5541.中東戦争の見方



中東戦争の評論を見ると、米露の代理戦争という見方や欧米露など
の大国同士の戦いに焦点を当てている見方が多い。しかし、それは
違う。この中東地域での戦いは、大国が引き込まれた戦争である。
その検討。          津田より

0.状況
米国が中国の南シナ海人工島への米艦艇12カイリ航行に報道機関
の興味が移り、中東の戦闘の報道がなくなっている。報道から評論
に議論の中心が移っている。

シーア派のイランが一方の中心であり、そのイランがロシアに要請
して、ロシアのプーチン大統領が承認して軍をシリアに送ったこと
は、「5523.(p0368)ロシアと米国、中東はどうなるの
か?」ですでに述べた。

さて、もう一方の中心は、イスラム国というのが、欧米露の見方で
あり、米国は、シーア派とスンニ穏健派は協力して、イスラム国と
戦うべきであり、その体制を整えようとした。このため、イランと
核協議を通じてイランとの関係も正常化した。

米国のタルボットブルッキング研究所所長は、ロシアが明確な目的
もないままに、イランの要請を受けてシリアに介入したが、その落
としどころがなく、ただシリアのアサド政権を長引かせるだけであ
り、長い戦いをすることになるという。もちろん、ロシア国内経済
の消耗も激しくなる。

ロシアは、シーア派の連合体だけではイスラム国との戦いは終わら
ないので、スンニ派諸国も巻き込む必要があることを知るという。

ロシアはそのために、サウジやイスラエルとの協議を開始している
が、シリア和平交渉でもアサド政権を擁護したことで、合意ができ
ていない。米国との関係正常化もできる可能性があったのに、アサ
ド政権存続にこだわったことでできなかった。

このため、イスラム国の攻撃より反政府勢力の攻撃に重心があり、
効果的なイスラム国攻撃になっていない。ロシアの空爆が効果的で
あるので、スンニ派戦士たちがロシアに攻撃の中心を移している。

そして、ロシアの旅客機が10月31日にエジプト・シナイ半島で
墜落した。米政府当局者が過激派組織「イスラム国」などが爆弾を
仕掛けた可能性を示唆し、英政府は墜落機の出発地であるシナイ半
島のシャルムエルシェイクと英国間の航空便を4日夕以降、一時停
止する措置を取った。

プーチンは、戦術核の先制使用の用意があることを公言しているが
、ロシア航空機爆破でエスカレートさせる可能性もある。

1.中東各国の動き
CIA元職員のエドワード・スノーデン氏は、イスラム国の指導者バグ
ダディ氏が実はサイモン・エリオットという名のユダヤ人で、イス
ラエル諜報機関モサドの工作員であると暴露している。

イスラエルは、傷ついたアルカイダのヌスラ戦線兵士やイスラム国
兵士を国内の病院で手当していることが知られている。トルコも同
様で、イスラム国を攻撃するシリアのクルド軍を爆撃している。イ
スラム国の資金になる石油を買っている。兵器も取引している。

トルコの目的は、中東地域の民主化を助けて、国民中心のイスラム
教化をしようとしているのだ。一方、イスラエルはシーア派とスン
ニ派の戦いを長期化して、自国に結束して戦争を仕掛けられないよ
うにしている。このため、過激派を利用している。この2ケ国の利
害が一致している。

イランは、シーア派を結束させて、地域覇権を取ることを目指して
いる。このため、イラン革命防衛隊の司令官をシリア、イラク、イ
エメンに派遣している。

サウジはイスラム教原理主義国であり、思想的にはイスラム国に近
い。米国のスンニ派への庇護がなくなり、影でイスラエルとサウジ
は、結託しているようにも見える。

シリアの中の大多数のスンニ派は、ヌスラ戦線などでアサド政権と
戦っている。ヌスラ戦線とイスラム国は提携している。ヌスラとシ
リア自由軍も繋がっている。このように複雑であるが、徐々に集約
されてきている。

米国が訓練したシリア自由軍兵士はほとんどヌスラ戦線に加入した
ようである。ほとんど残っていないという。

しかし、国民の70%のスンニ派が、アラウィ派主導のアサド政権
に反抗しているので、シリアをアサドが支配することは今後、絶対
にできない。それぞれの宗派や民族が自治政府を作り、その連邦形
式にする必要がある。

ロシアがシリアのアサド政権に加担すると、スンニ派の大多数の反
発からロシア人が中東地域で狙われることになる。

しかし、トルコもイスラエルもその他スンニ諸国も、米国の反発を
受けないように、イスラム国への攻撃に加わっているだけであり、
空爆地点の情報は、イスラム国に渡されているのである。このため、
空爆の効果が出ていない。

