6224.戦争の時代へ



ロシアはウクライナ侵攻後1ケ月で、中国の支援がないと戦争継続
もできない。ロシアが継戦をするなら、中国の支援があることにな
る。その対応が次の焦点になる。その検討。    津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、3月8日は32,632ド
ルまで下落したが、18日は34,754ドルで、21日は201ドル安の34,552
ドル、22日は254ドル高の34,807ドル、23日は448ドル安の34,358ド
ル、24日は349ドル高の34,707ドル、25日は153ドル高の34,861ドル

3月8日が当面の底であり、株価は今週も上がった。ウクライナ戦争
は、ウクライナ側の優勢が続くが、ロシアとの停戦交渉は進展しな
い。また、株価が上昇に転じたからか、FRB主要メンバーからは、次
回の利上げは0.5%になるとの発言が続く。シティGからは0.75%の利
上げもありうるという。また、サウジ石油施設へのドローン攻撃で
原油価格は120ドルになるなど、価格が安定しない。

このようなことで、消費者が数十年来の高インフレに直面する中、
消費者マインド指数は59.4と、前月の62.8から低下し、消費を控え
ることで、景気は悪くなるようだ。

しかし、投資家は十分下げたと買いに回り始めている。F&Gインデッ
クスは48まで回復している。一時は20以下になり、その時点で米財
務省のPKO部隊が裏PPTを行ったとの噂が立っている。その証拠に、
JPモルガンが大量の株買いを行っているからである。

米国は経済より軍事が強い国であり、戦争の時代になると、ドルが
強くなる。経済中心の時代から安全保障中心の時代に、世界はシフ
トしたようである。そうすると、自国で食糧・エネルギーが自給で
きる米国が強くなる。米国の復活になる。

一方、中東諸国や途上国は、小麦の価格が上昇して、政治が不安定
になる可能性が高い。

また、中国も欧米の経済から安全保障への転換に、追従する必要が
出てくる。中国は農業を捨てて工業化を進めてきたが、エネルギー
や資源の供給を見直す必要になる。

ロシアへの軍事支援を躊躇しているのも、今後の欧米日の変化を見
据えていく必要があるからだ。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり18日は26,827円で、22日は396円高の27,224円
、23日は816円高の28,040円、24日は70円高の28,110円、25日は39円
高の28,149円。

3月9日が底であり、2年半ぶりの9日続伸で、3400円も上昇した。122
円とドル高円安が進み、日本企業の業績が上昇するとみる動きが出
ている。海外産から国産へのシフトが起こっている。

この円安は、日銀黒田総裁の日銀政策会議後の記者会見で、円安は
日本にとって全体的にプラスになると発言。このため、海外投機筋
は、円安をどこまで容認するのか試す動きで120円になった。

そして、3月24日に片岡日銀委員から「物価2%には遠い経済環境、
引き締めへの転換はない」との発言で、円安が加速して122円台に、
突入している。このように日本の金融緩和の方向と海外中央銀行の
利上げ方向という状況から、円安は加速する方向のようである。

スイスフランは上昇している。ウクライナ情勢の緊張を巡る「安全
通貨」の買いがスイスフランに偏り、円の独歩安の状況だ。

よって、円安方向に加速していて、1ドル150円になると、ソシエテ
Gエドワーズ氏は予測している。

このため、ウクライナ戦争によるエネルギー価格の上昇、穀物価格
の上昇の上に、円安による輸入物価高騰というインフレ促進の状況
になっている。

もう1つ、ロシア上空を飛行できずに、ノルウェー産サーモン価格
の上昇して、代替として国内産鮭の出荷が増えている。低温でアニ
サキスを駆除すると、鮭を刺身で食べられる。これを回転すし店で
出し始めている。それと、小麦価格の高騰で、米粉への代替も進ん
でいるようだ。小麦粉と米粉の価格差がなくなっている。

国内生産にシフトの動きが出て、国内産業の活性化が起こっている。
円安とグローバル化の反転で、食糧やエネルギーの安全保障が優先
される状況になってきたようである。

2.ウクライナ軍の反撃とロシア軍の目標変更
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ロシア軍は、弾薬も食糧も足りずに、キエフ近郊から退却し始めた
。この1ケ月で弾薬は在庫の半分程度を使い、誘導型ミサイルも消費
して、在庫が少なくなっている。

