6233.ロシア軍、最後の反撃



ウクライナ戦争の転換点にきている。ロシア軍が主力をセベロドネ
スク包囲に投入、ルハンスク州の完全な支配をして、当面の勝利宣
言をするようである。今後を検討する。
                         津田より

0.米国および世界の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、5月19日は31,253
ドルに下がり、20日は31,261ドルで、23日は618ドル高の31,880ドル
24日は48ドル高の31,928ドル、25日は191ドル高の32,120ドル、26日
は516ドル高の32,637ドル、27日は575ドル高の33,212ドル。

NYダウは、8週間値下がりで1932年以来の連続下落を記録し、しかし
、今週は大幅な上昇で終えた。物価上昇率が4月6.1%になり、3月の
8.2%より伸び率が下がったこと、個人消費支出が3.3%増になったこ
と、米国10年国債金利は3.2%から2.75%に落ちたことが原因であり、
このため、ドル円も126円台まで一時下げる場面もあった。

今まではリセッションの恐怖から売り込まれたが、5月6月のFOMCの
0.5%利上げは確定であるが、インフレが収まり、9月利上げについて
は未定で、一部に見送りという意見も出てきた。

NY連銀も、短期の高インフレで収まると米消費者は期待し、5年後の
物価上昇率を3%程度とみているという。この期待値で9月以降は利
上げがないとみるようだ。

しかし、この利上げで、住宅ローン金利が上昇して、住宅が売れな
くなり、景気の落ち込みの懸念も出てきている。景気の先行指標が
悪くなってきた。

その反面、追証の投げ売りが一段落して、やっと安定した。テスラ
でさえ半分の株価になっている。この時期、積極的に投資している
のが、バフェット氏で511億ドル(6兆円)もの買いを入れ、大量に石
油株などを買っている。

このような状況であるが、6月にはFRBの資産売却が始まり、量的引
締で、金融相場の終わりが来るので、今の上げは一時的のような気
がする。普通は金融相場から業績相場に移行することで株価が、維
持できるが、今回は企業業績も落ち始めているので、この上げが続
くとも思えない。

SP500など米株は、2・3年大きく上げたことで、株価の平均回帰線か
ら大きく上振れしているが、今の下げは平均回帰線に戻るだけとも
見える。そうなるためには、まだまだ、下がることになる。

ダボス会議は、2年越しで対面で開かれた。主にウクライナの宣伝や
援助要請が多かったが、どう、戦争を終わらせるかの議論が重要で
あったと思う。それは後ほど説明する。

この局面で、米国は日本の防衛費と同じ5兆円のウクライナ支援を行
うことになり、このほとんどが兵器製造会社に支払われることにな
る。このため、景気後退局面での財政出動になる。

FRBは金融引締であり、政府は財政出動ということになる。どちらの
政策が株価に効くのかというと、FRBの金融引締であるが、11月中間
選挙もあり、9月には株価を上げないと、民主党が選挙に勝てないの
で、そうするはずとも市場は見ているようだ。

中国も変化が出てきた。習近平主席のゼロコロナ政策に対して、不
満が出て、ついに李克強首相が、コロナと経済のバランスを取った
経済政策を行うと商工会議所の講演で述べた。上層部の方針が分裂
しているように見える。

もう1つ、23日の日米首脳記者会見でバイデン大統領が台湾防衛へ
の軍事関与を明言したが、翌日24日の人民日報では、この件を取り
上げた記事や、それに言及した論評や論説もない。タカ派の環球時
報は、「中国が武力で台湾を奪取することに同意しない」の発言は
取り上げたが、「軍事関与発言」は避けている。

どうも、中国国内での権力闘争で、習近平退陣の噂もあり、対米関
係でも中国共産党内で意見の違いが出て、習主席も意見を変えた可
能性がある。ロシアのウクライナ侵略を見て、中国も台湾侵攻は難
しいという意見が多数派になっているようだ。

もう1つが、ウクライナ小麦の積み出しができず、世界的な食糧不
足になる可能性があった。このため、インド政府は、小麦の輸出停
止に続き、砂糖輸出量を1000万トンに制限した。

