2793.サブプライム問題の果て



日本で起こったことが、世界で起きたのが米サブプライム問題で
ある。この検討。      Fより

日本の土地神話が崩壊して地価の下落が起きた当初は小さい問題だ
と楽観論が出ていた。このため、それに対処するのが遅れて相当経
ってから土地の買取機構ができたが、あまり効果がなく、最後は銀
行に国が融資して、一時的な国立銀行化という荒療治をして、日本
の金融を立て直した。これが10年以上も日本を悩ませた問題であ
るが、それを同じ軌跡で、米国でブプライム問題が進行している。

サブプライムローンが焦げ付いて、大手銀行や証券会社の経営破綻
が出る可能性が出てきている。米国で10月31日、連邦公開市場
委員会(FOMC)が信用収縮に対応し追加利下げを決めた。

日本が行った土地買取機構と同じような銀行が出資する共同基金が
、金融機関傘下の債務担保証券会社から担保証券を買い上げる計画
がある。下落した担保証券の価格をつり上げる狙いだ。

しかし、この計画は、金融機関の抱える損失を将来に先送りする対
症療法であると指摘する声がある。日本の銀行が子会社に土地の担
保権を売り、時間稼ぎしたが、結局、時間が経つほどに土地が値下
がりして、最後は銀行自体が倒産の危機に見舞われたが、この教訓
が生かされていないというのだ。

グリーンスパン前FRB議長は10月29日の講演で「市場はサブ
プライム関連証券への投資リスクが大きすぎるとの判断を下した」
と語り、投資家がただちに担保証券への投資に戻ることはないと断
言した。

と言うことは、今後も担保証券が値下がりを続け、評価損は拡大し
て損失処理の負担はさらに重くなるということになる。銀行自体の
破産の危機が目の前にあるという厳しい指摘である。

このような議論からG7でサブプライム対策を検討している金融安
定化フォーラム(FSF)のドラギ議長(イタリア中央銀行総裁)
が「共同基金がきちんと機能するには、多くの課題がある」と述べ
るなど金融当局にも慎重意見が出ている。

しかし、共同基金計画が機能しなければ、金融機関の損失処理に公
的資金投入を迫られるという日本が行った銀行の国有化と同じシナ
リオになる。それが現実味を帯びきている。

そして米大手銀行や証券会社のCEOが相次いで辞任している。こ
れも日本の銀行の頭取が相次いで辞任した過去を思い出す出来事で
ある。じわじわとサブプライムローン問題は大きくなっていく。

さあ、どうなりますか??
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共同基金計画

 正式名称は「Master Liquidity Enhanc
ement Conduit」。流動性資金の増強に向けた中心的
基金といった意味。計画は9月中旬に、財務省が金融機関を集めて
協議。シティ、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ
の3行が10月15日に共同基金の設立を発表した。最大1000
億ドル規模の基金を90日以内に組成する。投資ビークル(SIV
)から担保証券を買い取るとともに、SIVの代わりに基金自らが
資産担保コマーシャルペーパー(ABCP)を発行して資金を調達
。基金はSIVと同様、設立する銀行の財務とは切り離して運営さ
れるため、市場関係者からは「スーパーSIV」とも呼ばれる。 
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シティCEOも辞任へ・米紙報道、サブプライム問題で 
 【ニューヨーク2日共同】米紙ウォールストリート・ジャーナル
(電子版)は2日、米サブプライム住宅ローン問題の影響で、7―9月
期に6割近い大幅な減益となった米銀最大手シティグループのチャー
ルズ・プリンス会長兼最高経営責任者(CEO)が、辞任する意向
を固めたと報じた。4日の取締役会で表明する。関係者の話として伝
えた。 

 サブプライム関連の損失拡大をめぐっては、米証券大手メリルリ
ンチのオニール会長兼CEOも10月30日に引責辞任したばかり。今
夏以降、金融市場を混乱させたサブプライム問題は、米金融機関大
手のトップ辞任の連鎖へと発展しそうだ。 

 傘下のヘッジファンドが巨額の損失を出した米証券大手ベアー・
スターンズもケインCEOに対する風当たりが強まっており、さら
に交代劇が続く可能性もある。(15:20)
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サブプライムローン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

サブプライムローン(米:subprime lending)は、主にアメリカ合
衆国において貸し付けられたローンのうち、優良顧客(プライム層
)向けでないものをいう。狭義には、住宅を担保とする住宅ローン
に限定されるが、広義には、自動車担保など住宅以外を担保とする
ものを含む。一般的に他のローンと比べて信頼度が低いとされてい
る。