一方でウクライナ軍は、欧米から軍事物資を供給されて、キエフ近
郊でロシア軍を叩き、南部のヘルソンも奪還したようである。徐々
に、ロシア軍を押し戻している。補給トラックの待ち伏せ攻撃と、
停滞したロシア軍陣地を逆包囲し始めている。

しかし、東部マリウポリの半分は、ロシア軍に奪われた。このため
、フランスのマクロン大統領は25日、ロシア軍が包囲するウクライ
ナ南東部のマリウポリから市民を脱出させるための「人道的作戦」
を数日以内に実施するとした。

マリウポリには、トルコ人やギリシャ人が多く、マクロン氏は「ト
ルコ、ギリシャと協力し、マリウポリからの脱出を望むすべての人
々を避難させる」と、その条件をロシアのプーチン大統領と48〜
72時間以内に会談し、整えるとした。

南部とキエフではロシア軍は敗退し、東部では勝っている状況であ
る。

このため、ロシア国防省セルゲイ・ルツコイ作戦総司令部長は25日
、ウクライナでの軍事作戦の第1段階がほぼ完了し、今後は同国東部
に照準を移す方針を明らかにした。ロシア側に損害が広がり、戦況
がこう着する中、戦略を変更したようだ。軍装備を集中化して、主
力のウクライナ軍を撃破する方向にシフトした。

そして、ロシア国営通信社によると、ドンバス地域では現在、親ロ
シア派がルガンスクの93%、ドネツクの54%を掌握していると
いうが、こちらに戦略を集中して、戦果を上げる方向にシフトした
ようである。また、ウクライナの戦闘でこれまでにロシア軍の死者
は1351人、負傷者は3825人になったと発表した。

一方、ウクライナ軍の発表は、25日現在でロシア兵死者数は16100人
、戦車破壊数は561台である。

大きな損失の上に、停戦交渉の行き詰まりで、今後も継戦が必要で
あり、ロシアのショイグ国防相は、シルアノフ財務相に国防費増強
を要求したが、ロシア軍の戦争費用が膨大であり、事前の予算では
済まず、更なる費用調達が必要になっているようだ。

このため、ロシアとしては、中国の支援が必要であり、グロムイコ
外相が中国を訪問して、一層の経済支援を要請するようである。し
かし、中国もロシア支援で、欧米諸国からの制裁を受けると、輸出
経済で国を支えているので、それもできない。

G20にプーチン大統領が出席希望というが、新興国での資源の売り先
を探すのであろう。ロシアは資源の輸出先を探して、資金を得る必
要になっている。その大きな先が中国とインドであろう。

しかし、中国は欧米諸国に貸しを作って、ロシアへ停戦を要求する
しかない。そうしないと、中国も経済制裁の対象国になる。

このように、戦争経費がロシア経済の大きな重しになっている。経
済制裁でインフレもすごいが、ロシア人はソ連崩壊で、同じことを
味わっているので、耐えることができるようだ。

3.経済の時代から戦争の時代へ
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このコラムを始めたきっかけは、高校・大学時代の座禅で、大戦争
で多くの人がなくなる光景を見たことであり、その時代が来ること
を何とか防ごうとしたが、恐れていたその時代が来たようだ。

というように、時代が転換した。ロシアのプーチン大統領は、世界
を変えたようだ。それまで戦争などは、発展途上国や中東のこと、
ヨーロッパでは過去のことで、経済発展をグローバルに進めて、温
暖化を食い止めることが重要であるとみなしていた。

このヨーロッパや先進国の主流的な意識を大きく変えることになっ
た。経済より安全保障であるというように。

ドイツは、ロシアの資源活用で経済発展は可能であり、軍備に金を
かけるより、温暖化ガス削減に回すべきだという意見が多かった。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻で、その見方は破壊されて、軍備
増強が必要であり、ロシアに資源を頼ることはできないとなった。

グローバル経済で工業生産のコストミニマムを目指して、工業を労
働賃金が安い新興国にシフトしていたが、コロナ禍と戦争で物流網
と生産が混乱して、物資の不足と価格の高騰を招き、先進国企業は
、見直しを余儀なくされている。

