6197.恒大集団倒産と次期首相



中国最大の不動産企業恒大集団が債務不履行になっている。これに
より、中国経済はどうなるのかと、その時の日本の新首相はどうす
るべきかを検討しよう。    津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年8月16日は35,625ドルで最高値更新、9月10日は34,607ドルで
13日は261ドル高の34,869ドル、14日は292ドル安の34,577ドル、15
日は236ドル高の34,814ドル、16日は63ドル安の34,751ドル、17日は
166ドル安の34,584ドル。

NYダウは一進一退の展開で踊り場を形成している。長期金利も1.3%
内外と低い水準であり、中国の恒大集団の破綻目前でも米国市場に
は響かないようである。

しかし、米金融大手の証券アナリストが、今秋にも米株式市場が不
安定な相場に突入するとの見方を強めている。インフレへの懸念や
サプライチェーンの混乱、投資熱の陰りなどを理由に挙げる。その
証拠に、SP500への個人投資家の投資額が減ってきている。特別給付
が終了して、個人投資家の投資できる資金が減っているようだ。

8月の米消費者物価指数(CPI)は前月比0.3%上昇と市場予想0.4%上昇
を下回った。過去7カ月で最低の上昇率にとどまり、インフレ圧力
が一部で弱まり始めていることが示唆された。特に航空運賃が前月
比9.1%低下。中古車が1.5%、自動車保険は2.8%それぞれ下がった
ことが大きい。

その上、8月の米輸入物価指数は前月比で0.3%低下。7月は0.4%上
昇(速報値0.3%上昇)に修正された。輸入物価、消費者物価は落ち
着いたが、人手不足で賃金上昇が止まらないことやサプライチェー
ンの不安定な状況が2022年にかけて残り、インフレ率が高水準で続
く可能性はある。

そして、新規失業保険申請件数(9月11日終了週)は2万件増の33
万2000件で、予想値は32万2000件より1万人多い。

総合的にみると、企業はここ数カ月、賃金・給料を引き上げている
が、物価上昇で消費者の購買力は損なわれつつあるようだ。

事実、9月の米ミシガン大消費者信頼感指数(速報値)は71.0となり
、インフレ率が高止まりする中で、消費者が引き続き景気の先行き
に厳しい見方をしていることが示された。この結果は、スタブフレ
ーションの方向になる。

米国評論家の心配は、テーパリングからスタグフレーションに移っ
ている。景気後退にも関わらず、インフレになるので、FRBは金利を
上げてインフレを抑えるか、景気を刺激するために、量的緩和拡大
するかの難しい局面になる。

そのような中、米バイデン大統領は、米英豪の3ケ国(AUKUS
)で共同防衛を取り、オーストラリアに原子力潜水艦の技術を供与
するという。中国封じ込め戦略の一環で、中国、露、EUに衝撃が
走った。特に、潜水艦建造の契約を破棄されたフランスは激怒した。

この宣言前に、バイデン大統領は、習近平主席と電話会談をして、
対話を続けるとしたし、「アメリカは"一つの中国"原則を守ります
」と誓ったという。その上、ウイグル問題も香港問題も口にしてお
らず、バイデン政権の対中弱腰姿勢が透けて見える。

しかし、その会談で、バイデン大統領は、米中対立が深化するとみ
て、豪州の軍事力増強と豪州への米軍常駐を決めたか、もしくは、
対立の縮小化で、防衛ラインを下げたとも見える。

このAUKUSを見て、中国は米国の参加していないTPPの参加を申
請した。米国の東アジアからの後退を見てか、中国が東アジアの主
導権を握る方向を転化した。

米国の見方の根本に、中国の社会主義回帰で、中国の経済力が落ち
てくるので、時間を稼いだ方が良いという判断もありそうだ。

中国の「一帯一路」政策も、現状の回帰路線では、早晩行き詰まる
ことになるし、米国は中国からの物資の供給が途絶える心配をしな
いといけない。東南アジア諸国や韓国からの物資だけでは、足りな
いからだ。

米国の対中弱腰姿勢は、このため、うなずけることになる。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年2月16日に30,467円と高値更新し、7月20日は27,013円で8ケ月ぶり
の安値、9月10日は30,381円で、13日は65円高の30,447円、14日は
222円高の30,670円で31年ぶりの高値、15日は158円安の30,511円、
16日は188円安の30,323円、17日は176円高の30,500円。

