5828.理性と知性の基盤



 現代という芸術アラカワ 2016年12月 理性と知性の基盤
From:tokumaru
皆さま、
早いもので今年もあと7日。

先週から再び道元和尚広録を読み進めています。
読むたびに驚くべき新しい発見があり、自分でもびっくりしていま
す。

現代という芸術アラカワ、今月は「理性と知性の基盤」です。
これもデジタル言語学の結論です。

ではお元気で

得丸久文


現代という芸術アラカワ

理性と知性の基盤

 これまでヒトの言語の起源と脳内処理メカニズムが解明されてい
なかったために、たくさんの迷信や誤解が生まれ、今も人類の思考
を束縛し、誤った行動に導いている。
 たとえば、デカルトは「方法序説」のなかで、文法を使いこなす
人間には理性があるが、わずかな理性で足りる文法を使えない(ヒト
以外の)動物には理性がまったくないと言いきっている。デジタル言
語学はこれが誤りであることを明らかにした。
 ヒトは母語を片耳だけでモノラルで聞き取っていて、脳幹聴覚神
経核にある方向定位能力で文法を処理している。だから文法を使え
るようになる頃に子供の運動反射能力が落ちる。たくさんの人が会
話している場所で目を閉じると話し声がかぶって聞こえる。ブラジ
ルのジャングルに生活するピダハンの言葉には文法がなく、代わり
に会話を両耳で聞いている。
 文法はヒトの理性の証明ではなく、むしろ生物としてもっている
本能を犠牲にしているとき、理性とは何か、知性とは何かという根
源的な問題に遭遇する。

 理性とは、我々の脳を構成する個々の神経細胞がもち、我々を生
存と繁栄へと導く判断力だ。これは単細胞生物も昆虫も鳥も魚も動
物も共通にもっている。ヒトだけが理性をもつのではない。すべて
の生命体がもっている理性をヒトももっているだけだ。
 知性とは、有史以来、人類が学習し思考し構築してきた人類の共
有智であり、それを学ぶことで個人が構築する概念体系、概念の相
互ネットワークである。人類共有智の論理体系に自分の意識を同調
させると、知性が生まれる。知性はヒトが生まれながらにしてもっ
ているものではなく、言語を正しく学習し、思考し続けることによ
って、日々更新され成長していくものである。
 我々は、自分自身を人類共有智に同調させつつ、その共有智が誤
っているとわかれば、直ちに誤り訂正する義務がある。

 ヒトの理性は単細胞生物と同じで、知性はたゆまぬ学習と思考に
よって構築される。ヒトは他の生物より偉いわけではない。地球上
の他の生物と共生できるよう、謙虚かつ大胆に知性を発展させなけ
ればならない。

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デジタル言語学の結論
From:tokumaru
みなさま
       デジタル言語学の結論
昨年11月に大分大学で開かれた「大分テキスト・フォーラム」は
、少人数ながらもれっきとした国際学会でした。

オーストラリア、香港、パキスタン、アメリカから、ある先生のも
とで同窓だった言語学者が大分に集って、お互いに研究発表をする。

それが7年も続いているのは、大分大学の南里圭三先生の情熱のお
かげです。

ここで知り合ったパキスタンの先生に招かれて10月に二週間、イ
スラマバードからラホールまで訪れ、パンジャブ大学でプレナリー
講演をすることになったのもOTFのおかげでした。


昨年のOTF7では、「論理言語学」というタイトルで90分もしゃべ
らせてもらい、その結果を論文にして5月に提出したのですが、

これが10月に英語がひどく下手であり、既存の学説とあまりに隔
絶しているという理由で査読者から戻ってきました。

今月末までに査読者の意見を反映させた論文に仕上げなくてはなら
ないので、このところ英語の論文にかかりっきりでした。


OTFの規定では、論文は8000単語で仕上げることになっているの
ですが、査読者に対応する場合にはこの規定が外れるということで
、1万7000語になりました。

参考までに目次を添付しますが、複雑な言語処理の流れをなんとか
整理しました。

1 デジタルネットワークオートマトンのための学際的解析入門
2 音節を発声するための喉頭降下
3 空間を伝搬する会話音声の流れ
4 物理から論理への変換
5 神経免疫細胞のネットワークにもとづく論理層
6 文法自動処理のメカニズム
7 概念の意味のメカニズムと概念体系
8 論理物理二元論に向かって


で、結局、デジタル言語学の結論は、仏教の教えに近いといいますか、

(1) 言葉の聞き取りは脊髄反射の免疫ネットワークにもとづい
ているので、ヒト以外の動物や昆虫でも、きちんと教えればヒトの
言語を理解することができる。

(2) ヒト以外の動物にできないのは、音節を発することで、手
話やキーボードの使い方を教えたら、ヒトの言語を発することがで
きる。

(3) ヒトに生まれながらにして理性が備わっているわけではな
い。ヒトのもっている論理も、昆虫やヒト以外の動物と同じ神経免
疫細胞の二文法と二元論でしかない。
ヒトは、言葉を正しく獲得し、正しく使用することを通じて、言葉
相互の論理的関係にもとづいて構築される知能体系を自分のものと
することができる。

というあたりにたどり着きました。

鷹揚の会スペシャルと名づけて20回以上、青山や新橋でおつきあ
いいただいたこと、2010年から二年間、タカの会で鈴木先生の
教えを聞いたこと、さまざまなことのおかげで、ここまでたどり着
きました。

ありがとうございました。

いま英文のネイティブチェックを受けている段階ですが、もしその
段階で読んでみたいという方がおられましたらご連絡ください。

得丸久文



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