しかし、ロシアの空爆地点情報はイスラム国にわたされないので、
被害が増えているようである。このため、ロシア憎しの感情がスン
ニ派戦士に沸き起こっているように感じる。

このような現状の中東の状況は、イスラエルが望む中東の地域の姿
でもある。イスラエルがイランに敵するもう一方の中心であるよう
である。これが評論に出てこない。

あくまでも、この戦いはイランとイスラエルの戦いである。イスラ
エルがスンニ派のサウジなどを取り込んだのである。

しかし、ロシア軍がイスラエル近傍にあり、ヒズボラとイスラエル
が敵対関係にある。

2.ロシア軍とイスラエル軍の戦闘が起こり得る?
ナショナルインタレスト誌に「A Horrific Thought: Could Russia 
and Israel Clash in Syria?」が載っているが、ヒズボラとイスラ
エルがシリアかイスラエルの領土内で戦闘になると、ロシア空軍と
イスラエル空軍の戦闘が起こり得ると予想している。

このため、米軍は、F-15戦闘編隊をトルコ基地に増強した。この戦
闘部隊は、空中戦を専門に行う部隊であり、そのターゲットはロシ
アのスホイ30であるようだ。イスラエルとの防衛協定があり、米
国はそれに応える必要があるためだ。

しかし、このような米露が直接的に戦闘になると、第3次世界大戦
になる可能性が出てくる。

また、南シナ海での米艦艇と中国艦艇での戦闘も考えられる。

WS誌に「Washington prepares for World War III」が載っている
が、米国議会、米国防省などで準備する議論が始まっているようで
ある。核兵器が飛び交うことになる。人類が生き残れるかどうかな
どが中心であるというが、大変な時代が来た。

さあ、どうなりますか?


参考資料
5523.ロシアと米国、中東はどうなるのか?
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/271018.htm

5516.ロシアが中東に出て世界が危機に?
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/271011.htm

Assad’s Sunni Foot Soldiers
http://foreignpolicy.com/2015/11/05/assads-sunni-foot-soldiers-syria/?utm_content=buffer112b9&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

A Horrific Thought: Could Russia and Israel Clash in Syria?
http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/horrifc-thought-could-russia-israel-clash-syria-14273

For All Sides, Syrian Peace Will Involve Dealing with the Devil
http://nationalinterest.org/feature/all-sides-syrian-peace-will-involve-dealing-the-devil-14235

Washington prepares for World War III
http://www.wsws.org/en/articles/2015/11/05/pers-n05.html

US deploys F-15s to Syria, targeting Russian jets
http://www.wsws.org/en/articles/2015/11/07/syri-n07.html


