5533.米海軍が中国建設の人工島12カイリに進入



ロイター通信は26日午後(日本時間27日未明)、米海軍が横須
賀基地配備のイージス駆逐艦「ラッセン」を24時間以内に、中国
が南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で「領海」と主張す
る人工島の12カイリ(約22キロ)内に派遣すると伝えた。

この報道が本当なら、すでに12カイリに入っている。中国外務省
は必要な処置を取り、進行を妨げたが、航行してきたというので、
実際に人工島に侵入したのであろう。

中国は南シナ海に浮かぶ海南島に戦略ミサイル原子力潜水艦を配備
し、この国際海域を対米軍事戦略上の拠点と見なしている。長距離
核ミサイルを搭載した戦略原潜によるパトロールはすぐにでも開始
されるとみられ、中国は南シナ海上空に飛来するアメリカの偵察機
からこの原潜を守らなければならない。このため、人工島に監視施
設や飛行場を建設し、米軍の接近を阻む態勢の確立を急いでいるの
だろう。

逆に、米国は、中国主張を公海における航行の自由を脅かすものと
して牽制して、中国の領有権の主張を認めず、公海での航行の自由
を守る強い決意を示すためだ。これは、原潜の監視のために自由に
航行できるようにすることが重要なのである。

日本政府も、米海軍による南シナ海・スプラトリー(南沙)諸島へ
の艦艇派遣を支持している。米国に加え東南アジアの各国とも協力
し、中国の「力による現状変更」に歯止めをかけたい考えだ。

しかし、1997年以降20年間における米中の相対的な能力の変化を観
測した結果、次の10の分野において米国の優位が失われつつある。
 @米空軍の基地に対する中国の攻撃能力、A台湾海峡及び南沙諸
島周辺空域における航空作戦、B中国の領空に対する米軍の侵攻能
力、C中国空軍の基地に対する米国の攻撃能力、D米国の水上艦艇
に対する中国の作戦能力、E中国海軍の水上艦艇に対する米国の作
戦能力、F中国の宇宙配置システムに対する米国の対抗能力、G米
国の宇宙配置システムに対する中国の対抗能力、H米中両国のサイ
バー戦能力、I米中両国間における戦略核兵力の安定性、といった
分野である。

ということで、中国も日米同盟を恐れずに、南シナ海では対抗処置
を取れる実力が出てきた。

この対抗処置として、日米の同盟に対して、中国はEUを味方につ
けるべく行動を開始した。人民日報に「Ties with EU can offset 
US-Japan alliance」が載っている。最後にリンク。

独メルケル首相や仏オランド大統領が中国を去年、今年に来訪して
いる。習近平国家主席が英国を訪問して「黄金の時代」としている。

そして、ダライラマの訪問を、これらの国は阻止しているように、
中国が主導権を持って、中国とEU諸国の関係を構築している。

しかし、米国はEU諸国と違い、自分の自由主義の思想を止めない。

米国とEUの関係は、思っているほどには関係が良くない。

しかし、中国と欧米とは、いつも違いがあり、それは気をつける必
要があるが、ドイツの輸出の40%が中国向けであり、フランスに
も中国が大きな利益を与え、中国との関係を良好にして、日米同盟
の影響を相殺することができる。

欧州は米国より保守的であり、経済的関係が強固であれば、中国の
味方をしてくれる。

と中国は見ている。欧州諸国は経済で買収しようということだ。

IMFで人民元を国際通貨にすることを欧州諸国が賛成して実現し
ているなど、中国がそう思うのも頷ける。

中国と日米の戦いになり、欧州は中立にしたいようである。

さあ、どうなりますか?