2007年あたりから、その貸付の返済不能などが問題となっているの
は、主に住宅ローン(狭義のサブプライムローン)に関するもので
ある。

1.概要
住宅ローンの実施にあたっては、債務者の信用力の調査が行われる。
ここで十分な信用力を債務者が有していれば、その信用に基づく貸
付として、古典的な住宅ローンとして扱われる。ここで所定の古典
的な基準を満たさない債務者に対する貸付を行う場合を総称してサ
ブプライムローンと呼ぶ。債務者の所得水準が低い場合が典型的で
あるが、信用力を超えた借入を行って不動産投資を行う場合などに
も、同様にサブプライムローンが利用されてきた。

一般的な特徴としては、貸付利率が通常の住宅ローンに比べて高く
なり、貸付者が取る信用リスクも高くなる。このため、債務者が弁
済を容易とするための特別なアレンジや、貸付を行う側としては、
貸付リスクの分散が通常の住宅ローンよりも重視されることとなる。

サブプライムモーゲージ(subprime mortgage)ともいい、通常は住
宅ローン担保証券(RMBSもしくはMBS)の形で証券化され、さらにそ
れらが債務担保証券(CDO)の形に再証券化されて、投資家に販売さ
れる。RMBSやCDOは格付け機関により格付けされており、市場で取引
される。

サブプライムローンの貸付残高は近年拡大したが、債務者の信用水
準が一定基準を満たさない者に集中しているという本質的な特質か
ら、サブプライムローンの返済の遅延・不能、および波及的効果と
しての信用の収縮など、以下のような問題点が表面化している。

2.問題点
(背景)
サブプライムローンに限らず、アメリカにおいて、住宅ローンの返
済方法として、当初数年間の金利を抑えたり、当初数年間は金利の
みの支払いを行ったりと、当初の返済負担を軽減したものが普及し
、そのため債務者が自分の返済能力を無視した借入を行うことが可
能となり、そのような貸付が増加していた。

本質的には債務不履行のリスクは通常の住宅ローンよりも高い構造
を有しているものであるが、住宅の価格が上昇している場面におい
ては、返済の破綻はこれまでは必ずしも表面化しなかった。債務者
の所得が上昇せず、生活費が上昇して本来であれば返済に行き詰ま
る状況であっても、住宅価格が上がっている場合には、債務者は住
宅価格の値上がり分について、担保余力が拡大することから、その
部分を担保に、新たな追加借入を受けることができた(ホームエク
イティローン)。これにより破綻を先延ばしするだけでなく、消費
を拡大することもできた。

また、住宅価格が大きく上昇すれば、当該住宅を転売してローンを
返済し、さらに売買差益も得ることも可能であった。当初負担の軽
い返済方式の普及によって所得からすれば本来、住宅ローンを組め
ない人にまでローンを組む人が増えて、住宅ブームが拡大する間は
破綻が表面化せず、むしろ住宅ブームを加速した。

(過熱)
こうした当初の支払額を軽減した返済方式は、当初期間経過後、支
払額が急増するというリスクがある。住宅価格の上昇を前提にしな
い場合でも、この返済方式によるローンは、所得の確実な増加が見
込める家庭には合理的だと言えるが、所得が伸びない低所得階層に
は全く不向きである。ところが住宅ブームの中で、こうした低所得
階層や米国へ移民して間もない外国人にまで半ば強引な貸付が行わ
れ、サブプライムローンが拡大していった。サブプライムローンの
行き過ぎは1990年代後半頃から問題になっていた。

このような行き過ぎの中で、低所得階層に過重な手数料を求めたり
、あるいは返済できないために低所得階層が物件を差し押さえられ
住宅を失ったりといった問題が生み出された。この問題は略奪的貸
付(predatory lending)として知られる。かつてアメリカでは、貧
しい黒人居住地域を金融機関が融資上差別したことが、レッドライ
ニングと呼ばれる社会問題を生み出したが、住宅ブームの中で、む
しろ貸し過ぎが問題にされるようになった。なお、この略奪的貸付
については、低所得階層が貸し込み先になっているという意味で、
日本における消費者金融の多重債務問題や、バブル経済下での目先
の収益獲得に追われた金融機関による、中小・零細企業への貸し剥
がしと性格が似ているという指摘がある。