9月3日からの8日連騰で3844円上昇した。14日の30,670円は、1990年
8月以来の高値で、日経500指数は史上最高値になっている。TOPIXも
2118Pと31年ぶりの高値を更新している。また、ドルベースの日経平
均株価も史上最高値になっている。

この原動力は、海外投資家の買越しであり、第2週の買越し額は1兆
円を超えている。上昇に過熱感もあり当分続くが、自民党総裁選挙
後の政策で海外投資家がどうなるかでしょうね。ということは、9月
29日の開票後が問題になる。

この株価高騰には、コロナ感染も縮小して、ワクチン接種率も50%以
上になって、やっとワクチンパスポートでの旅行や飲食の緩和を行
う段階になっていることも影響している。

そして、今後も政治の対応とコロナ禍での正常化の進展で、大きく
株価を押し上げてほしいと願うしかないですね。

2.自民党総裁選挙は
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野田聖子氏も出馬できて、これで岸田さん、河野さん、高市さんと
野田さんの4人になった。野田さんは、他の3人とは明らかに違う
公約になっている。

野田さんは、女性などの弱者優先政治を掲げたことで、出た意味が
大いにある。自民党が野党の政策を奪っているからだ。しかし、支
持という意味では、限界がある。

高市さんは、靖国神社参拝を首相になっても行うとしたり、MMTの金
融財政政策を維持したりと異端性があり、明確で熱狂的な支持層が
いる代わりに、支持層を大きく広げることはできない。

ということで、岸田さんと河野さんの戦いになる。

河野さんは、党改革や政府の構造改革、既得権益打破など、若者層
の支持を集めやすい政策群である。特に再生可能エネルギー促進を
掲げているなど、世界的な視点に立っている。しかし、対中政策で
は、親中的で二階さんに近い感じも受ける。二階さんが河野さんを
押す意味も分かる。

全体的な情勢が変化して、米国が対中弱腰方向にシフトしたかもし
れないので、河野路線も容認できるかもしれない。菅首相の米国訪
問でわかると思う。米国に知人が多い河野さんは情報を取っている
可能性もある。

岸田さんは、既得権益を打破しないことで、自民党の中核の支持層
から支持を集めそうである。日本型の資本主義という主張は、一番
安定感があるが、その分、支持層を広げるために、政策の幅が大き
く、実際に何をするのかわからないという問題点もある。

河野さんが、1回目の開票で1位でも、過半数を取れないと、2回
目の議員中心の投票では負けることになるが、岸田さんも河野さん
の処遇を考慮しないといけなくなる。

国民の人気は圧倒的に河野さんであるが、11月の選挙で、岸田さん
が選挙の顔になると、自民党の勝ちは難しくなると思う。自民党は
多くの中小企業を潰したため、そこの経営者や勤めていた人たちに
、党改革や政治改革を言えなくなり、自分たちの味方ではないとい
う印象になる。

野党が、その人たちの不満を拾い上げれるかが問題であるが、それ
ができれば、野党も望みはある。というより、そこを突くしかない。

これにより、自民党は、どのくらいの負けを覚悟するかになる。も
う1つが、岸田さんは、分配を行うとしたが、その原資をどうする
かであるが、企業増税などになると、株価の下落にもなる。

3.中国は恒大集団を処刑する
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中国の今起きていることのすべてが、習近平の「文化大革命」であ
り、個人も企業も走資派を処刑するということである。

「この改革は、資本主義的勢力から人民へのシフト、資本中心から
人民中心へのシフトである。したがって、それは再び人民が先頭に
立ち、中核に位置する政治的変革だ。深遠な変革は、中国共産党の
使命への回帰であり、人民中心のアプローチ、社会主義の本質への
回帰だ。」と言う。

ケ小平の「先富論」を否定して、毛沢東の人民中心主義に回帰する
ということである。ということで、ケ小平の先富論を実践した指導
者たちも、すべて記述から抹殺して、中国では、毛沢東と習近平し
か人民の味方はいないと言うのである。

「我々は大資本による市場操作と戦い、プラットフォーム中心の独
占と戦い、悪人が善人からカネを搾取するのを防止し、実際の経済
を動かしている企業や製造者、ハイテク企業に資本が流れるように
しなければならない。そして、「共同富裕」とは、富の社会的配分
のうち、普通の労働者がより大きな部分を占めるようにすること。」
と言う。