プーチンは独仏首脳に対し、穀物価格の高騰など世界的な食料危機
を対ロ制裁の結果と批判し、米欧による制裁解除を条件に、食料供
給への協力をするという。

しかし、プーチンの要求を飲めないので、食糧不足解決のために、
ウクライナから西欧への穀物輸送をドイツ鉄道が臨時貨物列車を運
行して支援することになった。オデッサから、安全なドイツの港ま
で輸送して、そこから輸出するようである。

ロシアに対して、欧米日はスクラムを組んで対応している。これに
対して、専制国である中国はロシア以外に世界に味方がいなくなり
、また、ロシアでの損失に懲りた欧米日企業の中国撤退も多くなり
、中国経済を下押ししている。中国経済も危ないようである。

1.日本の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、5月20日は26,739円で、23日は262円高の
27,001円、24日は253円安の26,748円、25日は70円安の26,677円、26
日は72円安の26,604円、27日は176円高の26,781円。

日本株は、先週末と変わらない株価である。無風である。この原因
は、黒田日銀総裁の金融緩和継続で金利の上昇もなく、デフレ経済
で、日本人は、従来、米株に投資していたが、その米株が大きく値
下がりして、大損になっている。しかし、金利が低いので、債券や
銀行預金には行かないで、日本株を買い始めたようである。

海外投資家は2兆円の売越であるが、個人と自社株買いは2兆円の買
越で、ペイして株価が維持されたようである。このため、ボックス
相場になっている。

しかし、この海外投資家の売りで、メルカリは2000円割れになって
いるし、どこまで値下がりするのかわからない。下げると、より大
きく空売りをするので、一部銘柄は影響を受けている。

もう1つ株価を下げているのが、持ち合い解消の売りであるが、こ
れは買い時である。個人が買っている。自社株買いも追従している。
これは、プライム市場に残るために持ち合い解消をメイン株主に依
頼しているので、個人株主への影響を少なくするためのようである。

しかし、個人は上値追いをしない、下げを拾う投資手法であり、海
外投資家はトレンドフォローの投資で株価を上昇させている。この
海外投資家が積極的に日本株を買わないので、上値は重い。

しかし、22年3月期決算で、過去最高益企業はプライム市場で36%に
もなっているし、23年3月期の企業予想でも22%が過去最高益になる
としている。しかし、日本株のPERは13倍台のままであり、安値圏の
ままで、PBRも1.4倍と低く、1年平均株価より終値は下の状態が続い
ている。

この状況で、円安で日本企業の製品は、海外で売れている。コロナ
での入国制限をなくせば、インバウンドで4000万人以上の海外から
観光客が押し寄せて来る。4兆円以上の金を日本で使うことになる。

このため、インバンド期待で空運、陸運、ホテル、百貨店の株価が
上がり、特にポケトークを売るソースネクストの値上がりが目だっ
た。

ということで、日本復活がここで一気に来る。今は海外投資家は売
越が続き、大きく売越している状況であり、どこかで日本経済の好
調さに気づき反転するはずである。そうすれば、本格的な上昇相場
になる。

それと、円安で、小麦やパンなどの西洋料理の材料価格が上昇して
いるが、米などの日本料理の材料価格は上がっていない。この面で
も日本復活が進むことになる。料理も日本回帰になる。

それに伴い、農業や水産業の復活と若い人たちの田舎への回帰にな
る。企業のリモートワークも許可されているので、半農半ビジネス
マンも出てくるような気がする。

もう1つ、「起業家精神」教育を小中高で強化するという。起業す
る若者が増えることになるが、その起業を助ける人が必要になる。

ここで、エンジャルの存在が重要になる。農業や新技術、イノベー
ションを試みる起業が増えるはずであり、ここへの投資と助言をす
るエンジャル投資の枠組みとそれへの特典を政策で確保するべきで
ある。

良い話が続くが、ここで心配なのが、景気が戻ると、一気に人手不
足になることだ。この解決には、海外からの人手を入れる必要にな
る。移民・難民の受け入れがどうしても必要になる。

もう1つが、貯蓄から投資への具体的な政策が必要であり、金融所
得課税強化を取り下げたことは評価できる。その代わりに、金融所
得がある人の年金額を減らすことで、税収増から支出の削減に向け
た方向にシフトしたようである。