もともとアメリカの住宅ローンでは、融資する側では金融機関によ
る融資とローン債権の流動化がローンの拡大を支えていたが、流動
化がこのような信用力の劣るサブプライムローンにまで及んできた
ことは、サブプライムローンの拡大を下支えした。

(延滞の増加・信用の収縮)
しかし、住宅価格上昇率が2006年に入って以降急速に鈍化すると、
予測されたことだが、サブプライムローンの延滞率が目だって上昇
を始めた。2006年末に住宅ローン全体の約13%を占めるサブプライ
ムローンにおいて利払いが3か月以上滞る延滞率が13%を超えた。
担保住宅処分後により8割は回収できるとされるが、その想定が甘い
との指摘もある(日本経済新聞2007年3月19日による)。

債務者の延滞が顕著となってくると、次には、サブプライムローン
の貸し手である融資専門会社に対する融資に金融機関が慎重になり
、専門会社の中には資金繰りが悪化して経営破綻する例が出始めた
。大手金融機関では貸倒引当金を増やしているが、その利益を圧迫
する結果になっている。

2007年3月13日に大手のニュー・センチュリー・ファイナンシャルが
、経営破綻が懸念されるとしてNYSEでの取引が停止され、上場廃止
が決まった。3月20日までに連邦倒産法第11章に基づく資産保全を申
請した会社は4社、業務停止は20社以上となった。その後、ニュー・
センチュリーは4月2日に連邦倒産法第11章の適用を申請した。

サブプライムローンは、性質上は一般に貸付債権として、他の金融
商品の構成要素として含まれている。そもそも金融商品は本質的に
高い利回りを求められるものであり、サブプライムローンが、高い
利率による貸付債権であり、少なくとも想定上は高い利回りが期待
できるものであることが、その背景にあった。

これらの金融商品については、必ずしも構成要素にサブプライムロ
ーンが含まれていることを明示していなかったり、あるいは、その
リスクについて、大数の法則・担保の提供により軽減されていると
されていたりするものであるが、実際にサブプライムローンの延滞
率が上昇してくると、必ずしも当初の目論見どおりにリスクがヘッ
ジされているわけではなく、金融商品自体が想定された利回りを下
回ったり、元本自体の返済が不能となったりする例が浮上してきて
いる。

こうして、サブプライムローンの信用リスクの顕在化は、サブプラ
イムの債権を対象として組み込んだ金融商品の信用リスクに波及す
ることとなる。

2007年6月22日には、米大手証券ベアスターンズ傘下のヘッジファン
ドが、サブプライムに関連した運用に失敗したことが明らかになり
、問題は金融市場全体に拡大した。ファンドの中には、資金繰りが
悪化して資金の引出を停止したり、解散を決めたりするものが相次
いだ。ファンドは大手金融機関から多額の融資を受けており、問題
の拡大が懸念された。ヘッジファンドは、高い利回りを求めて、住
宅ローン担保証券の中でもリスクの高いエクイティ債やエクイティ
債を組み込んだ債務担保証券に好んで投資してきた。

7月10日には米格付け機関のムーディーズが、サブプライムを組み込
んだ住宅ローン担保証券RMBSの大量格下げを発表した。この結果、
投資家がリスクマネーの供給に慎重になるなど、心理的影響の波及
も懸念されている。さらに、この格下げのタイミングが後手に回っ
たとして、格付け機関自体の信用度を疑問視する意見も出ている。

また、サブプライムローンに関する問題は、いわゆる優良な顧客と
しての、通常の債務者を対象とする住宅ローンなどの貸付に関する
貸付の縮小の動きにも繋がっていることから、限定された債務者に
対する貸付の問題のみならず、より広く融資・信用供与のシステム
全体における動揺をもたらすものであるとの懸念が起こっている。

(金融政策的対応)
サブプライムローンに関する信用への問題が顕在化するにつれて、
それを要因に含んだものとされる各国の株式市場の株価の下落や、
為替におけるドル安の動きなどが見られた。アメリカ合衆国の政府
はじめ金融当局は、サブプライムローン問題の直接の金融システム
ないしは信用システムに対する危機的悪影響を否定しているが、ア
メリカ連邦準備制度理事会や各国の中央銀行は、市場に対する資金
の供給量を増すなど、本問題を契機とする信用問題に対して一定の
対策を取りはじめている。

8月、事態を重く見たジョージ・W・ブッシュ大統領はサブプライム
問題の被害者への救済に乗りだすことを表明した。


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