6144.日本の復活戦略



日本の衰退はコロナという疫病で明確化したようである。非正規社
員が解雇されたが、その非正規社員が増えた原因は、日本の中に高
収益な企業がなくなり、日本全体が貧困化したことによる。このた
め、日本の復活戦略を検討する。        津田より

0.米国および世界の状況
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
そして3月23日18,591ドルまで急落して、9月2日29,099ドルまで上昇
したが、10月9日は28,586ドルで、12日は250ドル高の28,837ドル、
13日は157ドル安の28,679ドル、14日は165ドル安の28,514ドル、15
日は19ドル安の28,494ドル、16日は112ドル高の28,606ドル。

米国では、コロナワクチンの治験と中断、追加経済対策の期待と失
望で株価が上下動している。その中、トランプ大統領も共和党の1.8
兆ドルの追加経済対策の増額を指示するが、上院共和党は賛成しな
い。しかし、それが市場に伝わり、15日大幅な下落から値を戻した。
16日、ファイザーがコロナワクチンを11月後半に緊急使用許可申請
するとして、株価は上昇した。

FRBは、追加の金融緩和を打てない。このため、財政出動を期待して
いる。ロビンフッダーは、現時点でも株価上昇と見ている。

一方、世論調査で優勢が報道されているバイデン候補と上下院選挙
も民主党の勝利を予測した市場は、環境や公共投資の大幅な拡大を
期待し、増税は無視して株価は維持している。

しかし、大統領選挙でトランプ大統領は、郵便投票を違法として、
11月3日時点で勝っていたら、勝利宣言を出す可能性がある。その上
、郵便投票の結果が出るのは1ケ月以上かかるために混乱するし、両
陣営ともに法廷闘争に持ち込み、1月20日の大統領就任式まで決まら
ない可能性も出ている。

この場合は、ペロシ下院議長が暫定大統領になるが、ホワイトハウ
スにトランプ大統領は、居座る可能性もある。この混乱を市場は見
始めてきているようだ。このため、様子見で出来高は少なくなって
いるし、徐々に株価は値下がりしている。

トランプ大統領の演説を見ていると、反キリストのような感じがす
る。キリストと自分を比較している。米国の混乱を招くことで、世
界は大きく動くことになりそうである。

ソフトバンクは、そのような中で数兆円もNASDAQ株を買っているよ
うだ。このため、ナスダックは、調整後に戻り高値を試すような展
開になっていた。しかし、大統領選挙の混乱予測やハイテク企業の
独占禁止法による分割問題があるので、最近は上値の重い展開にな
っている。

そして、シカゴ市場で株価の先行指標である木材先物価格が1週間
で45%も下落している。もう1つ、バブルの指標は、生産台数が数
十万台しかないがトヨタより株の時価総額が大きいテスラの株価を
見るとわかるが、今は三角持ち合いになっている。

そして、欧州はコロナ再拡大で、部分的なロックダウンもあり株価
を下押している。英国もEUとのFTA交渉も決裂の可能性があるが、10
月末までには、交渉の延期を図るともみられて、ポンドは不安定な
動きをしている。

北朝鮮は軍事パレードを真夜中、米国時間の昼に行い、大陸弾道弾
ICBMを初めて見せたし、米国のM1らしき戦車を9台披露した。
米国は当面静観するとしているが、オクトーバ・サプライズの可能
性もあり、金正恩委員長は、瀬戸際外交を今も行っている。しかし
、トランプ大統領は歯牙にもかけないので、安心した。

1.日本の状況
日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値に
なり、3月19日16,358円まで下げ、10月9日は23,619円で、12日は61
円安の23,558円、13日は43円高の23,601円、14日は24円高の23,626
円、15日は119円安の23,507円、16日は96円安の23,410円。

米国が不安定な政治情勢で株価も調整になり、海外投資家は日本株
に退避してきたようである。10月始めの週は、海外投資家は現物
4075億円・先物1695億円と両方で買い越しになっている。このため
、日本株は、23,500円を上抜けた。

しかし、大統領選挙の混乱予測と企業四半期決算で株価は、下落し
てきた。徐々に下げるので、反発しにくい。11月3日米大統領選挙ま
では動けない状態になってしまったようだ。

2.日本の復活戦略
今の日本は、経済社会が衰退する危機的な状態にある。その状況を
国民が認識し始めているように感じる。その原因は主に3つある。

1つは、日本が優位にあった利益率の高い、付加価値の高いAV産業
、電子産業、半導体産業の衰退で日本経済の脆弱性が増し、非正規
雇用が全労働者の35%に拡大している。

