6137.世界的な株価下落が続く



9月のFOMCで追加の金融緩和がなく、失望からハイテク株バブル崩壊
の様相になってきた。今後の世界的な動向を検討する。 津田より

0.米国および世界の状況
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
そして3月23日18,591ドルまで急落して、9月2日29,099ドルまで上昇
したが、9月11日は27,665ドルで、14日は327ドル高の27,993ドル、
15日は2ドル高の27,995ドル、16日は36ドル高の28,032ドル、17日は
130ドル安の27,901ドル、18日は244ドル安の27,657ドル。

NYダウは、2日に29,000ドルを超え、2月高値水準になった。しかし
、9月3日木曜日に全ての市場で急落後、NYダウもナスダックも調整
が続いている。

特にアマゾンで、9月2日に3,552.25ドルまで行ったのに、9月18日は
2,954.74ドルと3,000ドル割れになっている。業績無視で垂直なチャ
ートで上昇したハイテク・バブル崩壊のようで、9月暴落が実現した
ようである。

15日、米国議会では、超党派が1.5兆ドルのコロナ対策提案を作り、
両党合意に向けて協議が開始したが、直ぐには決まらない。16日FOMC
後、パウエル議長は「景気回復は大方の予想より速いペースで進ん
できている」としつつ、「今後の道筋は依然として極めて不透明だ
」と述べた。

しかし、8月の小売売上高は前月比0.6%増と予想(1%増)以上に
伸びが減速した。もう1つ、米国株の先行指標と言われる材木先物
価格が暴落して、8月21日に830ドルであった価格が9月18日に578ド
ルになっている。

これを受けて、SP500とナスダック、NYダウも下落したが、市場での
流動性が急になくなっている。ロビンフッダーの売買がなくなった
ことによる。このため、ナスダックは、9月18日117P安の10,793Pと
11,000Pを割った。それと、ドル円は104円20銭台まで円高になった。

市場の期待はFRBの量的緩和の増額であるが、パウエル議長は何も言
わず失望感が出た。これまでのハイテク株上昇理由は、FRBが無限に
量的金融緩和策を行うとしたのが、それをしないことで失望感が出た。

その上、追加のコロナ給付金も議会紛糾で決まらない。このため、
ロビンフッダーの余剰資金がなくなり、株取引もできず、消費も控
えだしたようだ。

というように、市場が追加の経済金融政策を要求するために、株価
を下げている。このため、追加の経済金融政策が決まるまで、当分
下落は継続することになる。

このため、11月にはFRBは、バイデンが勝てば、ブレナードFRB理事
がFRB議長になり、追加の量的緩和をすることになりそうである。
そこで株価は上昇に転じるが、それまでは下落方向のまま。

トランプ大統領は、ツイッターで「共和党議員はもっと高額を求め
よ。(いずれにせよ)それは全て米国に戻ってくるのだから!」と
訴えた。というように、議会で審議中の追加のコロナ対策費の増額
に柔軟な対応することを求めているが、民主党はもっと増額、共和
党はもっと少額と要求している。

もう1つ、インフレ懸念が浮かび上がってきた。小麦、大豆、トウ
モロコシなどの価格が、上昇している。食料不足が起きるとこのコ
ラムでも注意してきたが、価格が上昇してきている。

一方、英ジョンソン首相が議会に提案した国内市場法案は、EUとの
協定に違反した内容であり、国際法違反であるとEUは英国との交渉
を拒否して、国際裁判所に提訴するとしている。もし、10月末まで
にEUとのFTAなどの交渉がないなら、英国のGDPは今でも20%減になっ
ているが、もしハードブレクジットになったら、GDP50%減になると
も言われている。

このため、ジョンソン首相は、脱欧入亜を目指すようである。日本
とのFTA締結やTPPの加盟申請を進めて、GDPの落込みを止めたいと言
うし、日本のファイブアイ加盟を推進するという。再度、日英同盟
締結をしたいようである。

しかし、脱欧で英国GDPの大きな落込みを予想して、英国中央銀行は
、マイナス金利の深堀を検討開始した。その結果、大幅なポンド安
になった。

このため、この国内市場法案の修正をする可能性もあり、EUとの協
議可能となるか注視が必要のようである。これにより、ポンドの下
げ幅が縮小した。

そして、コロナ感染再拡大が懸念される欧州株も下落している。EU
は、英国どころではなく、EU内の景気維持に奔走しなければならな
い状態である。このため、メルケル首相も英国に冷淡な対応をして
いる。

中国では、不動産業者が月に30社以上も倒産しているという。価格
を30%下げても不動産が売れない事態になっている。

世界的なコロナ不況の次の経済波乱の様相になってきた。株価の小
幅な下落でも続くと暴落の危険もある。「ホワイト・スワン」のお
出ましか?