若い人たちには、NISAの拡充で投資を進めるということで、1歩前進
のような気がするが、年金削減には議論が出ると思う。

ここで提案したような統制経済にシフトすることには賛成である。
特に経済安保は絶対必要である、中国から日本へ工場回帰する企業
への支援を積極的に行うことである。

それと、ローカル人とグローバル人の国内での紛争にならないよう
な政策も必要であり、グローバル人がローカル人への支援をする場
合には、名誉を与える必要がある。これがまだ政策化されていない
ように思う。

世界的にも、国内的にも、ローカル人対グローバル人の分裂と紛争
が出ているので、それへの調整が必要である。この視点も忘れては
いけない。

2.ウクライナ戦争の推移
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ウクライナ東部での戦争は、ウ軍の主力が、イジュームやボルチャ
ンスクに向けて進軍したが、ロシア軍の主力はセベロドネスク包囲
に向けて攻撃しているが、これが成功している。

ロシア軍は、ポパスナ方面でウ軍前線を突破して、セベロドネスク
の補給線を切った状態になったが、その後、ウ軍はメイン道路だけ
は確保したようである。

しかし、ロシア軍はポパスナの高い地点を占領したことで、広範囲
のウ軍の動きが監視できるようになり、このため、再度、補給路が
切られたようである。この高地にあるロシア軍の榴弾砲や多連装ロ
ケット砲を潰さないと、ロシア軍が有利だ。

この高地の榴弾砲やロケット砲を潰すには、航空戦力が必要である
が、ウ軍には今時点で有効な航空戦力がない。

このため、ルガンスク州のガイダイ知事は、ウ軍の同州からの撤退
が「可能性としてあり得る」とした。セベロドネスクはロシアが占
領することになる。6月12日の「ロシアの日」を目指して、リマンな
ども取り、これでルガンスク州全体をロシアは完全制覇して、ロシ
ア編入を進め、勝利宣言をしたいようだ。

この攻撃に、ロシア軍は有効に多連装ロケット砲を使うので、ウ軍
は劣勢に立たされている。ロシア軍は、第2次大戦末期ドイツ軍の
「バルジの戦い」のような攻撃であり、残り少ない現有の優秀な部
隊を集め、それに多連装ロケット砲やBMP-Tなどの温存していた兵器
を渡して戦っている。リマン方面でも同様であり、ウ軍はドネツ川
東岸から撤退することになるようだ。

これに対して、宇ゼレンスキー大統領は27日、テレビ演説で東部ド
ンバス地方を死守するために「あらゆる手」を尽くすと明言し、「
ミサイル攻撃や空爆、何でもありだ」と述べた。

このような事態になり、強くウクライナはM270多連装ロケット(MLRS
)とM142高機動ロケット砲(HIMARS)を要求し、この供与を米国は事
態改善のために決定するようだ。しかし、射程300キロのM26ロケッ
ト弾の提供はしない。射程70キロ程度のロケット弾だけの提供にな
る。M777榴弾砲の射程距離は25キロであり、それより長いし、集中
的に1ケ所に弾を集めて攻撃できる。

これにより、ロシア軍と対抗ができるようになる、この訓練に1週
間程度必要であるが、6月中には実戦で使用されることになるが、セ
ベロドネスクの防衛には間に合わない可能性はある。

もう1つ、ロシア軍は、50年以上前のT-62戦車を近代化改修して、
実戦で使うようだ。T-72戦車の損耗が激しく、1000両以上が破壊さ
れて、予備がなくなったことで、仕方なく、旧世代の戦車を使うし
かない。

このため、戦車を先頭に立てる戦いができないが、この戦車を配備
したBTGを複数個作ったようである。これで、再度、ハルキウへ向け
て攻撃を再開した。

この攻撃で、ロシア軍は戦車を先頭に攻撃する方法ではなく、攻撃
地域への砲撃から開始して、偵察隊を出し状況を見て、その後に戦
車隊を送る攻撃手法になり、攻撃速度は落ちたが、確実性は増して
いる。その分、ウ軍の防御は苦しくなっている。今までの手法が使
えない。

このような攻撃では、火力の量が勝敗を決定する。また、ZALA攻撃
ドローンをロシア軍も使い始めて、ウ軍と同等になってきたが、ス
ティンガーミサイルで撃ち落されているようだ。しかし、ロシア軍
も今までの敗戦を反省して、攻撃手法を見直しているので、今まで
のような負け方はしなくなってきた。