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米海軍が人工島12カイリ進入 
航行の自由をめぐる米中対立
2015年10月27日(Tue)  小谷哲男 (日本国際問題研究所 主任研究員)WEDGE
中国が南沙諸島で岩礁を埋め立てて建設中の人工島周辺12海里(約22
キロ)に、アメリカが海軍艦船と航空機を派遣したと報じられている。
国際法上、人工島には12海里の領海を主張することができないが、
中国は人工島を「領土」とみなしている。これに対し、アメリカは
中国の主張は公海における航行の自由を脅かすものとして牽制して
いる。アメリカが海軍の派遣を決定したのは、中国の領有権の主張
を認めず、公海での航行の自由を守る強い決意を示すためだ。
 中国は南沙諸島の領有権を主張しているが、実際には7つの拠点を
押さえているに過ぎない。しかも、それらのほとんどは満潮時には
海面下に沈んでしまうため、国際法上領有が認められる陸地ではな
い。にもかかわらず、中国はこれら岩礁の上に、観測施設などを建
設してきた。そして、ここ数年はこれら拠点の大規模な埋め立てを
行い、人工島の建設に力を注いできた。
 中国が大規模な埋め立てを始めたのは、自らが「歴史的権利」を
主張する南シナ海の支配を目指し、軍事拠点を築こうとしているた
めと考えられる。特に、中国は南シナ海に浮かぶ海南島に戦略ミサ
イル原子力潜水艦を配備し、この国際海域を対米軍事戦略上の拠点
と見なしている。長距離核ミサイルを搭載した戦略原潜によるパト
ロールはすぐにでも開始されるとみられ、中国は南シナ海上空に飛
来するアメリカの偵察機からこの原潜を守らなければならない。こ
のため、人工島に監視施設や飛行場を建設し、米軍の接近を阻む態
勢の確立を急いでいるのだろう。
 また、中国はオバマ政権の対中姿勢を弱腰と判断し、人口島を建
設してもオバマ政権が物理的にこれを阻止するとは考えなかったは
ずだ。他方、次期アメリカ大統領は対中強硬姿勢を取る可能性があ
るため、オバマ政権の間に可能な限り南シナ海の拠点作りを終える
ことを目指していると考えられる。特に、有力候補であるヒラリー
・クリントン前国務長官は、5年前に南シナ海における航行の自由を
アメリカの国益と公言したため、中国側では警戒心が高まっている(
現時点では予期せぬドナルド・トランプ氏の人気に当惑しているよ
うであるが)。
 実際、当初オバマ政権は中国が人工島を建設していることを公に
は批判せず、水面下で中国に懸念を伝えるに留まっていた。また、
最近アメリカ上院の公聴会で、2012年以降アメリカ海軍は建設が進
む人工島の周辺に近づいていないことが明らかになった。おそらく
中国との摩擦を避けたいオバマ政権が認めなかったのだろう。
 しかし、埋め立ての規模が拡大し、あらゆる軍用機を運用可能な
3000メートルの滑走路の建設が始まるに至り、アメリカはCNNなど各
メディアを通じて中国の埋め立て活動を国際社会に公開し、圧力を
加えるようになった。同時に、アメリカ軍からは、人工島周辺12海
里での「航行の自由作戦」の承認を求める声が高まった。オバマ大
統領は9月に訪米する習近平国家主席との直接対話によって事態の沈
静化を狙ったようだが、結局話し合いは平行線に終わり、「航行の
自由作戦」を承認したと伝えられている。
 「航行の自由作戦」は、アメリカ政府が1970年代から行っている
もので、沿岸国が国際法上認められない過剰な管轄権を主張する海
域や空域に艦船や軍用機を派遣し、管轄権を認めないことを示すも
のである。たとえば、旧ソ連は領海内で外国艦船の無害通航権を制
限していたが、アメリカ海軍は敢えて無害通航を実施し、無害通航
権を認めさせた事例がある。
 今回の南沙諸島での「航行の自由作戦」は、駆逐艦によって行わ
れ、哨戒機も同行している可能性がある。中国はファイアリー・ク
ロス礁、スービ礁、およびミスチーフ環礁で3000メートルの滑走路
を建設しているとみられる。このうちファイアリー・クロス礁は満
潮時でも一部が海面から出ており、12海里の領海と領空を主張する
ことができるため、アメリカ海軍はファイアリー・クロス礁以外で
「航行の自由作戦」を実施したようだ。アメリカの「航行の自由作
戦」は1度では終わらず、断続的に行われていく可能性が高い。
 他方、中国はアメリカが「航行の自由作戦」を計画していること
にすでに反発しており、今後どのような対応を行うかが注目される