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ロシア機墜落を自慢=「イスラム国」の通信傍受−米テレビ
 【ワシントン時事】米NBCテレビは6日、エジプトのシナイ半
島で起きたロシア旅客機墜落で、過激派組織「イスラム国」の戦闘
員が同組織幹部に墜落させたことを自慢する通信を、米当局が傍受
していたと報じた。
 米当局者は同テレビに対し、通信は「明らかにロシア機の墜落を
称賛していた」と説明。ただ、墜落方法などは明らかにしなかった。
また、墜落前に得られた別の傍受では、やりとりの中に「域内で何
か大きなこと」が起きるという警告があったという。
 ロシア機墜落をめぐっては、欧米当局の間で爆弾テロに遭ったと
の見方が強まっている。(2015/11/07-15:29)
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ロシア機墜落、「爆破」か=過激派組織関与も−英米
 【ロンドン、ワシントン時事】英首相官邸は4日の声明で、ロシ
アの旅客機が10月31日にエジプト・シナイ半島で墜落したこと
について、「新たな情報により、爆破装置が墜落原因である可能性
が高いことを懸念している」と明らかにした。また、米CNNテレ
ビは、米政府当局者が過激派組織「イスラム国」などが爆弾を仕掛
けた可能性を示唆したと伝えた。
 英政府は墜落機の出発地であるシナイ半島のシャルムエルシェイ
クと英国間の航空便を4日夕以降、一時停止する措置を取った。さ
らに、航空専門家をシャルムエルシェイク空港に急派。現地で取ら
れている安全手続きを調査し、今後何らかの対策が必要かどうか決
定する。
 キャメロン英首相は4日夕、関係閣僚による緊急閣議を開き、こ
の問題を協議した。シャルムエルシェイクはリゾート地として英国
でも人気があり、BBC放送によると、現在も約2000人の英国
人が滞在している。
 エジプトのシシ大統領は4日夜にロンドン入りし、5日にキャメ
ロン首相と会談することが、今回の措置の前から決まっている。会
談ではロシア機墜落問題も議題になるとみられる。
 複数の米メディアは4日、情報機関当局者が「ロシア機は爆弾で
墜落した」と分析していると報道。CNNテレビは「イスラム国、
あるいは関連組織が爆弾を機内に設置した」とする当局の見方を紹
介する一方で、情報機関は墜落原因に関して最終結論を出していな
いとも伝えた。
 カービー国務省報道官は4日の記者会見で、一連の報道について
「現在進行中の事故調査にはコメントしない」と述べるにとどめた。
一方、アーネスト大統領報道官によると、米航空各社は現在、シナ
イ半島の上空を運航していない。(2015/11/05-10:30)
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プーチン大統領のストリート・ファイト戦略に翻弄される欧米諸国
2015年11月04日(水)15時27分newsweekjapan
 欧州の安全保障にとって、ロシアが再び最大の脅威になってきた
。冷戦が終結し、旧ソ連が崩壊した後、ロシアは先進国7カ国(G7
)に加わり、北大西洋条約機構(NATO)とも協力関係を築いてきた。
しかし、露大統領プーチンが昨年3月、クリミア併合を強行したの
を境に欧米とロシアの関係は「協力」から「対立」に一変した。今
年9月末、プーチンはシリア反政府勢力への空爆を開始、シリアの
アサド政権を存続させ、米国を交渉のテーブルにつける狙いは今の
ところ奏功している。武力行使をためらわないプーチンのストリー
ト・ファイト作戦に対し、打つ手はあるのか――。
 米大統領オバマはこの2年間、16回も「米軍の地上部隊をシリアに
派遣することはない」と繰り返してきたが、50人以下の特殊部隊を
シリアに派遣することをようやく承認した。ロシアの脅威に対応す
るためNATOは即応部隊を増強することを決めたものの、英国がバル
ト三国に展開する部隊はわずか100人。武力行使をためらわず即断即
決で行動するプーチンの前に、欧米は手をこまぬいている。
 シリア空爆を機に、プーチンは中東だけでなく、旧ソ連諸国、北
極圏、極東などで活発に動いている。不穏なのは旧ソ連諸国やバル
カン半島での動きだ。
 10月、プーチンは旧ソ連諸国の指導者と合同の国境警備隊を創設
することで合意。ジョージア(旧グルジア)から事実上独立した南
オセチア共和国の大統領チビロフがロシア編入の住民投票を実施す
る頃合いだと発言した。NATOの旧東欧での活動に牽制するため、ロ
シアとベラルーシは来年にも「合同軍事機関」を創設することを計
画している。
 後方撹乱とみることもできる動きも出ている。モルドバでは親ロ
シア派の野党が親欧派の連立政権に対し不信任案を求め、モンテネ
グロの首相ジュカノビッチが同国内でロシアが反政府デモを組織し
ていると批判した。
 これに対し、ドイツの首相メルケルは、欧州に押し寄せるシリア
難民、抗議活動が高まる米国との環大西洋貿易投資パートナーシッ
プ(TTIP)交渉への対応で頭がいっぱいだ。英国の首相キャメロン
に至っては、欧州連合(EU)に残留するか否かを問う国民投票に向
けた準備、中国との経済関係強化に余念がない。
プーチンは戦術核の使用も辞さない
 新著『ミスター・プーチン クレムリンのスパイ』(共著)のPR
を兼ねてロンドンを訪れた米シンクタンク、ブルッキングス研究所
