6143.菅政権下での成長戦略



菅首相になり、明確な説明がないが、焦点を絞った成長戦略を立て
たようである。河野大臣や平井大臣の凄味が違う。どのような戦略
を立てるべきかを検討する。           津田より

0.米国および世界の状況
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
そして3月23日18,591ドルまで急落して、9月2日29,099ドルまで上昇
したが、10月2日は27,682ドルで、5日は465ドル高の28148ドル、6日
は375ドル安の27,772ドル、7日は530ドル高の28,303ドル、8日は122
ドル高の28,425ドル、9日は161ドル高の28,586ドルである。

トランプ大統領のコロナ感染で株価は下落が、5日は退院したことで
大幅な上昇したが、トランプ大統領が民主党との追加の経済対策協
議を中止したことで6日は大幅な下落。しかし、トランプ大統領は、
追加の経済対策の一部を求めたことで、一転7日は500ドル以上の上
昇、8日には政権が民主党の協議で上昇。というように、トランプ・
ツイードで、市場は翻弄されている。

世論調査でバイデン氏の圧勝という観測が出たが、株価は落ちない。
バイデンが大統領になっても、増税より公共投資などの方が多いこ
とで景気がよくなるというのである。また、民主党副大統領候補の
ハリス氏は、70万ドル以下の世帯では増税にならないと明言してい
る。

というより、トリプル・ブルーになり、大統領も上下院も民主党が
勝ち、議会で揉めることがないので、2兆ドル規模の公共投資が早く
実現するというのである。

しかし、民主党を中心に下院司法委員会では、ハイテク企業の独占
禁止法(ビックテック規制)が議論されて、分割される可能性もあ
る。このため、ナスダック市場では空売り比率が増している。その
結果売りのポジションが積み上がっている。

しかし、売りのポジションが積み上がると、それを巻き戻す買いが
いつか必要になる。上昇で損切の買いが入ると、一層上昇すること
になる。このため、一層のハイテク株上昇と強気に見るコールオプ
ションも大量にあり、このオプションを売った人の対策のための買
いが入り、ハイテク株も上昇している。

というように、ハイテク株の下落で大損をすることを阻止するため
に、裏で巨大投資ファンドが動いていると噂が出ている。それも日
本のファンドだという。

日本とドイツが市場に参加すると、「市場の終りに近い」という格
言が、またもや真実になる可能性もあるようだ。

しかし、SP500指数の20%を占めるGAFA分割の危機でもハイテク株は
上昇している。

市場は、懸念材料を見ずに、なんでも楽観視して、株価を上昇させ
ている。そのため、バブル形成が続き、いつ、株価が経済実体に見
合う暴落になるのかわからなくなってきた。

11月3日大統領選挙後で、大混乱になると危ないとみていたが、トリ
プル・ブルーで、株価は上昇するというシナリオが市場に出て、株
価上昇という状態になっている。「市場の終りに近い」が、このよ
うな楽観視の状態が、いつまで続くのかもわからない。

1.日本の状況
日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値に
なり、3月19日16,358円まで下げ、10月2日は23,029円で、5日は282
円高の23,312円、6日は121円高の23,433円、7日は10円安の23,422円
、8日は224円高の23,647円、9日は27円安の23,619円。

10月2日トランプ大統領がコロナに感染したという情報で、下落にな
ったが、5日、6日は上昇した。7日はトランプ大統領の経済対策協議
中止で下落したが、思いのほか下落しない。8日は2月14日以来の高値
になった。

マザーズは、5日連騰で1300p台と2018年9月以来の高値で、勿論、年
初来高値になっている。日本市場も米国同様に強い。

しかし、9月消費者態度指数は前月比1.5ポイント低下の35.6だった。
というように景気全般では、日経平均株価も高過ぎの感じである。

こちらも調整がいつ来るのか見通せない状態であるが、買い進むと
も思えず上値も重い展開であり、下値は日銀ETFの買いで固いので、
下値もない。日銀の公的な介入で市場の株価がおかしくなっている
ようにも見える。

PERやPBRなどの指標で、日銀ETF買いを控えることも必要な気がする
。異常な状態のままにすると、海外投資家が逃げていき、東京市場
の投資家の厚みがなくなる。少なくともPBR1倍程度の株価でないと
おかしい。

日本国債市場と同じように市場参加者がいなくなってしまうことを
恐れる。管理相場でも景気の動向を反映させないといけないのでは
ないですかね。

景気実態に合った適正な管理相場を形成する必要があるのに、今の
日銀の金融緩和政策は、東京市場をつぶすことになりかねず、間違
っている。

2.日本の成長戦略は
なぜ、安倍政権時代には、日本の成長戦略が機能しなかったのか。
少子高齢化対策や農業輸出促進策、インバウンド推進などの総花的
な政策を行ったが、メインは金融緩和策で、経済衰退を隠していた
が、コロナで日本経済の衰退が明確になってしまった。