。あくまで外交的に抗議を行うのか、それとも人民解放軍を動かし
てこれに物理的に対処するのか。後者の場合、軍同士の衝突の可能
性も否定できない。米中間には軍同士の衝突を避ける行動規範が存
在するが、中国が軍同士の衝突を避けることよりも、米軍の排除を
重視するなら、これらの行動規範は役に立たないだろう。このため
、「航行の自由作戦」の立案に当たって、米軍も人民解放軍との衝
突を想定しているはずだ。
 南シナ海における中国の拠点作りは、西沙諸島と南沙諸島で進め
られているが、これでは南シナ海全体をカバーすることはできない。
2012年に中国がフィリピンから奪ったスカボロー礁を埋め立てなけ
れば、中国は南シナ海全体で航空優勢を確保することはできないの
だ。今後、アメリカはすでに出来上がった人工島の存在を認めない
一方、スカボロー礁の埋め立てを阻止することを目指すだろう。
 問題の本質は、米中の航行の自由に関する考え方の違いにある。
アメリカにとって航行の自由は建国の理念の1 つであり、アメリカ
は航行の自由を守るために2つの世界大戦を含めた戦争を戦ってきた。
他方、中国はアメリカにとっての航行の自由の重要性を過小評価し
、南シナ海問題に介入するための口実にすぎないと誤解している。
 このように、米中が南シナ海で航行の自由をめぐって軍事衝突す
る可能性が高まっている。そのような事態が発生した場合、日本は
どのように対処すべきだろうか。
 まず、南シナ海が日本経済にとって重要な海の生命線であるため
、航行の自由の確保は国家安全保障上の最優先課題の1つだ。アメリ
カが「航行の自由作戦」を実施した場合、中国はアメリカが軍事的
な緊張を高めたと批判するだろうが、日本政府はアメリカの立場を
全面的に支持すべきだ。
 次に、来春、平和安全保障法制が施行されれば、新しい日米防衛
協力のための指針(ガイドライン)に基づいた支援も求められる。米
中が軍事衝突する場合、「重要影響事態」に認定される可能性が高
いため、自衛隊がアメリカ軍の後方支援をすることも検討しなけれ
ばならない。
 最後に、日本も「航行の自由作戦」に参加することを検討するべ
きだ。アメリカ単独よりも、日米共同で行う方がより強いシグナル
を中国に送ることができる。問題は、現行の中期防衛力整備計画(中
期防)では、南シナ海で運用するのに十分な哨戒機を調達できないこ
とだ。今後、海上自衛隊は80機あるP-3C哨戒機を70機のP-1に置き換
えていくが、南シナ海での哨戒に参加するなら、次期中期防でp-1の
調達数を増やすことを検討しなければならない。
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24時間以内に駆逐艦派遣か 中国「領海」に米海軍
2015/10/27 05:17   【共同通信】
 【ワシントン共同】ロイター通信は26日午後(日本時間27日
未明)、米海軍が横須賀基地配備のイージス駆逐艦「ラッセン」を
24時間以内に、中国が南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸
島で「領海」と主張する人工島の12カイリ(約22キロ)内に派
遣する計画だと伝えた。米国防当局者の話としている。
 同当局者はロイターに対し、ラッセンの航行には米対潜哨戒機
P8の監視を伴うとの見方を示した。
 米政権は10月に入り、「航行の自由」を確保するため、人工島
の周辺に海軍艦船を派遣する方針を決めたと関係各国に伝達、理解
を求めていた。
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中国包囲網へ…日本、米・東南アジア各国と協力
2015年10月28日 07時14分
 日本政府は、米海軍による南シナ海・スプラトリー(南沙)諸島
への艦艇派遣を支持している。
 米国に加え東南アジアの各国とも協力し、中国の「力による現状
変更」に歯止めをかけたい考えだ。
 米海軍艦艇の南シナ海への派遣は今後、継続して行われる見通し
だ。神奈川県の米海軍横須賀基地を拠点とする米海軍第7艦隊が主
力になるとみられ、米側から自衛隊の協力を求められる可能性もあ
る。
 日米両政府が4月に合意した新たな日米防衛協力の指針(ガイド
ライン)では、平時における日米共同の「ISR(情報収集、警戒
監視及び偵察)活動」も可能になった。中谷防衛相は記者会見で、