のフィオナ・ヒル上級研究員は「プーチン氏は、第二次大戦の英首
相チャーチルと同じように、自分は戦時大統領だと考えている」と
語る。ヒル女史は米国家情報会議(NIC)でロシア問題を担当したプ
ーチン研究の第一人者だ。
 今年3月、ロシア国営TVが制作した特別番組のインタビューでウク
ライナ危機への対応について「核戦力を臨戦態勢に置いたというこ
とか」と尋ねられ、プーチンは「その用意はあった」と答えた。ヒ
ル女史は「いざとなれば『ダーティ・ボム(汚い爆弾)』や戦術核
(射程1千キロ以内の軍事目標の破壊を目的とする核兵器)の使用
もプーチン氏は辞さないことを考慮に入れておく必要がある」とい
う。
 ロシアにとってプーチンだけが唯一絶対の正統性を持った権力で
ある。旧ソ連時代、一党独裁とは言え、権力は共産党政治局を中心
に制度化されていた。しかし、今や、すべての権力が支持率89.9%
のプーチンという個人に集約される傾向が一気に強まった。政策決
定に参加できるのはごく限られたインナーサークルの側近たちだ。
「欧米が犯した過ちはプーチン氏を見くびっていたことだ。チェチ
ェン紛争、グルジア紛争(当時)、ウクライナ危機、シリア介入を
みると、プーチン氏はストリート・ファイターと同じだ。売られた
ケンカに背中は見せず、絶対に引き下がらない。勝つためには手段
を選ばず、犠牲も厭わない。ロシア国民の感情に寄り添い、すべて
の情報を自分に集め、祖国とロシア人のため国益を守るという使命
を打ち立てている」と、ヒル氏は言う。
 プーチンはケンカをする場所と時間、相手を狡猾に選んでいる。
戦術核の先制使用の用意があることを公言したことで、危機をエス
カレートさせるか、和らげるかの決定権を自らの手中に収めた。欧
米はプーチンの行動に過剰反応すると危機がさらにエスカレートす
ると恐れ始めている。自らが武力を用いて影響力を行使できるテリ
トリーでプーチンは「エスカレート・ドミナンス」を確立しつつあ
る。
高い支持率に立脚した正統な独裁者
 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると
、ロシアが保有する核兵器は7500発。すべての権力がプーチンに集
中し、その正統性は高い支持率に基づいている。それだけに危機が
制御不能な状態にエスカレートする危険性は旧ソ連時代に比べても
大きくなっている。
 ブッシュ米政権下で国務長官などを歴任したコンドリーザ・ライ
ス米スタンフォード大学教授も同じ時期、ロンドンを訪れ、英シン
クタンク、国際問題研究所(チャタムハウス)で講演した。
「2001年、スロベニアでプーチン氏がブッシュ氏と会談したとき、
テロとイスラム過激主義のことを強調していた。私たちが犯した最
大の過ちは、プーチン氏が言う秩序と我々と同じだと考えたことだ。
プーチン氏の追求する秩序とは、支配できるところを支配するとい
うことだった」
 クリミア併合とウクライナ危機で欧米諸国は経済制裁ではなく、
旧東欧諸国などにもっと軍を展開すべきだったと、ライス氏は言う。
バルト三国やチェコ、ポーランドなどNATO加盟国の安全を再保証す
る。その上で、自由市場を通じてロシアとの経済統合をこれまで通
り進めれば、いずれ旧ソ連と同じようにロシア国内から改革を求め
る動きが出てくる。それにはしかし、かなり長い歳月を要する。プ
ーチンのケンカ殺法を止めるのは難しい。短期的にはNATO加盟国の
結束を強め、守りを固めるほか打つ手がないのが現実だ。
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なぜ、イスラム国の指導者がイスラエルの工作員であることに触れ
られないのか?
 2015年11月4日mag2
CIA元職員のエドワード・スノーデン氏によると、イスラム国の指導
者バグダディ氏は実はサイモン・エリオットという名のユダヤ人で
、イスラエル諜報機関モサドの工作員であることが暴露されていま
す。現在、混乱を極めるシリア情勢を読み解くキーワードにもなる
このリークについて、元戦場ジャーナリストの加藤健二郎さんは自
身のメルマガで、「イスラエルがISを誕生させた」という説を検証
しています。
IS(イスラム国)の最高指導者バグダディ氏の正体が、イスラエル
諜報機関のサイモン・エリオット氏であるという説は、日本のメデ
ィアではなるべく触れないことにしているようだ。専門家やジャー
ナリスト評論家などへの質問としても、まず、出てこない。その理
由は「それを言っちゃあ、みもふたもない」からか? または、この
説に反対意見の人も受け入れる意見の人も、どららも、なんの証拠
も確信も持ててないからか。
こういうことを前提に、ちょっと、周辺情報論で、陰謀論も避けず
に攻めてみたい。
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イラク軍へ支援強化=アバディ首相と電話会談−米大統領
 【ワシントン時事】オバマ米大統領は30日、イラクのアバディ
首相と電話会談し、同国中西部アンバル州の州都ラマディでイラク
軍が過激派組織「イスラム国」を孤立させていることなどを歓迎し
た。大統領はまた、イラクとの協力関係に基づき、一連の作戦で同
国軍への支援を強化すると述べた。(2015/10/31-10:05)



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