6106.新型肺炎ウィルスは日本経済を殺す



とうとう、日本で新型肺炎ウィルスが初期対応失敗で流行段階にな
ってきた。世界は日本の危機管理を危惧している。今後の見通しと
対応策を検討しよう。     津田より

0.米国株価
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
しかし、一週間前の14日29,398ドルで、2月21日28,992.41ドルと、
新型肺炎ウィルスへの警戒感が出ているようだ。

対して、金価格は上昇している。ドル円は112円まで円安になってい
る。安全通貨の円が売られて、とうとう、安全資産は金しかないと
いうことになった。

しかし、まだ、米国本土に新型肺炎が蔓延した状態ではないが、日
本や韓国の新型肺炎感染者数拡大で、韓国、日本からの入国制限処
置に踏み切らないと、感染者が拡大する危険性を感じる。

米食品医薬品局の元長官のスコット・ゴットリーブ氏は、新型肺炎
について「日本は感染急拡大の瀬戸際にあり、大規模流行へと発展
するかもしれない」と述べた。仮に中国以外の国で大規模な集団感
染が起これば「極めてやっかいな事態で、国際的に制御できなくな
る」と警戒感を示した。

米国は、国民の50%以上が高額な医療費から医療に行けない人た
ちであり、医療崩壊は起きにくいが、その分、武漢になる可能性が
高いので注意が必要である。もし、米国のある地域が武漢的になっ
たら、株価は暴落することになると見る。

米CDCは、南西部の都市に非常事態宣言を出したが、この理由を
明らかにしていない。普通に考えるとインフルエンザの流行がひど
く死者が多いことによると思うが、それなら、理由を明らかにする
はずだ。この宣言と同時に、米軍事基地24ケ所に隔離施設を急遽構
築し、新型肺炎ウィルス検査体制を確立したという。

何かあると思ったら、米CDCは、新型肺炎ウィルスの感染拡大の可能
性を発表した。この情報で株価が下落しているようにも見える。

1.日本株価
日経平均株価は、2月3日22,775円まで下げたが、2月6日23,873円で
2月14日は23,687円となり、2月21日23,386円と徐々に下げているが
、海外のニュースで、日本の危機管理体制が脆弱となり、海外投資
家は、円売りに出てきた。

今までなら円安になると、株高になるのが普通であり、朝方株価上
昇で始まるが、徐々に下落するという展開になっている。まだ、円
安で株価上昇というアルゴ取引をしているアプリがあるような気が
する。このため、徐々にしか株価は下落していない。

しかし、1ドル=112円と長く続いた三角持ち合いを上抜けてきた。
現役ファンドマネージャーの西山幸四郎(石原順)氏は、ここは円
売りをするのがファンドのセオリーであり、112円で留まることはな
いと恐ろしいことを言う。

今後、売りの加速で120円越え、その上に日本国債の金利上昇や円
安によるインフレなどが起きると、日銀の金融緩和策が終了するこ
とになる。

2.日本を見る目
日本の危機管理の脆弱さを、岩田教授の動画で世界は初めて知った
状態である。岩田教授は、「ダイヤモンド・プリンセス」号の感染
対策が杜撰であり、そのため、乗員・乗客・救援医師たちの感染者
を拡大したと説明した。

その説明に橋本岳厚労副大臣が反論したが、厚労省の幹部職員2人が
、感染していることが分かり、岩田教授の説明の正しさが証明され
てしまった。このため、海外報道機関は一斉に日本の危機管理能力
の脆弱さを言い始めている。

事実、日本の安全保障会議、感染症やウィルス学の専門家会議の開
催が、遅すぎであり、対策も後手に回っていた。そして、一番甘い
見通しで対策を実行したことで、感染者が拡大してしまったと見ら
れている。

その結果、このコラムで、長いこと、アベノミクスで長期に渡る日
銀の量的緩和は、その内、円安になり輸入物価が上昇して、ハイ・
インフレになると述べてきた。

そして、それがこの新型肺炎ウィルスにより、実現することになる
。もう1つ、円から外貨にシフトした方が良いと提言したが、これ
も実現してしまうことになる。注意してきたことが一挙に実現する
ことに、非常に心苦しさを感じるが、藤巻健史氏も同じような評論
している。

日本売りの様相で、インフレと国債金利上昇になったら、日銀は量
的緩和を実行できない。量的緩和は年率物価が2%の目標で行って
いたので、それも軽く実現してしまうことで、実施名目もなくなる。

本来なら、日銀は円防衛のための利上げを考えるはずが、利上げで
きない。景気後退期であり、本来なら利下げを行う場面である。

というのも、2019年10~12月期の実質GDP成長率は、前期比マイナス
1.6%(同年率マイナス6.3%)なり、このままであると2020年1~3月
期もマイナス成長になることは、ほぼ確実である。日本は2期マイナ
スとなり、リセッション入りが確実で、景気後退である。

GPIFなどの為替介入という手段がある。しかし、これは、無限なる
円を売る「円売り介入」と違い、限られたドルを売る「ドル売り介
入」であり、資源が限定的だからマーケットに見透かされ、効かな
い。