このため、現時点での火力の量は、セベロドネスク方面攻撃のロシ
ア軍の方が上であり、火力が少ないウ軍の苦戦が目立ち始めている
。ロシア軍の集中した物量作戦がやっと、有効に機能し始めたよう
である。

この苦戦を乗り越えるには、ウ軍に訓練の必要がないMIG29の拡充や
F-16Vでの航空力のUPとMLRSやHIMARSなどの火力の増強が必要になっ
ている。その到着で戦況が変化するはずであり、逆にそれまでに、
ロシア軍は占領地を増やして、停戦して有利に交渉を進めたいよう
である。

このようにロシア軍が、やっとこの戦争に適合し始めたが、西側の
制裁で兵器工場の操業停止で、弾薬とミサイル不足と戦車などの装
備不足は続いている。このため、どこかで停戦しないと、物量や火
力の逆転になり、ウ軍が勝ち始めることになる。

そして、ロシア軍の元将校のボタシェフ氏63歳が戦死した。SU-25で
ウ軍攻撃中にスティンガーミサイルで撃墜されたが、老人が前線で
活躍しないといけないほど、パイロットが不足しているようである。
ロシアの平均寿命は男性69歳であるから、63歳は十分老人である。

ボタシェフ氏は、民間軍事会社ワグネルの雇用兵として従軍してい
たが、パイロットなどの熟練度が必要な兵の不足が目立っているよ
うだ。50歳以上のパイロットが多数いて、かつ複数戦死している。

その上、戦闘機は200機以上が破壊されて、ロシア軍VKSは空爆もで
きない事態になっている。出撃回数が大きく減ってきている。ヘリ
の損耗も大きく、Z-20Kという中国製ヘリも登場している。

このため、志願兵の年齢制限をなくして、技能熟達が必要な兵の補
充を進めるようである。IT技術者や通信兵なども技能者が必要であ
り、その補充もできるようにする。

核利用の前に、まだまだロシアには人的資源があり、それを利用し
た戦い方があるはずであり、戦争当初は、攻撃スピード重視で進ん
だことが、負けた原因であったようである。

ここからは、米国もロシア軍の装備に対応した兵器をウクライナに
提供しないと、ロシア軍を撃退できないことになる。ウ軍の負けは
西側の敗北となるので、米国もウ軍支援に必至である。もし負ける
と、次は中国の台湾進攻となり、負けるわけにはいかない。

資金的にも、天然ガスは中国が大量に買い、石油はインドと中国が
買っているので、外貨は不足していない。また、中国の人民元を使
い、海外との送金入金もできるので問題がないとしていた。

その状況で、ロシア国債のテクニカル・デフォルトになる。まだ、
その判定が出ないが、近々、そのようになる。このことで、シルア
ノフ財務相は27日、ウクライナでの「特別作戦に巨額の資金が必要
だ」とし、3ケ月を超えたウクライナ侵攻の財政負担の重さを認め
た。デフォルトでロシア国債の販売ができなくなることは、大きな
痛手になるようだ。

しかし、ルーブルは上昇している。この原因は、ルーブルを金本位
制に復帰させたことのようであるが、自由にお札を刷れないことに
なる。財政的な問題があっても、量的緩和で財政出動ができなくな
ることを意味する。財政問題に直面し始めたようだ。

もう1つ、このままにすると、財政問題がありながら、長期戦にな
り、ロシアもウクライナも疲弊することになる。ロシア軍は当初戦
力の19万人の内、今いるのは半分の10万人であり、10万人を新兵で
補充しても、戦車兵でも訓練が半年は必要であり、どこかで戦力不
足になる。ウ軍は国民皆兵であり、ロシア軍より動員力はあるが、
それでも損耗が激しいようである。

ということで、どう戦争を終結させるかが問題であり、ダボス会議
で、キンシンジャー氏は、ロシア敗北濃厚な状態では核戦争になり
、欧州に悲惨な結果をもたらすから、ウクライナは国内分割でも我
慢して、ロシアとどこかで停戦するべきであるとしたが、ゼレンス
キー大統領やソロス氏は、2月24日以前の状態にするまで戦うという。

現時点では、どちらもどの条件でも納得できないことと、ロシアの
疲弊で国内的に限界になるまで、停戦は難しいのであろう。まだ、
長く戦うことになる。

さあ、どうなりますか?



コラム目次に戻る
トップページに戻る