総花的な経済成長戦略が、大手を振るっていたが、それでは日本経
済は衰退を免れないし、政策費や研究開発費を広範囲にバラまくだ
けで、有効な効果が出なかった。要するにバラまき政治だった。

このため、焦点を絞った改革が必要なのである。そして、そのため
には権力の集中が必要になる。日本社会を衰退から発展に大きく転
換させるためには、権力を集中させて、その指示のもとに予算をあ
る分野に集中投下して基盤を作るしかない。

規制緩和や制度改革には既得権益者がいて、強い反対に会い、それ
を撥ねつける強い権力で、菅首相は対応してシステムを完成させて
ほしい。勿論、河野大臣や平井大臣の活躍が必要であるが、矢面に
立たされるのは菅首相である。菅首相が一番大変なのだ。

産業育成政策が重要であると、このコラムでは述べていたが、やっ
と、その方向に政権が向かい始めた。

特にコロナ感染拡大で社会全体でのデジタル化が、世界的に見ても
遅れていることを実感した。このデジタル化が世界の企業競争の中
心にあるし、生産性向上の要であるが、その中心が遅れているので
、企業全体も競争力をなくし、生産性を上げられずに労働者の賃金
も上がらないし、日経平均株価も米国ナスダックほどには上がらな
かった。

日本がデジタル化の進む米中に追い付くには、デジタル化の急速な
整備が必要であり、そのデジタル化の整備とは、人工知能AIとクラ
ウドコンピューティング、移動通信の5Gの3つの技術の整備が必要
であり、これらを社会活動の基盤とすることにある。

AIを有効にするためには、大量のデータが必要であり、そのデータ
を集めるのがクラウドであり、大量データを迅速に集めるには高速
通信の5Gや高速光ファイバー網である。

このため、NTTは、光ファイバー網と移動体通信4G・5G、データセン
ター(クラウド)の融合が必要になり、ドコモを完全子会社化した。
今後NTT内子会社を、デジタル化整備に合わせて再編することになる
とみる。そして、このインフラ整備とともに、技術開発と研究開発
でも米中に追い付かないと、世界での競争には勝てない。この研究
でもNTTが中心で行うしかない。

そして、膨大な処理が必要な自動運転操作などもクラウドで処理し
た結果を自動車に送るために、5Gが必要になる。ということで、
総合的な整備が自動車の完全自動運転でも必要になる。

この分野でも、トヨタとNTTなどの主要企業が組んで研究開発するべ
きである。技術はすぐに陳腐化するので、その研究はインフラ整備
とともに行う必要があるのだ。中国のように、研究開発では国家が
サポートするしかない。

デジタル化を国家的に行うことが重要であるが、その基盤は、今ま
での省庁の縦割り行政に内閣府の串差しの横方向の分科会を作り、
規制改革や行政改革などの制度見直すことである。

それとともに、デジタル庁で、マイナンバーを基にした全体統合政
府システムができると、国民の情報が集約されるし、国民も便利に
なる。例えば、住民票の移動とともに、ガス・電気・郵便などの移
転処理も一度にできることが必要であり、それらを統合したWEBの窓
口を作ることである。それも、同じ情報を2度と入れなおさないよう
にすることである。

そして、そのシステムを使うためには国民は最低でもスマホが必要
であり、その利用料金をなるべく低額にする必要がある。というよ
うに、すべては、デジタル化社会対応に必要なことであるのだ。

そのシステムで国民情報の集約で大規模なデータができ、かつ、そ
のデータを使ってAIを学習させると、いろいろな動向が見えて、
的確な福祉・経済政策を計画立案できることになる。

それとともに、国民や企業はPCやスマホで、マイナンバーを元に、
諸手続きを一括的に処理でき、事務効率が格段に向上してくる。官
庁も手続きに人を割くことはなくなり、行政の効率化が促進する。

ということで、法人格にもマイナンバーを付与して、国民と統合し
たほうが良いかもしれない。今後、国民もフリーランスが増えてく
ると思われるので、企業と個人の差がなくなってくるとみられる。

こうすれば、国民・企業や官庁の効率化はもちろん、個人情報を含
まない形で企業がデータを利用できるようにすると、いろいろな新
しいサービスが構築でき、かつ、その効用を国民に提供できること
になる。

というように、国家全体の経済成長を支える柱を作ることなのであ
る。

AIは膨大なデータがないと、ただの箱であるが、国民の膨大な情
報を解析できると、いろいろなことがわかり、AI自体の発展にも
つながることになる。

ソニーのアイボをペットにしている友達がいるが、飼い方で犬の性
格が変わり、本当の犬と同じような感じで、アイボの友達たちの犬
の個性がすべて違うという。そして、ソニーは、犬の脳検査もでき
て、犬の性格もわかり、家でだれが一番好きかもわかるという。

ソニーのクラウドに犬の行動情報が送られて、そこで性格形成をAI
で分析して、行動指示を犬に送り返しているという。性格はクラウ
ドの処理で決まるようだ。

ソニーは、このアイボにより、AIの課題である感情分析を研究し
ているようである。性格をクラウドのAIに持たせられると、人間の
ようなロボットの構築にもつながることになる。家事や介護ロボッ
トが個性や性格を持つことになる。