1.日本の状況
日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値に
なり、3月19日16,358円まで下げ、9月11日は23,406円で、14日は152
円高の23,559円、15日は104円安の23,454円、16日は20円高の23,475
円、17日は156円安の23,319円、18日は40円高の23,360円。

日経平均株価は、米国株の好調を受けて9月14日に23,559円と戻り高
値を抜いた。しかし、17日は、パウエル議長の2023年まで金利を上
げないとしたことで、104円台まで円高になった。その上に、JR東日
本とJR西日本が決算見通しを大幅な赤字としたこともあり、17日は
、下落になったが、全般的には強い。

このため、104円台になったのに、日銀、財務省、金融庁の三者会談
が行われない。担当者の人事がまだ固まっていないからか、もし、
GPIFなどのドル買いがないなら、円高が進んでしまうことになる。
このままなら、102円台までの可能性を感じる。

しかし、ハイテク・バブル崩壊の米国株とは違い、ハイテク株がな
い日本株は、粘り腰で強い。だか、これ以上景気回復は見込めない
ので、上値を取りに行くとは考えにくいので、上値の重い展開が続
くことになる。

もし、連休中に米国株が一層下げると、円高も重なり日本株も大幅
な下落になる可能性がある。ということで、4連休明けの東京市場
は、波乱になるような気がするが、どうであろうか。

2.菅政権の陣容と政策
菅政権の目玉は、行政改革・規制緩和とデジタル革命の推進、それ
と携帯電話料金引き下げという内政の3枚看板である。弱点は外交
問題であり、米国も心配しているし、中国は、親台湾派の岸信夫防
衛相に心配している。

菅首相は、親中派二階氏を幹事長に留任させたが、米国の心配を払
拭させるために、親台湾派の岸氏を防衛相にしたのであろう。一方
、アジア版NATOを否定したことで中国にも気を使い、このため
環球時報には『日米を引き離し、日本を取り込むべきだ』という主
張が掲載されたように、日本を米国から切り離せると見ている。

ということで、バランスを取ったことで、中立を表しているのであ
ろうが、中国への気の使い方が不安だ。

行政改革担当相に河野氏を、デジタル相にITがよくわかる平井氏を
当てて、なおかつ、国会審議の場で首相の次席に河野氏を座らせた
ことで、次期首相候補を明言している。いち早く菅首相を応援した
財務相兼副総理の麻生氏としても、顔が立つことになる。

河野大臣は、早速、個人サイトに「行政改革目安箱」(縦割り110番
)の投稿コーナーを立ち上げたが、1日で4000通も来て、全て河野氏
自身が目を通すとしたが、お手上げになったという。

しかし、やることは早い方が良い。河野さんは、何が問題かの感じ
を掴めたはずである。それと官僚に任せないことで、自分の意思を
官僚に命令できる。

行政改革・規制改革は、不利益になる官僚や既得権益を持つ団体と
の駆け引きであり、重要な部分を、団体保護をする官僚に任せては
いけない。そのためには、土光臨調のような組織を立ち上げて、国
民総意の形を作り、既得権益者や官僚の抵抗を排除することが、必
要であろうと思う。

官房長官に加藤氏を充てたのは、官僚的な発言で慎重であり、河野
氏では問題発言などがあると心配で、慎重居士の加藤氏にしたので
あろう。なおかつ、安倍前首相のお気に入り加藤氏を官房長にした
ことで安倍前首相にも気を使った。そして、次期首相の目を残した。

派閥均衡の人事で菅首相は、当面党運営を切り抜けて、その間に業
績を作り、総選挙を行うことになる。そこで、勝つことで長期政権
化も可能になる。夫人も控えめであり、菅氏としても、当面は政権
運営を心おきなくできると見る。