その上、コロナ下で非正規社員を企業は解雇しているので、女性の
自殺者が増えている。この原因は非正規雇用に占める女性の割合が
多いことによる。そのうち、母子家庭も多くあり、子供の自殺も増
えている。由々しき問題になっている。

このように日本社会の貧困化は、産業育成政策をしないで、経済政
策を金融緩和政策中心にしたことで、経済の脆弱性を高めてしまっ
たことによるし、日銀のETF買いが株価を支えているが、いつまで続
けられるのかわからない。

長期に続けると、経済実体とはカケ離れた株価になり、株式市場も
国債市場と同様に投資家がいなくなり、崩壊させることになる。

このように、日本経済は衰退して労働賃金も下がっているので、ベ
トナムや中国からの出稼ぎ労働者もいなくなる。少子化対策として
の移民もいなくなる危機にある。

もう1つ、製造業を疎かにしたことで、コロナ感染拡大で、マスク
も医薬品も中国依存で、日本の品不足を起こした。地産地消経済を
、このコラムでは、何べんも主張しているが、それを裏付ける事態
になった。

2つ目は、中国の周辺諸国に対する領土拡張要求が増してきて、軍
事的、外交的に圧力を高めている。この軍事的脅威である。

このための中国包囲網を日本が中心で構築するべきであると、この
コラムでは、何べんも主張してきた。それがコロナ下で中国が一層
の圧力を増したことで、せざるを得ない状況になっている。

日米豪印の準同盟関係が成立しそうである。ASEAN諸国、英国やフラ
ンスなども仲間にする努力が必要である。一方、韓国は明示的に米
国から中国にシフトするようだ。

3つ目は、70歳以上の理想、理念と若者の経済的な要求とが相反し
ていることによる社会的な混乱である。リベラル的な理想が、現実
的な経済的、安全保障的な要求と相いれない事態が起きている。そ
の中には、日本学術会議が研究者に軍事研究の禁止を宣言したが、
それも含まれる。

日本学術会議の構成者は、裕福な高齢者であり、その若い時代の理
想はそうであったかもしれない。しかし、現時点の社会情勢では、
それは日本の軍事力をダメして、引いては中国の侵略を許し、中国
独裁政権の下で、日本語を禁止される事態もあり得る。

このため、日本人の大多数が不満を持っていたようだ。よって、左
翼的な人の任命拒否を歓迎する論調が多い。

しかし、菅首相は、それを説明しないのはよくないが、任命拒否は
当然であり、日本への侵略を助ける日本学術会議を民営化するほう
が良いとも思える。敵を利するような宣言する組織を国民の税金で
運営する必要はない。というより、おかしい。

と、この問題ではリベラルからリアリストに日本社会の雰囲気を変
える必要を感じる。

というように、このコラムで主張していたことが、コロナにより、
現実になってきた。

今後、コロナ感染再拡大が起きる可能性が高い。企業活動は低下す
るので、株価も下がることが想定できるし、それに輪をかけて、米
国大統領選挙の混乱も追い打ちをかける可能性もある。

というように日本の状況は前途多難である。

この解決は、今までの資本の効率化を推し進めた新自由主義的な資
本主義から全国民の命を守る自衛的・地産地消的な資本主義にする
ことである。グローバリズムは資本の効率化の方法として生まれた
が、それでは疫病などの災害には弱いことを思い知らされたはずで
ある。

国民の命を守るためには、エネルギー、食糧、材料はなるべく自国
で生産することである。自国生産を企業に保証するためには、保護
主義も必要になる。どの部分が国民生活に重要かを決めて、その部
分は最低でも、自国生産を優先することである。

しかし、日本はエネルギーと材料面では資源が乏しいが、それを解
決するのが太陽光や風などと植生の利用になる。これもこのコラム
では、植生文明化をするべきと述べてきた。

そして、全国民を守るにはデジタル化も重要なことになる。セーフ
ティー・ネットの網をホームレスになった人たちにも広げることが
できる。マイナンバーカードとスマホの電話番号があれば、現住所
を必要としないので、救える人を増やすことができる。

そして、マイナンバーで銀行口座や企業給与の把握ができれば、収
入がない人を識別もできる。

給付付き所得控除(ベーシック・インカム)などで、収入がない人
には給付をすることもできる。これができると経済的理由で命を絶
つ人は、大幅に減ることになるはず。

同一労働同一賃金で、非正規社員と正規社員の給与差がなくなるが
、これは正規社員の給与が下がることを意味する。世界的な競争に
負けた企業の利益が減り、給与を上げる余裕をなくしているのが、
今の日本企業の状態であり、金融緩和などで円安にして、価格競争
力を上げていたことで、競争力の衰退を隠していただけである。