ということで、日本売りを止めることはできないし、その結果、ス
タグフレーションとなる可能性が高い。そして、日本経済の沈没が
起こり、株の暴落にもなる。

そのようなときに、日銀がETF買いを止めると暴落は、止まらなくな
る。ある基準を作り、その基準より下がったら、日銀はETF買いをす
るべきである。このコラムでは、基準を作り、上では売り、下では
買う政策をするべきであると提言している。

3.新型肺炎の流行阻止のためには
・検査数の拡大
その上に、東京が武漢のようになりはしないかと心配である。検査
数が3000件できると加藤厚労相は言うが、実質1000件程度しかでき
ずに、保健所に行っても検査されない人が多発しているようだ。

簡易検査キットをすでにロッシュは開発して、中国や香港に販売し
ている。香港へ入港したクルーズ船の乗客・乗員2000人を1日で検査
したが、その検査キットはロッシュ製であろう。迅速に検査を完了
している。

日本は遺伝子解析装置で行うために、1日1人が30件が限度だという
。日本製の簡易検査キットが完成するまでは、ロッシュの簡易検査
キットを使い検査して、1日1万件程度の検査を行えるようにするこ
とが必要である。それも早くしないと感染拡大を止めることができ
ない。

このため、東京の感染者数が人口の割に少ない。検査していないこ
とで、感染者を見つけていないことによると見えてしまう。

東京は人口集中地であり、感染拡大になると、国民皆保険制度が完
備している日本では、感染者数が拡大すると、ある割合で重症患者
数も多くなる。

すると、重症患者は病院に行く。このため病院のベット数が足りな
くなり、医療崩壊を起こし、多くの重症患者を入院させることもで
きなくなる。このため、処置をすれば助かる命が多数、失われるこ
とになる。武漢と一緒の状態に陥る可能性もある。

・感染者の行動公開
もう1つが、感染者の行動を公開することである。検査可能数が無
限大になると、感染者を見つける必要になる。この時、同じ場所に
いた人たちを見つけて、その人たちを検査して感染者を見つけて、
その人たちを自宅隔離するしかない。感染拡大阻止には、それしか
ないようである。

しかし、ここで問題なのが、私権の制限という問題が出てくる。
感染者の行動を公開すると、感染者が行った店には、客が来なくな
り、感染者の会社名などを公開すると、そこで不利益が起きる可能
性が出る。このため、平時ではプライバシーの公開は、個人や会社
の了解のもとにしかできない。しかし、有事では、それを可能にし
ないと感染拡大を防げない。公共の利益を個人の利益に優先するこ
とができる法律の整備が必要になる。

・検温の実施・地域封鎖
感染拡大の一番大きなポイントが会食と交通機関である。特に満員
電車での感染は、一番大きな問題である。このため、交通機関利用
時、検温をして、37.5℃以上の人が利用できないようにする必要が
ある。この人は会社に行けなくなり、会社も病休にすることである。

もう1つが、感染者が集中する地域の封鎖なども行えることも必要
になる。

このような個人の行動を制限することができる、憲法解釈の変更の
上に、法律の整備が必要になり、疾病危機時の有事立法の制定は待
ったなしである。行く行くは憲法改正をする必要があると思うが、
今は、憲法解釈の変更で対応するしかない。

野党も、桜ばかり追求しないで、疾病危機時の有事立法の議論をす
るべきである。

今は、一時休戦で、与党・野党が有事と言うことで、一致団結して
国難に対応するべきだ。自民党が与党であり、安倍首相の退陣も視
野に、与野党が一致して、この有事を乗り越える策を議論してほし
いものである。

4.政権内部の体制
今回の事態に、菅官房長官の存在が薄い。今までの危機時にその存
在感を発揮していたころと、明らかに安倍政権が違い、危機管理が
できなくなっている。

噂に聞くに、菅官房長官を安倍首相が干したことで、今回、加藤厚
労相を中心として、対策を構築したようであるが、残念ながら、加
藤厚労相では、荷が重かったということでしょうね。

当面、菅官房長官、杉田官房副長官を中心に、再度体制を強くして
、安倍首相は辞任も視野に、危機管理ができていた従来の体制に戻
すことが必要な気がする。

菅官房長官の嗅覚はすごいということである。危機管理は、苦労人
しかできない。修羅場を何度も潜り抜けた者しか身につかない。

安倍首相も加藤厚労相もエリート官僚や政治家の2世、3世で苦労を
していない。このため、事態を甘く見てしまう。事態をいつも厳し
目に見て、対策を早めに打つことができない。そして、安倍首相の
お気に入りの今井秘書官もエリート官僚であり、危機管理は弱いよ
うである。

危機管理の要諦は、早めに関係者を集めて、総合的に判断すること
であり、そのために危機時の安全保障会議がある。このような関係
者を集める仕組みを疾病危機時にも作るしかない。

疾病の各分野の専門家と関係省庁を集めて、その上で一番危ない状
況を想定して、対策を打つ。これしかない。

今回も、早期に関係者を集めていないという失敗を、原発事故時と
同じようにしていることが判明した。当時の民主党政権管元首相と
同じ失敗を安倍首相もしている。安倍首相も取り巻きで対策を練っ
ている。これ、管元首相の時と同じである。

今回の失敗の代償は、日本経済の沈没という非常に大きな物になる
と心配する。

さあ、どうなりますか?



コラム目次に戻る
トップページに戻る