国民が望んでいることは、コロナ対策と経済活性化の両立であり、
この難題が解決できたら、菅政権は安泰になる。とくに厳しいと見
るのが、経済対策であり、今後、多くの企業の倒産が続くことにな
る。商業用不動産価格も大きく落ちることが予想できる。地方銀行
の倒産も心配であり、地銀再編は待ったなしだ。

その上に、米国の金利低下で、ドル安円高も襲い掛かる。企業収益
に大きく影響する。当然、株価も下落する。菅政権が重視しなけれ
ばならないのは、雇用、為替、株価の3つであるが、難しいことに
なる。

それと、冬に向かいコロナが再度流行すると、感染拡大で重症者の
増加になり、経済活動を縮小させる必要もある。株価は、日銀ETFで
下落をある水準にキープできたとしても、生活困窮者が増えて自殺
者数が増加して、感染死者数も自殺者数も増加となる可能性がある。
凶悪な犯罪数も増加するはず。

生活困窮者数や自殺者数は、特別給付で押さえることができるので
、この面からも再度、検討の必要がある。しかし、非常に厳しいこ
とになる。

外務大臣に茂木氏を留任させたことで、対外政策の基本を継続する
事を示した。しかし、中国に気を使う菅首相がトランプ大統領に好
かれることはないから、トランプ政権の継続となると、苦しいこと
になる。

再選後、トランプ氏は、日本に対して、厳しい要求を突き付けてく
るような気がする。バイデン政権になれば、それほどではないが、
どちらが大統領になっても、米中対立が大きくなり、日本も米国に
同調するしかなくなる。

これにより、中国進出の日本企業に大きな影響が出て、経済問題も
噴出することになる。大戦争に向けて、米中が進み始めている感じ
で、安全保障を経済に優先して考えないといけないことになる。こ
の様になったら、内政より外交が重要なことになる。

そして、中国は、孤立化したことで戦狼外交を強化して、南シナ海
や東シナ海、西太平洋で、軍事力を背景に日米に大きな圧力を掛け
てくる。中国は、米国との戦争を想定して、ハワイを攻める拠点と
してキリバスの港湾を整備、キリバスに大規模な援助を行っている。
第3列島線攻略を志向し始めた。

そのようなことを考えると、外交が、日本の一番の問題になってく
るはず。その時には、河野首相にして、敵基地攻撃能力を持つ防衛
体制を法改正などで強化して、日米軍事同盟を強化して、中国に対
抗しなければならなくなる。事実、エスパー国防長官は、同盟国に
GDP2%以上の防衛費を要求している。これは日本と欧州に向けて言っ
ている。

ということで、総選挙で勝って、長期政権化しても、菅さんは首相
の辞め時を間違えないでほしいですね。日本の死活問題になる。

3.米大統領選挙
トランプ大統領は、10月にはコロナワクチンができて、一般の方に
接種できるし、4月までに少なくとも米国国民全員のワクチンを配布
できると表明した。

しかし、米疾病対策センターCDCのレッドフィールド所長は、今年11
月から12月にワクチンが投与可能になるが、コロナワクチンを国民
に広く提供できるのは2021年半ばになるとした。

これに対しトランプ氏は会見で、レッドフィールド氏の見解に関し
「間違っていると思う。不正確な情報だ」と断定した。

トランプ氏は大統領選をにらみ、オクトーバ・サプライズとして、
早期にワクチンが利用可能になると主張している。再選の目玉施策
と位置づけているようである。しかし、どうも怪しい。

民主党バイデン候補は、政策的には音なしの構えであり、トランプ
大統領のウソ・インチキ発言を批判していた方がよいとみているよ
うだ。

しかし、激戦州でトランプ大統領の対中政策が好評であるので、バ
イデン候補も、対中政策では、トランプ大統領と同じ政策を打つと
している。

しかし、カラマ・ハリス女史の夫が、親中的な弁護士事務所所属で
あり、トランプ大統領の反撃にあっている。バイデンの息子も中国
の弁護士事務所にいたことで、バイデン氏も親中であるというのだ。

しかし、現時点では、バイデン候補の支持率が、一時より広げて、
6%もトランプ氏を上回っている。

株価も下落して、トランプ大統領は行き詰まっているようにも見え
る。トランプ大統領は、どうしてもオクトーバ・サプライズが必要
であり、ワクチン開始がダメなら、南シナ海での米中軍事衝突とな
る可能性も否定できない。

さあ、どうなりますか?


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