」と訴えたが、火力という面では圧倒的な差がある。ウ軍1門に対
してロ軍10門の比率だそうだ。

相当な榴弾砲の供与が必要であり、欧米各国は、旧式で廃棄予定の
自走榴弾砲を大量にウクライナに供与するようであり、どんどん増
強されるが、時間が問題になってきた。

ということで、ウクライナは、欧米諸国の兵器のゴミ捨て場である
が、ロ軍の兵器も同時代の古い兵器であり、十分対応できる。とい
うことは、退役間近の米A-10攻撃機の供与もあるかもしれない。ド
ンドン、古い兵器でウ軍は増強されることになる。

ロ軍はセベロドネスクの住宅街を制圧したというが、TOS-1を住宅地
に入れ、サーモバリック弾や焼夷弾で住宅地を完全破壊している。
精密誘導ができないために、焦土作戦でしか市街地を制圧できない
ことによる。このため、ここでは近接戦ができないので、ウ軍は撤
退して、市街地と工場地帯で戦っているようだ。

どちらにしてもロ軍のTOS-1や203m自走榴弾砲の無力化が急がれる状
況であり、逆にロ軍はM777榴弾砲の破壊を急いでいる。この戦況で、
ウ軍は、M142高機動ロケット砲(HIMARS)が必要であり、ロ軍の203m
自走榴弾砲を叩くためにリシチャンスクに置くことで、戦況は大き
く劣勢なウ軍に傾くことになる。ウ軍は提供の早いHIMARSの到着を
待って、総攻撃に出るようである。

それまでは、両軍ともに、持てる力をセベロドネスクに持っていく
ので、他地域の進展は進んでいないようだ。

ただ、ロ軍は、防空兵器もセベロドネスクに集めたことで、TB2は、
ドネツ川湿地帯での戦闘では、有効に機能しているようであり、ド
ネツ川を挟んだ地域での戦闘に使用しているようだ。

南部での戦いは、ウ軍が大きく前進している。しかし、ウ軍も主戦
力をここからポパスナ地域のロ軍への対応のために転戦しているの
で大きくは動けない状態のようである。

一方、ロ軍は、要衝のイジュームや交通の要所クビャンスクで要塞
を建設して、攻撃から防御に転換している。この方面では徐々に南
下していたロ軍は、要塞まで撤退を開始することになる。

プーチンは、6月12日の「ロシアの日」に勝利宣言する予定であり、
10日までにセベロドネスクの完全な制圧をロ軍に命令したが、現状
ではできていない。しかし、ルハンスク州の98%を支配下にしたので
、勝利宣言をする可能性もある。しかし、再度、6月22日までにセベ
ロドネスク制圧の命令が出たという。

しかし、ロシア国内では、ウ軍発表の3万1千名ロシア軍戦死者より
多い戦場行方不明者数は4万1千名にも達しているようであり、家族
からの問合せがロ軍やプーチン政権にあり、その対応を間違えると
、国内の反戦につながるので、そろそろ停戦が必要になっている。

もし、これが本当なら、負傷者数は約3倍であるから、16万人が戦闘
不能になっている。開戦当初の侵攻兵力15万人より多いことになる。
これは、ロシア軍崩壊の手前であろう。

このため、国家親衛隊の犠牲者には1000ルーブルの慰問金が出るよ
うであり、戦場には送らないとした徴集兵を戦場へ送ったことで、
複数の将軍が取り調べを受け解任されているなど徐々に問題化して
きている。

ということで、グロムイコ外相は、停戦開始を求めて、トルコに行
き、エルドアン大統領に仲介を要請している。この見返りとして、
ウクライナの港湾封鎖を解除して、穀物輸出ができるようにすると
いうが、ゼレンスキー大統領は、戦争継続の方向である。2月24日の
線まで押し戻すという。また、ロシア海軍の攻撃を防いでいる機雷
除去もしないという。

その代わり、ウクライナの穀物は、ルーマニアまで鉄道輸送し、ル
ーマニアの港から輸出する方向で、検討されているようだ。両国と
もに同一の広軌であり、機関車を変えることなく貨車の運行ができ
る。

どうも、プーチン政権末期となり、ロシア国内では、ポスト・プー
チンを誰にするのかの会議が開かれて、キリエンコ氏、メドベージ
ェフ氏、ソビャニン氏とパトルシェフ氏などの名前が出ているよう
であるが、コバリョフ氏の名前はないようで、プーチンの思い通り
にはならないようである。

そして、事実がプーチン退任の方向を示している。例年6月に行われ
る国民対話もなく、4月に出される年次教書も議会に発表していない
。プーチンの病気か軍とFSBの不満からか、先は長くないようだ。

一方、ロシアは、戦争ではないので、国民皆兵の徴集はできないで
、兵員不足が深刻で、これ以上の攻撃ができない。装甲車も不足し
て、倉庫から古い兵器を出してきている。全体的には、攻撃から防
御に転換するしかない状態である。

そして、プーチンは、この特別軍事作戦は、ピュートル大帝の偉業
と同じことであると本音を明らかにした。どうも、ウクライナは自
国の領土であり、そこの政府は主権がない存在であり、ロシアの自
由にできるということのようだ。国と認めていないので、戦争では
ないということだ。

このように、専制国の指導者は、取巻きの汚職などで国内経済活性
化ができないので、領土拡大しか希望がないことで、どうしてもこ
うなるのである。これはロシアだけではなく、中国も同様である。

今後、ウ軍の装備は、レオパルト2A4などの戦車、各国からの155m自
走砲、MQ-7の攻撃ドローン、F-16Vの戦闘機などNATO仕様の兵器が欧
米から供与されて、徐々にロシア軍の装備を仰臥することになる。
攻守の逆転が起きる。

ウ軍がロ軍陣地を攻めることになる。しかし、敵の陣地に攻撃する
場合は、戦死者数が大幅に増加してくることが想像できる。

このため、戦死者を少なくする兵器の供与を米国に依頼するし、米
軍は研究開発中の最新AI兵器を戦場での実験という位置づけで、供
与することになる。ウクライナが、米AI兵器実験場になる。犠牲者
はロ軍の兵士で、ロシアは完全に負ける。AI兵器が今後の戦場での
主役になる。

しかし、ウ軍としても、短期決戦が必要になる。その後、停戦しな
いと、資金の枯渇と、民間人と軍人の死亡者数が大きくなるからだ。

もう1つ、心配なのが、米国民主党内中道派と左派でウ軍援助に対
して論争が起き、否定的な意見が出てきたことである。このため、
ウクライナ担当のヌーランド国務次官が長期に休職していると言う。

このため、米国も早期に停戦が必要という考え方になる可能性があ
る。左派は、ウクライナ支援のお金を貧困対策に使うべきだという
ことのようである。もう1つに、米国の本当の敵は中国であり、ウ
クライナへの関与で、中国への経済的な制裁や軍備を弱める動きに
反対する人もいることである。

共和党のトランプ派とペンス氏の主流派と同じような議論が民主党
内でも起きてきている。

さあ、どうなりますか?



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