企業も専制主義国でのビジネスが、突然の停止になるリスクを経験
して、徐々に専制主義国から撤退することになる。自由主義国を選
ぶか専制主義国を選ぶか、企業も選択するしかないようである。

ルノーもロシアの生産を中止した。スイスのネッスルもロシアでの
販売を継続しているが、世界的な不買運動が出れば、ロシアでの販
売を中止するしかない。

そして、ロシアでの投資を放棄させられて、西側諸国の投資家は、
中国から投資マネーを大量に引き揚げており、極めて異例の規模で
流出しているという。分離の時代が来たのである。

中国企業投資を引き上げる理由は、1つが、米国市場から締め出さ
れることと、もう1つに、ロシアへの経済軍事援助から、中国へも
制裁が近々行われる可能性があるからだ。

そして、ロシアとウクライナの停戦になっても、ロシアのプーチン
大統領と取り巻きは、変わらないので、経済制裁が続き、中国も停
戦後、ロシアとの経済軍事関係を復活させるからだ。

しかし、プーチン政権が続く限り、ロシアは再度ウクライナへの侵
攻を行うことになり、中国とロシアなどの専制主義国と民主主義国
との経済的な断絶は、ウクライナ戦争が終わっても続くことになる。

その上に、北朝鮮が米国まで届くICBMを発射実験して、実用化
直前であり、世界の構図は、経済から軍事で評価される時代になっ
てきたようだ。

ということで、インドはロシア軍事技術を享受しているので、ロシ
アを切れない。発展途上国もロシアからの小麦や原油が必要であり
、ロシアとの関係を切れない。しかし、欧米諸国は、ロシアとの関
係がある国に経済制裁を行う。このため、世界が二分することにな
る。

日本は西側諸国の一員であり、その制裁に加わることになる。市場
規模は半分になり、企業の発展する規模も半分になる。戦争の可能
性も高くなる。

このため、食糧生産と工業生産は円安でもあり、日本で作る方が安
く、かつ物流の混乱も起こりにくいので、徐々に日本への回帰にな
るしかない。

そのような方向で政府も政策をシフトするしかない。日本は、食糧
生産も物資も自国内でできるだけ自給する努力をすることだ。

中国という近傍に専制主義国があり、いつ戦争になるかわからない。
中国が台湾侵攻時、日本孤立を意図して、海上交通を遮断すること
になる。このときでも国民の生命を守るためには、食糧の自給とエ
ネルギーの自給は絶対必要になる。

このように米欧日と中露の東西の分離の時代になってきた。戦争の
時代でもある。この戦争経済の時代を構築しないといけない。

この戦争の時代は経済より軍事・安全保障優先の時代であり、米国
が一番強いことになる。米国の復活である。そして、戦争経済では
、最先端の軍事技術が必要である。

斎藤製作所のラジンコン・エンジンは、ロシア軍のドローンに搭載
されるなど、この分野でも世界的な企業である。ロシア国内から飛
ばしたドローンがクロアチアまで飛んでいる。

このような日本企業は多くあり、日本の物作りは軍事技術に直結す
るのだ。これからは、無人のドローンや戦闘車両の時代であり、飛
行時間の長いドローンや車両の需要が大きくなる。中国製ドローン
は飛行時間が少ない。

政府も戦争の時代であることを見越して、企業と一体で戦争の時代
の産業のあり方を構築することである。企業も経済的優位性やコス
ト優位性などに目を向けるのではなく、戦争時・緊急時などでの企
業継続性を視野に事業を構築してほしい。それを政府が援助するこ
とであり、専制主義国でビジネスをする企業に対しては、ビジネス
を止めるような法律を作るべきである。

戦争の時代は、日本の時代でもある。中国の経済制裁が遅かれ早か
れ、徐々に厳しくなり、民主主義国陣営のモノ作りは、日本や民主
義陣営にいるなら韓国になる。中国陣営になるなら韓国はオミット
になる。韓国は米国を選ぶか中国を選ぶかの選択をする必要に迫ら
れる。

さあ、どうなりますか?



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