このため、少子高齢化の対策として、移民を受け入れてきたが、低
賃金でベトナムや中国からの移民はいなくなる。ということで、日
本の抜本的な経済立て直しが必要になっている。

日本衰退の原因は、NTTや国鉄の分割民営化で、研究開発費が大きく
下落して、米国巨大企業とベンチャーキャピタルや中国の国家補助
の研究開発力に負けたことによる。日本全体での研究開発力が落ち
たことで、日本は世界的なデジタル産業の競争から脱落したのだ。
この復活なくしては、日本の衰退を止めることはできない。

NTTが光ファイバー、半導体、通信機器やコンピューターなどに多額
の研究資金を出して、その研究成果をNEC、富士通、日立などが吸収
して、世界的な企業になっていったのであるが、NTT民営化後に日本
全体としてもデジタルにかかわる研究資金が不足したことで、世界
的な競争に負けてしまったのである。

この研究を復活させないと、デジタル化で日本を復活させることは
できず、世界的な企業を育成もできない。再度、日本を輝かせるに
は、本格的な研究開発投資をするしかない。

そして、現時点では、一流な技術者・研究者も少なく、追い付くた
めには、世界から技術者や研究者を集めてくるしかない。どこが、
それを主導するかであるが、NTTしかないとみる。このためにもNTT
を再度、まとめる必要があり、ドコモを非上場化することにしたの
であろう。NTTを中心にして、NECや富士通などの製造会社をまとめ
て研究開発して、再度、日本企業を世界的な位置に持っていくしか
ない。

ソフトウエアでは、各企業がそれぞれに努力するよう期待するしか
ないが、クラウドやAI、5Gなどの基礎技術は、NTTやソニー、富士
通など大企業がかかわる必要がある。

そして、日本は、経済力では人口12億人いる中国にはかなわないこ
とは、明白である。経済力の差は兵器などの数に現れ、その部分で
は、中国にかなわない。同じ能力の兵器では日本の勝ち目はない。

このため、軍事研究も拡大して、新兵器で中国の侵略を防ぐ必要が
ある。その軍事研究を禁止する日本学術会議を国家機関から外し権
威をなくして、軍事研究もできる学問の自由を確保して、軍事研究
者を増やす必要がある。

戦争というだけで禁止しようとする高齢者の理想や理念と現実世界
が齟齬をきたしているので、このような理想や理念を掲げる政党、
報道機関や組織を、国民は自己防衛の意味からも、つぶしていくし
かないと思う。

日本にあり、日本の敵に利得を与える組織や政党は、敵以上に敵で
あるからだ。そう思えるほど、中国の軍事圧力は厳しくなっている
し、日本で中国援助依存の組織が増えている。

3.デジタル化の問題点
デジタル化というが、諸手続きはスマホがベースになるために、問
題が出る。

問題点としては、スマホを使えない70歳以上の高齢者が何もできな
くなることである。このため、一部今までの窓口を設置することは
必要になる。紙ベースの申請も残す必要がある。

もう1つが、ホームレスの人たちがスマホを持たないと、申請もで
きず仕事を探せなくなることであるが、このスマホを持ってもらう
ことが支援の大きなポイントになる。

それと、個人情報を政府が集めるので、監視社会になる危険性もあ
り、この部分では、個人情報の利用制限が設ける必要がある。

それと国民が監視社会になるのを未然に防ぐことを心掛けるしかな
い。

さらに大きな問題が、紙媒体のメディアが衰退していくことや、ネ
ットでの買い物や大学等の教育などに移り、既存ビジネスに大きな
試練をもたらすこと、それとAIの発展により、法律家、税理士、運
転手、企画職などの専門的な職業の必要性がなくなり、その職業が
失われることである。しかし、企業的にはコストがなくなる。

それと、オフィスをクラウド上に持てば、それでサービスができる
ので、必要な現場以外のオフィスが必要なくなり、不動産ビジネス
も大きな影響が出てくる。オフィス賃料がなくなりコストが軽減さ
れることになるし、個人で大きな会社を運営できるようになる。

などの問題と利点があるが、企業は今から問題点を解決することが
必要であるし、それさえできれば、コスト効率が飛躍的に高まるこ
とは確実である。

このことで、中産階級がいなくなり、経営者や少数のシステムエン
ジニアと末端労働者と2つの階層に分かれてしまうことになる。こ
の時の社会的な仕組みも考えていく必要がある。竹中さんのベイシ
ックインカムの提案も、そこから出ているような気がする。

さあ、どうなりますか?



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