農業や今までの産業などの構造改革も必要であるが、産業の中心は
、AIと情報を集めるクラウドで構成されるDX、デジタル化にあ
り、それを避けては、日本の成長はない。

もう1つ、この動きに合わせて、日銀は、日米欧が組んでデジタル
通貨の実験を開始する。このデジタル通貨も決済手段として、DXに
は有効である。

やっと、日本もコロナ感染症拡大で、気が付いたようであるが、官
庁の効率化だけではなく、日本全体の成長を助けるデジタル化を推
進してほしいものである。逆に、それなしには、日本の成長はない。

もう1つは、財政健全化をどうするのかという問題が残っている。
無駄な経費や組織の統廃合は必要である。政府の役割を減らすこと
も必要なのかもしれない。長期にわたる日銀の金融緩和を止める道
筋をつけることも検討するべきである。

3.大統領選挙
トランプ大統領の劣勢で、残り1ケ月を切った。第2回目のバーチャ
ル討論会もトランプ大統領の出席拒否でなくなり、第3回目の討論会
も危うい。対面の集会を開くだけでは挽回が難しい。

現時点で、トランプ氏は全米の調査で平均9.7ポイント、バイデン氏
に後れを取っている。激戦州では5−7ポイント程度の差を付けら
れているようだ。ファイブサーティエイトの予測モデルによれば、
バイデン候補が勝利する確率は85.1%となっている。

しかし、直接投票する人が少なく、郵便投票が多いので11月3日の投
票日に決まらない可能性と郵便投票を違法とするトランプ大統領の
意見で、民主党は期日前投票をするように支持者に周知して戦略を
変えたようである。

このため、1ケ月前なのに期日前投票を済ませた有権者がすでに660万
人に上っているという。前回2016年大統領選の同じ時期の10倍以上
だと。

2016年の選挙で、トランプ大統領の大逆転があったので、まだわか
らないが、どちらにしても米白人人口の25%が福音派であり、その支
持度合が重要なキーポイントになっている。もし、福音派支持が強
固でないなら、トリプル・ブルー(大統領と上下院ともに民主党)
になる可能性も高い。

そして、大統領に残された挽回方法は、オクトーバー・サプライズ
しかないのが現状である。ここで、トランプ大統領は、ワクチンを
認可して10月に提供するとしたが、現状では間に合わないことが明
らかになっている。残すは、海外での紛争しかない。米国の行動で
、相手国から手を出させて戦闘状態を作るのである。

特に台湾海峡や南シナ海、東シナ海な中国軍と米軍の衝突が考えら
れる。もう1つが、南コーカサス地域での戦闘にイランが絡み、中
東戦争化する可能性である。特に福音派の支持を強固にするために
は、聖書の黙示録に書かれているような中東戦争が必要なのである。

4.アルメニアとアゼルバイジャンの紛争
このため、アルメニアとアゼルバイジャンの係争地ナゴルノカラバ
フを巡る軍事衝突に、ロシアは危機感を感じて、ロシアのプーチン
大統領が、両国に対して停戦協議を仲介、両国は停戦で合意した。

現地時間10日正午(日本時間同日午後5時)から戦闘を停止する
という。ロシアは、トランプ大統領のオクトーバー・サプライズで
起きる、旧ソ連領内での戦争を防止したようだ。

ナゴルノカラバフを巡っては1994年に停戦合意が成立したが、最近
の約2週間続く激しい戦闘では数百人が死亡し、大きな被害が発生
していた。特にアゼルバイジャンの方の被害が大きい。

トルコがアゼルバイジャンにトルコ族のシリア義勇兵を送り、イス
ラエルの兵器をアゼルバイジャンは買い、自国領土と主張するナゴ
ルノカラバフ自治州周辺で大規模な軍事演習をした。

アゼンバイジャンは、バクー油田がある石油大国であるが、コロナ
の影響で原油価格の値下がりで、国民福祉が下がり国民に不満が出
ていた。BTCパイプラインもアゼルバイジャンを通っているので、
トルコの利害にも関係している。

ナゴルノカラバフはアルメニア人が多く、アルメニアが実効支配を
している。アルメニアとロシアは安全保障条約を結んでいるが、ロ
シアは中立的な立場である。

アルメニア人の多くはキリスト教の正教徒で、アゼルバイジャン人
の多くはイスラム教シーア派だ。アルメニア系アメリカ人の米国ロ
ビー団体がそれなりに米国政治に影響力を持っている。

一方、トルコはアゼルバジャンを支援している。イランもシーア派
のアゼンバイジャンを支援するはずだが、現時点では中立である。
勿論、現時点では米国も中立である。

停戦成立で、ロシアは、オクトーバー・サプライズを防止したこと
になる。

ということは、南シナ海で、米軍と中国軍の軍事衝突が起きる可能
性が高くなるということになる。

さあ、どうなりますか?



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