自衛隊の協力について「南シナ海の情勢が我が国の安全保障に与え
る影響は拡大している。どう対応していくかは今後十分に検討を行
っていくべき課題だ」と含みを持たせた。
 日本政府は、中国の動きをけん制するため、中国と領有権問題を
抱えているフィリピンやベトナムに巡視船の供与や人材育成の協力
も行ってきた。これらの取り組みをさらに強化して各国の警戒監視
能力を高め、「中国包囲網」を形成したい考えだ。
2015年10月28日 07時14分 Copyright c The Yomiuri Shimbun
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米中関係「極めて重要」=南シナ海問題、提起続ける−国務省
 【ワシントン時事】カービー米国務省報道官は27日の記者会見
で、オバマ政権が南シナ海の中国の人工島から12カイリ(約22
キロ)内に艦船を進入させたことに関連し、「米中関係は極めて重
要だ」と語り、両国の利益のために関係の改善と発展を望む考えを
示した。一方、中国に対して南シナ海への進出問題を提起し続ける
と話した。
 カービー氏は、米海軍が南シナ海で実施した「航行の自由作戦」
の詳細に踏み込むことは避けながら、「航行の自由は権利かつ原則
だ。米海軍は真剣に責任を持っている」と指摘。さらに「公海上に
ある艦船は『脅威』と見なされるべきではない」とも述べ、中国の
反発をけん制した。(2015/10/28-07:16)
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失われゆく米国優位 
高まる米中軍事衝突の危機
2015年10月27日(Tue)  岡崎研究所  WEDGE
9月17日付Defense Newsが、RAND研究所の報告書「米中軍事力のスコ
アカード:軍事力と地理的な要素によるパワー・バランスの変化 
1996-2017」を要約、紹介しています。
 すなわち、1997年以降20年間における米中の相対的な能力の変化
を観測した結果、次の10の分野において米国の優位が失われつつあ
る。
 @米空軍の基地に対する中国の攻撃能力、A台湾海峡及び南沙諸
島周辺空域における航空作戦、B中国の領空に対する米軍の侵攻能
力、C中国空軍の基地に対する米国の攻撃能力、D米国の水上艦艇
に対する中国の作戦能力、E中国海軍の水上艦艇に対する米国の作
戦能力、F中国の宇宙配置システムに対する米国の対抗能力、G米
国の宇宙配置システムに対する中国の対抗能力、H米中両国のサイ
バー戦能力、I米中両国間における戦略核兵力の安定性、といった
分野である。
高まる中国の軍事力行使の可能性
 今後5年から15年の間、米中両国が現在の延長線で軍事力を整備し
ていく場合、アジアにおいて米国が優勢にある地域は縮小する。中
国は局地的な海空優勢を獲得する能力を向上させ、米軍が緊急展開
するまでの時間の隙間を利用して、米軍を撃破することなく限定的
な目的を達成することが可能になるケースもあり得る。より深刻な
ことは、このような認識から、中国の指導者が隣接国との紛争に際
して米国が介入しないと信じる場合があるということである。米国
の抑止力は劣化し、危機に際して中国が軍事力行使という選択肢を
とる危険が高まる。
 米国としては、アジアにおける米軍の能力が低下するという中国
の誤解を是正し、米軍と交戦する危険が高いと認識させることが重
要である。このために優先すべき施策は、@十分な数の生存性の高
い前方展開基地、A(敵の影響力が及ぶ地域から離れて攻撃できる
)スタンドオフ兵器、Bステルス能力のある戦闘機及び爆撃機、
C潜水艦戦及び対潜水艦戦能力、D宇宙における能力などである。
 一方、在来型の戦闘機部隊や空母戦力は迅速に縮小すべきである。
また、中国に過度に接近した固定的な基地に依存する前方展開態勢
は危険であり、フィリピン、ベトナム、インドネシア及びマレーシ
アにおける有事のアクセスを可能にするための政治・軍事面におけ
る関係強化をめざすべきである。
出典:‘Analysis: RAND Says US Facing Tough Fight With China’
(DefenseNews, September 17, 2015)

Ties with EU can offset US-Japan alliance

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