この富の分配として、1次の分配は、生産などの利益である。2次
の分配原資は税金であり、3次の分配原資は、企業と富裕層の強制
的な寄付となる。

生産過程での労働者への賃金は、経営者や資本家と差を大きくして
はいけない。そのように企業経営者は党から指導された。もし反対
すると、ジャック・マーさんと同様に経営者の交代になる。

それと、大きな利益がなくなり、企業は新しい投資ができなくなる
。このため、「一帯一路」への投資もなくなる。新規事業への投資
も政府の許可が必要になる。

「あらゆる手段を動員して、さまざまなセレブリティ信仰やファン
文化、女々しい男たちを根絶し、我々の芸術と芸能、映画、テレビ
の背筋をシャンとさせる必要がある。民間の塾産業と学校再編は教
育システムの混乱を浄化して、真の公正さをもたらし、普通の人々
を豊かにするだろう。我々は住宅価格と医療費の高騰を抑え込んで
、教育費と医療費、住宅費という「3つの山」を適正にしなければ
ならない。」と言う。

これで、中国も、今の北朝鮮のようなテレビ報道になるようだし、
学習塾も禁止で、習近平思想の教育を義務化する。芸能界で稼ぐこ
とは禁止で、脱税した芸能人は活動停止になる。

ゲームも許可制になり、習思想を反映しないゲームは禁止である。

この一環としての恒大集団潰しであり、富裕層の不動産投資を止め
、その金を寄付するように仕向ける意図があるのと、もう1つに製
造業が苦境で「脱虚向実」を再開させたことが大きい。「脱虚向実
」とは、「政策を通じて実体の伴わない業界を排除する」という意
味である。

恒大は昨年から銀行の融資が受けられずに、所有物件の切り売りで
資金繰りをしてきたが、とうとう9月8日に債券を格下げされ、それ
までの経営難から倒産へ舵を切った。恒大は中国の不動産業界の中
でも負債が多く2021年6月末で純有利子負債で4101億人民元(約7.0
兆円)で、社債も192億3600万USドルと1.01億香港ドルの合計約2.1
兆円の発行残高もある。

中国政府が恒大を救済すると期待したが、中国政府は9月14日に「恒
大は9月20日の利払いを履行しない」としたし、「環球時報」の胡錫
進編集長も、恒大集団について、「大きすぎてつぶせない企業」で
はないとし、政府は救済しないとした。ということで、恒大の倒産
が確定した。この20日、日本では休日であり、何もできない。

恒大董事長の許家印は、世界の長者番付に名前を連ねたが、これで
資産没収で貧乏人になるが、脱税とか政治家などへの贈合などの罪
を掛けられて、牢獄行きかもしれない。

しかし、アナリストは、恒大が抱える3000億ドルの債務のうち、中
国以外の投資家の保有分は約70億ドル(約7700億円)にとどまり、
「金融市場が吸収できない、あるいはショックを覚える金額ではな
い」として、あくまでも中国国内の問題であり、米国株に影響が出
ないと言う。

この恒大の倒産危機で、花様年控股集団や広州富力地産など、恒大
より規模の小さい競合勢に対して、著しい債務不履行リスクが織り
込まれつつある。このため、連鎖倒産になる可能性もある。日本企
業でも中国での不動産開発をしている企業の株が暴落している。

しかし、中国では不動産部門や関連部門が経済全体の3割を占める
。このため、建築資材や鉄鋼など多くの企業が影響を受けることに
なる。

そのために、中国政府も、鉄鋼企業へ減産を指示したことで、鉄鉱
石の価格が下がっている。というように、鉄鋼価格などに影響がお
よぶことになりそうだ。

中国企業への負の影響は、日本企業にも大きな影響をあたえること
になるし、習近平の社会主義回帰の直接の被害を受ける可能性もあ
る。ということで、富裕層を顧客とする日本企業は早く撤退するべ
きである。

それと、中国への依存度が高いドイツ企業などEU企業も同様であり
、EU企業の動向も知る必要がある。

中国の変化で米国が変化してきたような印象を受ける。そして、日
本も変化に対応するしかない。

さあ、どうなりますか?



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